2017年12月16日 (土)

ひいらぎ賞の役割とは

「ザレマの娘なら中山は得意なはずだよ」

ひいらぎ賞のパドックを見ていたら、背後からそんな声が聞こえてきた。

Paddock 

「ザレマの娘」というのはグランドピルエットのこと。9月中山の新馬を快勝。桜への期待を胸に東京のアルテミスSに挑んだが、イイところなく11着に敗れている。自己条件となる今回は一定の結果が求められる。ザレマは中山のマイル戦にオープンばかり4回出走して②⑤①①の成績を残した。母が得意とした中山なら、期待できるかもしれない。そういえば今日の中山メインは2006年にザレマも勝ったターコイズSだ。

Zarema 

だが、それを言ったらゴールドギアのお母さんギンザボナンザは、2009年ひいらぎ賞の優勝馬である。縁で言えばこちらの方が深い。1番人気に推されるのも分かる。

Ginza 

ひいらぎ賞は朝日杯に抽選で漏れた馬たちの「残念レース」としての役割を長く担ってきた。だから、朝日杯と同じくらい歴史も深い。消えたり復活したりが当たり前の特別戦でありながら、そのレース名は半世紀近い歴史を誇る。80年代半ばの一時期を除けば、朝日杯と同じ中山の芝マイルという条件も変わらない。

その長い歴史の中で、ひいらぎ賞を勝ってGⅠ級のレースを制した馬を列記してみる。コーネルランサー、カブラヤオー、プレストウコウ、ダイナガリバー、メジロライアン、サクラチトセオー、シンボリインディ、アサクサデンエン、マイネルホウオウ、ミッキーアイル。一介の500万特別としては悪くあるまい。朝日杯のバックアップという役目を十分に果たしている一方で、抽選システムの功罪にも思いが及ぶ。

ただし今年のひいらぎ賞には朝日杯除外組の出走がなかった。そのせいかレースもどことなく淡泊だった印象が残る。そもそも朝日杯で出走抽選が行われなかったのだかから仕方ない。ホープフルSのGⅠ昇格の影響は様々なところに及んでいる。

Hiiragi 

注目のグランドピルエットは3着。ゴールドギアは4着。今日は展開が向かなかっただけ。レースぶりは悪くなかった。敗戦を気に病む必要はない。サニーブライアンやミスターシービーはひいらぎ賞で敗れた半年後にダービーを制してみせた。敗戦は糧になる。ひいらぎ賞の場合は、その「糧」も大きいのであろう。ホープフルSがGⅠになっても、その役割は変わらないでいてほしい。

 

***** 2017/12/16 *****

 

 

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2017年12月15日 (金)

たまごかけごはんの苦悩

半年以上前の話になってしまうが、今年の千葉ゼリの会場で玉子を頂いた。玉子というのはタマゴである。ふつうの生卵。セリのお土産に筆記用具やクリアケースをもらうことはあるけど、たまごというのは珍しい。

Tama1 

配っていたのは船橋の川島厩舎。セリで馬をお買いなられたら、ぜひウチに―――。そういうことであろう。玉子のほかにも巻き寿司の折詰や箱ティッシュ、タオルなどたくさん頂いてしまった。その時はいたく恐縮した覚えがあるけど、その後、私の愛馬がたまたま川島厩舎に転厩になったことを思えば、まあそれくらい貰ってもイイか。

Tama2 

玉子の外装には「たまごやとよまる」とある。どうやら地元船橋にお店があるらしい。それがずっと気になっていた。んで、たまたま先日、船橋を訪れたついでに京成船橋駅の『たまごやとよまる』を訪問する機会を得たのである。

Tama3 

お店は駅ビル内だが、養鶏場は旭市や東金市にあるらしい。そこで採れた新鮮な卵が買えるだけでなく、たまごかけご飯をいただけるイートインスペースが用意されている。もちろん玉子かけご飯を注文。430円でご飯と生卵に加え、味噌汁とお新香が付いてくる。

Tama4 

玉子を手に取ってみると、大きさの割に重い。ご飯の真ん中にくぼみを作り、たまごを割り落とす。濃いオレンジ色の黄身。ぷっくり盛り上がった白身。まずはそれを目で楽しむ。しかるのちに豪快かつ念入りに混ぜ合わせ、ザクザクと掻きこんだ。たまごのコク、ご飯の甘み、玉子かけご飯専用醤油の香ばしさが相まって、思わず顔がほころぶ。なるほど美味い。

Tama5 

―――と、ここまで読んでお気付きだろうか。「たまご」「タマゴ」「玉子」「卵」。実に色々な表記がある。特に問題となるのは「玉子」と「卵」の使い分けであろう。産みたてのタマゴはたいてい「卵」と書かれる。タマゴかけご飯も、「卵かけご飯」が優勢だ。

ところが「たまごやき」となると「玉子焼き」がメジャーだし、「たまごどんぶり」も「玉子丼」となりがち。ということはナマなら「卵」で、火が通ったら「玉子」なのか。実はそうとも言い切れない。スーパーのチラシには「玉子」が特売されているし、NHKでは「卵焼き」などというテロップが使われたりする。だからと言って「タマゴ」に逃げれば、カタカナ表記乱用との誹りを免れない。たまご好きの苦悩は募る。

私の感覚では「卵」という漢字には、リアルな生々しさが感じられる。「蛙の卵」とは書いても「蛙の玉子」とは書くまい。

「玉子」という表記は江戸時代にはすでに広まっていたそうだ。生々しさを軽減させ、可愛らしささえ漂う絶妙な表記。肉食が忌み嫌われていたとしても、これなら罪悪感が薄らぐ。表記の揺れは日本人の感性が豊かであることの裏返し。そういえばタマゴカケゴハンという馬がいましたね。いま思えば希少なビワシンセイキの産駒だったが、残念ながら勝利を挙げるには至らなかった。きっと自分の名前が「卵」なのか「玉子」なのかで悩んしまい、競馬どころではなかったのであろう。

 

***** 2017/12/15 *****

 

 

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2017年12月14日 (木)

ケータイ打ちの悲劇

「夜書いた手紙は、翌朝読み返してから投函した方が良い」

そんな格言を聞いたことがあるだろうか。夜の脳は疲れており、つまらぬ間違いを犯している可能性が高いという戒めの言葉だ。

このブログを書いているのも基本的には夜。だから、―――というわけではないが、誤字、脱字、間違いの類から逃れることができない。だから朝になったら読み返して、極力間違いをなくそうとは努めているのだが、それでも記事公開から8時間は経過している。昨日は「ルヴァンスレーヴ」を「ルヴァンスルーヴ」と書いてしまった。ご指摘いただきありがとうございます。

Ruvan 

昨日の記事は全日本2歳優駿を終えての帰途、JR南武線の車中でスマホから入力した。ここで断っておく必要がある。私はスマホこそ使っているが「フリック入力」はできない。いわゆる「ケータイ打ち」。だから「れ」と入力するには「ら」のボタンを4回押すことになる。それが一回足りなかった。そういうことであろう。

しかも最近のスマホは頭が良いので、一度入力した文字列は最初の一文字を入力するだけで、変換候補の先頭に表示されるから、こちらもホイホイとそれに頼ってしまう。かくして「ルヴァンスルーヴ」は増殖の一途を辿った。

特に「お」「こ」「そ」といった「お段」の文字を、「え」「け」「せ」という具合に「え段」の文字に打ち間違えることが多いようで、「中山ぬダートコースは」とか「ヘワイテマズル」みたいな誤表記は結構多いようである。あと1回のキータッチが足りない。申し訳ないとは思う。あと、酒席が多いこの季節は、濁点や半濁点が抜けることも多々ある。だって酔ってんだから仕方ないですよね。開き直るしかない(笑)

Ruvan2 

さて、昨日ルヴァンスレーヴ(正解)が快勝した川崎は、明日が2017年最後の開催日。最終日の最終レースには芦毛・白毛限定の「ホワイトクリスマス賞」が予定されている。ぜひとも足をお運び、白馬だらけの幻想的な一戦を目に焼き付けていただきたい。

えー、これは↑ちゃんと「ホワイト」になってますよね。「ヘワイテ」になってませんよね。

……なんて、こんなこといちいち気にしながら書くのも面倒なので、明日付からは、また誤字満載かもしれません。でも、翌日は読み返して直す努力はしています。どうかご了承いただき、今後もおつきあいください。

 

***** 2017/12/14 *****

 

 

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2017年12月13日 (水)

川崎から世界へ

全日本2歳優駿は、今年からケンタッキーダービー出走馬選定ポイントシリーズ「JAPAN ROAD TO THE KENTUCKY DERBY」の一環に加わった。アグネスワールド、アクセスデジタル、そしてユートピア。このレースの優勝馬のうち3頭が、のちに海外の重賞を制している。川崎市民の秘かな誇り。そこにさらなる夢が広かった。川崎競馬場のゴールの遥か先には、チャーチルダウンズ競馬場の“ツイン・スパイア(尖塔)”がそびえている。

とはいえ、1~4着馬に付与されるポイントで比較すれば、全日本2歳優駿の重要度は、2月のヒヤシンスSの3分の1である。ヒヤシンスSの優勝馬に与えられるポイントは30ポイント。一方、全日本2歳優駿を勝って得られるポイントは10ポイントで、これはヒヤシンスS2着の12ポイントにも及ばない。Jpn1の格付けを得ているレースが、一介のオープン特別より軽視されている。そんな不満も一部にはあるようだが、これはケンタッキーダービーを主催するチャーチルダウン社の考え方―――というか、米国における2歳競馬とダービー路線の立場の違いと考えた方が良いのではないか。米国におけるその両者は、日本ほど深い関わりを持たぬのである。

BCジュヴェナイルの優勝馬が、ケンタッキーダービーで不振を極めている現実がそれを象徴している。距離は300mしか違わないのに、両方を制したのはストリートセンスただ一頭。チャーチルダウン社は2歳路線を「プレップシーズン」(準備期間)と呼んでいる。準備期間での活躍に高い評価を与えるわけにはいかない。その原則は日本においても同じということ。そういったすべてを含めて「ケンタッキーダービー」なのだと割り切るしかない。

そもそも先方の本音は「日本の馬なら誰でも良い」という程度のものではないか。なにせ「ベルモントSにエピカリスが出るかもしれない」というニュースが出回った途端、「日本調教馬がベルモントSに優勝したら100万ドルのボーナスを出す」と発表するようなお国柄である。それでも日本馬が出ることでJRAが馬券を売ってくれるなら安いもの。なんだかんだ言っても、我が国は世界ナンバーワンの馬券売上を誇る垂涎のマーケットである。

今年の全日本2歳優駿を勝ったのは、1番人気のルヴァンスレーヴ。出遅れの不利をものともせず、道中はずっと外を回りながら、力が違うとばかりに豪快に突き抜けてみせた。

Ruvan 

これまでなら、単なるダート2歳チャンピオン。それだけでも十分立派だが、この先に続く道はこれまでなかった。ジャパンダートダービーは半年以上も先。ならばとリエノテソーロのように芝路線に舵を切るケースもある。我が国は馬券売上は世界一であるのに、2歳ダートチャンピオンが3歳春に目指すべきレースがない。それはそれで不思議な気はする。

しかしルヴァンスレーヴの前には、とてつもなく大きな目標が用意された。期せずして、あのエピカリスも管理する萩原調教師の管理馬である。直前で回避を余儀なくされたベルモントSの悔しさを糧としたい。ネオユニヴァースの肌にシンボリクリスエスという配合なら、チャーチルダウンの2000mが合わぬとも思えぬ。

もちろんヒヤシンスS次の結果次第ではある。それを差し引いても、ルヴァンスレーヴの春が楽しみだ。

 

***** 2017/12/13 *****

 

 

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2017年12月12日 (火)

あかりちゃんに会いに

うどんの話が続く。御茶ノ水の聖橋を渡って湯島方面へぶらぶら歩いていると、「うどん」の3文字が目に飛び込んできた。暖簾には『竹や』とある。看板には「細打」の文字も。細かろうが太かろうが関係ない。なにせ今日はこの冬いちばんの寒さである。逃げ込むように暖簾をくぐった。

01 

14時過ぎにも関わらず店内10人以上の客がいた。人気店なのであろう。とはいえ、外観からは想像もつかないほど店内は奥に広いから、混んでいるというワケでもない。適当な席に座ってメニューを一瞥。すると「鴨南」があるではないか。鴨があれば鴨を頼むのが流儀である。だが、周囲を見渡せばカレーうどんを注文している人が多い。あまり注文しないメニューだが、たまには行ってみるか。郷に入りては郷に従うのも流儀である。

02 

スパイスの香りが際立ちながら、しっかりしたダシを感じることができるカレー。そのバランスが良い。だが正直、うどんよりライスじゃないかと思わせる。実際、周りの人は白飯を頼んでいた。

ライスに気持ちが向かってしまうのは、昨日の「黒うどん」と同じ。だが理由は多少異なる。こちらのうどんは丼の中にあって若干弱い。細打ちは悪くないのだが、細くて柔らかいがゆえにカレーの存在感に埋もれてしまうのである。そういう意味では鴨南にすればよかったか。またまたメニュー選択ミス。こうなったら、この悪い流れをどうにか止めなければなるまい。

そこで店を出て向かった先はこちら。今日はウインズじゃないですよ。

03 

神田明神ですね。『竹や』さんから歩くこと1分。近い。

厄払いを済ませたら神田明神のアイドルに会いに行く。ご存じですか? こちらには都内でも珍しい御神馬がいらっしゃるんですよ。その名も「あかり」ちゃん。あら……?

04 

寝てます。

05 

前回8月に参拝に来たときは、千葉に放牧に出ていて会えなかった。そして今回もお休み中とは、なんとも間が悪い。初詣でリベンジなるか。首尾よく会えた暁には『竹や』で鴨南だ。

 

***** 2017/12/12 *****

 

 

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2017年12月11日 (月)

白か黒か

先週土曜の話。以前から知人に勧められていた飯田橋のうどん店『雅楽』を訪れてみた。東京メトロ飯田橋駅のA2出口から2~3分と近い。お店はガラス張りで角には手打ちスペース。白を基調としたスタイリッシュな外観に期待は高まる。

Garaku 

ゆったりとしたカウンターに座りメニューを一瞥。「白ぶたの肉うどん」と「黒ぶたの肉うどん」。二種類の肉うどんがあるらしい。さて、どちらにしようか。メニューに写真は添えられてない。それが悩みを深める。そもそも「白」とか「黒」ってなんだ?

Menu 

悩んだ末にチョイスしたのは黒。たしかに黒い。その正体は甘辛く炊かれた豚肉であった。ご飯に載せたら旨そうだ。

Udon 

もちろんうどんは純白。やや固めで、形にバラつきがあるのは手打ちゆえであろう。それよりもツユに圧倒される。とにかく味が濃い。この黒さはツユの濃さゆえ。すき焼きのシメにうどんを入れた感じと言えば近いか。ともあれ、トシのせいか濃い味が苦手になる昨今である。白を選ぶべきだった―――と言いつつしっかり完食。でも次回は白にしよう。

店を出て、

Chochin 

総武線のガードをくぐり、

Gard 

小石川橋を渡って

Bridge 

見えてくるのは、

Wins 

まあ、いつものココです。店を出てから10分とかからない。これは嬉しい。馬券が当ればもっと嬉しい。

Wins2 

ちょうど中山9Rの霞ヶ浦特別の締め切り直前。ならばと枠連2枠総流しで勝負してみた。理由はもちろん黒帽だから。今日はとことん黒で勝負してやる。

―――が、結果は1着⑫クラウンディバイダ、2着①スマートエレメンツの枠連1-8で決着。あぁ、ここもやっぱ白にすべきだったかぁ。そもそも勝負事の前に「黒」を選んだ時点で失敗は見えていた。だいいち店の外観からして白かったはず。やはり次回は白にしよう。

 

***** 2017/12/11 *****

 

 

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2017年12月10日 (日)

日本人ジョッキーの逆襲

中山10Rの美浦Sは、準オープンクラスによる芝1800mの一戦。スタートから4番手で1週目のゴール板を通過したヴァンサン・シュミノー騎手のテオドールが、2コーナーでハナに立つと、そのままゴールまで粘り込んでみせた。

10r 

「またガイジンだよ」

スタンドの一角からそんな声が聞こえる。「正しくはガイコクジン」。そう言ってあげたところで発言の主は聞いちゃくれまい。ともあれ昨日の中日新聞杯をクリスチャン・デムーロ騎手が勝ち、神戸新聞杯のC.ルメール騎手から始まった外国人騎手による連続重賞勝利は12週に伸びた。今日の阪神JFでもC.ルメール騎手は1番人気、ここ中山のカペラSでもシュミノー騎手は3番人気に推されている。勝っても不思議ではない。

Kapera 

しかし、そのカペラSでシュミノー騎手はブービーに敗退。勝ったのは出走馬中ただ一頭の3歳馬・ディオスコリダーであった。3歳馬がこのレースを勝ったのは初のこと。とはいえスノードラゴンを筆頭に歴戦の古馬の猛追を凌いだその強さは本物であろう。キャリアは10戦と少ないが、今年の3月にはドバイに遠征し、海外の古馬相手にGⅠを闘ったキャリアの持ち主であることを忘れていた。

鞍上の津村明秀騎手はこれが今年の50勝目。これまでの最多勝利数が2007年に記録した38勝だから、今年の成績は突出している。年間重賞2勝も初めてのことだ。

阪神JFも日本人騎手が掲示板を独占した。GⅠでこんな成績表を見るのは、NHKマイルカップ以来7か月ぶりのこと。ラッキーライラックの手綱を取った石橋脩騎手にとっても、久しぶりのGⅠ制覇となった。彼はこれが今年の63勝目。津村騎手と同じく、石橋騎手もキャリアハイを更新し続けている。この二人、実は同じエージェントと契約中。エージェントにしてみれば、今日ほどの痛快事はあるまい。

エージェントの力量と判断が騎手の成績を左右する時代。それを「つまらない」という声に反対する理由も材料も持たぬ私だが、ルメール、デムーロ、ムーア、ボウマンらを相手に勝負して結果を残しているのは騎手自身である。今年のJRA開催は残り5日。日本人ジョッキーの逆襲を見たい。

 

***** 2017/12/10 *****

 

 

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2017年12月 9日 (土)

午夜博彩

今年の香港国際レースが明日に迫った。

エイシンヒカリやモーリスの快走はまだ記憶に新しい。ロードカナロアのスプリント連覇も衝撃だった。日本馬がマイル、ヴァーズ、カップを3連勝した2001年は逆に怖くなるほどだったし、ハクチカラ以来36年ぶりの日本馬による海外重賞制覇となった1995年のフジヤマケンザンの歓喜は今も忘れようがない。

そんな中にあって、1998年のカップを勝ったミッドナイトベットだけが、なんとなく世間から薄い印象を持たれているような気がしてならない。そうは思いませんか?

1998年の香港国際カップは、香港ダービーの勝ち馬ヨハンクライフや、安田記念でタイキシャトルの2着したオリエンタルエクスプレスなどの地元香港勢が人気を集めていた。日本のミッドナイトベットは、14頭立ての12番人気という超伏兵。5連勝で京都金杯も京都記念も制した1年前の勢いはすっかり影を潜め、日本を発つ直前のカシオペアSではブービーに敗れていたことを思えば、そんな低評価もやむを得なかったのかもしれない。

レースは五分のスタートを切ったものの、300mほど進んだあたり他馬に前をカットされ、ずるずると最後方まで下がってしまうという最悪の展開。私の隣で撮影していた「ギャロップ」誌のカメラマンは、「あぁ、こりゃ掲示板もないわ」とポツリ。彼はミッドナイトベットの複勝にドカンと突っ込んでいたのである。

それでも3コーナーで早くも河内騎手が動いて、4コーナーではなんと先頭。いくらなんでも無茶だと思うところだが、遠目に見ても手応えはそんなに悪くなさそうで、「あれ? 逆に単勝だったんじゃないですか?」と私。そのまま先頭を譲ることなく、ゴールを駆け抜けてしまったのである。

Mid1 

この勝利には3つの大きな意味があった。

まずひとつは、ミッドナイトベットが、日本国内では傑出したチャンピオンホースではなかった点である。ミッドナイトベットの勝利により、日本でGⅠを勝てなくても海外に適鞍があれば積極的に出掛けて行こうという流れが加速したように思う。

いまひとつは、勝ち時計の1分46秒9は、95年にフジヤマケンザンが記録したレコードをコンマ1秒上回るものだったこと。日本馬が叩き出したレコードタイムを日本馬が破るという構図は、すなわち日本競馬のレベルの高さの証しである。

そして最後のひとつは、社台グループにとってこれが初めての海外遠征での重賞勝利だったことだ。

ギャロップダイナのフランス遠征から苦節12年。スキーキャプテンやダンスパートナーでも為し得なかった悲願を4頭目のチャレンジでついに果たしたのである。ミッドナイトベットに帯同して現地で調教を任されていた社台ファーム山元トレセンの袴田調教主任は、12年前にもギャロップダイナと一緒に渡仏して馬と苦楽を共にした人物。表彰式での喜びようも際だっていた。ステイゴールドやハーツクライの栄光は、その1頭の能力だけで勝ち獲ったわけではない。

ちなみに、午夜博彩(ミッドナイトベット)の単勝配当は43倍。実は私はそれを150HK$買っていた。払戻金は当時のレートで10万円にもなる。

Mid2 

河内騎手感動のウイニングランを撮り続けながら、内心私は「よし、今夜はフカヒレ三昧だ!」とほくそ笑んでいた。ニヤニヤしながら払戻金を受け取り、ホテルに戻ってカメラ機材を放り投げるや、タクシーを飛ばして天下の名店『福臨門』に乗り付けたのである。

だが、店員から渡されたメニューを一瞥して、思わず妻と顔を見合わせた。

「足りないじゃん……」

さすが、天下の『福臨門本店』。フカヒレのコースは2人で10万円ごときじゃ食べられないんですね。勉強不足を痛感した香港でもあった。恥ずかしかったなぁ。

 

***** 2017/12/09 *****

 

 

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2017年12月 8日 (金)

忘年会兼祝勝会

更新遅れました。

Soba 

師走に入って酒席が続くのは仕方ない。付き合い酒は極力避けるタチの私とて、馬がらみとなれば当然断るわけにもいかぬから、大晦日まで宴席が目白押し。「年忘れ」というよりも、前夜の記憶さえあやふやな日々が続く。

今宵は社台会員の方々と八丁堀で盛り上がった。もちろん忘年会。一方で祝勝会でもある。ただし私の馬ではない。この秋、芝のマイル戦で2歳新馬勝ちを果たした方が一人。さらに芝の2000mで2歳未勝利を勝ち上がった方がもう一人。前者はロードカナロア牝馬で、後者はキンカメ牡馬である。お二方の馬主ライフの展望は明るい。となれば自然と話題は来年に向かう。これぞ「忘年会」の名に相応しい飲み方であろう。

それにしても、なぜ日本人は暮れになると「年忘れ」を理由に酒を飲むのであろうか?

「年忘れ」を辞書で引くと、「年末にその年の苦労を忘れるために開く宴会」とあるから、すなわち「年忘れ」という言葉自体が「忘年会」の意味を持つようだ。遡れば室町時代から使われていた言葉のようで、当時は年末に催した連歌の会を指したとも言われる。現代なら「紅白歌合戦」か「年忘れにっぽんの歌」といったところか。となれば自然と北島三郎さんを連想せずにいられない。有馬記念はキタサンブラックで鉄板のような気もしてきた。

ともあれ現代の「年忘れ」は親しい者同士が集まり、酒を飲んで一年の労苦を忘れ、息災を祝う会であろう。だが、悪いことをきれいサッパリ忘れるというのは存外難しく、むしろ良いことばかりを忘れてしまっているような気がする。大晦日の大井最終レースの発走を待ちながら、「今年は何もイイことがなかった……」などとひとり呟いてしまうのは、きっとそのせいではあるまいか?

Anago1 

それでも、大晦日に競馬場にいられること自体を、まずは喜ぶべきなのであろう。今宵は八丁堀の蕎麦店『すが』で珍しい穴子の刺身を堪能。穴子は穴党にとって縁起物でもある。もちろん蕎麦も美味い。ちなみに私個人の目標は「一年一勝」。それを達成できたのだから2017年はヨシとする。決して忘れてはならない物事に思いを寄せつつ酒を飲むのも、忘年会の大事な目的のひとつだと改めて思った。

 

***** 2017/12/08 *****

 

 

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2017年12月 7日 (木)

小間子の牧

千葉県の八街に「おまご」という地名がある。漢字で書くと「小間子」だが、かつては「駒郷」あるいは「公馬郷」だったという説も。ともあれ、このあたりは小田原北条氏の時代より野生の馬が多く棲息していた。

Omago_2 

やがて徳川の世になると、軍馬供給を目的に幕府直轄の牧(放牧地)として整備される。ちなみに、この周辺は江戸時代に牧が急激に開墾が進み、8番目に入植されたことから「八街」と呼ばれるようになった。

そんな八街市の一角に、「小間子馬(おまごうま)神社」という神社がひっそりと佇んでいる。

Torii 

徳川幕府が滅びた後、小間子の牧は鍋島家の所有となり、農業地帯へと開拓が進んだ。その開墾作業の先頭に立っていたのが旧鍋島藩士・中川純隆。森林を切り開くと言っても、今のように簡単な作業ではない。なにせ機械も自動車もなかった時代のこと。重要な役割を果たしたのは、当然のことながら馬である。運送から農耕といった力仕事を一手に担った馬は、開拓家族の一員であると同時に、家々の財産だったに違いない。

小間子馬神社は、大切な馬に対する保護鎮疫の思いと、地域住民の安泰を願い、中川らを初めとした地元有志によって建立された。神社の前の通りは「馬場道」と呼ばれ、かつては馬車が往来したという記録も残る。

鳥居から社殿に向かって左手にそびえる土手のような傾斜は「野馬土手」と呼ばれる。かつて野生馬を囲うために作られた人工の土手。すなわち小間子の牧の名残だ。

Dote 

こうした土手は八街市内にいくつか残されているが、この土手は各所から追い立てられて集まった馬を留め置き、ひと晩中見張りを立てていたことから、「夜番土手」とも呼ばれたらしい。夜間放牧みたいなものかと思うけど、そもそも当時は厩舎などなかった。かつては野生馬が群れを為して疾走していたであろうこの界隈から、馬の姿が消えて久しい。今では鳥居の脇に馬の石像が鎮座するのみ。昼さがりの境内には人っ子ひとりおらず、しんと静まりかえっていた。

Sekizou 

 

***** 2017/12/07 *****

 

 

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