2017年8月16日 (水)

サッポロ・クラシック

北海道からサッポロ・クラシックが届いた。ありがとうございます。

Classic 

道内にお住まいの方は意外に思うかもしれないけど、内地に住むビール好きはサッポロ・クラシックを見るとテンションが上がる。「北海道限定」のスタイルを貫き続けて30余年。今でこそ地域限定発売のビールは珍しくはないが、これほど長くその立場を維持しつづける存在は他にあるまい。この味が、この喉越しが、北の大地の雄大な自然や味覚を想起させるのである。

私の脳裏によみがえるのは、今はなき競馬場の光景だ。

北海道旭川市郊外の高台にある旭川競馬場を、私が初めて訪れたのは今から四半世紀も前のこと。平地ではなく、ばんえい開催日であった。競馬場に到着するや、競馬専門紙よりも先に売店でよく冷えたサッポロ・クラシックのロング缶を買い求め、あまりの美味さに4~5缶を立て続けに飲み干した記憶がある。

洋の東西を問わず、競馬場の飲み物の代表格といえばビールに違いあるまい。ディック・フランシスの競馬ミステリシリーズを読めば、必ず競馬場内のパブでビールを一杯やるシーンがあるだろうし、ドイツの競馬場に行けば場内の屋台で売られているソーセージと巨大なジョッキに注がれた生ビールがあなたを待っている。私は競馬場で酒を飲む機会があまりないだけに、あの日の旭川競馬場は特別だった。

Goal 

ところがその数年後に旭川を訪れると、あの売店が見当たらない。生ビールを出している店はあったが、残念ながらサッポロ・クラシックとは別の幟を掲げている。ひょっとしたら、あれは期間限定のイベントショップだったのか。あるいは、再訪問したのが9月下旬のナイター開催で、あまりの寒さに冷えたビールを買う客などいないと考えたのかもしれない。

サッポロ・クラシックを飲むこと自体はそう難しいことではなかろう。都内でも買おうと思えば買うことができる。だが私は、旭川競馬場のスタンドに座り、向こう正面の遥か彼方に聳える十勝岳連峰に沈む夕陽を眺めながらサッポロ・クラシックを飲みたかった。その要素のどれかひとつが欠けても、私の思いは完結しない。旭川競馬場が廃止となった今となっては、記憶の中であの日の体験を追うことしかできない。

Hokke

そんなことを考えながら、冷蔵庫で冷やしたサッポロ・クラシックを飲んでいる。ホッケを焼いて北海道感を演出してみた。さあ、今週末は札幌記念だ。

 

***** 2017/08/16 *****

 

 

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2017年8月15日 (火)

真夏のけんちんうどん

今日のお昼は大手町『鞍手茶屋』でけんちんうどん。ゴロッと大ぶりにカットされた大根、ニンジン、ジャガイモ、ゴボウ、豆腐といった具たちの下には、純白のうどんが熱々のけんちん汁に浸っている。七味をたっぷり振りかけて、ふーふー言いながら食べるのがだいご味。ふぅ、温まりますなぁ。

Kenchin 

―――って、今日は真夏も真夏。お盆のど真ん中ですよ! それなのに、昼メシにこんなメニューを選ぶことになろうとは思いもよらなかった。

とにかく東京は今日も雨が降っている。昨日に続いて今日も最高気温は26度に届かなかった。大井競馬場では「タイフード&かき氷フェス」が絶賛開催中だが、さすがにこの涼しさは想定外だったか。「温かいカキ氷はできないの?」と店員に冗談を言う客もいたらしい。

想定外の涼しさにカキ氷屋さんは頭を抱えているかもしれないが、少なくとも馬たちは喜んでいるに違いない。なにせサラブレッドは暑さが苦手。人間と同じく、熱中症で倒れる馬もいる。直射日光を遮るものもない真夏のパドックを、ひたすら歩き続けなければならない馬には、さすがの私も同情の念を禁じ得ない。

ところで競馬界には長らく「夏は牝馬を狙え」という格言があった。

たとえば、2006年に始まったサマースプリントシリーズでは、2011年までの6年間ですべて牝馬がチャンピオンに輝いてきた。その6年間で行われたシリーズのべ30戦の成績は、牝馬24勝に対し、牡馬はわずかに6勝。「夏の牝馬」の活躍を見事なまでに具現してきたのである。

Kanoya 

なぜ牝馬が夏に強いのか。よく言われるのが「子どもを産むから」というもの。馬に限らず男より女の方が環境の変化に対する順応力は高い。ほかにも「馬体の大きい方が、熱を放出しにくいから」という説がある。一般的に牝馬の方が牡馬より小さい。太っている方が夏バテしやすいから、体の小さな牝馬が有利になるというもの。私自身夏バテが激しいから、これにはなんとなく説得力を感じる。

ところが今年の夏は事情が異なる。7月以降に行われたJRAの牡牝混合重賞は、先週の関屋記念までで11鞍を数えるが、牝馬による優勝はいまだゼロ。メラグラーナやフィドゥーシアのように1番人気に支持されながら敗れた牝馬もいる。ただ、これをして「今年の夏が涼しいから」と軽々しく結論付けるわけにはいくまい。それは分かっている。分かっているのだが、あまりの涼しさにつられて、けんちんうどんを啜っていると、ついそんなことを考えたくなる。

実際には低温傾向なのは東日本だけで、西日本は普通に暑いらしい。その暑い小倉で今週行われるのは北九州記念。現時点で4頭の牝馬が出走を予定しており、中でもダイアナヘイローは人気を集めそうだ。果たしてこの夏最初の牝馬重賞ウイナーとなるだろうか。なにせ21世紀に入ってから、牝馬が夏(7~8月)の重賞をひとつも勝てなかったことは、一度としてない。さあ、8月も残り2週。「夏の牝馬」の格言は正念場を迎えた。

 

***** 2017/08/15 *****

 

 

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2017年8月14日 (月)

難しい馬

大井競馬場は開催の5日目。8レースが始まる頃になって俄に雨が降り出した。お盆とあって場内は混んでいる。今日は愛馬の応援のためだけにやって来たので、カメラは持ち合わせていません。

Dsc_0334 

9レースのパドック周回が始まっても雨は降り続いている。目当てのポップレーベルは馬体重プラス13キロ。多少太くも見えるが許容範囲内か。むしろ初装着のブリンカーの違和感の方が大きい。一方で岡部誠騎手のピンクの勝負服はやはり新鮮に映る。

Dsc_0336 

今日は同じサンデーレーシングの会員さんが応援に駆け付けてくれた。ソロルで小倉サマージャンプを勝ったばかり。その勝ち運をお分けいただければありがたい。レース発走直前の驟雨は、勝った2走前と同じ。ゲンもバッチリだ。

……と思ったのもつかの間、ポップレーベルが馬場入り後にとんでもない返し馬を始めたではないか。

豪快に口を割り、頸を上げてイヤイヤしながらの全力疾走。岡部騎手は立ち上がらんばかりの姿勢で馬を制御しようとしているが、馬は走るのをやめようとしない。「うぉりゃーっ!」という馬の雄叫びが聞こえた気さえする。ようやくスピードが落ちてきたのは、向こう正面の中ほどあたりだ。

やれやれ。あれじゃあレース前に体力を消耗しちゃっただろうなぁ……。

苦笑いしながら、同行の会員さんの出資馬の話に花を咲かせていると、目の前のコースを一頭の馬が猛然と駆け抜けていった。その勝負服はまごうことなき岡部騎手のピンク色である。そう、ポップレーベルは止まっていなかった。あろうことか返し馬は2周目に突入。しかも1周目より速度が増している。こうなると心配の種は疲労云々ではない。発走時刻までに止まってくれることを願うのみだ。

だから、本番のレースで最下位に敗れたことは想定の範囲内。過度に落ち込むのはやめておこう。それでも、4コーナーで走るのを完全にやめたように見えた時は、さすがに故障を疑った。なにせ上がり46秒1である。念のため断っておくけど、上がり「4ハロン」のタイムではないですよ。しんがり負けを喫するのも、デビュー32戦目にして初めてのことだ。

「この馬は難しい」

レース後、岡部騎手はそう漏らしたらしい。私は同じセリフを前走で負けた直後に、赤岡騎手の口からも聞かされている。名古屋や高知の名手を以てしても乗りこなすことができない。吉原でも、森泰斗でも、戸崎でも、ルメールでさえもダメだった。いったい、いつからそんな難しい馬になってしまったのか。

こうなったらいよいよ的場さんにお願いするしかないのかなぁ―――。

そんなことを思っていたら、なんと調教師から「御神本」の名前が出た。まさかの人選である。次開催から復帰との噂は聞いていたけど、ホントなのかしらん。万一落馬させちゃったりしたら大変。期待より心配の方が大きい。

 

***** 2017/08/14 *****

 

 

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2017年8月13日 (日)

札幌のち新潟、時々大井

南関東には盆も正月もない。今日も今日とて大井は絶賛開催中。

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このマークカードも日曜開催ではずいぶんお馴染みになりましたな。

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ただし、今日のJRAはダブル重賞である。エルムSと関屋記念。どちらも見ておきたい。むろん馬券も買う。ただ、大井は大井でレースを撮る必要がある。こうしたミッションを律儀にこなそうとすると、なかなか忙しいのである。

まずエルムSの馬券を仕入れて

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15時25分発走のエルムSをモニタで観戦。

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馬券はハズレたが、スタートから1670m地点あたりまでたっぷり楽しんで、15時40分発走の大井2レースを撮る。

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勝ったのはエイコオレクレール。しかし2着馬や着差を確認している暇はない。小走りでスタンドに戻ると関屋記念が発走するところ。ちなみに私の馬券はこちらが勝負である。

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―――が、マルターズアポジーの快速ぶりに声も出ず。打ちひしがれて床にうずくまっていると、大井3レースのファンファーレが聞こえてきた。

3レースは1200mの新馬戦。3コーナーでは離れた最後方に置かれていたはずのトーセンエターナルが、直線大外から豪快に追い込むと、2着馬に6馬身の差を付けて圧勝した。

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スタンドに戻って、関屋記念の負けを取り戻すべく新潟最終レースに対峙。ここは1番人気でも③グラミスキャッスルで仕方あるまい。デムーロさんお願いします。

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16時30分、新潟最終レースのファンファーレが鳴った。

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―――が、⑯号馬が枠内でしゃがんでしまっている。スターターも台を降りた。これは時間がかかりそう。そうこうするうち、こっち(大井)の4レースが発走時刻を迎えてしまった。後ろ髪を引かれる思いで、スタンドを出てゴール前に。

4レースも1200mの新馬戦。人気はプリサイスエンド産駒のトーシンコンタント。3代母はあのロジータである。

4r 

しかし勝ったのはオキノクィーン。スタートでハナを奪うと、そのまま後続に大差をつけて逃げ切ってしまった。祖母は1998年の東京3歳優駿牝馬の覇者・テーケーレディー。ティーケーレディーはロジータの妹だから、オキノクィーンとトーシンコンタクトと近親ということになる。そのトーシンコンタクトは3着。

スタンドに戻って、何も確認せぬままダメもとで新潟最終レースの馬券を払戻機に突っ込んでみると、思いがけず「的中」の動作をするではないか!

やった! ひょっとしたら②-③で決まったのか? だとすれば70倍は下らないぞ!

ドキドキしながら現金が出てくるのを待つと、100円玉が1枚だけコロンと出てきた。

ああ、結局⑯号馬は取り消しになっちゃったのね。デムーロさんが惨敗だったから、結果的にはラッキーだったと思うことにしよう。

 

***** 2017/08/13 *****

 

 

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2017年8月12日 (土)

善哉さんの関屋記念

近所のコンビニで夜食を物色していたら、こんな光景が飛び込んできた。

Zenya1 

ぜんや―――。

競馬関係者にとって見過ごすことのできぬ三文字に違いない。日本国内のみならず、今や世界に冠たる社台グループの創設者にして、吉田照哉、勝己、晴哉、3兄弟の父、吉田善哉。その人物を連想せずにいられないはずだ。もちろん私もその一人なので、この陳列棚を目にした以上、無視して通り過ぎることはできぬ。

明日8月13日は吉田善哉さんの命日である。

正確には今から24年前の1993年8月13日。となれば、最後に見届けたであろう重賞レースは8月9日に行われた関屋記念に違いない。勝ったのはマイスタージンガー。社台ファーム産のスリルショー産駒で、蛯名正義騎手を背に1分33秒7で逃げ切ってみせた。その2年前はニフティーニース。そのまた2年前はミスターブランディ。当時の関屋記念は吉田善哉さんのお得意様だった印象が強い。

奇しくも明日は新潟で関屋記念が行われる。出走馬に社台グループの生産馬はたくさん名を連ねているが、敢えて一頭に絞るならダノンリバティであろう。4代母のスカーレットインク(1971年生まれ)は、善哉さんが喉から手が出るほど欲しがった牝系の一頭。ノーザンテースト、そしてサンデーサイレンス。スカーレットインクから始まるボトムラインには、善哉さんの執念が凝縮している。

この一頭の牝馬から誕生した名馬の数はダイワメジャー、ダイワスカーレット、ヴァーミリアンといったGⅠ馬を手始めに十指に余る。米国血統らしく、なによりダートに強い。

同じ一族のダノンリバティも例に漏れずダートをこなすが、芝も苦にしないのが特徴。新潟は芝ダート合わせて(2,3,0,0)の鬼である。思い返せば、昨年の関屋記念2着馬。もうあと一歩、例えば善哉さんの一押しがあれば、勝ち負けに持ち込めるのではないか―――。

そんなことを考えながら、カップ麺「ぜんや」にお湯を注いで3分経つのを待った。

Zenya2 

なんでも埼玉の新座にある人気店『ぜんや』の監修商品らしい。ホタテや昆布の旨みが溶け出たスープに、生姜の風味が効いている。カップ麺にしては味にキツさがなく、なるほど美味しい。こうなるとお店を訪問してホンモノの味を食べてみたくなるもの。浦和開催のついでに立ち寄るという手はあるが、浦和の重賞は来月までない上に、そもそも水曜日が定休日なんだそうだ。残念。

 

***** 2017/08/12 *****

 

 

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2017年8月11日 (金)

海山対決の行方は

8月7日に「今日はハナの日」というネタを書いたが、ならばその翌日8月8日はさしずめ「ハハの日」か?―――と思ったら、なんと「パパの日」だと聞かされた。さすがに嘘だろうと疑ったのだけど、朝の情報番組でも「パパの日特集」を組んでいたから、本当なんだろうなと思う。

6月に「父の日」があるのにわざわざ「パパの日」が用意されるのは、父親が優遇されているというよりは、むしろその逆。父の日の地位が低下している証であろう。いずれにしても「ハハ」に比べて「パパ」は肩身が狭い。

―――なんてことを思いつつ、その日の船橋3レースを観ていたら、「パパドブロス」という馬が勝った。エスポワールシチー産駒の2歳牝馬で、近親にはメジロダーリングがいる血統。いやそれはどうでもいい。注目すべきは「パパの日」に「パパ」が勝ったという事実である。

さて、今日8月11日は「山の日」。昨年から祝日にもなった。だが、「海の日」に比べて認知度はいまひとつ。先月17日の「海の日」には浦和で「海の日賞」という特別レースが行われたのに、今日競馬が行われる大井・名古屋・園田で「山の日」にちなむレースは行われない。大井のメインは重賞の「黒潮盃」。園田では「ハーバーランド特別」。むしろ海を連想させるものばかりではないか。ここでも山の肩身は狭い。

しかし、そこで「パパの日」に「パパ」という名の馬が勝った出来事を思い出したのである。たとえ「山の日」というレースがなくても、「ヤマ」という名の馬が勝つのではないか―――。

そう思って出馬表を見れば、大井の3レースに「ヤマショウプリンス」という馬が出走する。グラスワンダー産駒の2歳牡馬。しかも同じレースには「ウミカゼ」という馬も。山の日にヤマがウミに負けるわけにはいくまい。

そんな観点で注目していた人がどれだけいたかは分からないが、結果はヤマが3着に対し、ウミはしんがり負けを喫した。できればどちらかが勝ってくれれば、話としては盛り上がったのだけど……。

Matoba 

黒潮盃は1番人気ブラウンレガートの圧勝。4馬身差の2着に食い込んだカンムルは、今年の雲取賞の勝ち馬。雲取といえば、東京都内でもっとも標高の高い山の名前である。11番人気ではあったが、「山の日」の今日に限れば狙ってみる価値はあったのかもしれない。ちなみに園田のハーバーランド特別は、山口調教師の管理馬コルヌコピアが優勝。大山騎手の手綱だった。

 

***** 2017/08/11 *****

 

 

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2017年8月10日 (木)

桂の高跳び歩の餌食

藤井聡太四段の連勝が途絶えて、「藤井ブーム」は多少の一服感を見せた感がある。代わりに残ったのは「ひふみんブーム」。あらゆるメディアを問わず加藤一二三さんの名を聞かぬ日はない。

藤井四段が達成した「29連勝」の数字を聞いて、競馬ファンならドージマファイターが残した「29連勝」の日本記録を連想したのではないか。商売柄ゲームやギャンブルを好む棋士は少なくない。森内名人の麻雀、羽生善治三冠のチェスは有名。しかし、やはり最右翼は競馬であろう。先日現役生活を終えたばかりの森信雄七段は園田競馬で冠レースを開催していたし、米長邦雄永世棋聖などは競馬専門誌のレギュラー予想を任されていた。

しかし、中でもいちばんの競馬好きの棋士といえば、やはり渡辺明竜王で異論はあるまい。なにせ竜王戦のパリ対局の前日にサンクルー競馬場へと走り、馬券をベタ買いしていたというツワモノである。フランス語は分からなくとも出走表とオッズをもとに、単勝を3回当てたというから立派なもの。「大一番の前日に大丈夫?!」と言われたそうだが、本人は「オンとオフの切り替えがすぐ出来る」と意に介さない。

競馬場で渡辺竜王の姿を見かけることもしばしば。それもGⅠ当日とは限らない。そのスタイルは正統派の競馬ファンそのもの。しっかりパドックを観察して、モニタでオッズを確認し、普通にマークカードを塗って自席と窓口を往復している。2006年12月24日も日の暮れた中山競馬場に残り、ディープインパクトの最後の雄姿を見届けていらした。

Deep 

「C級1組」とか「B級2組」とかいう階級別の戦いを勝ち上がり、頂上のタイトルを目指すという構造は競馬のそれに酷似しているし、そういうクラス分けとは別に、個々の棋士の強さを数値かした「レーティング」まで存在している。だいたいが、将棋でも競馬でもすべては「駒」次第の勝負事。勝ち負けに関わる格言の類が多いのも競馬に通じる。

「桂の高跳び歩の餌食」

非公式戦ながら藤井四段と対戦した羽生三冠は、そんな格言を無視したかのような藤井四段の桂馬の使い方に驚いたという。そういえば、最近では「ケイマ」という名の馬も活躍している。500万、1000万と連勝中のその成績は「桂の高跳び」を思わせるが、そこは競馬のこと。「歩の餌食」を恐れる必要はない。

 

***** 2017/08/10 *****

 

 

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2017年8月 9日 (水)

クレバー・ハンス

数学の話を続ける。でも馬の話でもある。

クレバー・ハンスという馬をご存じだろうか?

20世紀初め、ヨーロッパで飼われていた「ハンス」という名のトロッター種の馬が、高度な知性を持つとして有名になった。なんと計算問題を出されると、その正解の数だけ床を蹄で叩くという方法で答えたのである。たとえば「15―8=」という質問に対して、ハンスはその蹄でキッチリ7回だけ床を叩くと、ピタリとその脚を止めたというのだ。

ハンスを調教したのはフォン・オステンという数学教師。彼は馬でも教育をすれば人並みの知性を持てるという信念のもと、4年の歳月をかけてハンスの能力を開花させた。

1904年には、高名な心理学者カール・シュトゥンフ教授を委員長とする調査委員会によってハンスの能力が徹底的に調べられ、「トリックの可能性は全くない」という結論が出される。ヨーロッパの人々は彼を「クレバー(賢い)・ハンス」と呼び、一大センセーショナルを巻き起こした。

Horse 

もちろん、実際に馬が計算をしていたはずなどない。ハンスは、フォン・オステン氏や周囲の人の表情の微妙な変化を読み取り、床叩きをやめるタイミングを計っていたのだ。

動物の知能は、体重に占める脳の重さの割合で測ることが多い。人は約2%、馬は約0.1%。身近な動物と比較すると、猿や犬よりは下だが、牛や豚よりは上といったところだという。

ただ、知能には様々な側面があり、単純な脳の重さだけで評価することは難しい。クレバー・ハンスの例を持ち出すまでもなく、人の表情などを読み取る社会的知性の比較なら、おそらく猿や犬にも負けないだろう。人間の顔色を見るのは、走ることの次に馬が得意とするところかもしれない。

 

***** 2017/08/09 *****

 

 

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2017年8月 8日 (火)

オッズ

先日、数学の話を書いていて思い出したことがある。「オッズ」という言葉について「皆、使い方を間違っている」と、誰かがどこかで指摘されていらしたような気がするのである。たしか、故・森毅先生ではなかったか。でも、ひょっとしたら違う先生だったかもしれない。うろ覚えで申し訳ない。

ただ、その内容は比較的明瞭に覚えている。

オッズという言葉は「可能性」とか「賭け率」とかいう意味で使われることが多いが、その元来の意味は「勝ち目」である。さらに「勝ち目」というのは、ほんの僅かな可能性を指すのではなく、ある事象に対して勝つ確率が半分以上である状況を指して言う。例えば私が誰かとサイコロ勝負をするとして、もし「1~4の目が出たら私の勝ち」というルールが設定された場合「I have odds.」ということになる。

―――と、こうしてあらためて書き並べてみると、やはり森先生の発言だったような気がしてきた。間違っていたら、ごめんなさい。

ともあれ、現在の競馬では「オッズ」とは、ある時点での予想払戻率のことを指す。あくまでも事前の「予想」。払戻確定後にはオッズという言葉は使わない。競馬のオッズというのは、あくまでも”目安”なのである。

手元の日本中央競馬会手帳によれば、中央競馬でオッズが発表されたのは1964年のことだそうだ。これも有名な逸話だが、当時のオッズは競馬会の職員が自ら考案したという計算尺を巧みに使って計算され、連勝式(当時は枠連のみ)の上位人気15通りのオッズを競馬場内のテレビに表示していたという。

ただ、私が幼少の時分に叔父に連れて行かれた場外馬券売り場に、オッズモニタの印象はほとんどない。オールドファンなら誰もが経験されたことだろうが、その組み合わせを発売する発売窓口の数と、そこに群がる行列の長さで、だいたいのオッズを推測したものである。

かつては馬券によって窓口が違っており、例えば連勝の1-6と5-6を買う場合、それぞれ専用の窓口に並ぶ必要があった。無用な混乱を避けるため、人気になりそうな馬券の窓口ほど多く設けられており、窓口の数を見ればおおよその配当が判断できたのである。それでも、レース後に配当が発表されて「ええっ!」と驚くこともしばしばあった。

Odds 

現在では、コンピューターのおかげで時々刻々と最新のオッズが発表され、確定払戻金の発表で驚きの声が上がるなんてこともない。そういや、あの当時の場外馬券売り場の発売締切時刻は、レース発走の1時間も前だった。ギリギリまで脂汗を流して頭を悩ますことができるのも、コンピューターのおかげなんですね。

 

***** 2017/08/08*****

 

 

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2017年8月 7日 (月)

ハナの日

今日8月7日は「鼻の日」。かつてこの日に行われた競馬の全レースがハナ差の決着となったことを記念して制定された………なんてことはもちろんなくて、8(ハ)月7(ナ)日の単なる語呂合わせ。とはいえ、決めたのは日本耳鼻咽喉科学会であるから由緒は正しく、しかも今年で58回目と歴史も古い。

だが、競馬ファンが「鼻」と聞けば、着差を連想するのが普通であろう。競馬ファンなら単なる「鼻」に一喜一憂した経験を持つはず。「鼻」に泣いたことも数知れず。戸崎騎手はJRA全10場制覇の偉業を「鼻」で逃した。定規で測れば長くても10数センチ。わずか1センチの場合もある。しかし、その小さな「鼻」がしばしば天国と地獄を分かつ分水嶺となる。我々にとって「鼻」とは、小さいがゆえにあまりに大きな意味を持つ言葉だ。

その大きさが端的に現れるのはダービーをおいてほかにあるまい。「もっとも運の良い馬が勝つ」と言われるこのレース。大一番でのハナ勝ちは幸運の証であろうし、逆に正念場でのハナ負けは不運の一典型と言えよう。だが、勝者と敗者のその後の成績を比較してみると、意外にも負けた方に軍配を挙げたくなるのである。

ダービーがハナ差の決着となったのはこれまで9回。年代順に記してみると、こうなる。

Derby2000 

1940年
イエリユウ
ミナミ

1958年
ダイゴホマレ
カツラシユウホウ

1961年
ハクシヨウ
メジロオー

1974年
コーネルランサー
インターグッド

1979年
カツラノハイセイコ
リンドプルバン

1981年
カツトップエース
サンエイソロン

2000年
アグネスフライト
エアシャカール

2012年
ディープブリランテ
フェノーメノ

2016年
マカヒキ
サトノダイヤモンド

ハナの勝負を制した9頭のダービーのうち、ハクシヨウ、コーネルランサー、カツトップエースの3頭はダービーを最後に引退。アグネスフライトとディープブリランテは現役を続けたが、ついに勝つことはできなかった。カツラノハイセイコのように天皇賞を勝ったダービー馬もいるが、特に平成に入ってからは、まるで一生分の幸運を使い果たしたかのように不振を極めるケースが珍しくない。

なぜだろうか。

Derby2012 

ディープインパクト級ならいざ知らず、たいていの馬は勝つ力を持っているだけでは、レースに勝つことは実は難しい。相手関係、馬場、気象条件、枠順、そして展開。実際にレースに勝つには、それなりのチャンスに恵まれれる必要がある。それがダービーならなおさら。そこでハナ差の接戦に持ち込んだのであれば、それこそ千載一遇のチャンスだ。なんとしても、絶対に、勝たなくてはならない。ダービーでのハナ差勝ちは、まさに全身全霊、全ての力を使い切った結果の賜物であろう。それが後の代償に繋がると分かっていても、あと10センチ先に競馬界最高峰の栄光が待っていると思えば引き下がるわけにはいかない。馬の体からすればほんの小さな鼻の差である。しかしそれが馬と人の運命を左右する。そのなんと残酷なことか。

Derby2016 

ところで、もっと小さい猫の鼻に関してこんな諺がある。

「猫は土用に三日鼻暑し」

いつもは冷たいはずの猫の鼻でさえ、土用の時季は暑くなるという意味。暑い暑い土用も、今日の鼻の日を以て終わり。明日は早くも立秋。とはいえ暑さはこれからが本番だ。

 

***** 2017/08/07 *****

 

 

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