2022年9月26日 (月)

67秒後の栄冠へ

最近5年のスプリンターズSの連対馬10頭を性別で分けると、牡馬牝馬がそれぞれ5頭ずつと牝馬の健闘が目立つ。グレード制が導入される以前のスプリンターズSでも、牝馬が9勝8敗と牡馬を抑えていた。今年も牝馬・メイケイエールが人気を集めることは間違いない。

1979年などは上位6着までを牝馬が独占している。この年のスプリンターズSを勝ったのはサニーフラワー。その勝ち時計は1分12秒8とかかった。この年のスプリンターズSがダート変更になったわけではない。当時の芝コースは、ひとたび雨が降ればたちまち泥田と化した。だから、状況によってはダートの方が時計が出ることもある。1977~78年のスプリンターズS連覇の快速牝馬メイワキミコは、芝とダートのそれぞれで1200mのレコードをマークしたが、芝が1分9秒3(新潟)に対し、ダートは1分9秒2(中山)である。当時、芝とダートの時計関係はこんなもんだった。

中山の1200mで1分8秒の壁が初めて破られたのは、1990年のスプリンターズS。バンブーメモリーが1分7秒8で優勝し、それまでのレコードをコンマ3秒縮めてみせた。実はスプリンターズSはこの年からGⅠ昇格したばかり。そういう意味では、レースの格がタイムに現れやすい条件ともいえる。翌年はダイイチルビーが1分7秒6で優勝。以後、スプリンターズSでは1分7秒台の決着が珍しくなくなる。そしてついに10年前にはロードカナロアが1分6秒台での優勝を果たしたした。

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スプリンターズSで1分5秒台が叩き出され日も近いのではないか―――。

そう思ったのもつかの間、にわかに状況が変わってきた。中山の芝で時計が出なくなったのである。たとえば先日の京成杯AHの勝ちタイムは、良馬場にもかかわらず1分33秒6だった。かつてなら1分32秒台や31秒台は当たり前。2019年には1分30秒3の日本レコードも飛び出していたはず。なのに、もはやあの高速馬場の面影はない。

馬場変貌の理由のひとつに「エアレーション効果」を挙げる声を聴く。地面に穴を開けて空気を送り込み、地盤を柔らかくする作業のこと。おかげで、多少の雨で馬場が極端に悪化することはなくなった。昨日などは中間に187ミリもの降雨があったにも関わらず、土が飛んだり、芝が剥がれるというシーンが見られなかった。サニーフラワーの当時を知る者とすれば、隔世の感を禁じ得ない。

一方で、今の中山開催で行われた芝1200m戦8鞍の平均タイムは1分9秒0。最速でも開催初日に記録された1分7秒6にとどまる。極端に悪くはならないが、時計も出にくい―――。そんな中山で行われるスプリンターズSは、実は曲がり角を迎えつつあるのかもしれない。

とはいえ、6ハロン戦自体が戦後なってから行われるようになった比較的新しい距離。1946年のレコードタイムはヤスヒサの1分15秒4/5(当時は1/5秒単位の計時)だった。70年間を経て9秒以上も縮まっているが、歴史的に見れば未だ変遷の最中であってもおかしくない。今年も7秒台の決着か。それとも10年ぶりに6秒台が出るのか。勝ち馬はもちろん、勝ち時計にも注目の一戦だ。

 

 

***** 2022/9/26 *****

 

 

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2022年9月25日 (日)

山田騎手の悲劇

帰省を終えて新幹線に乗って大阪に戻ってきた。昨日とおとといの新幹線を止めた台風15号の影響を受けずに済んだことには感謝せねばなるまい。なにせ中山で騎乗予定だったミルコ・デムーロ騎手は土曜の全4鞍をキャンセル。逆に美浦から中京に向かった山田敬士騎手は、夜を徹してタクシーを飛ばしたものの、ついに中京1レースに間に合わなかった。しかも騎乗予定のフェルヴェンテが川田将雅騎手に乗り替わって勝ってしまうのだから切ない。これが阪神ならば空路という選択肢もあっただろうが、中京ではその判断も難しかろう。そう考えると京都改修に伴う開催変更も「山田騎手の悲劇」の遠因だったりする。

東京から大阪に行くにあたり新幹線を使うか、あるいは飛行機を使うか―――。競馬関係者のみならず、一般的にも広く興味のある話題だと思う。

私の自宅は川崎市にあるから新横浜駅にも羽田空港にも比較的アクセスが良いし、近ごろは航空各社の企業努力のおかげか知らんが羽田~伊丹間の航空運賃は新幹線のそれとほとんど差がなくなった。大阪に住む身となってからは、帰省のたびに「どっちで行こうかなぁ…」と、うだうだ悩んでいる。

川崎に住んでいた当時の阪神競馬場への遠征は、往路は新幹線で、帰路は飛行機というパターンが多った。次いで「行きも帰りも飛行機」が多かったように思う。JR東海の関係者には申し訳ないが「新幹線で戻った」という記憶は、少なくともない。

これは私の“せっかちさ”が、多分に影響していると推測する。つまり、無意識のうちに、主たる移動手段に乗り込む場所が近い方を選択しているのではあるまいか? たしかに自宅からは、羽田空港より新横浜駅の方がわずかながらアクセスが良いし、阪神競馬場からだと、新大阪駅よりも伊丹空港の方が若干早い。行きではさほど気にならない新大阪~梅田間のわずかな移動距離が、帰りになるととてつもなく煩わしく感じてしまうのであろう。

当然ながら京都競馬場への行き来は、毎度新幹線のお世話になる。

もう30年以上も前の話になるが、マイルチャンピオンシップを見に行った帰りの新幹線で、自分の座った席と通路を挟んだ隣の席に、岡部幸雄騎手が座っていてひっくり返った。そりゃあ、誰だって驚きますよね。自分の手を思い切り伸ばせば、そこに“名手”の「手」に触れられるほどの距離なんだから。

新幹線がするすると京都を出発すると、岡部さんはプシュッ!と小気味良い音を立てて缶ビールを開け、隣に座る2人の同行者と競馬談義に花を咲かせていた。会話の内容までは分からないが「シャダイソフィアはね……」というフレーズが出てきたことは覚えている。しかし、それにも増して極度の緊張状態を強いられた私は、東京までの3時間弱を固まったまま過ごさざるを得なかった。

何せ隣に座るのは、たった今行われたばかりのマイルチャンピオンシップで、シンコウラブリイの背中にいた人物なのである。私は、ついさっきその姿をスタンドから遠目に眺めてきたばかりなのだ。

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しかし、当の岡部さんは2本目の缶ビールを開け、ますますゴキゲンになってゆく。何度か若い女性が―――競馬ファンと考えるのが自然だろう―――やってきて、岡部氏に話し掛けていった。岡部さんも競馬場では絶対に見ることのできないような笑顔でそれに応えている。あれから四半世紀あまりを経た今なら、私も緊張などせずに騎手に話しかけられるだろうか?

いやあ、無理だなぁ。ともあれ、あんなハプニングに遭遇できるならば新幹線も捨てたものではない。今は新大阪に近いところに住んでいるので、行きも帰りも新幹線のお世話になってます。

 

 

***** 2022/9/25 *****

 

 

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2022年9月24日 (土)

牝馬のオールカマー

明日の産経賞オールカマーの前日発売では、一昨年の3冠牝馬デアリングタクトが人気を集めている。さらに2012年の3冠牝馬ジェンティルドンナの娘・ジェラルディーナも人気の一角。仮に牝馬2頭のワンツーフィニッシュという結果になれば、昨年のウインマリリン・ウインキートスに続いて2年連続の出来事。オールカマー史上では4回目となる。

1995年のオールカマーで人気を集めたのはヒシアマゾンだった。その年の3月に米GⅠ・サンタアナハンデに出走すべく渡米したが、慣れぬ環境に馬体を減らし、水を飲むことさえしない。挙句の果てに、雨で路盤がむき出しになった馬場での調教が祟って左前脚を捻挫。レースを目前にしながら無念の帰国となった。その後7月の高松宮杯に出走するも、まるで精彩を欠いた走りで5着。牝馬は一度体調を崩すと立て直すのが難しい。一時は引退説も流れた。それでもファンは、オールカマーに挑むヒシアマゾンを1番人気に押し上げたのである。

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実はこの年のオールカマーは台風12号のために平日の月曜日に行われた。にも関わらず、46,888人もの観衆が中山につめかけたのは、女王復活の瞬間をひと目見たいと願うファンが、それだけ多かったからにほかならない。前日の雨が残って馬場は稍重。アイビーシチーが先導するスローペースに業を煮やしたヒシアマゾンは、3コーナー付近で早くも先頭に立ってしまう。どよめくスタンドの大観衆。ヒシアマゾンが先頭のまま馬群が直線に向くと、満を持してスパートしたアイリッシュダンスが猛然と襲い掛かってきた。

その差は2馬身、1馬身、半馬身。しかしそこからがヒシアマゾンの真骨頂だ。マチカネアレグロを競り落としたニュージーランドトロフィー4歳Sでも、チョウカイキャロルとのマッチレースを制したエリザベス女王杯でも、馬体を併せての競り合いで彼女は負けたことがない。それが女王の女王たる所以。ラスト1000mのラップタイムは、計ったように11.8-11.8-11.8-11.8-11.4である。最後の1ハロンが少しだけ速いのはアイリッシュダンスが競りかけた分であろう。この日もクビ以上にその差を詰められることはなかった。湧き上がる大歓声。女王復活の瞬間である。

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ヒシアマゾンが名牝であることは論を待たないが、アイリッシュダンスにしても牡馬相手にふたつの重賞を勝っただけでなく、ハーツクライという不世出の名馬の母でもある。そういう意味において、この年のオールカマーは名勝負だった。

あれから27年を経た今年のオールカマーも台風翌日の開催という点では同じ。「牝馬のオールカマー」の再現はあるか。デアリングタクトもジェラルディーナも、もちろん昨年の雪辱がかかるウインキートスも、誉れ高き2頭の名牝に続きたい。

 

 

***** 2022/9/24 *****

 

 

 

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2022年9月23日 (金)

叶わぬ対面

帰省中でござる。

園田の重賞・チャレンジカップを観ることができないのは痛恨事だが、独り身高齢の父親を持つ身としては、お彼岸に帰省しないわけにもいかない。すっかりコロナ禍以前に戻った満席の新幹線に揺られて墓参りのため埼玉へと向かった。

とはいえこちらにも考えはある。実は今日の大井3レースに私の所有馬が首尾良く出走することになった。勝ち負けには遠く及ばないにしても、私はこの愛馬を直接この眼で見たことがない。購入を決めたあとに、大阪行きが決まったせいである。昨年6月に新馬デビューを果たした愛馬は、これまで14戦1勝。初勝利後に苦戦が続いている現状からすれば、私が東京に戻るまで現役生活を続けることは難しいかもしれない。今回の出走は神が与え給うた千載一遇のチャンスであろう。レース発走は15時半。墓参りのあとにゆっくり昼めしを食べても十分間に合う。

ところが、である。墓参りの前に大雨が降り出した。おかげでスケジュールが1時間押しになったが、まだ時間には余裕がある。ようやく雨が止んで、無事に墓参りが済むと、今度は父親が買い物に行きたいと言い出した。たまの帰省で父親のささやかな希望を無下にもできぬ。それでまた1時間。こうなったら昼めしはサッと済ませて、さっさと大井に向かおう。そしたら弟家族から電話が入った。なんと近くにいるので一緒にメシでも食おうという。いくら血も涙もない私はでも、この流れで「競馬に行きたい」とはとても言い出せぬ。私と愛馬の初対面は今日も叶わなかった。

ちなみに愛馬のレース結果は9番人気で9着。10頭立てである。大外枠を引けば「距離のロス」を敗因に上げ、今回のように最内枠を引けば「包まれて周りを気にした」と言う調教師の言い訳も、そろそろ気の毒に思えてきた。結局は馬の能力の問題。それでも先々クラスが下がれば勝ち負けには加われると思う。そこが地方競馬の良いところ。ただ、そこまで待つのも簡単ではないのですよ。だからこそひと目でいいから早く会いたい。

 

 

***** 2022/9/23 *****

 

 

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2022年9月22日 (木)

鉄砲の季節

今週末は神戸新聞杯。菊花賞トライアルの注目点はダービー以来の休み明けとなる馬たちの「夏の成長」であろう。青葉賞勝ち馬でダービー5着のプラダリアを筆頭に、ビーアストニッシド、アスクワイルドモアといった休み明けの重賞ウイナーたちが、いったいどんな夏を過ごしたのか。レース結果よりも気になると言っても過言ではない。

神戸新聞杯に限らず9月の馬券検討は、夏のローカルを勝ち上がってきたグループと、春のビッグレースを戦い抜いて夏を休養に充てていたグループとの比較が大きなウェイトを占める。先週のセントライト記念は夏の小倉で勝ち上がったガイアフォースが優勝。ダービー以来の休み明けにもかかわらず、春の実績で1番人気に推されたアスクビクターモアをねじ伏せた。やはり久しぶりの競馬はどこか勝手が違う。

休養明けでレースに出走することを「鉄砲」と呼ぶ。鉄砲で遠くの的、すなわち遠くのレースを狙うという説が有力だ。鉄砲を撃つ音になぞらえて、休み明けのレースで好走することを「ポン駆けする」「ポン駆けがきく」などと言うことも。ともあれ9月は鉄砲の季節。先週日曜の中京12レースに至っては出走16頭全馬が休み明けときた。こうなると力の比較は困難を極める。それでも1番人気⇒2番人気で決着するのだから、馬券を買うファンの慧眼は素晴らしい。

ポン駆けと聞いて、重賞3勝のシンゲンを思い出す向きも多いのではないか。3か月以上の休み明けで(4,1,1,1)の好成績。調教師の言葉によれば、休み明けは落ち着いてレースに臨める一方で、2戦目となると、レースが近づくにつれてソワソワと落ち着きを失くしてしまうタイプだったという。

だが、シンゲンのようなケースは少数派であろう。普通に考えれば、休んだ直後に100%の力を発揮するのは難しい。今週のオールカマーには昨年暮れのチャレンジカップ以来9か月のソーヴァリアントが出走を予定している。いやそれならバビットは昨年の中山記念以来だから1年7か月ぶりだ。いやいやクリスタルブラックに至っては一昨年の皐月賞以来2年5か月ぶりじゃないか。

Sovalient

実はオールカマーは休み明けが好走することが多いレースである。オールカマーの歴史はポン駆けの歴史と言っても過言ではない。

主役は宝塚記念以来の実績馬であることがほとんど。昨年のウインマリリンをはじめ、ゴールドアクターやサクラローレルのように天皇賞(春)以来で勝つ馬も珍しくない。1989年のオールカマーを勝ったオグリキャップは、前年の有馬記念以来9か月ぶりだったし、前出のシンゲンが2010年のオールカマーを勝った時などは前年の天皇賞(秋)以来の11か月ぶりである。JRA平地重賞優勝の休み明け記録は、今年の鳴尾記念でヴェルトライゼンデが記録した中495日だが、それまではスズパレードが保持していた中461日が最長だった。それが記録されたレースも1988年のオールカマー。休み明けの一戦に臨む面々にとっては心強いエピソードであろう。

 

 

***** 2022/9/22 *****

 

 

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2022年9月21日 (水)

血統表の名前

明日は大井で南関東2歳重賞のトップを切ってゴールドジュニアが行われる。昨年は珍名馬・ママママカロニが勝って話題となり、一昨年の勝ち馬・アランバローズは暮れの全日本2歳優駿で2歳チャンピオンとなり、翌年の東京ダービーをも制した。重賞に格上げされてから3年目の今年、私はラドリオに注目している。

新馬勝ちの時計が平凡で前走は大敗。父・キンシャサノキセキ、母・ハヤブサユウサン、母の父・スペシャルウィークなら、さして目を引く血統でもなかろう。多くの予想紙で無印なのも当然だが、私が注目する理由は血統表に刻まれた3代母「タイキビューティ―」の名前、そこにある。

タイキビューティーは1992年の英国ダービー馬ドクターデヴィアスの2世代目産駒として、タイキレーシングクラブの96年度2歳馬(※当時表記)募集リストに名を連ねた。同期のドクターデヴィアス産駒にはファンタジーS勝ち馬のロンドンブリッジや小倉3歳Sのタケイチケントウがいる。だが彼ら彼女らが3歳の早い時期から活躍を見せていたのとは対象的に、タイキビューティーは4歳春を過ぎてもデビューの目途すら立たず、ひたすら牧場で放牧の日々を過ごしていた。

出資額は僅かとはいえ、彼女を「タイキビューティー」と名付けたのはこの私である。4歳の6月になっても育成牧場にすら移れない状況に業を煮やして、はるばる北海道の大樹ファームまで様子を見に行った。デキの悪い娘に名付け親としてそれなりの責任を感じていたのかもしれない。だが、目の前に引かれてきた我が出資馬を一瞥して、デビューは無理だと悟った。550キロにもなろうかという巨大な馬体を支えきれず、四肢の腱は悲鳴を上げていたのである。

Taiki

案の定、タイキビューティーはデビューを果たせなかった。おそらく繁殖に上がるのも無理であろう。あの日の姿がおそらく今生の別れ。そう決め込んでいたから、数年後にシアトルビューティという牝馬がJRAで勝ち上り、その母名欄に「タイキビューティー」という名前を見つけた時は、驚きのあまり思わず飛びあがった。

なんと、タイキビューティーは浦河のガーベラパークスタッドで繁殖入りを果たしていたのである。てっきり死んだものと思っていた私にしてみれば、まさに青天の霹靂。半弟のタイキヘラクレスがダービーグランプリを勝ったおかげもあろう。タイキビューティーの産駒は10頭が馬名登録され、うち3頭がJRAで8勝を挙げたのだから立派と言うほかない。前出のシアトルビューティも3勝を稼いだのち、同牧場で繁殖入り。シンザン記念3着、ファルコンS3着のシゲルノコギリザメを出している。

Kettou

歴舟川の河川敷に広がる広大な放牧地で、両前に包帯を巻いたタイキビューティーを見たあの日から24年。よもやタイキビューティーの牝系ラインが継続することになろうとは、夢にも思わなかった。冒頭のラドリオの母・ハヤブサユウサンはシアトルビューティの3番子である。たとえ自分ひとりの所有馬ではないとはいえ、自ら命名した馬の名が載る血統表というのは、若干の責任感を伴いつつも気分の悪いものではない。ラドリオには息の長い活躍を期待しよう。

 

 

***** 2022/9/21 *****

 

 

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2022年9月20日 (火)

お城のうまや

台風14号が過ぎ去って大阪は台風一過の青空が広がった。吹き返しの風が入って、ひと晩で夏から秋に様変わり。朝、自宅を出るときに思わず「寒っ!」と口にしたのは決して大袈裟ではない。

「昨日は8月の暑さでしたが今日は10月の寒さです」

テレビのニュースキャスターはそう言った。そういえば今週はお彼岸。なんだかんだで暦通りに季節は動いている。

それでは次のニュース。

「滋賀県彦根市の彦根城で19日、重要文化財の馬屋の門扉が外れ、倒れているのが見つかりました。市の危機管理課は、強風の影響で外れたものとみて修復を急ぐ方針です」

ニュースキャスターはさして興味も無さそうにニュースを読み上げたが、私はその映像に食い入った。なにせ先日訪れたばかりである。

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柿葺(こけらぶき)の木造平屋建て。元禄時代の建築だというから300~350年は経っている。お城の内堀近くにあり、L字型の屋内には21頭分の馬房が区切られていた。城の敷地内に厩舎が残っているのは、全国でも彦根城だけ。そういうこともあって1963年に重要文化財に指定されたという。

たかだか1週間前のことなのにあの日は気温35度の酷暑日だった。吹き出る汗を拭きながら馬屋を覗くと、そこには馬が!

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―――と思ったら模型でした。ここら辺が日本ぽいところ。私なら本物の馬を繋ぎ留めておく。馬が居てこその馬屋ではないか。

海外に目を向ければ古城に残る厩舎はさほど珍しくない。有名なところではシャンティイ場。フランスダービーが行われるシャンティイ競馬場の向こう正面に佇む美しい城は、ルネサンス期に建てられた歴史的建造物であり、隣接する「大厩舎」は今も「馬の博物館」として人気の観光スポットになっている。

博物館に入場すると薄暗い馬房にエリアに足を踏み入れることになる。左右に広がる馬房。高い天井は、かつての大厩舎の風情そのままだ。驚くことに馬の匂いまで漂ってくる……と思ってよくよく見れば、それぞれの馬房に本物の馬が繋がれているではないか。そこにはサラブレッドのような軽種からブルトンのような重種まで様々な品種の馬を―――生きた馬を―――身近に見ることができる。それだけでない。この歴史的建造物が今なお厩舎として使われていることも実感できよう。

彦根城にそこまで求めるのは野暮だと分かっている。あるいは文化財で馬を飼うこと自体が認められていないのかもしれない。しかし、仮にそうであるとするならばルールがおかしいということになる。そもそも彦根城の馬屋はもともと非公開だった。それを常設展示にしたことは相当高いハードルだったに違いないが、英断であることは確かであろう。ならばもう一歩。ひこにゃんの力でなんとかならないだろうか。

 

 

***** 2022/9/20 *****

 

 

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2022年9月19日 (月)

過去に例のない

過去に例のない台風14号が関西に近づきつつある。

JRは午後から計画運休。阪急うめだ本店や阪神百貨店などの商業施設も午後から軒並み臨時休業となった。4年前に関西空港を孤立・水没させた台風21号の教訓から、関西の皆さんは台風に備える意識が強い。にもかかわらず阪急うめだ本店からほど近いウインズ梅田が通常営業なのは助かった。中京に行くこともできないから、今日はここで一日を過ごすとしよう。そんなわけでB館6階のエクセルエリアに初めて足を踏み入れてみた。

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案の定ガラガラ。3日間連続開催の3日目でこの天気とくれば仕方あるまい。革張りのソファー席にはモニター、ドリンクホルダー、コンセント(×2)が設置されている。このモニターは単なる映像装置ではなく、パソコンに繋がっており、インターネットやJRA-VANを自由に閲覧することができる。それゆえマウスも接続されているが、見たところキーボードはない。ただ申し出れば貸してくれるようだから、人によってはここで仕事ができてしまうのではあるまいか。

入場時に簡単なアンケートに答えたら御礼にとサインペンをもらった。いつもこのサービスがあるのかは分からない。ザ・サインペンと言うべきデザインのサインペンに小さくターフィーの絵柄が印刷されている。2500円の入場料のうち100円くらいは取り戻した。さあ、あと2400円だ。

午前中は中山と中京の全レースにべっとり手を出すも的中はゼロ。流れを変えるべと、昼メシはB館を出て信号を渡ってすぐの「釜たけうどん」に向かった。名物「ちく玉天ぶっかけ」をすすりながら、モノ珍しさからJRA-VANに頼ってしまった午前のスタイルを反省する。午後はJRA-VANを封印して、いつものスイングを取り戻そう。

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そんなわけで、午後は目の前のモニターは雨雲レーダーを表示するだけとして、いつも通りスポーツ紙とパドック映像に集中。そのおかげもあって10レースを終えた時点で負けを数百円にまで戻すことに成功した。さあ、決戦は中京11レース・JRAアニバーサリーステークスだ!

―――と意気込んだまでは良かったが、このレースが難解至極。もともと実力伯仲の3勝クラスであることに加えてハンデ戦。しかもパドックの途中からとてつもない大雨が降り出して、瞬く間にダートコースには水が浮いた。むろん台風の影響であろうが、エアコンの聞いた室内で革張りのソファに座って観ているとどうも現実感が湧いてこない。

レースは「重」発表のまま行われたが、JRAのサイトから映像をご覧いただければわかる通り不良中の不良である。もはや考えたところで当たる気などしない。しかも「雨がひど過ぎる」ことを理由に発送時刻が遅れる事態となった。こんなこと過去に例がない。実況アナウンサーの「まずは全馬が無事にゴールすることを願うばかりです」という障害レースばりの一言で始まったレースは、バシャバシャという音を立てて進み、⑨フラーレンが逃げ切って⑯テイエムマグマが2着に粘り込んだ。

……で私が買った馬券がこちら。

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なんと29.4倍を一点で的中!。はっはっは。こんなことも過去に例がない。

この「JRAアニバーサリーS」はJRAの創立記念日にちなんで行われるレース。だがその創立記念日というのは今日ではない。実は9月16日。種を明かせば、私がたまたまそれを知っていただけのこと。しかしここまで露骨なサイン馬券が当たるとはね。今日は過去に例がない出来事だらけ。台風14号の強さもそのひとつに加えておこう。結果的にエクセルの入場料と新聞代を回収したところで台風の一日が終わった。

 

 

***** 2022/9/19 *****

 

 

 

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2022年9月18日 (日)

女を取るか、男を取るか

昨日からのJRAは明日の敬老の日を含めた3日間開催。しかも、3場を2場ずつ組み合わせた3日間ではなく、中山・中京の3日間ぶっ通し。今日は中京でローズSが行われた。明日は中山でセントライト記念。果たして心身および財布は明日まで持つのか? 気に病む人もゼロではあるまい。

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このパターンの3日間開催が初めて行われたのは2012年のこと。この年から秋の札幌開催がなくなり、その開催日の一部が中山と阪神に割り振られた格好だ。

ローズSの施行日程が繰り上がった1996年以降、中山のセントライト記念と阪神のローズSはずっと同じ日に実施されてきた。それが3日間開催のおかげで別日での施行が可能となったのである。カレンダーの都合で毎年実施されるわけではないが、これは大きな出来事だった。

なぜこれが“大きな出来事”なのか?

セントライト記念とローズSは、夏を越した3歳馬が久しぶりの実戦を迎える大事なレース。どちらもGⅡで、その先にあるGⅠを占う上で重要な意味を持つ前哨戦だ。だが、それぞれ牡馬と牝馬で路線が異なる。一流ジョッキーともなれば、春のクラシックを湧かせた牡馬と牝馬をそれぞれ一頭ずつ抱えているもの。その2頭が同じ日の中山と阪神に分かれて出走するとなっては、どちらか一頭の騎乗を諦めて他人に手綱を委ねなくてはならなくなる。牡馬と牝馬の3歳路線では春から秋にかけていくつもの重賞レースが行われるが、同じ日に東西で牡馬と牝馬の3歳重賞が行われるのは、年間を通じて実はこの日だけだった。

2011年は後藤浩輝騎手がローズSのエリンコートに乗るため、セントライト記念のベルシャザールに乗れなかったし、2010は柴田善臣騎手もラジオNIKKEI賞を勝ったアロマカフェに乗れなかった。さらにこの年は、蛯名正義騎手も3連勝中のヤマニンエルブへの騎乗を諦めてローズSでの騎乗を選んでいる。アパパネの始動戦とあればそれも仕方あるまい。

騎手にしてみれば、春シーズンが終わった時点で、秋になったらどれくらい変わるのかと再会を楽しみにしているもの。それが叶わないというのは切ないだけでなく、他人に手綱を取られるという不安もつきまとう。実際、2008年のセントライト記念でマイネルチャールズに騎乗した松岡正海騎手は、同日のローズSに出走したブラックエンブレムの手綱を岩田康誠騎手に譲る格好となってしまった。ローズSでブラックエンブレムは3着に敗れたが、秋華賞でもそのまま岩田騎手とのコンビで出走。見事優勝を果たしている。

以前から競馬サークル内外からこうした声は挙がっていたのだが、ローズSは日曜の競馬中継を受け持つ関西テレビ放送の冠レースであることから日曜以外の実施は難しく、セントライト記念にしても、売上面などでハンデのある土曜の実施には難色が示されてきた。 

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むろん乗り替わりによるプラス面や、そこに潜むドラマ性を否定するつもりはまったくない。ただ、調教師やオーナー、あるいは馬券を買うファンにしても、成長具合を確かめるには春と同じ騎手が乗った方が良いと考えるはず。成長著しい3歳馬の、秋の緒戦くらいは無用な乗り替わりがない方が嬉しい。

 

 

***** 2022/9/18 *****

 

 

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2022年9月17日 (土)

シルバーを狙え

巷では今日からシルバーウィークが始まるそうだ。

数年に一度、カレンダーの巡り合わせで9月の下旬に5連休が登場することがある。私はその5連休が出現した年のみを「シルバーウィーク」と呼ぶのかと思い込んでいたのだが、どうやら違うらしい。その証拠にテレビも新聞もためらわずこの言葉を使っている。同じ週に2つの祝日が含まれていればシルバーなのだろうか。それとも、秋分の日を含む週は無条件にシルバーなのだろうか。よくわからんが、ともあれシルバーウィークは今日が初日。台風が迫りくるあいにくの陽気ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

「シルバーウィーク」は最近生まれた言葉のように聞こえるかもしれない。だが、実は半世紀以上も前に「ゴールデンウィーク」と同時に生まれた用語。1948年の祝日法施行で、天皇誕生日、憲法記念日、こどもの日、文化の日が制定され、春秋のこの時期に話題作をぶつけるようになった映画界が最初に使い始めた。本来は「映画を見るのに最高の1週間」という意味である。結果、5月のゴールデンウィークはすっかり定着したが、11月のシルバーウィークはまったくと言って良いほど普及しなかった。

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シルバーよりゴールドが浸透するのは馬の名前も同じ。現在「ゴールド(ゴールデン)」を含む馬は49頭がJRAに登録されている一方で、「シルバー(シルヴァー)」は19頭でしかない。ゴールドアクター、ゴールドシップ、ゴールドアリュール、ステイゴールド、ゴールドドリーム、ゴールドシチーなど「ゴールド」にはGⅠホースも多数出ているが、「シルバー」はシルヴァコクピットとセンゴクシルバーがGⅢを勝った程度。地方に目を移せば2冠牝馬・シルバーアクトや高崎ダービー馬・アイコマシルバーなどもいるにはいるが、両者の差は歴然としている。

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2位に与えられるメダルやお年寄りをイメージする「シルバー」という言葉を、勝負事に使いたくないという気持ちは理解できなくもない。それでも「シルバー」と名前が付いた数少ない馬たちは、両親の名に「シルバ―」が付くか、あるいは単に芦毛であるか。そのどちらかに大別される。今日の中山3レースを勝ったシルバーレイズ(牡2)は前者の好例であろう。父シルバーステート、母シルバージェニーだから両親ともにシルバーホース。5代血統表には7頭もの「シルバー」が登場するのだから、シルバーウィークの初日に勝っても不思議はない。気付いたときはすでにレースはスタートしていた。私はいつもあとになって大事なことに気が付く。

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後者の「単に芦毛」の代表格はセンゴクシルバー。1993年から94年にかけて重賞戦線で活躍した同馬が獲得したタイトルはダイヤモンドSのひとつしかない。その一方で重賞での2着は4度を数えた。やはり「シルバー」の名がいけなかったのか。それでも芦毛を生かして誘導馬になれたのだから、サラブレッドの人生としては悪くない。古き良き時代の名ステイヤーは、いぶし銀の名脇役でもあった。

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ちなみに明日の中山2レースには2頭のシルバーが出走する。①シルバープリペット(杉原誠人)に⑥シルバーニース(戸崎圭太)。しかも人気を集めているのはゴールドアクター産駒のゴールドバランサー。シルバーvsゴールドの舞台は整った。今日の反省を生かして、シルバー2頭でドンと勝負に出よう。

 

 

***** 2022/9/17 *****

 

 

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