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2023年11月30日 (木)

2023流行語大賞

11月も今日で終了。カレンダーが師走に変われば歳の瀬感もいや増す。いやあ、今年もあっと言う間でしたなぁ。明日には今年の流行語大賞が発表される。

恥ずかしながら流行語大賞の候補にノミネートされるまで「10円パン」といものを知らなかった。大阪にいたせいかと思ったら、道頓堀でも流行っているらしい。ということは私の関心が低いだけ。これが「10円今川焼き」とか「10円うどん」なら知ってたに違いないのだけど。

ちなみに個人的な大賞予想はこんな感じ。

本命 アレ(A.R.E.)
対抗 憧れるのを辞めましょう
単穴 ペッパーミル

流行語大賞はとにかく野球関連が強い。WBCの侍ジャパンメンバーだけでも、山田哲人「トリプルスリー」(2015年)、鈴木誠也「神ってる」(2016年)、大谷翔平「リアル二刀流」(2021年)、村上宗隆「村神様」(2022年)の4選手が受賞経験者だった。ヌートバー選手が受賞してチーム5人目の受賞に期待したい思いがないわけではないが、一方でこの手の選考では下半期有利の傾向は否めない。

というわけで本命は年間を通して使われて、なおかつ今月上旬に流行のピークを迎えた「アレ」で決まりでしょう。岡田彰布監督の語録という観点では「お~ん」もセットでの受賞となればなお嬉しいわな。お~ん、おんおん。

ちなみに競馬界に限った新語・流行語大賞を選考してみた結果はご覧の通り。あくまでも筆者の個人的チョイスである点をご承知いただきたい。

大賞 お嬢さん
次点 ジョッキーカメラ
話題賞 2秒の静寂

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ジョッキーカメラの導入は今年を象徴する革新的出来事だった。本家の新語・流行語大賞が世相を映す鏡であることを踏まえれば、それを選ばぬわけにはいかぬだろう。そこから派生した「お嬢さん」は、「ジョッキーカメラ」と一括りにしたくもなるが、単独で大賞とすることでリバティアイランドへの敬意を表したい。

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―――なんて、どうでもいい話を書き連ねたが、こうして振り返ると川田将雅騎手の発信力というのが際立った一年だったとも言える。リーディング奪還が濃厚なC.ルメール騎手も、そこでは大きく水を空けられている感が否めない。それでも日本語という言葉の壁を踏まえれば、ルメール騎手も頑張っている方だ。ジャパンカップを勝ったあとの「(イクイノックスは)ポニーみたい」と言うコメントには「特別賞」を贈呈しよう。

 

 

***** 2023/11/30 *****

 

 

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2023年11月29日 (水)

いい肉の日

毎月29日は「ニクの日」だが、今日11月29日は年に一度の「いいニク」の日。それで神田小川町に最近オープンしたという肉そばのお店「豊はる」に足を運んでみた。

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「肉そば」の文字が躍る看板はまだ新しい。今年オープンしたばかりだそうだ。それも飯田橋の名店「豊しま」から独立した店主が切り盛りすると聞けば、巨大な豚バラ煮込みがどどーんと乗った名物「厚肉そば」を思い浮かべる方も多かろう。しかし、こちらでの人気メニューは意外にも「パイカ」だという。パイカとは豚のバラ軟骨のことだ。

こちらがパイカうどん。

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パイカそのものの味わいよりも、軟骨部分の食感がなんとも官能的で印象に残る。ツユに溶け出した脂の旨味も残し難い。紅ショウガを添えたのは、脂っぽさを意識したのかもしれないが、そこまでくどいとは感じなかった。

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もちろん「豊しま」名物の肉そばも、しっかりと受け継いでいる。

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なんと素晴らしいビジュアルであろうか。これぞ肉の日に食べるべき一杯。ツユに豚バラの煮汁をちょこっと加えて隠し味にしているあたりが泣かせる。パイカも美味いが、やはりこの肉を食わずして帰れない。かくしてまた太って帰ることになる。

ちなみにこちらでは11月限定でこんなメニューも出している。

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こちらは牛のバラ肉をふんだんに使った「牛バラきしめん」。こちらの店では、うどん、そば、きしめんの3種類から麺を選ぶことができる。ただ、1回の来店で3杯食べるとおかしな客だと思われるから注意しよう。お腹だってキツい。ちなみに筆者はちゃんと朝・昼・晩の3回に分けて食べた。ありがたいことに、こちらは朝6時30分から営業してくれている。「朝から厚肉そば」という挑戦的な選択もアリだ。

それにしても、関西の方はメニュー表記がおかしいやろ!と突っ込まれるだろうか。「肉」と書かれたメニューはすべて豚肉を指し、牛肉を使ったメニューには逆に「肉」の文字がない。関西で「肉」と言えば例外なく牛肉を指す。関西名物「551」の「豚まん」を決して「肉まん」と呼んだりはしないし、関東では「肉玉」と呼ぶお好み焼きだって関西では「豚玉」だ。そんな関西生活に別れを告げてはや一か月。豚肉を食べて東京に戻って来たことを実感するとは思わなかった。

 

 

***** 2023/11/29 *****

 

 

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2023年11月28日 (火)

市場メシ

朝から豊洲市場を訪れた。

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移転からはや5年。行こう行こうと思っていながら、なんとなく先延ばしになり、そのうちコロナ禍に見舞われ、やがて私が大阪に行くことになった。なんと5年越しの初訪問である。そしたら築地時代にお世話になったカレー屋さんを発見。筆者が築地の近くで夜の仕事をしていた当時、よく朝カレーを食べに来たのがこちらの「中栄」だ。

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築地で営業していた当時、狭い店内は市場で働く関係者でいつも満員だった。しかしカレーであれば提供は早い。食べる方もサッと食べて席を立つ。そもそも「市場メシ」とはそういうものであろう。牛丼「吉野家」の1号店が築地市場内に誕生したのも、そういう事情と無関係ではない。

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こちらの名物はこの「合がけカレー」。インドカレー(辛口)、ビーフカレー(甘口)、ハヤシライスのうち二品をチョイスして味わうことができる。今日はビーフ&ハヤシにチャーシュートッピングを注文。ほどなく運ばれてきたこのひと皿を見て欲しい。右が牛すね肉の島が浮かぶハヤシの海で、左はビーフカレーの海。キャベツの山からふたつの海を分かつように貫くチャーシューの橋は、さながらレインボーブリッジといったところか。これらをスプーンひとつでぐちゃぐちゃに混ぜて食べるのが築地流。豊洲に移転したとはいえこの流儀は変わるまい。

こちらのお店は、まだ魚河岸が日本橋にあった明治時代から魚屋をやっていたと聞く。カレー屋に転身したのは大正元年だというから、その歴史の深さは半端ではない。名物の「合がけ」は職人のわがままなリクエストから誕生したそうだ。私のあとに入ってきた客も、「キャベツにもルーかけて」とか、「玉子スープの熱くないところ」などと好き勝手な注文をする。そんな注文にひとつひとつ応えるのも築地流。豊洲に場所は移っても築地の魂は消えてない。

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日が暮れてから豊洲から船に乗って日本橋へと向かう。東京都の肝入りで先月から始まった舟運だという。隅田川を上り、永代橋をくぐったところで日本橋川へと左折。頭上を走る首都高速の橋脚の間を縫うように進むと、やがて日本橋の船着き場が見えてきた。

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わずか20分の船旅。だが地下鉄よりはぜんぜん楽しい。そういえば昔は大井競馬開催日に両国から大井競馬場まで競馬専用船が運行されていた。その名も「トゥインクル号」。モノレール大井競馬場前駅の真下、京浜運河沿いにある船着き場が使われなくなって久しい。東京都はこちらの舟運の復活にも力を注いでくれないだろうか。

 

 

***** 2023/11/28 *****

 

 

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2023年11月27日 (月)

5億のインパクト

昨日のジャパンカップを勝って1着賞金5億円を獲得したイクイノックスの総獲得賞金が22億円を突破。アーモンドアイを抜いて史上1位になったことがニュースで話題になっている。

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レースの賞金額が増え続けている現状では獲得賞金記録が更新されることにいちいち驚く必要はない。アーモンドアイが勝った当時のJCの1着賞金は3億円。テイエムオペラオーは2億5千万円。シンボリルドルフの当時は8千万円に満たなかった。

それを分かっていても総獲得賞金の話題を取り上げるのは、もはやイクイノックスの強さを表現する適当な尺度が見つからないからであろう。「GⅠレース6連勝」も、「JCではディープインパクトに並ぶ単勝配当130円」も、イクイノックスの強さの前では陳腐にさえ聞こえる。敢えて探せば「騎手も調教師もその強さに泣くほどの強さ」か。ならばウイニングランの写真を見る方が早い。なんでも言葉で表現できると思ったら大間違いだ。

獲得賞金を過去の名馬と比較することはナンセンスだが、同一年の獲得賞金を競うことは意味のないことではない。例えば種牡馬ランキング。イクイノックスの父キタサンブラックは先週までランキング7位だったのが、ハーツクライとモーリスを抜き去り一気に5位にまで浮上した。1着賞金5億円の衝撃は大き凄い。

その破壊力は2着以下においても威力を発揮した。初めてJCに挑んだドゥラメンテ産駒は、リバティアイランド、スターズオンアース、タイトルホルダーがいずれも掲示板を確保。その3頭が稼いだ入着賞金3億8千万は、ダービーの1着賞金をゆうに超える。先週終了時点時点で種牡馬ランキング2位のドゥラメンテは、3億6千万あまりの差でトップのロードカナロアを追っていたのだが、ジャパンカップの2着、3着、5着賞金を加算してついに首位に立った。

ドゥラメンテ産駒はタイトルホルダーに代表される現5歳世代がファーストクロップ。4世代だけでのリーディングを争う不利をはねのけてチャンピオン種牡馬になれるかどうか。できることなら取らせてあげたい。なにせ来年の2歳が早くもラストクロップ。すでに他界したドゥラメンテにチャンスはそう残されていない。

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こうなると注目を集めるのはJCと同じ「5億円レース」の有馬記念であろう。ドゥラメンテ産駒からはタイトルホルダーの出走が濃厚。一方、パンサラッサが引退を表明したロードカナロア産駒からはホウオウエミーズが出走するようだ。

この状況だけ見ればドゥラメンテが有利にも思えるが、タイトルホルダーが有馬記念で勝つことはもちろん、掲示板に載るという保証だっていっさいないのである。リーディング争いは一筋縄ではいかないもの。なにせ現時点の差はわずか700万でしかない。重賞だけではなく、特別戦や平場戦の勝ち負けが勝敗を分ける展開になれば、12月28日の競馬が俄然熱くなる。注目しよう。

 

 

***** 2023/11/27 *****

 

 

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2023年11月26日 (日)

30年ぶりのジャパンカップ

今年の東京開催最終日は気温6度。朝からの冷たい雨が上がり切らない東京競馬場ではあったが、そこで繰り広げられた大一番は今年いちばんの熱さだった。入場者数8万5千人は今年のJRAで最多。それだけ多くの人が見たいのだから、事前予約が必要な座席が確保できないのも仕方ない。それで久しぶりにGⅠレースを立ち見した。

ジャパンカップを4コーナーで観たのは1993年以来のこと。勝ったレガシーワールドよりもゴール板を誤認して2着に敗れたコタシャーンの印象の方が強い。当時は凱旋門勝馬の来日として注目を集めたアーバンシーはガリレオやシーザスターズの母として競馬史にその名を残す名牝になっているし、ドイツから参戦していたプラティニもヴェラアズールの血統表の3代前に登場する歴史上の存在だ。30年の歳月を感じずにはいられない。

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4コーナーでの観戦にはワケもある。今日の目当てはパンサラッサ。縁あって昨年秋頃から応援するようになった。ただ、ドバイワールドカップの直後に繋靱帯炎を発症。今日は8か月ぶりの復帰戦であると同時に引退レースになる可能性もある。パンサラッサの走りを瞼に焼き付けるためには、どこで観るのがベストだろうか。考え抜いた結論がこの4コーナーだった。

1000mの通過タイムが57秒6。故障明けでもその逃げ脚に翳りは見えない。4コーナーでも後続との差は3秒。遠くスタンドから地鳴りのようなどよめきが聞こえた。しかし坂を上がったところで、急にペースダウン。昨年の天皇賞秋のような脚は残っていない。次々と後続に交わされて結果12着に敗れた。

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パンサラッサの矢作調教師は「悔いはない」と納得のコメントを残した。私も久しぶりに「外連味のない逃げ」を観た気がする。すなわち小細工なしの逃げ。ハイペースの逃げを打って、3番手追走の馬が後続を4馬身も突き放して圧勝したら、もはやその勝ち馬を褒める以外ない。イクイノックスの強さを証明し、8万5千人が「凄いものを観た」と思えるレースを演出したのは、間違いなくパンサラッサである。イクイノックスが主演男優賞なら、助演男優賞はパンサラッサで間違いなかろう。

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パンサラッサの進退について矢作師は明言を避けた。現役続行の可能性もなくはない。それでも、ここでひとまずパンサラッサに感謝をしておこう。レジェンドテイオー、ツインターボ、セイウンスカイ、シルポート、そしてパンサラッサ。彼らの強靭な逃げがなければ、数多の名勝負は実現しなかったかもしれない。30年前のJCを逃げたのはメジロパーマー。彼の逃げも小細工無しだった。

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***** 2023/11/26 *****

 

 

 

 

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2023年11月25日 (土)

競馬場のネコ

競馬場までネコを見に出かけた。

京都4レースに出走のニャンチンノンを見よう、というオチではない。出かけたのはもちろん東京競馬場。こちらで誘導馬や乗馬として活躍してきたネコパンチ(父ニューイングランド)が、今月末を以て退厩することが発表された。ファンへの最後のお披露目として、東京競馬場の展示パドックに放牧されるというのである。

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猫と言えば大井競馬場である。なにせゴール板前の超最前列で観戦するのは、大物馬主ではなく、決勝審判員でもベテランカメラマンでもない。それはなんと猫なのだから。

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バルダッサーレが勝った2016年の東京ダービーでも猫が主役を奪うシーンがあった。スタンドの声援を浴びながらのウイニングラン。しかし先にファンの前に現れたのは、なんと1匹の猫である。凱旋する人馬を横目にしながら悠然と馬場を横切る猫に、ファンの目は釘付けになった。「かわいいっ!」と叫ぶ女性客。天下のダービー馬でさえも脇役に追いやる猫の力は侮れない。

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しかし、ウイニングランの最中ならまだしも、レース中に急に猫が走路に飛び出してきたらたへんだ。2013年の雲取賞ではゴールに向かう馬群の前に猫が飛び出してきたことがある。この時はことなきを得たが、たとえ事故に繋がらなくとも競走にわずかでも影響が出たら一大事。だから警備のオジサンたちは猫を見つけると、けっこうムキになって追い払おうとする。

でも、猫の方は「我関せず」という風に悠々とゴール板の下でくつろいるのだから警備の方も切なかろう。仕方ない。そもそも猫というのはそういうものだ。

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東京競馬場の乗馬苑に放牧されたネコパンチも「我関せず」という風情で青草を齧っていた。ファンの間では12番人気で逃げ切った2012年の日経賞が語り草だが、私はその前年の2月27日の中山9レース、潮来特別のレースぶりが脳裏に焼き付いている。

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この日に行われた東京マラソンでタレントの猫ひろしさんが2時間37分という快走劇を演じたばかり。それにあやかって単勝を買ったら珍しく当たった。惜しむらくは2番人気だったこと。翌年の日経賞の当日でも猫ひろしさんがマラソンを走っていれば、私も単勝万馬券を当てることができたかもしれない。

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隣の馬房ではシロニイがジッとネコパンチの様子をうかがっていた。「先週は自分が注目を集めたのになんでアイツが?」とでも言いたげな目をしているのがかわいらしい。ネコパンチも17歳。今後は北海道で余生を過ごすという。長生きしてほしいですね。お疲れ様でしたと声をかけたい。

 

 

***** 2023/11/25 *****

 

 

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2023年11月24日 (金)

JCが来れば思い出す

ジャパンカップが明後日に迫った。セントレジャーを勝ったハーツクライ産駒・コンティニュアスが回避したため、外国馬はフランスから参戦する6歳セン馬のイレジンただ1頭。寂しいが、それだけイクイノックスの強さが海外に知れ渡っていることの現れであろう。

このイレジンに関して気になることがある。アルファベットでの馬名表記は Iresine。これが日本語で「イレシネ」と呼ぶアメリカ原産の観葉植物の綴りと、まったく同じなのだ。Manduro産駒の Iresine の馬名由来は知らないが、もし同じ観葉植物から取ったのだとすると、ちょいとややこしい。

むかしバンブーゲネシスという馬がいた。安田記念やスプリンターズSを勝ったバンブーメモリーの半弟で、第1回のマーチステークスの覇者でもある。

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この馬をアルファベットで表記すると Bamboo Genesis である。これをなぜ「バンブー・ゲネシス」と読むのか。当時はそれが不思議でしょうがなかった。バンブーは英語読みでゲネシスはラテン語読み。統一感がない。英語らしく「バンブージェネシス」としたところで9文字に収まるのに。

凱旋門賞では「ヘリシオ」と表記されていた Helissio が1996年のJC来日時には「エリシオ」となり、翌年のJCを勝った Pilsudski が原語読みの「ピウスツキ」にも、英語読みの「ピルスドゥスキー」からもかけ離れた「ピルサドスキー」で落ち着いたりと、この手の問題はとにかく根が深い。とくに種牡馬として輸入する場合には、いったんシンジケートを組んでしまうと、あとから馬名表記を変更することは難しいそうだ。

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しかし一方では、日本人の耳に馴染む響きというものもある。原音主義を貫き通せば良いというものではない。それが問題をややこしくする。

1970年のリーディングサイアーガーサント(Guersant)は、フランスでデビューし、仏2000ギニーを勝ったれっきとしたフランスの馬。仏語で名付けられたのなら、「ガーサント」ではなく「ギュルサン」であろう。

しかしフランスで生まれた馬の馬名はフランス式に発音すれば良いかというと、必ずしもそうと言い切れない部分がある。そも競馬に国境はない。フランスで生まれ、アラブの王族に買われて名付けられた馬が、アメリカで走り、ドイツにトレードされることもあろう。その間、馬名の綴りは変わらなくても、呼び方は変わっている可能性がある。実際、フランスで走ったガーサントは、のちに英国に移籍し、その後日本にやってきた。もし彼がフランスから日本に直接輸出されていれば、シャダイターキンやニットエイトの父は「ギュルサン」だった可能性もある。

 

 

***** 2023/11/24 *****

 

 

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2023年11月23日 (木)

乗り替わりを狙え

今日も今日とて東京ドーム。いい加減飽きてきた。しかも今日は試合ですらない。「ジャイアンツファンフェスタ2023」というイベントだが、それでも場内は試合並みのお客さんで超満員。皆さん、精が出ますな。

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私は競馬に精を出す。先週はここから府中まで移動して東スポ杯を観た。今日は浦和で浦和記念。調べると水道橋16時半の電車に乗れば間に合いそうだ。イベントは昼過ぎに始まっている。よもや4時間もかかるまい。そう考えた私はファンフェスを舐めていた。あろうことか、終了は18時を過ぎるという。マジか? 6時間も?

いったんドームを抜け出して、「水道橋麺通団」の肉うどんを食べながら考えた。

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浦和は諦めるしかあるまい。しかし気になる馬がいるのである。5歳牡馬のディクテオン。母は2013年JBCレディスクラシックを勝ったメーデイアであるが、気になる理由はそこではない。

もともとディクテオンにはライアン・ムーアが騎乗するはずだった。しかし、先週日曜の落馬負傷の影響で本田正重騎手に乗り替わることが発表されている。ムーア騎手からの乗り替わりといえば先週のマイルチャンピオンシップが記憶に新しい。代役の藤岡康太騎手が5番人気ナミュールの手綱を取って大仕事を成し遂げたばかり。ディクテオンも5番人気。これを買わずして何を買うのか。

とりあえず馬券だけでも仕入れておこう。こんなとき東京ドームは便利だ。なにせすぐ隣にオフト後楽園という素晴らしい施設がある。

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ディクテオンはスタートから離れた最後方。しかし2周目の2コーナーあたりから仕掛け上がると、向こう正面から一気に前を行く11頭を交わして4角では先頭に立った。直線でも勢いは衰えることなく2馬身半差の完勝。圧巻のマクリは1996年の浦和記念を勝ったホクトベガを彷彿とさせる。

3歳時のディクテオンは未勝利を勝ち上がることができず、名古屋への移籍を余儀なくされた。そこでの2勝が圧勝。今日の浦和記念はそれ以来14戦ぶりの地方である。ひょっとしたら地方のダートが合うのかもしれない。お母さんのメーデイアも地方のダートでは6戦無敗の無双だった。

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ともあれ馬券はめでたく的中。2着が3番人気というのもマイルチャンピオンシップも同じだからよくできている。浦和には行けなかったとはいえ、ヨシとすべきであろう。ジャパンカップのヴェラアズールもムーア騎手からホリー・ドイル騎手に乗り替わるらしい。もし5番人気になるようなことがあれば、黙って買いだ。

 

 

***** 2023/11/23 *****

 

 

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2023年11月22日 (水)

白毛の神秘

先週日曜の東京競馬場ではラーメンばかりたべていたわけではない。競馬博物館で行われた講演会「白毛の遺伝子と毛色のメカニズム」に参加してきた。

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特別展「白毛図鑑 純白のサラブレッド」に伴うイベントのひとつ。アンミカさんはテレビ番組で「白って200色あんねん」と発言して話題になったが、馬の毛色に関しても「白い馬」には白毛以外に芦毛や粕毛、佐目毛などいろいろある。それぞれ白くなるメカニズムは異なっており、そのメカニズムを白毛の遺伝子研究の第一人者である戸崎晃明氏が解説してくれるという。

少なくとも私が競馬を始めた1979年には「白毛」のサラブレッドは存在していなかった。なぜなら「白毛」がサラブレッドの毛色として認められたのが1980年のことだから。その前年に生まれたハクタイユーをめぐって、この年ひと悶着起きている。

父が黒鹿毛のロングエース、母が栗毛のホマレブルという血統。しかしその両親から生まれた牡馬ハクタイユーは生まれた時から真っ白だった。

もし仮に芦毛なら生まれた時は黒っぽく、年齢を重ねるにしたがって白くなっていくはず。そもそも「芦毛馬の法則」によって両親のどちらかが芦毛でなければ芦毛の産駒は生まれないことは、当時から証明されていた。生物界にしばしば見られる「アルビノ」の疑いもあったが、それなら体内の色素がまったく存在しないはず。しかしハクタイユーの瞳は黒く、アルビノの可能性もない。

日本軽種馬登録協会が海外の事例を調査したところ同じ事例が確認されたため、「例外的な扱い」としてようやく白毛が認められるようになった。これが1980年のことだ。

すると1983年に今度はメスの白毛馬カミノホワイトが誕生。この2頭を種牡馬と繁殖牝馬にして交配させてみようという動きが現れるのは自然の成り行きであろう。しかし、この試みは上手く行かなかった。

それでもハクタイユーとカミノホワイトは個別に繁殖生活を送り続け、1991年、ついにハクタイユーの産駒に白毛の産駒が誕生。その2年後にはカミノホワイトが白毛馬を出産する。これにより白毛が遺伝することが確認された。これが無ければ現在のような多くの白毛馬が活躍する競馬を我々が観ることは無かったに違いない。もちろんソダシも生まれていなかった。

もう一頭、現在の白毛馬の躍進に大きく寄与した貢献馬がいる。それまで白毛馬の活躍馬はおらず、勝利を挙げるのがやっとという状況だった。その毛色は病気によるものだとか、体質的に弱いので競走馬には向かないと言われる始末。もしそれが本当ならわざわざ白毛馬を繁殖させる意味もない。そんな誤った観念を打ち破ったのが白毛のアイドル・ユキチャンである。ミモザ賞で白毛馬初の芝勝利を挙げると、JRAを含めた全国の強豪がそろう関東オークスでも見事優勝。白毛馬初の重賞ウイナーとなった。

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そのかわいらしいネーミングと武豊騎手との相乗効果で瞬く間に人気が爆発。ジャパンダートダービーで白毛馬初のGⅠ制覇を目論んで大井競馬場に向かったが、直前に蕁麻疹を発症して無念の競走除外となった。モノレール浜松町駅のアナウンスで「ユキチャンは競走除外です」というアナウンスが流れて、多くのファンからため息が漏れたのを覚えている。駅で競走除外を知らせるアナウンスを流したのは空前絶後であろう。

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そのユキチャンの弟にあたるシロニイが、今週日曜まで競馬博物館前のパドックで放牧展示されている。展示時間の30分前からパドックに人だかりができていた。白毛馬には人を惹きつける何かがある。白毛の勉強をしたあとに、間近で見る白毛馬は普段にも増して神秘的だった。

 

 

***** 2023/11/22 *****

 

 

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2023年11月21日 (火)

ふたりのレジェンド

エスコンフィールドで吹雪にさらされた昨日から一転、今宵は「高校野球女子選抜 vs イチロー選抜 KOBE CHIBEN」を観んがため東京ドームにやって来ている。

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女子高校野球選抜強化プログラムの一環として始まったイチローさんとの真剣勝負も今年ではや3年目。ハイライトは早くもやって来た。試合前のイチローさんの打撃練習。先月50歳を迎えたばかりとは思えない打球を連発するその姿を、多くの観客は食い入るように見入った。レジェンドはいくつになってもレジェンドであることに変わりはない。

そんな野球界のレジェンドと競馬界のレジェンド・武豊騎手は、1996年にラジオ番組での共演を機に親交を深めるようになった。武騎手が夏の小倉で騎乗する時に福岡ドームまで足を運んだり、巨人との日本シリーズを観戦するため、栗東から神戸まで足を運んだこともある。イチローさんはイチローさんで、有馬記念で武騎手の騎乗馬の馬券を買うこともあったらしい。武豊騎手は常に人気を背負うので「せっかく当たっても配当が安い」と周囲を笑わせていた。

武騎手はイチローの現役最終戦となった2019年3月のアスレチックス vs マリナーズ戦を生観戦している。自身のオフィシャルサイトには「あの場にいられたこと、それ自体がボクの一生の宝物になりました」とその心境を綴っている。昨年8月にはJRA通算4368勝目をマーク。イチローさんの日米通算安打数4367を抜いた。

今日の試合でイチローさんは投手として9回116球を投げ切り完封勝利。打っては4打数2安打。途中、足が痙攣するアクシデントがありながら、それでも最後まで決して手を抜かないその姿に、東京ドームに詰めかけた観衆も最後まで喝采を送り続けた。この日のために相当な準備をしてきたこともファンはよく知っている。決して安くはないお金を払って大勢のお客さんがやって来るのは、50歳を迎えてなお本気で野球に取り組むレジェンドの姿がそこにあるからだ。

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一方で、54歳の武騎手は未だ天皇賞当日の負傷が癒え切らない。エリザベス女王杯での復帰予定がマイルチャンピオンシップに延び、さらにジャパンカップへと延びたかと思ったら、そのジャパンCでの騎乗を断念すると昨日発表があった。現時点では実戦復帰は早くても12月9日とされている。

「想像以上に治るスピードが遅い」

オフィシャルサイトでそう説明した武騎手は、今日のイチローさんのプレーぶりをご覧になっただろうか。武豊不在のジャパンカップは画竜点睛を欠く。ありったけの敬意と、そしてわずかばかりの不安を抱きつつ、ファンとしてはレジェンドの回復を静かに待つしかない。

 

 

***** 2023/11/21 *****

 

 

 

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2023年11月20日 (月)

夏から冬へ

小春日和の東京を離れて、気温5度の新千歳空港に降り立った。

目的は牧場ではない。道営ホッカイドウ競馬もすでに全日程を終えている。新千歳空港からの快速エアポートを降りたのは北広島駅。そう、北広島といえば今をときめくココしかあるまい。

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この春新たに誕生した北海道日本ハムファイターズの本拠地「エスコンフィールドHOKKAIDO」ですな。北海道の新たなシンボルとして話題を集めた新球場を、今さらながら訪問するのである。フィールドでは今年1年間の激務に耐えた天然芝を絶賛養生中であった。

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ところで日本ハムファイターズと競馬との関係は、意外に濃いことをご存知だろうか。

例えば、日ハムの新人選手はJRA競馬学校の生徒と交流することになっている。最近はコロナ禍で中止されているかもしれないが、競馬学校と日本ハムの鎌ケ谷練習場が近いことから企画され、記念すべき初回には、当時日ハムのルーキーだった中田翔選手と競馬学校の生徒だった三浦皇成騎手という大物ふたりの対面が実現した。

このたび日ハムのプロフェッサーに就任した栗山英樹さんは、ことあるごとに社台スタリオンステーションを訪れている。今年のWBC直前にもキタサンブラックと対面していた。ちなみにディープインパクトには大谷翔平投手の姿が重なっていたそうで「雰囲気があるし、自分の役割を分かっている感じ」とコメントしている。ちなみにオルフェーヴルは中田翔選手に通ずるとのこと。なるほど、異議なし(笑)

そんな大谷翔平投手は、日ハム時代に浦河を訪れて乗馬に挑戦している。本人が浦河町の応援大使を務める縁もあって訪問が実現。スポーツ紙面上ではシンザン像の前で記念写真に応じていた。そして今年、大谷選手はア・リーグMVP、本塁打王の2冠に加え、出塁率と長打率でア・リーグトップの数字をマーク。これにWBCのMVPを加えればシンザンと同じ「5冠」達成だ。いや、ほかの項目や受賞を加えれば「10冠」以上は確実であろう。

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エスコンフィールド訪問を終えて球場の外に出たら、時ならぬ猛吹雪に思わず怯んだ。11月の北海道をナメてはいけない。夏日の那覇で暑い暑いと文句を言ってたのはわずか1週間前のことではないか。今年は秋を実感する暇も無かった。

 

 

***** 2023/11/20 *****

 

 

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2023年11月19日 (日)

東京ラーメンステークス(後半戦)

競馬はマイルチャンピオンシップだが、夜は野球アジアチャンピオンシップが行われる東京ドームに行かねばならない。それでも日中のスケジュールは空いたので、後半戦に突入している「東京ラーメンステークス」に参戦した。

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前半戦のテーマは「食べログ3.5以上の名店」ということだったが、後半戦は「全国10競馬場がある地域のご当地ラーメン」が出店するという。東京に暮らす身としてはその方が興味深い。さっそく行列に並んだのは新潟から出店の「麺家太威(DAI)」。

貝のダシが香るスープは旨味たっぷり。トッピングの黒バラ海苔がさらに磯の香りを醸し出す。塩にも笹川流れの藻塩を使う念の入れよう。まるで海を食べているような一杯でゴキゲンなスタートを切った。

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続いて京都の「第一旭」。京都のお店はいつ訪れても行列の絶えない人気店だが、ここではは5分程待つだけで手にすることができる。歴史と伝統の豚骨醤油。それが小麦の風味とモチモチ食感が特徴の中太ストレート麺に合わないはずがない。丼を覆わんばかりに大量に投入された九条ネギは、京都の本店と同じようにシャキシャキの食感と僅かばかりのねっとり感を楽しめる。

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ラストは福島は二本松市の「若武者」。白虎隊と同じように戊辰戦争で命を失った二本松少年隊への想いを込めた店名だという。提供しているのは地元産にこだわった鶏白湯ラーメン。川俣シャモ、会津地鶏、伊達鶏を炊き上げた濃厚なスープに会津産小麦の全粒粉を使用した麺を合わせる徹底ぶりだ。JRA福島開催も今日が今年の最終日。これを食べないわけはいかぬだろう。濃厚なスープや香り豊かな麺もさることながら、煮卵とチャーシューが出色の美味さだった。

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ここで満腹終了。ちなみに東京競馬場のお膝元からは「鬼そば藤谷」が出店していた。ご存じお笑いタレントのHEY!たくちゃんが本気経営するラーメン店だが、なんとご本人が狭い屋台の中で麺を茹でていたのでビックリ。しかしその割に行列は長くはない。並んでいる客も本人がいるとは気付いていないようだ。ここは競馬場だからそれも仕方あるまい。ヘイタクよりダイタクである。まあ、ダイタクというお笑いコンビもいますけどね。

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ちなみにいちばん暇そうにしていたのはビールの売店だった。気の毒なので一杯買うと、スタッフの方は「ぜんぜん売れない……」と諦め顔。先月のバーベキュー料理フェスの時とは雲泥の差だという。

「普段は飲んだあとにラーメン食べるでしょう? だからラーメン食べちゃったら、もう飲まないんですよね」

なるほどね。説得力はある。

 

 

***** 2023/11/19 *****

 

 

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2023年11月18日 (土)

東京、スポーツハシゴ旅

今日は野球とバスケの日。まずは東京ドームで野球を見る。アジアチャンピオンシップの日本 vs オーストラリア。続いてアリーナ立川立飛でバスケBリーグの立川ダイス vs トライフープ岡山。水道橋から立川は近いとは言えない。直線距離でも30キロをゆうに超える。ハードな一日を覚悟せねばなるまい。

この春に行われた野球のWBCが「GⅠ」だとすれば、今日のアジアチャンピオンシップの位置付けは「GⅡ」といったあたりか。24歳以下または入団3年目以内という参加資格があるのもそのせい。しかし、来年開催のプレミア12や26年のWBCといったGⅠへと繋がっていく大会であることは間違いない。今回の侍ジャパンから次回WBCの中心選手を見い出そう。GⅡにはGⅡの役割というものがある。

7回表に日本が3点を加えて8-0となったところで席を立って水道橋駅へと向かう。土曜日とあって場外馬券場の客も少なくない。総武線の電車からそんなウインズ後楽園の黄色いビルを眺めるうち、ふと思い付いた。

「このまま府中に行けば、ちょうどメインの発走なんじゃないか?」

さっそくダイヤを検索。時計は14時半を指している。新宿から京王線に乗り、東府中で乗り換えるのご最速ルートだが、その到着時刻は15時17分と出た。これならギリ発走に間に合う。立川へは府中本町から南武線で快速に乗れば10分とかからない。よし決まった。

馬券を買っている暇はなさそうだ。だが、それでも東京スポーツ杯2歳Sは見ておかなければならぬレースであろう。出走馬からGⅠホースを輩出し続けること15年。私が大阪に行ってる間にシレっとGⅡに格上げされたが、それも当然の成り行きに違いない。東京競馬場の正門をくぐり、スタンドに立ったときには既にスターターが歩き始めていた。

息つく間もなくゲートが開くと、テリオスルルが後続を離して逃げる。2番手にシュバルツクーゲル、3番手はシュトラウス。そのまま直線に向くと、シュトラウスが前の2頭を交わして先頭。そのまま2着シュバルツクーゲルに1馬身半差をつけて完勝した。

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ここまでを見届けて西門に向けて歩き出す。滞在時間わずかに5分。府中本町駅15時44分発の立川行き快速に乗らなければならない。

府中本町駅までの専用通路を歩きながら、たったいま観たばかりのレースを思い起こした。1000m通過59秒1のペースは速い。シュトラウスが折り合えたのはそのおかげであろう。モレイラ騎手でさえも、ペースに恵まれたことを隠そうとしなかった。しかし今後走るレースがすべてハイペースとなる保証などもちろんない。加えてモレイラ騎手の短期免許は12月半ばで切れる。勝ったはいいが、今後のレース選びには苦労しそうだ。

それでも惚れ惚れするような馬体の持ち主である。強い競馬だったことも間違いない。GⅠを展望できる能力の持ち主であることは証明された。GⅡにはGⅡの役割というものがある。

 

 

***** 2023/11/18 *****

 

 

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2023年11月17日 (金)

浦島太郎

プロ野球は、いよいよストーブリーグが本格化。大物選手の移籍やFA争奪戦の陰に隠れるように、2選手の移籍が報じされている。楽天を戦力外になった炭谷捕手は西武に移籍。さらに巨人を戦力外となった鍵谷投手は日本ハムが獲得するらしい。いずれも古巣への復帰という点で興味が沸いた。

なにせ私も古巣に出戻ったばかり。昨夜は大井へ挨拶に行ったが、業務用出入り口に巨大なゲートが設置され、スタンド上階にあったはずの店がない。あるいは同じ店なのにメニューがガラリと変わってしまっている。そもそも関係者も知らぬ顔ばかり。その変貌ぶりにすっかり浦島太郎の気分を味わった。

「古巣復帰」とか「出戻り」という言葉が馬に使われることもある。典型的なケースはJRAと地方競馬間の移籍であろう。大井でデビューしたボンネビルレコードはJRAの堀井厩舎に移籍したのちに帝王賞を勝ち、8歳の春に古巣の大井に戻った。逆にファストフォースはJRAで未勝利を勝ち上がることができず、地方に移籍して一定の実績を残したのち、JRAに戻って高松宮記念を制している。

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パターンとしては後者、すなわち「JRA⇒地方⇒JRA」の方が多いと思われるが、再転入後にJRAのGⅠを勝った例となるとファストフォース以外に聞いたことがない。交流GⅠを含めてもサマーウインドやゴルトブリッツ、ダンシングプリンスくらいではないか。ただし、近年になって活躍馬は増えている印象はある。

未勝利を勝ち上がれずに地方に移籍した馬のJRA再転入自体が、それほど簡単ではない。20年ほど前までは「地方で1勝もしくは5走」と、とてもハードルとは呼べぬルールだった。しかし今では「3歳は2勝、4歳は3勝」と、しっかりハードルの体を為している。

仮に3歳9月の地方転出なら4か月の間に2勝しなければならない。しかも地方入厩馬のレベルも最近は上がっている。デビューが遅れた強い馬がいるかもしれない。同じ境遇の元JRA所属馬同士の争いになる可能性だってある。古巣復帰後の活躍馬が増えているのは、再転入のハードルが高まったことと無関係ではなかろう。JRA再転入は一定程度の強さの証明でもある。

とはいえ、再転入のハードルをクリアするために馬に無理を強いてしまっては元も子もない。逆にポンポンと2つ勝てば、その環境が馬にとって良かったのではないかと考えてみることも必要になってくる。馬の居場所を馬本位で考えてあげることは、人間に課された大きな仕事のひとつ。多くの場合「古巣復帰」は好意的に扱われるが、それが当事者にとって幸せかどうかはまた別の話だ。

 

 

***** 2023/11/17 *****

 

 

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2023年11月16日 (木)

侮れぬ市役所

三鷹に出向いたついでに、とあるうどん店を訪問した。

ずっと前にテレビ番組で紹介されていた一軒。しかし、いかんせん大阪から訪れるには遠過ぎる。そのうち東京競馬場のついでに行ければよいか。そう思っていたら、仕事場が東京に戻り、しかも今日は三鷹に行ってこいという。これはラッキー。それで念願叶って食べた一杯は……う〜ん、正直そこまでではなかったですね。

いや、美味しいうどんであることは間違いない。とくに鶏天は美味しかった。ポイントは麺。讃岐を謳っているが、いかんせんコシがない。もちろんコシが無い讃岐もあるだろうから、お店にすれば文句を言われる筋合いでもなかろう。非は勝手に期待を膨らませ過ぎたこちら側にある。

ヘコみながら目的地へ向かったが約束の時間にはまだ早い。しかし周囲を見渡しても武蔵野市役所があるだけ。でもたしかココの最上階にはカフェがあったはず。そこで時間を潰すとしよう。エレベータで8階に上がって、食堂の前を通り過ぎる。するとこんな幟が目に飛び込んできた。

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武蔵野地粉うどん!

ついさっき一杯食べたことなどすっかり忘れて食堂に飛び込んだ。

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注文を受けてから茹でる全粒粉入りの麺は美しく、香り、コシとも申し分ない。合わせるのは豚肉の脂がたっぷり浮いた濃い目のツユ。これがやたらと旨い。さすが武蔵野うどんの本場。聞けば小麦は地元産のみを使っているという。たかが役所の食堂と侮るなかれ。眼下に広がる武蔵野の景色を眺めながら食べれば美味しさもいや増す。

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「武蔵野」の範囲は地理的には荒川と多摩川に挟まれたいわゆる武蔵野台地を指すが、広辞苑によれば「埼玉県川越以南、東京都府中までの間に拡がる地域」とされているし、国木田独歩によれば現在の川崎市の一部も武蔵野に含まれる。とにかく広い。広いから「武蔵野」と名のつくものは、銀行、大学、JRの路線も含めて数知れぬが、中でも「武蔵野市」はその中心地と言っても過言ではなかろう。ならば最初から食すべきは武蔵野うどんだった。

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競馬ファンにとって「武蔵野」と言えば、先週行われたばかりの武蔵野ステークスをおいてほかにあるまい。かつて2100mで実施されていた当時の活躍馬には、キソジゴールドやデュークグランプリといった武蔵の国の野武士を思わせるタイプが多かった。のど越しがツルリと軽快な純白の讃岐に対して、薄黒くて太い麺をワシワシ食わせる武蔵野うどんのイメージもそれに近いものがある。

 

 

***** 2023/11/16 *****

 

 

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2023年11月15日 (水)

幕張であの蕎麦を

コロナ禍と自身の大阪行きのおかげで、新規開店の報を聞きながら訪問を果たせぬままだったお店がたくさんある。さすがに3年のブランクは小さくない。やれバスケだ電車だとあちこち出掛けるのにかこつけて、そういう店を片っ端からやっつけていくことにした。

原宿の明治通りから表参道寄りに一筋入ったあたりに暖簾を掲げる「麺散」は、大阪に行く前から訪れたかった一軒。新宿の名店「慎」にいらした職人さんが麺を打っていると聞いたのがその理由だが、それも5年前の話だから、今はどうなのか分からない。とりあえず鶏天ぶっかけを注文した。

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麺は間違いなく手打ちのそれである。麺線も盛りつけも美しい。でも「慎」とは違って、コシに若干の遠慮が感じられた、そういう意味では私が先月まで慣れ親しんでいた関西讃岐に近いが、もちろん相当に美味しいうどんであることに違いはない。大半の客が女性なのは場所柄であろう。インバウンドの姿も目立つ。

続いて訪れたのは幕張の蕎麦店「さくら」。2022年6月9日付のエントリ「梅雨競馬」に、ギムレット様から寄せられたコメントでその存在を知ってからというもの、早く訪れたいという思いは募るばかりだったが、なにぶん大阪から幕張は遠い。中山に行くことすらなかったのに、さらにその先まで足を運ぶのは簡単ではなかった。

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ともあれ競馬関係者なら誰もが知る門別「いずみ食堂」の姉妹店である。長さも太さもマチマチな田舎蕎麦の神髄を具現したような蕎麦に惹かれて、馬とは関係なくやってくる観光客も少なくない。静内でセリがあれば出店するし、門別競馬場のスタンドでも営業している。

幕張のお店では細切りの蕎麦との合い盛りが人気らしいが、細切りでは何しにここまで来たのか分からない。「いや鉄道技術展だろ!」というツッコミの声を脳内から振り払いつつ、太切り蕎麦の大盛りと豚しゃぶのつけ汁を注文。

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千葉で“いずみ蕎麦”が食える。愉悦である。

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幅5ミリをゆうに超える麺は、生麺の状態ではストレートなのに、どういうわけか茹でると独特の縮れが現れるから不思議。その製造技術は門外不出だというが、この縮れが豚の脂が浮かぶツユをほどよく絡め取ってくれる。だから美味い。鉄道技術よりも蕎麦の技術の方が気になった。次回来訪時は細切りも食べてみよう。

 

 

***** 2023/11/15 *****

 

 

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2023年11月14日 (火)

グランプリとチャンピオンシップ

明日は大井でマイルグランプリ、そして週末は京都でマイルチャンピオンシップと、似たような名前の重賞が続く。それで思った。「グランプリ」と「チャンピオンシップ」は、いったいどちらが上なのか?

辞書を引くとだいたいこのように書いてある。

「グランプリ(=大賞)」
芸術・文化・スポーツなどの各分野で最高位とされる賞

「チャンピオンシップ(=選手権)」
ある競技の中で最も優れた個人あるいはチーム、即ち優勝者を決めるために行なわれる大会や試合

つまり「最高位」VS「最も優れた」という表現の比較になるのだが、どちらも「最」である以上、比較のしようもない。敢えて違いを探すとすれば、グランプリは芸術、文化にも領域を広げて使われる一方、チャンピオンシップは「ある競技の中で」と対象を絞ることを示唆しているあたりだろうか。たしかにJRAの「チャンピオンシップ」はマイルだけ。その年のナンバーワンホースを決めるのは「グランプリ」たる有馬記念だ。

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大井のマイルグランプリはもともと南関東G1(現SⅠ)格付けでスタートした。記念すべき第1回の覇者はアマゾンオペラ。以来10年間、南関東におけるマイル路線の最高峰として君臨し続けた。写真は第4回の覇者アブクマポーロ。交流GⅡ2勝のカガヤキローマンに6馬身差を付ける圧勝だった。アブクマポーロはこの年のNARグランプリも獲得している。

しかし2006年の11回目からマイルグランプリは突如G2に変更された。レースの格は低いのに、レース名が「最高賞」のままなのは理解に苦しむが、なぜかそのまま現在に至っている。格下げ後3年間の優勝馬はナイキアディライト、アジュディミツオー、フジノウェーブだから皮肉としか言いようがない。レース名と格付けに矛盾を生じたものの、この3年間に限ればグランプリの名に相応しい馬が優勝を果たしたことになる。

大井記念や戸塚記念などSⅠ格上げが相次ぐ昨今だが、マイルグランプリはSⅡに据え置かれたままだ。そもそも南関東はマイルグランプリに冷たいフシがある。施行時期にしても5月のレースとしてスタートしながら、すぐに4月開催となり、さらに3月へと早まったかと思いきや、その後も11月、10月、7月、8月と目まぐるしく変わった。ちなみに昨年は7月に行われて、今年は11月。そして今日発表されたばかりの来年のスケジュールでは10月の実施とある。期待されたSⅠ格上げ発表も無かった。これではファンの印象にも残るまい。

ちなみにマイルグランプリとマイルチャンピオンシップが同じ週に行われたことは過去に一度だけある。2017年のことだから比較的最近の話。マイルの「グランプリ」はセイスコーピオンが獲得し、マイルの「チャンピオン」にはペルシアンナイトが輝いた。さて、今年は?

 

 

***** 2023/11/14 *****

 

 

 

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2023年11月13日 (月)

ミッドタウン八重洲

東京は今シーズンいちばんの冷え込み。思わずコートを引っ張り出した。11月も半ばなのだから寒くなるのは仕方ない。なにせ先週までが暑過ぎた。さらに夏日の那覇から戻ったばかりの身に、この寒さは堪える。昨日はポロシャツ一枚で過ごしてたというのに。

今日の行き先はミッドタウン八重洲。さすがに今日はバスケではないが、ここの地下にバスタ(バスターミナル)ならある。

東京駅八重洲口に昨年オープンしたばかりの大規模複合ビル。ビル最上部の39~45階には日本初進出の高級ホテル「ブルガリホテル」が、そして1~4階には中央区立城東小学校が移転開校したことで話題にもなった。高層ビル内の公立小学校は過去に例がないという。

「ミッドタウン」と聞いて「ああ、あの東風SとニューイヤーSを勝ったキャロットの馬ね」と言う方は、ちょっとばかりキャリアを積んだ競馬ファンであろう。1999年生まれのデインヒル牡馬。出口牧場などが中心となって運営されていたクラブ法人「キャロットファーム」がノーザンファーム傘下となる前の、最後の世代である。この当時のキャロットのエースは外国産馬が中心だった。

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芝に限れば新馬から5連勝でオープンの東風Sまで一気に駆け上がっている。後続を大きく離して逃げる派手なレースぶりから「サイレンススズカの再来」と呼ばれ注目を集めたこともあった。しかし、その後はニューイヤーSを勝った程度で重賞タイトルには手が届かず終い。東風Sで記録した1400mの通過タイムは1分20秒1。全6勝をマークした得意の中山に芝1400mの重賞があればと悔やまれる。

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八重洲のミッドタウンに話を戻す。

地下のレストランに「芝蘭」の屋号を見つけた。神楽坂のお店には入ったことがある。本格的な四川料理がおいしくいただけるお店。こちらはその担担麺専門店らしい。

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「汁無し担担麺」を注文。しかし本来の担担麺には「汁」はない。彼の地では麺を担いで売り歩いたから「担担麺」。担ぎ歩く以上、汁がこぼれるようでは話にならない。それで、汁なしで食べられるよう、工夫された味付けがなされているのである。たっぷりの汁に麺が浸っているスタイルは、日本風にアレンジされたものだ。

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麺はストレート細麺。かんすいは使っていない。これも現地仕様だそうだ。この細さがタレとほどよく絡み、やわらかくモチモチした歯ごたえを生む。痺れや辛さよりも香りが引き立つラー油は、ほかで食べる担担麺とは一線を画すが、それでも食べ終えたあとは身体がホカホカと熱くなっていた。寒さはこれからが本番。汁の有無に関係なく、担担麺がますます美味しくなる季節でもある。

 

 

***** 2023/11/13 *****

 

 

 

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2023年11月12日 (日)

赤い麺を食え

沖縄の食堂は朝から開けている店が少なくない。アンマー(お母さん)が厨房に立っているような普通の食堂が24時間営業だったりして驚くことも。ホテル近くの「三笠」はそんな一軒。朝から地元民と観光客で賑わっていた。

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ポーク玉子を注文する。もともと沖縄を代表する家庭料理だが、ポークランチョンミート&玉子焼きコンビの活躍ぶりは、いまや全国区であろう。沖縄県外では「スパム」の印象が強いが、沖縄では様々なメーカーのポークランチョンミート缶詰が売られている。せっかく沖縄に来たのだから「スパム」以外とのマリアージュを味わいたい。こちらでは薄焼きの玉子焼きに、カリカリに焼かれた半円形のポークが2枚。そしてマカロニサラダと生野菜か添えられている。味噌汁とタクアン、そして漫画みたいな盛りのご飯がついて700円。安い。

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昼も食堂。国道58号沿いにある地元で人気の食堂「みかど」へ。こちらも以前は24時間営業だったがコロナ禍で現在は10時〜21時に絞っているらしい。厨房にベテランのアンマーが大勢いるのは先ほどの「三笠」と同じ。ウチナー言葉でわーわー会話しながらフライパンを振っている。

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焼きうどんを注文したらスパゲティナポリタンが出てきた。あれれ? お店が注文を間違えたのだろうか?

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しかし、よく見るとこれはナポリタンではない。焼きそばをケチャップで味付けすることは珍しくない沖縄では、焼きうどんもケチャップ味で仕上げるのである。キャベツ、玉ねぎ、もやし、ポークをうどん一緒に炒めて、仕上げにケチャップをババーっと投入して一気になじませる。う~む、やはりナポリタンですな。

ちなみに沖縄では「焼きそば」にも沖縄そばの麺が使われる。ケチャップをまとっていながら、それでもどこかサッパリした美味しさを感じるからには、沖縄そばと同じく昆布と豚のダシが隠し味に使われているのかもしれない。

ソースではなくケチャップを使うのは、戦後に持ち込まれたの米国文化の影響だという。そうと聞けば、多少複雑な思いにかられなくもないが、ポーク玉子には何よりケチャップが合うことは特記しておきたい。

むかし、JRAにオムライスという馬がいた。キンググローリアス産駒の牝馬。その母は船橋で3勝を挙げたトマトケチャップである。

 

 

***** 2023/11/12 *****

 

 

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2023年11月11日 (土)

赤い馬を狙え

東西で3鞍の重賞が行われる日だというのに、東京ではなく、ましてや京都でもなく、なんと那覇にやってきた。むろん競馬ではない。そう、またバスケ。沖縄アリーナで行われた琉球ゴールデンキングス vs 島根スサノオマジックの試合が、ホーム琉球の劇的大逆転勝利で決着したのは20時過ぎだった。

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そこからクルマで那覇まで戻り、クタクタになりながら飛び込んだのは「もぅあしび~」という沖縄料理と泡盛のお店。赤い魚の看板がひときわ目を引く。

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もずくの天ぷらも、ゴーヤーチャンプルーも、ラフテーも、どれもみな美味しい。行き当たりばったりで入った割には大当たりのお店だった。こうなりゃ明日のエリザベス女王杯も大当たり間違いなし。前祝いとばかりに泡盛を注文する。選んだのは馬のラベルがひときわ目を引く「あかんま(赤馬)」だ。

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店の主人によれば、沖縄には「赤馬伝説」なる昔ばなしがあるのだという。

昔、大城師番という石垣島の役人が海沿いを歩いていると、不思議な子馬が海から上がってきた。師番は、その子馬を大切に育てたところ、大きく気品に満ちた名馬に成長し、「赤馬」の愛称で広く知られるようになった。

やがてその噂は琉球国王にも届き、赤馬は国王に献上されることとなる。師番は、その名誉を喜んだが、馬と別れなければならない寂しさから「赤馬ヌ、イラスザ、足四チャヌ、ドゥキニャク、……」という歌を詠んだ。それが今も石垣島に伝わる民謡「赤馬節」の一節にもなっている。

一方、首里に送られた赤馬は、評判とは裏腹に、デュランダルかサッカーボーイかというほどの暴れ馬となり、怒った国王は大城師番を首里へ呼び出す。

するとどうでしょう、不思議なことに赤馬は師番を乗せた途端、元の評判通りの良馬へと落ち着きを取り戻し、名馬の威光を取り戻したのである。それを見た国王は、師番とともに赤馬を再び石垣島に戻すことにしたという。ふーむ、国王、良いヒトですね。

話自体はマーゲライト・ヘンリーの名作「名馬風の王」に似ていなくもないが、沖縄にも馬文化が根づいているなら悪くない。赤馬にちなんで、明日のエリザベス女王杯はルージュエヴァイユを買ってみよう。アカイイト(赤い糸)、クロコスミア(赤い色の花の名)、アパパネ(赤い小鳥の名)。不思議と赤に縁のある名前を持つ馬が好走する印象が強い。狙うべきは「赤馬」だ。

 

 

***** 2023/11/11 *****

 

 

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2023年11月10日 (金)

クルマ、電車と来れば

電車を見るために幕張メッセへ。正確には「鉄道技術展」だそうだ。クルマ、電車と来れば馬もアリだろう―――。そう思った私は、京葉線の車窓から船橋競馬が見えた瞬間、窓を開けて飛び降りそうになった。しかし残念ながら今日は開催日ではない。私を幕張に向かわせた上司もそれくらい分かっている。

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鉄道と言えば、東海道新幹線の車内ワゴン販売廃止が話題になったばかり。私も先月まで頻繁に利用していた身だから、感慨がないと言えば嘘になる。でも、かつて食堂車が廃止になった時ほどの衝撃はない。東海道・山陽新幹線から食堂車が消えたのは2000年3月のダイヤ改正でのこと。最終日は多くの利用客が列を作り、ホームにはカメラを構えた鉄道ファンが溢れ、マスコミはもっと大々的に歴史的瞬間を報じた。

新幹線のみならず在来線特急からも食堂車が姿を消して久しい。今も残るのは一部の豪華クルーズトレインのみ。しかし私が懐かしむのは豪華フランス料理のディナーや懐石料理を楽しみつつ、夫婦でワインを傾けたりするような食堂車ではない。

一人旅に携えた文庫本は既に読み終え、さりとて眠りにつくこともできず、車窓を眺めるのにもいい加減飽きた頃合いで、「そうだ、この列車には食堂車があったな」と思い出して、やおら席を立って向かう―――そんな食堂車である。注文するのはサンドウィッチとビールの小瓶。小ぶりのグラスにゆっくりとビールを注ぎ、ゆっくりとサンドウィッチを食べ、そしてゆっくりとビールを飲む。そうしている間にも、自分の体は結構なスピードで目的地に向かって進んでいる。そんな不思議な感覚も旅情のひとつだった。

鉄道のスピードアップにつれ車内滞在時間が減り、わざわざ車内で食事をする必要がなくなったため、というのが食堂車撤廃の表向きの理由だったが、実際には輸送効率の追及が本音であろう。赤字を増やすだけの食堂車を連結するぐらいなら、普通車両に乗客を座らせて運んだ方が儲かる。企業としては当然の理論ではあろうが、やはりひとつの文化の消滅には違いあるまい。

目的地へ向かうその道中にこそ旅の本質があったはずなのに、交通手段の合理化に伴って旅人はその本質を捨てて目的地での観光のみ追い求めるようになった。旅の形は明らかに変容してしまっている。その変容の果てに、ゆとりや潤いは鉄道から消し去られた。そういう視点に立てば「変容」と呼ぶよりも、はっきり「退行」と言い切ってしまった方がよさそうだ。

鉄道技術展は私が思っていたものとは少し毛色が違っていた。ひと言で言えば「保安や省人化のための技術展」。車両がたくさん展示されていると思ったら大間違い。しかも凄い数の企業が出展している。ひとつくらい鉄道文化に向き合うブースがあればと願ったが、もちろんあるはずがない。ともあれ普段何気なく利用している鉄道は、かくもたくさんの技術で支えられていることは理解できた。競馬場に向かって窓から飛び降りるような真似は、決してしてはいけない。

 

 

***** 2023/11/10 *****

 

 

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2023年11月 9日 (木)

初めての「バ券」

昨日はが落ちてから代々木第二体育館へと向かった。川崎ではロジータ記念が行われるが仕方ない。なにせこれも仕事。クルマを見に行かされたかと思えば、今宵はバスケBリーグだという。うーむ。興味ないですねぇ(笑)。アルバルク東京 vs 茨木ロボッツと言われてもピンと来ない。しかし、仕事である以上はきちんとこなす。こっそり川崎に行ってバレたりしたらみっともない。

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Bリーグはもとよりバスケの試合をナマで観ること自体が私としては初めての経験。さすがにルールを知らないなんてことはないが、かといってBリーグに詳しいわけでもない。選手も知らないヒトばかり。漫画「スラムダンク」も読んだことはない。それで少しばかり勉強してきた。どうせなら本気で勉強しよう。本気度を上げるには身銭を切るのがいちばん。そういえばBリーグの試合は、昨年からスポーツくじ「WINNER」の対象となった。ならそれを買って応援しようではないか。

そんなわけでこの試合のくじを購入してみた。こちらも初めての経験。予想するのは単なる勝ち負けではない。16パターンの勝ち負けと点差の組み合わせから結果を予想する。16頭立ての単勝みたいなものか。ならば東京と茨城の成績を材料にすれば良い。東京は今シーズン10勝1敗で東地区首位を快走。一方の茨城は1勝10敗と最下位に苦しんでいる。今回は東京のホームゲーム。東京が有利なのは間違いない。

穴党の私としては茨城に賭けたくもなるが、競馬と違いバスケやラグビーのように大量スコアで競うゲームでは波乱は起きにくい。となれば勝負の分かれ目は点差である。成績を見れば「30点差以上」に食指も動きそうだが、実力差がストレートに点差に現れるとは限らない。競馬ファンはそれを良く知っている。天皇賞のイクイノックスはジャスティンパレスと2馬身半差。リバティアイランドの秋華賞もマスクトディーヴァとは1馬身差でしかなかった。

ちなみに上位人気はご覧の通り。大差決着を信じるファンが多いようだ。

①30点差以上で東京勝利 2.9倍
②25~29点差で東京勝利 2.9倍
③20~24点差で東京勝利 3.3倍
④15~19点差で東京勝利 3.8倍
⑤10~14点差で東京勝利 4.8倍

私は4番人気「15~19点差で東京勝利」の1点勝負に出た。こちらが「勝ちバスケチーム投票券」。すなわち馬券ならぬ「バ券」。

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試合結果は79-60で東京が勝利した。ホームチームの勝利に場内は大喝采。そして私も19点差のスコアに喝采を叫んだ。

初めて見た立場で偉そうなことは言えないが、スコア以上の実力差は間違いなくあったと思う。実際、3Q終了時には24点差の開きがあった。迎えた4Qも残り1分を切った時点で79-57。ここで茨城が2点ゴールを決めても20点差だから私のバ券は的中にはならない。しかし3ポイントシュートが決まれば的中の可能性が高まる。よし3ポイントを打て!

……と願ったところで茨城の選手は私の都合なんか気にしていないから、ゴール下に切り込んで確実に2点を狙いのシュートを放り込んだ。もはや私のバ券的中は無い。あーあ、と思った瞬間「ピーッ!」と笛が鳴る。ディフェンスのファール。いわゆるバスケットカウントで茨城に1ショットのフリースローが与えられたではないか!

そのフリースローが決まった瞬間は、アウェーだというのにかなり大きな歓声が上がったように思える。私と同じような境遇のファンがほかにもいたのかもしれない。

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いずれにせよ初めてナマで観たBリーグは楽しかった。おとといも書いたけど、何事もまず自分の眼で観なければ始まらない。ただ19時35分の試合開始はちと遅くはないか。試合終了は22時近かった。サラリーマンよりは子供が多くを占めるスタンドと見れば、答えはもう出ているように思える。

 

 

***** 2023/11/9 *****

 

 

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2023年11月 8日 (水)

情報の落とし穴

引っ越しから1週間が過ぎて、ようやく後片付けが終わりつつある。しかし困ったことがひとつ。自宅のマンションはもともと狭いのだが、いざ大阪から荷物を送ってみたら、それが入り切らない。3年前にここから持ち出したモノを戻しただけなのに、収まらないのはおかしいではないか。なぜだ?

理由は簡単。3年の間に自宅マンションの方にモノが増えたのである。事実、かつての私の部屋は物置きと化していた。家人は手伝ってくれないから、自分でそれらをひとつひとつ片づけなければならない。3年前まで使っていたパソコンはもう使えないし、非常食も大半は消費期限を過ぎている。

役所にも行かなければならない。転入の手続き、免許証の住所変更、印鑑登録もやり直し。最近はネットでできる手続きも増えて助かる。マイナンバーカードに感謝せねばなるまい。せっかくそう思ったところに、そのマイナンバーカードに足をすくわれた。我が身の転入手続きは5分で完了したのに、マイナンバーカードの住所変更にはなんと1時間半を要したのである。

マイナンバー担当の窓口が混んでいたせいもあろう。しかし1件あたりの処理時間の比較でもマイナンバーの方が圧倒的にかかっていた。マイナンバーなんてただの数字の羅列ではないか。なのに生身の人間の手続きよりも時間がかかるのか。そこが引っ掛かった。

役所にとって重要なのはマイナンバーカードに記録された情報であって、生身の人間ではないということか―――。

もちろん役所の人が悪いのではない。役所の業務を隅々までコンピューター化すればこうなることは分かり切っていた。役所は情報さえ管理できれば良い。生身の人間はむしろ邪魔な存在であろう。「遅い」「まだか?」と文句を言ってきたりするのは決まって生身の人間。情報が文句を言うことは、まずない。

マイナンバーは私に付けられた付属物だとばかり思っていたが、実はそっちの方が実体なのかもしれない。じゃあ、その住所変更を待つこの私は一体なんなのか? そんなことを考えていたら1時間半はあっと言う間に過ぎた。

話は先週日曜に遡る。

Mainer

アルゼンチン共和国杯における7歳以上の成績は過去10年で(0,0,0,32)。それを理由に私は意気揚々とマイネルウィルトスを蹴飛ばした。結果はご存知の通り。情報ばかりを見て実体(実馬)を観もしなかった自分が恥ずかしい。そもそもたった10年間。わずか32頭のサンプルでは数学的には情報とも呼べまい。それでも数値化・言語化されるとつい受け入れたくなってしまうのは、我々人間の悪い癖だ。

菊池寛は「情報信ずべし、しかも亦信ずべからず」の金言を残した。ここで言う情報とは厩舎情報の意味合いが強いが、いずれにせよ自分の眼で馬を観ることは忘れるなという戒めであろう。数値化や言語化ができない感覚を、馬券という形で表現するところに競馬の面白さが詰まっている。それと役所の業務を一緒に論じたらお叱りを受けるかもしれないが、数値化や言語化ができない部分に物事の本質が詰まっていることは珍しくない。忘れないようにしよう。

 

 

***** 2023/11/8 *****

 

 

 

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2023年11月 7日 (火)

東京ラーメンステークス(前半)

GⅠの谷間ということもあって、この土日の東京競馬場は比較的空いていたのだが、内馬場に限れば家族連れを中心に大盛況だった。行われていたのは「復活! 東京ラーメンステークス2023」というグルメイベント。その触れ込みには「食べログ評価3.5以上の名店が多数出店」とある。食べログの評価に興味はない筆者だが、何事も食べてみないことには始まらない。まあ、馬券がまるで当たらず、どうせ溶かすならラーメン食べた方がまだマシという歪んだ思いがあったことは認める。

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イベントは食券制。自動発券機が3台並んでいるので、そこで事前に買ってから各店に並ぶ。価格は1枚1000円で統一。食券1枚と引き換えに、各店の基本スタイルのラーメン1杯が提供される。追加トッピングはそれぞれの店頭で現金で支払うという仕組みだ。

食べログ3.5以上というのは高評価だから、どの店もそれなりに美味しいお店のはず。それでも行列の長さには大きな差が現れるから面白い。30人以上並んでいる店もあれば、待ち人数ゼロの店もある。待ち人数ゼロの店だって美味しいはずなのに。

まるで競馬の単勝人気ではないか、と思った。「行列があるお店=美味しい」という心理がさらに行列を増長させて、人気が実態とかい離することは珍しくない。競馬も同じ。勝ち馬に乗りたいと思う気持ちが、実力差以上のオッズ差を生む。土曜日の13時半時時点で30分待ちの大行列だった「純麦」が、翌日曜の同じ時間で待ち人数ゼロだったことなどは、その好例ではなかろうか。ただし「純麦」の一杯はものすごく美味しかったことは「純麦」の名誉のために強調しておきたい。何より麺が違う。だてに屋号で「麦」を名乗っていない。日曜日に並ぶことなくこの一杯に辿り着けた人はラッキーだ。

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続く「ナポレオン軒」は「釜玉中華」で知られた一軒。うどんの釜玉よろしく、茹でたての極太縮れ麺に醤油ベースのタレを合わせ、生玉子を落としてよく混ぜたら一気にすする。さっきの「純麦」さんと似ていなくもないが、コショウのパンチが効いているぶん「カルボナーラ感」が際立つ一杯。聞けばこの7月に府中本町駅近くに新規出店したというから、次回はお店で食べてみよう。

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塩ラーメンで知られる蓮根の人気店「らあめん元」は、つけ麺で勝負してきた。このような容器で提供されるせいか、どうしてもコンビニライクな味を想像してしまうが、決してそのようなことはない。むしろ逆。麺の味、喉越し、つけ汁との一体感。すべてにおいて驚かされた。こちらのお店にも機会があれば訪れてみたい。

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ラストは「自家製麺・竜葵」。「竜葵」と書いて「ほおずき」と読むらしい。こちらの塩ラーメンは、名古屋コーチン、比内地鶏、さつま地鶏の日本三大地鶏から取ったスープが決め手だという。その透き通ったスープはあっさりしていながらコク深く、自家製の細麺に絡めても良し、そのまま飲んでも良しと、とにかくクオリティが高い。川口で営業しているというお店は、名古屋メシをコンセプトとしていて、ひつまぶしなんかもメニューに載っているとか。そうと聞いたら、ここにも行きたくなってきた。お店やイベンターの思うツボになっている自分が情けない。

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イベント自体は店舗を変えながらジャパンカップ当日まで続く。ちなみにここで紹介した4店舗のうち「純麦」以外の上記3店舗は、今週末も引き続き内馬場に出店するそうだ。

 

 

***** 2023/11/7 *****

 

 

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2023年11月 6日 (月)

この顔に、ピンときたら

この土日の東京競馬場では5階のA・B・C指定席エリアを対象に顔認証システムが試験導入された。これまでは指定席エリアと一般エリアの通行時にはスマホを取り出して画面にQRコードを表示させてそれを読み取り機にかざす必要があったが、それが必要なくなるという。最近はスマートシートでじゅうぶんだと思う筆者も、物見遊山で指定席を購入。さっそく体験してみた。

指定席エリアへの初回入場時の作法はこれまでと同じ。スマホのQRコードを入口のスタッフに読み取ってもらう必要がある。しかし昨日は数人のスタッフがその先に待ち構えていた。そして「顔認証の登録をしませんか?」と誘われる。もちろんそのつもりで来たので「はい」と即答。すると指定席エリア内に設置された登録機の前に案内された。

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登録機のモニターには自分の姿が表示されている。モニター内のガイドの枠内に顔が映るよう、自分で顔の位置を動かせばよい。よきところで勝手に機械の方が登録してくれる。その間わずか2~3秒。注意事項としてはモニターではなく、登録機の上部に設置されたカメラに目線を向ける必要があるということくらいか。スタッフの方に「はい。終了です」と言われておしまい。あとは自分の席を探せばよい。ザっと見たところ大半の客が顔認証登録をしているようだ。

顔認証の登録をしておくと、指定席エリアから一般エリアに退出するときのQRコード確認が必要なくなる。これは思いのほかラクだ。ただし、顔認証をしていない客もゼロではないから、退出の際にいちいちスタッフから「顔認証登録はお済ですか?」と聞かれることになる。ただ、それも何度も出入りするうちに声を掛けられなくなった。おそらく顔を覚えられたのだろう。そこでも顔認証が行われているというわけ。ただしこちらはアナログ。

さて肝心の認証だが、指定席エリアへの入場口に認証機が2台設置されている。床に描かれた足型の位置に立って、やおらカメラを覗こうとするよりも先に認証が完了して驚いた。1秒もかからない。もちろんマスクをしてみても、眼鏡を外しても支障は無し。多少斜めを向いていてもアッサリ認証されるその性能には驚かされた。

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JRAは2019年にも顔認証の実証実験を行っている。ただし、このときは場内全域を対象としていた。目的も「あらかじめ登録した人を画像認識技術で本人確認できるか」とか「20歳未満を判別できるか」といったもの。タネを明かせば、この年に閣議決定された「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」に基づく実験に過ぎない。とにかくこのときはNTTデータ、パナソニック、富士通の3社が参入した。しかし、今回の納入ベンダーは「グローリー」である。実際、グローリーの社員の方も出入り口に張り付いていた。どうにかしてエラーを起こしてやろうと企む客は、決して私ひとりではなかったはず。それでも目立ったトラブルは無かったようだ。

手の甲に特殊塗料のスタンプを押して、入場時にブラックライトにかざして本人確認していた時代が懐かしい。しかしそれほど昔のことでもないはず。コロナ禍は競馬場の景色を一気に変えつつある。しかし懐古主義の筆者でもこの顔認証には好意的な印象を覚えた。いちいちスマホを出して、デバイスロックを解除して、QRコードを表示させて、それを読み取り機にかざす、という4つのアクションはどう考えても面倒くさい。退出時も必要となれば、その手間は倍に膨らむ。

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昨日の昼、売店でビールとハンバーガーを買って自席に戻る際、両手が塞がったままでも指定席エリアに入れると分かったその瞬間、顔認証の素晴らしさを実感した。本格導入が待ち遠しい。

 

 

***** 2023/11/6 *****

 

 

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2023年11月 5日 (日)

馬上の魔術師

「またまたジョアン・モレイラです!」

Moreira

アルゼンチン共和国杯でジョアン・モレイラ騎手のゼッフィーロが先頭でゴールを駆け抜けると、場内実況アナウンサーがそう叫んだ。モレイラ騎手はこの土日だけで11勝の荒稼ぎ。勝率611は驚異的だ。仮にこのペースでJRAで1年間乗り続けた場合、583勝に到達する計算になる。

モレイラ騎手にとってこれが今年のJRA重賞3勝目。レーベンスティール、ナミュール、そしてゼッフィーロ。共通するのは誰もが認める素質の持ち主でありながら、展開や運に恵まれず重賞タイトルから遠ざかっている馬であること。「ゲートでつまづいた」「進路がなかった」「4コーナーで外に降られた」「位置が後ろ過ぎて前を捕まえられなかった」。もはや聞き飽きた感さえある敗戦の言い訳だが、モレイラ騎手が乗るとこういう類のコメントを訊くことがない。

今日もそうだった。課題のゲートは五分に出た。道中は中団の内ラチ沿いを追走。手応え十分で直線に向いたが、前が壁になって抜け出せない。外に出そうにもフルゲート18頭の激戦ではそれも無理。万事休すかと思われた残り200のハロン棒付近で、わずかに前が空いたのをマジックマンは見逃さなかった。狭いスペースから弾けるように抜け出すと、あっと言う間にトップスピードに到達。そのまま先頭に立ってゴールを駆け抜けた。

「ゴーサインを出してからの反応は素晴らしかった。能力が高い馬です」

モレイラ騎手のコメントに嘘はあるまいが、素晴らしい反応を引き出せる余地を残すように乗っていること自体が素晴らしいのである。目黒記念のゼッフィーロも、ラジオNIKKEI賞のレーベンスティールも、東京新聞杯のナミュールもその余地が無かった。でもモレイラはその余地を残している。なにが違うのか? 個人的には、肘の位置を拳よりも低く保ち、馬上にピタリと張り付くようなあの独特のフォームにカギが隠されていると思うが、おそらくカギはそれひとつではなかろう。結局なにが違うのかは分からない。だから「マジック」なのである。

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体質が弱く3歳2月のデビューとなったゼッフィーロにとっても、この1勝は大きい。もともとこの秋はメルボルンカップを目指すシルヴァーソニックの帯同馬として豪州遠征を予定していた。だがシルヴァーソニックが脚部不安を発症したことで、ゼッフィーロの豪州遠征も白紙に。やむなく国内にターゲットを絞ったが、オールカマーはタイトルホルダーにクビ差及ばずの3着で賞金加算に失敗。このアルゼンチン共和国杯にしても、1/2の抽選を潜り抜けて出走枠に滑り込んでいた。

今日の勝利で今後のレース選択にも幅が広がるはず。登録を済ませている香港ヴァーズにも選ばれる可能性も出て来た。豪州遠征のはずが着いてみたら香港だったとなれば、それこそマジックであろう。

 

 

***** 2023/11/5 *****

 

 

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2023年11月 4日 (土)

京王杯は変われるか

京王杯2歳Sは回を重ねて今年が59回目。JRAで行われる2歳重賞としては、朝日杯FS、阪神JFに次ぐ3番目に深い歴史を誇るGⅡなのに、同じ秋の東京に東京スポーツ杯2歳SやアルテミスS、さらにサウジアラビアRCに比べて影が薄い。京王杯を勝って2歳チャンピオンにまで昇り詰めたのは2010年のグランプリボスが最後。クラシックを勝った例となると1998年のウメノファイバーまで遡らなくてはならない。

その原因は芝1400mという距離にあろう。かつてはデビューから徐々に距離を伸ばして使っていくスタイルが主流だったからこれで良かった。しかし2歳番組が整備され、デビューからクラシックと同じ距離だけのレースを選択することも珍しくない時代。1400mの京王杯が、将来もスプリント路線での活躍を目指す短距離馬の舞台となるのは当然の成り行きであろう。今年の出走馬12頭のうち、前走で1200mを使われた馬は半数を超える7頭。これでは今年の勝ち馬からクラシックホース誕生を期待するのも無理な話か。このままではGⅡの格付け維持も危うい。

そんなことを考えながらレースを待っていたら、南半球から大きなニュースが飛び込んできた。なんと豪州ローズヒルガーデンズ競馬場に遠征していたオオバンブルマイが、ゴールデンイーグルという高額賞金レースを勝ったという。1着賞金はなんと525万豪ドル(約5億円)だというから半端ない。日本ダービーより高いではないか。

オオバンブルマイは昨年の京王杯2歳Sの優勝馬である。ゴールデンイーグルは未格付けレースだからレーティングがどうなるのか分からんが、賞金からして決して弱い相手だったとは思えぬ。京王杯2歳Sにネガティブな印象を抱いていた私の考えを変えさせるには十分。「京王杯2歳Sは昨年から変わった」と言われれば、今なら信じてしまうかもしれない。

今年の京成杯は中団を追走した1番人気のコラソンビートが直線に向くと弾けるように伸び、先に抜け出したオーキッドロマンスをゴール寸前できっちりと差し切りながらも、外から迫るロジリオンの追撃を振り切った。ひとこと快勝である。

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牝馬ながら同距離のファンタジーSではなく、牡馬相手でも地元のレースを選んだ陣営の判断を讃えたい。牝馬がこのレースを勝ったのは先述したウメノファイバー以来のこと。だとしたらコラソンビートにクラシック制覇の期待をかけてみるのも悪くあるまい。デビュー以来左回りばかり使われて(3,0,1,0)のコラソンビートの成績はオークスを意識させるのに十分。父スワーヴリチャードの血が、それを後押しするように思えてならない。

ちなみにコラソンビートの祖母マイネヒメルの半妹には、3年前のオークスで2着に敗れたウインマリリンがいる。コラソンビートはオークスを勝って大叔母のリベンジを果たしたい。しかしその前に、その大叔母が日本時間明日早朝のBCフィリー&メアターフに挑戦する。コラソンビートの京王杯は牝系に勢いを付ける勝利になったはず。早起きして応援しよう。

 

 

***** 2023/11/4 *****

 

 

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2023年11月 3日 (金)

イグナイターの日

「夢かなって思うぐらいの感じですね。ほんとに気持ちいいです。園田の皆さん、やりました!

兵庫のイグナイターがJBCスプリントを勝った。兵庫所属馬がGⅠを勝ったのはこれが初めて。「イグナイターならやってくれる」と信じつつ、何度も跳ね返された高い壁に「イグナイターでもダメなのか」と諦めかけたのは誰あろうこの私。それでも今年の始動戦となった高知まで追い掛けて行ったのは、園田を根城にする競馬ファンとしてイグナイターを信じたい気持ちが上回ったからにほかならない。

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高知・黒潮スプリンターズカップを9馬身差で千切り捨てると、さきたま杯でGⅡ初制覇。そしてついに今日、GⅠを、しかもJBCのビッグタイトルを手にした。トントン拍子の快進撃に、笹川翼騎手が「夢かな」と言ったも頷ける。この2年間、地元の雄であるイグナイターを追いかけ続けた私にとっても、嬉しくないはずがない。

あれから8年になる。

2015年のJBCも大井開催だった。そのスプリントに当時の兵庫最強馬・タガノジンガロが出走してきたのである。前年の名古屋・かきつばた記念を勝って兵庫史上3頭目となるダートグレード制覇を成し遂げたあとも積極的に各地の交流重賞を渡り歩いた。このあたりは現在の兵庫最強馬・イグナイターの姿に重なって見えなくもない。

ともあれタガノジンガロは佐賀のサマーチャンピオンを2着すると、東京盃で自身初となるスプリント戦に挑戦。初めての1200m戦のせいかスタートが決まらず後方からの競馬を強いられるも、直線だけで5着まで押し上げた。迎えたJBC本番で引き当てた枠順は1枠1番。スタートさえ決まればチャンスはありそうだ。

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そしたらズバッとゲートを決めて内目の3番手にすっぽり収まった。これはひょっとしたら、やってくれるかもしれない。

大歓声と共に馬群が直線に向くいた。1番人気ダノンレジェンドにムチが飛ぶ。しかし逃げるコーリンベリーの脚色は緩まない。JBCスプリントでは初となる牝馬のチャンピオン誕生の瞬間だ。

「おや?」と思ったのはその直後である。勝ち馬の後ろ姿を撮り終え、ファインダーから目を離したところで、ようやく目の前を後続の馬たちが駆け抜けていった。その中に、タガノジンガロの木村健騎手の勝負服があったのである。

おかしい。あんなに負ける馬じゃない―――。

JBCデーの競馬場は忙しい。ウイニングランに口取り撮影。そしてプレゼンターのタレントが登場。てんやわんやの表彰式が終わるのを見計らったように、次のレースJBCクラシックの出走各馬の本馬場入場である。祭り騒ぎの喧噪にタガノジンガロに感じた違和感はすっかり掻き消されていたのだろう。彼の訃報を知ったのはずっと後のことだった。洗い場に戻ったタガノジンガロが急性心不全で死んだらしい、と。

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あれから8年。同じ大井競馬場の同じJBCスプリントで兵庫所属馬が頂点に立った。それを知る兵庫のファンにしてみれば、特別な感慨を伴う勝利だったに違いない。馬と同じくGⅠ初制覇を果たし、しかもタガノジンガロも管理していた新子雅調教師は、「タガノジンガロが後押ししてくれた」と目頭を押さえた。しかし「来年は海外も視野に」と更なる野望を口にしたあたりはさすがだ。超一流は常に前を向く。でも私みたいに過去を振り返りがちな人もいる。いずれにせよ、今年のJBCの主役はイグナイターだった。

 

 

***** 2023/11/3 *****

 

 

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2023年11月 2日 (木)

もうひとつのJMS

かつての「東京モーターショー」が4年ぶりに「ジャパンモビリティショー」と名を変えて復活。東京へ戻ってきたばかりでバタバタしている中ではあるが、東京ビッグサイトへと足を運んだ。

「モビリティ」とは「移動手段」の意。最近ではトヨタの佐藤社長が「これから私たちはモビリティ・カンパニーへの変革を目指していく」と宣言したように、多くの自動車メーカーが頻繁に使うキーワードでもある。

実際、東京ビッグサイトの会場でも自動車だけでなく、二輪車やドローン、果てはベルトコンベアまでもが展示されていたが、残念なことに馬がいない。馬だってモビリティのはず。しかし、基本的に既存の自動車メーカーが市場投入前のコンセプトカーやプロトタイプカーを大量投入する見本市という位置付けは、かつての「東京モーターショー」時代とさほど変わっていないようだ。

それにしても人混みがひどい。混雑から逃げるように展示棟の屋上へと向かった。ジャパンモビリティーショーに合わせて、「ジャパンミートショー」というグルメイベントが開催されているのである。フォーリンデブ・はっしー氏が選ぶ肉の名店14店舗が集結。私には未来のクルマよりもキッチンカーの方が楽しい。

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真っ先に並んだのは焼肉の「巨牛荘」。自慢のプルコギを焼いた肉汁で仕上げる焼うどんが有名で、実際その味付けはバツグンに美味い。それゆえに麺の残念感が際立った。フニャフニャで、箸で持ち上げるそばからプツリプツリと千切れてしまう有様。これだけの味付けがあれば特別な麺を使う必要もないのにもったいない。これで千円はちょっと残念に感じてしまう。それがもったいない。

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続いて予約が取れないことで有名な「肉山」のカレーに並ぶ。

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普段はコースの〆で提供されるカレーライスを単品で味わうことができる。カニの出汁を使ったカレーはコク深く、スパイシーなカレーの辛さに加えて、隠し味のキムチのピリリと突き刺さるような辛さがたまらない。お肉もたっぷり入っていて、キッチンカーの味としては完成している。これで千円なら悪くない。

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大阪から東京に戻ってあらためて思う。なんだかんだでやはり東京の方が何を食べても高くつく。しかも、そのぶん美味いとも言い切れないところが釈然としない。このあたりはオノレの身体に染み付いた金銭感覚のアップデートを急ぐ必要があろう。でないとヤバいことになりそうだ。

 

 

***** 2023/11/2 *****

 

 

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2023年11月 1日 (水)

関東転厩

3年近くに及んだ大阪暮らしに別れを告げて神奈川の自宅に戻ってきた。

3年も過ごしていればすっかり関西風味になっているかと思いきや、エラいモンでまったくそのようなことはない。そりゃあ半世紀もこちらで生きてきたんだから3年程度で変わったりはしませんな。長い夢を見ていたと言われたら、信じてしまいそうな気がする。

久しぶりに会う人からは「変わりませんね」と言われる。これは社交辞令であると同時に、それだけトシを取ったことの現れであろう。

実際、そういう相手の風貌は変っていたりするから驚くこともなくはない。3年前は黒々としていた頭髪が、ちょっと会わない間に真っ白になっていたりする。エイシンヒカリか!と突っ込んでみたくなるが、競馬を知らぬ相手なので控えた。仮に競馬を知る相手なら気を悪くする可能性だってある。ここは関西ではない。あらためて自らに言い聞かせる。

私の場合は出戻りだからまだ良い。生まれも育ちも大阪というような根っからの関西人の方が東京で暮らすことの苦労は、我々関東人の想像を超えるのではあるまいか。それすらも気にしないノリの良さを発揮できれば良いが、そういう人ばかりでもあるまい。

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栗東・須貝厩舎所属のドルチェモアが、美浦・上原佑紀厩舎に転厩するというニュースを見てあらためてそう思った。昨年の2歳チャンピオンは長いスランプに苦しんでいる。おそらく心機一転という意図があるのだろうが、それが逆効果になることも―――人間なら―――なくはない。その気持ちが分かるだけに、ドルチェモアの復活を期待せずにはいられないのである。

そんなわけで、様子を見ながらではありますが通常更新に戻します。関東からお届けする「競馬茶論」を今後ともよろしくお願いします。

 

 

***** 2023/11/1 *****

 

 

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