甦る血
セントライト記念に皐月賞馬ソールオリエンスが出走してきた。無敗の2冠を目指したダービーはクビ差の2着。ならば単勝1.6倍のオッズも頷ける。
問題は2番人気である。もう一頭のGⅠ馬ドゥラエレーデではなく、オープン勝ち実績のあるシャザーンでもなく、ましてや3連勝中の上り馬ウィズユアドリームでもない。2番人気の支持を集めたのは春のクラシックとは無縁だったレーベンスティール。皐月賞にもダービーにも、そのトライアルにも一切顔を出してない。なのに単勝オッズは3.8倍。3番人気以下は10倍以上だから。オッズの上ではソールオリエンスとレーベンスティールの一騎打ちムードが漂っている。
2勝クラスの条件馬でありながら、この馬が注目を集めるのにはワケがある。
昨年11月に東京芝1800mで行われた2歳新馬戦。2番人気に推されたレーベンスティールは、直線で1番人気馬と馬体を併せて長く激しいマッチレースを演じた。3番手以下は5馬身も離している。2頭の能力が抜けていたことは疑いようがない。この1番人気馬がソールオリエンス。レーベンスティールはクビ差及ばなかったが、能力の一端は示した。なにせ、この新馬戦を含めキャリア5戦連続すべて上がり3ハロンの最速タイムを叩き出している。そんなレーベンスティールにとって、あの新馬戦以来となるソールオリエンスとの直接対決。リベンジするなら今日しかない。多くのファンはそれを知っている。このオッズはそんなファンの期待の現れであろう。
レースは揃ったスタートからレーベンスティールは枠なりに5~6番手の内目に収まった。初めての2200mだが引っ掛かる様子はない。そこはモレイラ騎手である。4コーナーのコーナーリングの勢いで外に進路を取ると得意の末脚が炸裂。モレイラ騎手のアクションに応えて一気に突き抜けた。後方馬群からようやくソールオリエンスが追いすがってきたが、脚色が違い過ぎる。ソールオリエンスに1馬身3/4の差をつけて嬉しい重賞初制覇を飾るとともに、ついにソールオリエンスへのリベンジを果たした。
レーベンスティールが注目されるもうひとつの理由は、母の父がトウカイテイオーであることだ。
シンボリルドルフ~トウカイテイオーのみならず、メジロアサマ~メジロティターン~メジロマックイーンのラインも実質的に途絶えている。国内で父系を繋げることの難しさ。父子3代のダービー制覇が未だ達成されぬ事実はその象徴であろう。
しかし母系に入っても血は残る。メジロマックイーンはオルフェーヴルやゴールドシップによって甦った。トウカイテイオーにしても母の父として大物を残す可能性はゼロではない。
今日の勝利によってレーベンスティールはその候補に一歩近づいたことになる。バネの利いたしなやかなフォームは、リアルスティールよりもトウカイテイオーに近い。そう思っていたら、社台スタリオンのスタッフからも同じ声が届いた。そう思えたのは舞台が中山だったせいもある。
トウカイテイオーは皐月賞、有馬記念など中山で4戦3勝。さらにその父シンボリルドルフは1984年の弥生賞を手始めに1985年有馬記念まで中山は6戦全勝だった。中山で見せた圧倒的な強さはトウカイテイオーの血が騒いだのであろう。レーベンスティールとソールオリエンスとの対決はこれで1勝1敗。できることなら有馬記念での決着を観てみたい。
***** 2023/9/18 *****
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