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2023年9月20日 (水)

クラブ興隆の果てに

先週の3日間開催では、やたらとクラブ馬主が活躍した感がある。東西72鞍のうち、ほぼ半数にあたる35勝がクラブの馬によるものだった。勝利を挙げたクラブの数は実に16にも及ぶ。東西の重賞もクラブの馬がそれぞれ制した。インゼルとグリーンは前週に勝ったからまだしも、ウインやユニオンの会員さんは肩を落としているかもしれない。

キャロット 11勝
シルク    7勝
社台     2勝
サンデー   2勝
G1     2勝
東サラ    1勝
ラフィアン  1勝
ロード    1勝
DMM    1勝
ノルマンディー1勝
フクキタル  1勝
ライオン   1勝
大樹     1勝
ターフ    1勝
京サラ    1勝
ローレル   1勝

特にキャロットは計23頭が出走して(11,5,1,6)の固め打ち。勝率.478は驚異的だ。月曜の中山では10レースから怒涛の3連勝。ローズS優勝でオーナーランキング2位に浮上した社台レースホースを、翌日のセントライト記念優勝であっさり抜き返したあたりは、キャロットの地肩の強さを感じる。

Carot

GⅠの成績だけを拾っても、桜花賞、ヴィクトリアマイル、オークス、安田記念をサンデーが、皐月賞を社台が、ダービーをキャロットが、そして宝塚記念をシルクが制している。いずれも社台グループ系のクラブ馬主であることは偶然ではあるまい。

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ここで言う「クラブ馬主」とは、クラブ法人所有馬に出資する出資会員を指す。JRAの正式馬主のことではない。クラブ馬主は実際には馬主ではないから、馬主席に入ることも、優勝馬の口取りに参加することも原則的には不可能。株で言えば、配当は貰えるが、議決権のないミニ株のようなものか。最近では馬主席への招待や口取り参加を認めるクラブもあるが、それはあくまでサービスの一環である。

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私自身、過去にはいくつもクラブを渡り歩いた。端緒を開いたユーワホースクラブで最初に出資したのはトウショウボーイの産駒だから隔世の感がある。以後、大樹、社台(のちにサンデーも)、シルク、ターフスポート、セゾン、ヒダカブリーダーズユニオンと節操なく手を出しまくった。だが、いまだ重賞勝ちはおろか、JRA重賞出走の経験すら持たぬとは情けない。せっかくだから過去の全出資馬の馬代金と預託費用の総額、さらに総獲得賞金を総ざらいしてみようかと思ったが、計算の途中で怖くなってやめた。おそらくクルマの1台や2台で済む赤字額ではあるまい。

私があちこちのクラブに顔を出したののにはワケがある。つまり、そこで仕事をいただいていたからに他ならない。そういう立場である以上、抽選必至の人気馬に申し込むわけにはいかず、ただひたすら残口を埋めるのみ。すくなくとも私の一口馬主ライフにおいて、残り物に福などなかった。

しかし、おかげで分かったこともある。もっとも大きな発見は、クラブは運営する側が圧倒的に有利であるということ。種牡馬入りに際しクラブ側が4割を取るなど、普通に考えたら非常識も甚だしい。牝馬の引退既定も同様。だが、その不利を承知の上で、クラブ会員の皆さんは先を争って馬に出資する。つまるところ、これこそが我が国の馬主制度の欠陥であろう。ファンサービスに力を注ぐのも構わないが、JRAの馬主冷遇には常日頃から思うことがたくさんある。

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ちなみに米国ではきわめて簡単に馬主になれるらしい。吉田直哉氏がスポーツ紙のコラムにそう書かれていた。馬主申請手続きがあまりに簡素だったので、「収入は聞かないのか?」と尋ねると「預託料を払えない人は馬主にならない」と返答されたとのこと。逆に徹底的に疑うのが日本である。その理不尽を突いてクラブ法人は勢力を拡大してきた。もちろん儲け主義一辺倒のクラブばかりではない。だがそれを思わせる新規参入もゼロではない。

クラブが興隆を極めることで不都合があるだろうか。プレイヤーの裾野を広げるというメリットはたしかにある。一方でクラブの都合が優先されることへの懸念は残る。それでなくてもいわゆる「使い分け」の議論は後を絶たない。折しもローズSで2着に入ったブレイディヴェーグの秋華賞回避が発表された。レース後の様子を見た上での判断だというが、同じクラブからリバティアイランドが出走を予定していることと無関係ではなかろう。

 

 

***** 2023/9/20 *****

 

 

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