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2023年9月 3日 (日)

【個体識別を考える④】“撮り”違えも怖い

馬の取り違えにはカメラマンも神経を使う。

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といっても競馬に使う実馬のチェックではなく、もちろん写真の上での話。サンデーサイレンスだと思い込んで先方に渡した写真に写っていたのが、実はマンハッタンカフェだった――― なんてことが起きたらシャレでは済まない。でも、これは実際にあった話。なにせこの親子はそっくり。とあるドラマにサンデーサイレンス役としてマンハッタンカフェが出演したことでも知られる。

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ともあれ、ゼッケンも騎手(勝負服)も写っていない写真は、時として混乱の種となる。例えば、放牧されている種牡馬や、パドックで周回する馬の顔だけを撮るような場合ですね。

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まず、ゼッケン込みの横姿を一通り撮り、しかるのちに1号馬から順に顔を撮る。だが、1枚ずつシャッターを切るわけでもないから、前後の馬の顔にこれといった特徴がないと後の整理でとても困ることになる。頭絡の色やハミの形まで一緒だったりすると、もう泣きそうだ。出走馬の馬体照合係官はつくづく偉い。

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とはいうものの、ゼッケン、メンコ、シャドーロール、脚元のバンテージ、厩務員、そして騎手といった、個体識別に必要な要素がふんだんにある競馬場の撮影においては、さほど深刻な事態になることはない。怖いのは牧場での裸馬の撮影。そこにはゼッケンもなければ、メンコもない。同じような馬が次から次へと曳かれてきて、ただ黙々とシャッターを切るのみ。単純ゆえに事故の入り込む余地は多分にある。

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そういう仕事をする時は、私の場合はまず綿密に予定を立てていた。あらかじめ牧場を回るルートと時間を決め、撮影対象の馬をリスト化する。その上で、スケッチブックに「シャトーブランシュの19・牡」みたいに名前を1枚ずつマジックペンで書き込み、撮影現場に持参する。そして馬が曳かれてきたら、曳き手に(あるいは隣で見ている牧場主に)その馬の名前と性別を確認し、素早くスケッチブックを繰ってその馬の名前をまず撮影する。しかるのちに馬を撮る。その繰り返し。同業者はだいたい同じようなことをしているのではなかろうか。

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しかしそれでも取り違えのリスクは消えない。予定になかった馬が急に撮影対象になったりすることもあるし、そもそも牧場の関係者が馬を取り違えてたりしたらお手上げだ。だから、後日あらためて写真と馬名のリストを牧場に送って確認を求めるわけだが、それでも心の奥底に不安の欠片が残るもの。できることならば、馬本人に直接確認して回りたいくらい。それくらい“撮り”違えは怖いのである。

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【写真の馬たち】
上から、サンデーサイレンス、マンハッタンカフェ、ディープインパクト、ロードカナロア、ダイワメジャー、エピファネイア、キタサンブラック

 

 

***** 2023/9/3 *****

 

 

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