覚醒、富田暁騎手
ムーンライトHCに京成杯オータムハンデ。競馬の暦は秋競馬に突入したというのに、今日の宝塚市の最高気温は33.8度と暑さが続いている。とはいえサマーマイルシリーズとサマースプリントシリーズの最終日なのだから、夏であっても別におかしくはない。どちらのスタンスで競馬に向き合えばよいのか。買う側としては迷うところではある。そもそも久しぶりの阪神開催とあって、傾向が掴み切れないまま終盤の特別戦を迎えてしまった。
するとここまで騎乗馬のなかった富田暁騎手が登場。能勢特別をアレグロモデラートで勝つと、返す刀でオークランドRTをもメイショウミツヤスで差し切ってしまったのである。人気ならまだしも5番人気と9番人気なのだから気にせずにはいられない。
セントウルSで富田騎手はテイエムスパーダの手綱を取る。今村聖奈騎手が乗って昨年のCBC賞を勝った馬だ。しかし近走は精彩を欠いており、今日は14番人気。前走13着ではそれも仕方あるまい。さすがに富田騎手が特別を全部勝つなんてことはないか。
とはいえ、休み明けの有力馬たちがスプリンターズSを見据える一方で、夏競馬を走ってきたテイエムスパーダはスプリンターズSは使わずにひと息入れるらしい。つまりここに全力投球。近走の不振は先手を取れないレースが続いていたからだが、珍しいことに今日のメンバーに逃げ馬はいない。しかも今日の阪神の馬場は逃げ切り決着ばかりの逃げ馬天国。夏と秋とが同居するこんな日なら、理由のつかない出来事が起きても不思議ではない。
実は思うところもあった。先月20日の札幌競馬場の8レース。3連単1773万円の札幌競馬史上最高配当が記録されたあのレースを勝ったのは富田騎手だったのである。しかも今日と同じ14番人気。目の前で観たから印象は強烈だった。それで調べたのである。するとそのレースを含め富田騎手は3回の単勝万馬券を炸裂させていた。こうなりゃ今日のテイエムスパーダはむしろ買いではないか。
ヴァトレニとレジェーロが内から好スタートを切ったが、そこまで速い脚はない。外から押してテイエムスパーダがハナを奪った。あとはノーマークの一人旅。なにせ持ち時計は彼女が一番。こうなれば簡単には止まらない。後方から追い込んだアグリに1馬身のリードを保って完勝。まるで小倉のスプリント戦を観るようだった。やはりまだ夏競馬が続いていたのかもしれない。
デビュー7年目の富田騎手は通算49回目の挑戦で嬉しい重賞初勝利。所属する木原一良調教師の管理馬で成し遂げたのだから、喜びもひとしおであろう。先月のエルムSでは1番人気ペプチドナイルでブービーに敗れる辛酸も舐めた。内心焦りもあったはず。なにせ同期には横山武史騎手がいる。この勝利を飛躍のきっかけにしたい。
テイエムスパーダは今村聖奈騎手と富田暁騎手にとって忘れ得ぬ一頭となった。その二人の関係者やファンも決して忘れることはない。そして私にとっても忘れられない一頭となった。44年間のキャリアで単勝万馬券の的中は初めてだと思う。そもそも私の買う単勝馬券はオッズに関わらず当たらないことで有名。それをして「殺し馬券」などという物騒な呼び方をされたこともあった。それでも長くやっていればこういうこともある。
***** 2023/9/10 *****
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