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2023年8月31日 (木)

【個体識別を考える①】替え馬事件

2017年7月27日の英国ヤーマス競馬場の1Rは、2歳未勝利馬7頭による直線6ハロン3ヤードの一戦。前走クビ差2着で初勝利を逃したフィアキャイ(Fyre Cay)が、単勝1.6倍の圧倒的1番人気に押されている。ところが、そのフィアキャイに1/4馬身差をつけて勝ったのはブービー人気の伏兵・マンダリンプリンセス(Mandarin Princess)。当然のように場内は騒然となった。

マンダリンプリンセスはここがデビュー戦。特筆すべき血統の持ち主でもない。単勝51倍の評価も仕方なかろう。なのに、堂々の先行抜け出し。見事なまでの完勝である。2歳馬離れしたその走りに人々が驚いたのも無理からぬ話だ。

だが、事態は思わぬ展開を見せる。

勝ったマンダリンプリンセスが、実は同じチャーリー・マクブライド厩舎に所属する3歳馬・ミリーズキス(Millie's Kiss)であることが判明したのだ。

ミリーズキスの成績は10戦して(1,1,4,4)。この時季の2歳未勝利馬相手に3歳1勝馬が勝ったところで、不思議でもなんでもない。むしろ不思議なのは、なぜそのような取り違いが起きたのか。外見的特徴だけで馬を識別する時代でもない。今ではすべての馬にマイクロチップが埋め込まれおり、個別識別はさほど難しくはないはずだ。

我が国に目を移せば、先々週8月19日の新潟3R新馬戦で、出走を予定していたエンブレムボムが、同じ厩舎の外国産馬エコロネオであることが発覚したばかり。大きなニュースになったが、この取り違えを見つけたきっかけのひとつがマイクロチップだった。

日本では規定により2007年から国内で生まれた全ての競走馬にマイクロチップが埋め込まれている。一頭一頭を識別する固有番号などが記録された集積回路で直径2ミリ、長さ14.6ミリほど。注射器でたてがみの生え際に埋め込み、専用の読み取り機を埋め込まれた部位近くにかざすことで、固有番号を識別することができる。これが導入される以前は、事前に登録された馬体の特徴を係員が目視で照合していた。そうなれば故意による「替え馬」を出走させることも可能。特に歴史の深い英国では「替え馬」問題に頭を悩ませてきた。

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最近では1982年にレスター競馬場で行われた3歳限定戦を大差で勝ったフロックトングレイが、実はまるで別の4歳馬であることが判明して事件となっている。一介の人気薄馬に過ぎなかったフロックトングレイがあまりに強い勝ち方をしたことが捜査のきっかけになったというから、騎手が上手くやれば隠し通せたかもしれない。直前にフロックトングレイに大量の賭けが行われていたことも不自然と言えば不自然だった。ともあれ、「誰も気付かないまま」というケースがおそらく存在するのであろうということを強く印象づける一件でもある。

冒頭に書いた英国のマンダリンプリンセスとミリーズキスの一件も単なる「取り違え」ではなく、故意の「入れ替え」の可能性を疑いたくなる。馬運車が競馬場に到着した際、2頭ともマイクロチップによる確認は受けたそうだ。だが、その後、「スタッフの手違いで」両馬が入れ替わったという。エンブレムボムとエコロネオの取り違えを発走直前に見抜いたマイクロチップも決して万能ではない。どれだけテクノロジーが進化しても、運用するのはあくまで人間であることを、忘れてはならないということだ。

 

 

***** 2023/8/31 *****

 

 

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2023年8月30日 (水)

メモリアルホース

今週の小倉2歳Sの登録頭数が12頭に留まった。

しかも3頭が未勝利で、そのうち1頭はなんと未出走。今週末の小倉には芝1200mの新馬戦も未勝利戦も用意されているから、わざわざ強い相手にぶつけることもない。仮にこの3頭が揃って自己条件に回れば9頭立てとなる。小倉2歳Sが10頭未満で行われたことは過去に一度しかなく、ジンクタモンオーが勝った1991年が9頭立てだった。実に32年ぶりのことが起きるかもしれない。

その一方で、今年で43回目となる小倉2歳Sがフルゲート18頭で行われたケースも過去に一度だけ。2017年に行われた第37回で、勝ったのはアサクサゲンキ。鞍上は武豊騎手だった。

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フルゲートの激戦でハイレベルのレースが繰り広げられると期待したが、終わってみれば1分9秒1の勝ち時計に拍子抜けした覚えがある。この日、小倉では芝1200mが4鞍行われたが、なんとこの小倉2歳Sがもっとも遅い決着だった。アンヴァルがラブカンプーを差し切った2歳未勝利より遅かったのだから、観ている方としては落胆も大きい。

勝ったアサクサゲンキはこの夏だけで4走目の競馬だった。しかも初戦が7月8日で中2週、中1週、中2週といずれも詰まった間隔で使われてようやく前走で勝ち上がったばかり。しかも勝った小倉戦が終わるやいったん栗東へ戻り、追い切りをしてからの再輸送を強いられた。体調も万全ではあるまい。しかし終わってみれば、その馬が1馬身以上の差をつけて勝ってしまったのである。レースレベルに疑問を抱きたくなるのも仕方あるまい。

しかしアサクサゲンキはその後も重賞戦線で活躍を続け、障害に転向してからも重賞2勝を含む5勝をマークしている。さらに出走メンバーの中にはのちに高松宮記念を制するモズスーパーフレアの名もあった。レースレベルは単純な時計の比較で測れるようなものではない。

アサクサゲンキを管理する音無調教師は、この勝利によって小倉の平地重賞完全制覇を達成。また、武豊騎手はこの勝利が決め手となり「小倉ターフ賞」に選ばれた。さらに2021年にアサクサゲンキが勝った小倉サマージャンプ優勝は、熊沢重文騎手の障害通算254勝目となって歴代最多に並ぶ記録となり、連覇を果たした翌年の同レースでは石神深一騎手に史上初となる障害重賞完全制覇をプレゼントしている。こうなりゃ小牧加矢太騎手の重賞初勝利も―――と期待を集めたが、今年はあと一歩足りなかった。

合理的な説明はできないが、メモリアル勝利に名前を残すタイプの馬はたしかにいる。アサクサゲンキは次に誰の記録に貢献するだろうか。個人的には音無調教師の通算1000勝ではないかと密かに期待している。偉大な節目まであと41勝だ。

 

 

 

***** 2023/8/30 *****

 

 

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2023年8月29日 (火)

常識を超えてゆけ

今度は右肘が痛む。体調不良が止まらない。

久しぶりに複数のカメラ機材を持ち歩いたせいであろうか。札幌記念からサマーセールに向かえばこうなることは分かっていた。競馬場とセリ会場とでは使う機材がが異なるのである。仕事でもないのに面倒だなとは思ったけど、今回は頑張って持ってきた。それでこのザマである。ペットボトルすら持てない。

とはいえ、若い頃は同じ荷物を毎日担いでいた。当時は仕事だから仕方ない。重いと言ってもたかだか10キロ前後。今では、それをちょっと持ち運んだだけで肘を壊してしまうのだから情けない。大谷選手が聞いたら笑うだろう。私も学生時代に野球をやっていたから分かる。私の右肘も靭帯の痛み。ただし大谷選手と違って手術は必要としない。1週間も放っておけば治る。それも分かっている。

馬も靭帯を損傷する。とくに繋靱帯炎は屈腱炎に匹敵する競走馬の難病のひとつ。中手骨の裏側が炎症を起こすもので、種子骨の骨膜炎や骨折などに伴って腫れる場合と、過度の球節の屈曲によって靱帯のみが損傷を受ける場合がある。やっかいなことに、その回復には時間を要するケースが極めて多い。

先日、松山弘平騎手がノルマンディーファームで休養中のデアリングタクトに再会したというニュースを読んだ。同馬も繋靭帯炎に見舞われた一頭である。2020年、牝馬として初めて無敗で牝馬三冠を制したものの、翌年の香港遠征後に繋靭帯炎を発症。1年以上の休養を余儀なくされた。昨年5月の復帰後は好走こそ続けているものの、1着ゴールが遠い。

古くはシンボリルドルフやメジロマックイーン、近年ではハープスターやフィエールマンといった名馬が繋靭帯炎によって引退に追い込まれている。思えばデアリングタクトの父エピファネイアも、さらにその母シーザリオも、現役引退の理由は繋靭帯炎だった。なんの根拠もない「血の呪い」を笑い飛ばすためにも、デアリングタクトは勝利が欲しい。

症状の重軽や部位にもよるが、繋靭帯炎を克服した例もなくはない。知られているところではオグリキャップが有名。3歳にして有馬記念を勝ちながら4歳春シーズンを全休したのは、繋靭帯炎を発症したためだ。しかし秋には戦列に復帰。オールカマー、毎日王冠、天皇賞秋、マイルCS、JC、有馬記念と走りに走りまくって、①①②①②⑤着だから凄い。

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新冠にオグリキャップの功績を讃える「優駿記念館」という施設がある。館内にはオグリグッズが勢ぞろい。ゆかりの品の展示され、歴戦の映像が流されている。外にはオグリキャップの立派なお墓が建てられていて、手を合わせるファンの姿も少なくない。オグリキャップの引退から既に33年が経過。20代はもちろん30代の競馬ファンにしてもオグリキャップを観た人はほとんどいないはず。ペガサスステークス、京都四歳特別、高松宮杯、等々。彼が勝った重賞は今ではレース名が変わってしまっているものも少なくない。それでも記念館には大勢の若いファンが詰めかけていた。

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むろん「ウマ娘」の効果もあろう。しかしそれだけではないような気がする。

Musume

何にもましてオグリキャップは常識を超越していた。繋靭帯炎を克服して連闘でGⅠレースを使われ、世界レコードにクビ差まで迫り、引退レースの有馬記念では誰もが予想しなかった有終の美を飾ってしまうのである。常識を打ち破る活躍への憧れは時代を隔てても変わらない。だから人々は大谷選手に熱狂し、オグリキャップをリスペクトするのであろう。大谷選手は手術を受ける可能性が高いようだ。JCでの復帰を目指しているデアリングタクトと合わせて応援しよう。

 

 

***** 2023/8/29 *****

 

 

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2023年8月28日 (月)

夏の終わりに

北九州市を中心に絶大な人気を誇る「資さんうどん」が、ついに大阪への初出店を果たすというニュースが飛び込んできた。

記念すべき大阪1号店は「資さんうどん今福鶴見店」となる模様で、11月オープンの予定だという。さらに嬉しいことに、大阪進出に先駆けて今日から阪神百貨店梅田本店に催事出店するときた。土曜の小倉行きを断念して落ち込む私にとって、これ以上の天恵はあるまい。さっそく暑さをものともせずにやってきた。

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1976年に北九州市で創業した「資さんうどん」は、サバをメインにしたダシと、軟らかくも比較的コシのある麺で人気を誇る。ファーストリテイリング執行役員だった佐藤崇史氏を社長に迎えてからは拡大路線を鮮明にし、福岡県内はもとより、山口県、佐賀県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、岡山県の8県で64店舗を展開中。65店舗目となる大阪出店は、関西エリア進出の足掛かりという点で注目が集まる。「資さんファン」としては成功を祈らずにはいられない。

しかし大阪人はうどんに対して独特の目線を持っている。有名タレントがテレビ番組で香川県民に対して「うどんの本場は大阪やろ」と当たり前のように発言するお土地柄。麺を食わす讃岐うどんに対しても、ダシに重きを置いた「関西讃岐」という独自のジャンルを生み出すことで受け入れてきた。「資さんうどん」が受け入れられるかどうかは正直分からない。

先週土曜のこと。小倉に行けないならせめて場外で馬券を買い、その近くで博多うどんでも食べて小倉気分を味わおう―――。そう思ってネットで店を探したがこれがどこにもない。難波に1軒あったはずなのだが、すでに店じまいしていた。これは悲しい。このあたりの事情は、博多うどんや小倉肉うどんが大ブームの東京とだいぶ異なる。

それでも今日訪れた梅田の催事店舗は大盛況であった。14時の時点で順番待ちは20人程度。モノ珍しさも手伝っているかもしれないが、まずは食べてもらうことが先決であろう。

Gobo

中太平打ちの麺はふんわり軟らか。しかし、啜ればびよーんと伸びるしなやかさは、福岡県内の他のうどんチェーン「ウエスト」とも、「牧のうどん」とも、やはり異なる。ごぼ天と甘辛く炊いた牛肉の旨味がしみ込んだツユはやや甘めだが、小倉で食べた時はもっと甘かった気がしないでもない。ひょっとしたら関西の舌に合わせて調整しているのか。あるいはただ単に初日でバラつきがあるのか。事情は計り知れぬが、ダシにうるさい大阪人がこれをどう評価するのか、興味は尽きない。

ともあれ私個人は満足。小倉に行けなかった悔しさも多少は晴れた。2023年の小倉開催は今週で終了だが、今週末は行くことができない。「ナツコク」の言葉に象徴されるように、小倉と言えばやはり「夏」。競馬ファンなら誰もがそう答える。その夏の小倉開催が4週のみというのは、やはり短い。今年の夏はこれほどまで長く厳しいのに、小倉の夏はあっと言う間だった。

 

 

***** 2023/8/28 *****

 

 

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2023年8月27日 (日)

23年シーズン種付け頭数発表

社台スタリオンステーションの2023年シーズンの種付け頭数が発表になった。最多はキタサンブラックで、242頭の種付けをこなしたという。昨年から65頭も増やした計算になるが、世界ランク1位イクイノックスの父となれば自然な流れであろう。同じような理由でサトノクラウンが昨年比倍増の163頭。スワーヴリチャードは90頭にとどまったが、来年は大きく増やすに違いない。

この手の数字は上位ばかりがクローズアップされるが、私はダイワメジャーの数字が気になった。今年の種付け頭数は12頭に留まっている。一昨年が51頭で、昨年は34頭だった。気がつけば22歳。なにせキングカメハメハと同期である。後継のアドマイヤマーズが129頭の種付けをこなしていることを踏まえれば、ダイワメジャーが種付けを行うのも今年が最後だと思った方が良さそうだ。

一方で産駒の活躍は続いている。初年度産駒が3歳になった2012年から昨年まで11年連続でサイアーランキングのトップテンを維持しているのだから凄い。今日の新潟2歳Sも2頭出し。それだけでも立派だが、アスコリピチェーノが見事差し切って優勝した。アスコリピチェーノも、ダートで活躍中のドンフランキーも、これからまだまだ活躍する。サイアーランキング12年連続トップテン入りも夢ではない。

代表産駒は先述のアドマイヤマーズのほかに、カレンブラックヒルとコパノリチャードがGⅠを勝って種牡馬となっている。早いうちから活躍し、古馬になってからもスケールアップするその特徴はダイワメジャー譲り。しかし、さらにさかのぼれば、ダイワメジャーの母スカーレットブーケを通して、その父ノーザンテーストの特徴を受け継いでいるのだろう。その産駒は「三度変わる」とも言われた。ダイワメジャーは今の社台グループの礎を築いた大種牡馬の血を受け継ぐ功労者だけに、そろそろゆっくりさせてあげたい。

若い頃のダイワメジャーはスタッフを困らせる存在だったという。騎乗者を振り落すのは日常茶飯事。鞭を極端に嫌うし、ゲートにも入らない。競走馬になるのは難しいかもしれない。諦めかけた時期もあったと聞く。ようやく果たしたデビューも2歳の暮れ。有馬記念当日にまでずれ込んだ。しかし子供らしさはまるで抜けていない。パドック周回中に眠りそうになってガクッと膝から崩れかけたのは、今となっては笑い話である。パドックでは2人引き、プラス後ろにもう1人。パドックを取り囲んだファンたちは、その光景をきっと不思議に思ったことだろう。それくらいしなければならないヤンチャ坊主だった。

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あれから20年を経て、今ではすっかりおとなしくなったダイワメジャー。放牧中のその泰然とした姿まで、晩年のノーザンテーストに重なるものがある。

 

 

***** 2023/8/27 *****

 

 

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2023年8月26日 (土)

暑さに負けて思うこと

北海道から帰阪してすぐに体調を崩した。

ボーっとしてしっかり歩けない。椅子から立ち上がるとフラフラする。なにより食欲がない。どうやら熱中症。ずっと注意していたつもりだが、馬に囲まれていると興奮しているせいか体調の異変に気付かないのかもしれない。あるいは筋肉痛と同じでトシをとると症状が遅れてやってくるのだろうか。いずれにせよ北海道で熱中症になるとは思わなかった。

今日は小倉に行く予定にしていたがドタキャンである。小倉サマージャンプのアサクサゲンキを現地で応援したかった。ひまわり賞も観たかった。ドキドキうどんも食べたかった。でもこればかりは仕方ない。10年前ならこの程度で自重することはなかったが、体調を崩すことが怖くて勝負に出られなくなった。要するにトシなのである。

真夏でも連闘で遠征を繰り返していた若い頃が懐かしい。そう思いつつ、ひまわり賞の出馬表を眺めれば3連闘で挑む馬が10頭もいる。夏の小倉開催を4週間に短縮すればこうなることは分かっていた。九州産馬にとっては、ひまわり賞が行われる3週目までが勝負。若いって素晴らしい。

小倉サマージャンプは暑熱対策として午前中に行われた。道中は中団外目で脚を溜めた1番人気のテーオーソクラテスが、直線で大外から豪快に突き抜けて嬉しい重賞初制覇。そして小坂忠士騎手は11年ぶりの重賞勝ちである。良かったね。だがゴール通過後後の小坂騎手の様子がおかしい。ちょっとフラついている。鞍かアブミのトラブルか―――そう思った瞬間、外側に倒れて馬場に叩きつけられた。おいおい!大丈夫か?

落馬の原因は熱中症だという。それを聞いてまた驚いた。今回、異例の重賞レース午前実施に踏み切ったのは暑熱対策のため。馬券売上やファンの注目度を犠牲にしても、ウマと人を暑さから守らなければならない。そういう意味では画期的な試みである。しかしそれでも熱中症は起きた。大きな事故につながらなかったのは不幸中の幸いであろう。

来夏の小倉では、さらなる暑熱対策として11時半頃から15時頃までレースを休止することがすでに発表されているが、11時20分発走でも熱中症を防げなかった。夕方なら涼しいかもしれないが、西日が目に入る恐れが高く、影も長く伸びる時間帯の障害レースは避けるべしとされる。JRAは難しい対応を迫られそうだ。

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来夏に予定されている昼間のレース休止は、小倉と新潟が対象。札幌は暑熱対策の対象には含まれていない。しかし今日の最高気温を振り返ると、小倉(北九州市小倉南区)が30.2度で、新潟(新潟市東区)は33,6度。対して札幌(札幌市中央区)は35.6度を記録している。もっとも暑熱対策を必要とする競馬場が、よもや札幌になろうとはJRAも想定外だったに違いない。私自身、実際に熱中症になってみなければ、こういうことを真剣に考えることもなかった。暑さをナメてはいけないのである。

 

 

***** 2023/8/26 *****

 

 

 

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2023年8月25日 (金)

馬産を支えるインド人

盛況のうちにサマーセール5日間の日程が幕を閉じた。

落札率78.1%、売却頭数1068頭。売却総額75億850万円は、2003年に「サマーセール」という名称に統一されて以降の最高記録。購買登録者数にしても、少なくとも私が来るようになってからはもっとも多かったように思う。そこはやはり「我が国最大の1歳市場」と謳うだけのことはある。

その巨大セリを支えていたのはインド人であった。実際に数えたわけではないが、とにかくセリ会場はインド人だらけだった。

Lumbini

マックスバリュ富川店の正面にあった回転寿司「海宝」が、インド料理店「ルンビニ」に変わっていたことは、日高におけるインド人の急増と無関係ではなかろう。門別競馬場のポラリススタンドにも4年前に「ルンビニ」が出店。競馬場内の本格的インド料理店は他に例がない。お客さんもインド人。店で働くスタッフもインド人。隣のパドックで馬を引く厩務員もインド人という有様。インド人が支えているのはセリだけではない。もちろん生産牧場で働くインド人も大勢いる。そのおかげか知らんが、全国の軽種馬生産頭数は2015年の6858頭から増加を続け、昨年は7782頭にまで回復した。わずか7年間で千頭近く増やしたことになる。

コロナ禍が馬券売り上げ増加をもたらし、それに伴って馬が飛ぶように売れるようになった。そうなると90年代のように1万2千頭を超える日も来るのだろうか―――?

そんな独り言のような問いかけに近くにいた牧場主が答えてくれた。

「増やしてはダメ。今は一頭一頭の質を上げること。それだけに専念しないと」

その決意に満ちた口調はやはり自身への語り掛けのようにも聞こえる。

馬が売れるようになったからと言って、競馬場の数は80年代の37場から、現在の25場に減ったまま。生産頭数が増えても競馬に使える頭数が増えるわけではない。以前は売れ残った馬は生産者が所有して競馬に使うことができた。今ここで生産頭数を増やせば、競馬場に入れない馬が増えるだけ。走ることすらできぬまま、処分せざるを得ない馬が溢れかねない。

農林水産省の21年の統計によると、北海道の生産者713戸のうち93%にあたる662戸が日高地方にあった。そのうち「後継者あり」は29%、「なし」は71%という調査結果が出ている。一方、浦河町で2015年まで住民登録がゼロだったインド人は、2020年の国勢調査で169人だった。その後の3年間でさらに倍増していると試算されている。日高の馬産にインド人が寄与する割合は決して小さくない。

外国人が無期限で働ける在留資格「特定技能2号」の対象を農業にも広げる方針を政府が示す中、浦河町などはヒンディー語の母子手帳を発行したり、税金や健康保険制度、ごみや交通ルールに関するセミナーを開くなど、多種多様な生活支援を展開。日高のこうした状況は、外国人労働力を受け入れるモデルケースとして、各地の自治体から注目を集めているようだ。

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インド人の皆さんが日本の馬産を支えて下さっている現状には頭が下がる思いがする。しかし、生産頭数が増えること自体には危機感を感じなくもない。件の牧場主も同じ意見だった。同じ家畜でも、牛や豚なら何かしらの機関が生産調整に動いて生産過剰を避ける仕組みが整っている。だが、馬にはそれがない。不幸な馬を増やさぬために自らをコントロールできるのか。すべては個々の生産者の一存にかかっている。

 

 

***** 2023/8/25 *****

 

 

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2023年8月24日 (木)

おにぎりあたためますか

北海道のコンビニには本州では見かけない商品が並んでいて、眺めるだけでも楽しい。カツゲン、ガラナ、リボンナポリン、等々。もちろんコンビニの主力商品たるおにぎりも例外ではない。遠浅の「ローソン」でこんなおにぎりを見つけた。

Yakiben

キャベツや天かすも入っていて、まったく想像通りの味。パッケージには温めて食べると美味しく食べられると書かれているが、そのままでもじゅうぶんイケる。そういえばレジで「おにぎりあたためますか?」と聞かれなかった。北海道の、しかもローソンだというのに……。

Okaka

北海道のコンビニを代表する「セイコーマート」では、ホットシェフのおにぎりが見逃せない。ホットシェフとはいわゆる店内調理のこと。今では珍しくないこのサービスを他社に先駆けて挑戦したのは、まさしく開拓魂の為せる業であろう。でなければ「ベーコン」と「おかか」が、おにぎりの中で奇跡的な出会いを果たすことも無かったに違いない。

Wasabi

ホットシェフではないが、セコマのおにぎり「山わさび」は必ず食べることにしている。山わさびは北海道ではメジャーな薬味で、清流に生える本わさびとは異なり土中に生える。その辛さは本わさびの1.5倍以上とされ、涙が出るほど辛い。ために、おにぎりのパッケージには「辛味の苦手な方はご注意ください」とわざわざ注意書きまでされている。実際に食べてみるとやはり辛い。今回も買ってすぐ車の中で食べたのだが、ツ~ンという辛さが鼻腔を襲って思わず悶絶、しかるのちに涙が溢れ出た。外から人が見たら相当ヤバい光景だったに違いない。しかしこれが不思議とご飯に合う。

静内の和食店「あま屋」では、豚丼の薬味にちょこんと使われていた。なるほど、ややもするとくどく感じる豚の脂感をさっぱりさせるだけでなく、強烈な辛味が肉の甘味を見事に引き出している。厚真の豚丼も旨いが「あま屋」の豚丼も旨い。

Amaya

わさびと名が付くだけあって、北海道では寿司店でも良く使われている。写真は札幌記念の夜に立ち寄った店のタラコの握り。たらこの鮮やかな赤と、山わさびの白のコントラストが美しい。もちろん味も格別。タラコの塩味と酢飯の甘味。山わさびの鋭い辛味がその両方を際立たせる。

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さらに「ファミリーマート」ではこんなおにぎりを見つけた。

Oguri

ウマ娘とのコラボ商品ですね。ただ、これは北海道限定商品ではないらしい。それにしても、なぜオグリキャップが唐揚げマヨネーズなのだろうか? よくわからないけど、美味しかったです。

 

 

***** 2023/8/24 *****

 

 

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2023年8月23日 (水)

史上もっとも暑い夏

北海道は猛暑が続いている。今日の札幌の最高気温は36.3度。なんと観測史上最高気温を記録してしまった。おととい2学期が始まったばかりの小学校も、この暑さを受けて急遽休校に。当然の判断であろう。本州の小学校ようにクーラー設置が進んでいるわけではない。

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3日目のサマーセール会場では上場馬が暴れてケガ人が出た。誰しも疲れが出る頃合い。馬を見たり見せたりするのは屋外だし、屋内のセリ会場も外よりは少し涼しいかなといった程度だから、特に熱中症には注意が必要だ。じゅうぶんな休息とこまめな水分補給、そしてしっかりとした栄養補給が欠かせない。

休息という点では今回は厚真に宿をとった。5年前の北海道胆振東部地震で震度7を経験したあの厚真。直後に我が国初のブラックアウトを引き起こしたのは厚真火力発電所の停止だったことも、まだ記憶に新しい。それまで道外の大半の人が知らなかったであろう厚真町だが、実はノーザンファームや社台スタリオンまで15分、静内へも1時間20分と意外と便利な場所だったりする。セリ通いという点では文句はない。なにより直前の予約だったにも関わらず、ホテル「こぶしの湯あつま」にはまだ若干の空室があった。なにせ日高管内のホテルはどこも例外なく満室である。

ただこちらのホテル、館内のエアコンが故障した状態が続いているので注意が必要だ。各部屋にはウインドエアコンを設置する緊急対応が施されているが、廊下はサウナのごとき蒸し暑さ。温浴施設やサウナを併設しているせいで、その熱と湿気が建物内に充満している。半月ほど前までは部屋のウインドエアコンさえも無かったというから恐ろしい。暑さのあまり駐車場のクルマの中で夜を明かす宿泊客もいたようだ。北海道とは思えぬ話だが、もちろん今では快適に過ごすことがてまきる。休息はこれでばっちり。

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栄養補給についてはセリ会場に設営された屋台村のお世話になっている。地元のホテルや人気店が出店しているのだが、牧場スタッフの中には2~3人前を食べていく人も少なくない。「無理してでも突っ込まなきゃ倒れる」と言いながら、みんなバクバク食べている。早朝の牧場業務を終えてから馬を輸送し、午前中の展示をこなして、正午にようやくセリがスタート。そして長い長いセリの時間帯を経て、夜8時過ぎにようやく1日が終わる。加えてこの暑さ。自己防衛のためにも食べるしかない。

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ステーキに行列ができているのは、単に旨いからだけでなく、エネルギー効率を考えると自然と脳がそうさせるなるのであろう。馬を見るだけの私とて、ステーキ弁当を平らげてからジンギスカン弁当をやっつけ、さらに小樽名物・若鶏の半身揚げをバリバリと食べた。多くの参加者がここで昼夕2食を頂くと思えば、町全体がセリを支えているのだと実感する。

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しかし、私の夕食はホテルに戻ってから。せっかく厚真にお世話になっているのだから少しでも厚真にお金を落とそうと決めてきた。厚真産の放牧豚を炭火で焼いて甘辛いタレを絡めた「あつま豚丼」が名物らしい。せっかくだから特盛で注文。丼から肉がはみ出す、その壮観なビジュアルに思わず唾をのむ。炭火で焼かれた豚肉は柔らかく、「追いダレ」だけで食べるお米も実に美味しい。その炭も、お米も、さらにこの器まで厚真産だというから徹底している。

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ともあれ一日で牛、羊、鶏、そして豚の4冠制覇。さすがにウマというわけにはいかないが、さんざん見ているからヨシとしよう。

 

 

***** 2023/8/23 *****

 

 

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2023年8月22日 (火)

ルーラーシップ産駒のキセキ

北海道は今日も真夏日。これで34日連続だという。もちろん最長記録。札幌近郊では35度を超えて猛暑日を記録したところもあったとか。暑さに馴れぬお土地柄ゆえ熱中症搬送も増えているようだが、ここまでくると人間より家畜や農作物も心配になってくる。

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サマーセール上場馬の血統を見ると「母の父ルーラーシップ」が案外多い。一緒に馬を見ていた同行者にそう言ったら、「そりゃ、16歳ならそんなもんだろ」と言われた。

そうか、ルーラーシップの引退・種牡馬入りなんて、つい最近の出来事だと思っていたけど、もうそんな齢か。産駒は総じて堅実に走るという評価が定着したのは種牡馬として悪い話をではあるまいが、ボチボチ飛び抜けた産駒の誕生が待たれる。

セリを抜け出して、キセキを見に行ってみた。あまりの暑さに音を上げて逃げた、と書いた方が正しいかもしれない。

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キセキは門別にいた。多くの馬たちが馬房の中でも日の当たらない隅の方で暑さを凌いでいる中、強烈な午後の陽射しをものともせずに馬房から顔を出している姿には雄々しさを禁じ得ない。まさに泰然自若。ゲートからとんでもないペースで逃げたかと思えば、大きく出遅れてみたりしたのも、そんな彼の一面が現れていたのかと思わせる。

Kiseki2

思えばルーラーシップもそうだった。よくよく見れば目元も身体もルーラーシップに似ている。初年度となった昨年の種付け頭数は79頭。まずはここである程度の結果が求められる。結果が出なければ出るまで待ってもらえるほど甘い世界ではない。キセキの奇跡はこの79頭に託された。

ルーラーシップにしてみれば後継種牡馬候補は多ければ多いほど良かろう。すでにGⅠを勝っているドルチェモアは最有力候補。フリームファクシやソウルラッシュも、これからの活躍次第でじゅうぶんチャンスはある。

ただ、個人的にはエヒトに期待したい。今のところローカルのハンデGⅢ2勝に留まるが、小倉記念優勝の勢いそのままにコーフィールドカップまで昇り詰めたメールドグラースの例もある。そのメールドグラースもルーラーシップ産駒。現在はトルコで種牡馬入りしている。案外ルーラーシップの血は海外で広まるかもしれない。それはそれでヨシとすべきであろう。

 

 

***** 2023/8/22 *****

 

 

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2023年8月21日 (月)

お隣同士の奇跡

早朝から社台スタリオンへ。道内の小学校は今日から二学期。つまり秋である。なのに今朝も蒸し暑い。昨日と変わらない。

スタリオンへの用向きは挨拶。それだけ。種馬は見ないと決めている。サリオスとか、エフフォーリアとか、ポエティックフレアとか見たい馬はたくさんいるけど、見たらその仔を欲しくなるに違いない。それでも見てけ見てけと言うので「それではリアルスティールを」ということになった。

リアルスティールが暮らすのは、かつてディープインパクトが使っていた馬房。もちろんディープインパクトはいない。いつも一緒だった猫も先日亡くなったらしい。代わりにノーザンホースクリニックからやって来た新入りがいた。元ノラ仕込みの俊敏さを活かして、ネズミ退治に一役買っているそうだ。

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リアルスティールを見たかったのは、いまだに彼の「色」を見い出せないから。短距離で活躍できるスピードがありながら、菊花賞2着の実績からすれば距離をこなしても不思議ではない。母父ストームキャットだからダートも問題ないはず。その万能性がかえって足枷になっていやしないか。ラジオNIKKEI賞で3着だったレーベンスティールのように芝1800mで活躍するのがやはり王道か。しかし、この子の外見はトウカイテイオー色が強い。

「レーベンスティールは間違いなく大きいところを取るはずです。そうなれば彼がフォーマットになる」

スタッフの方の言葉に異論はない。レーベンスティールたけでなく、リアルスティールにとっても大事な秋になることは間違いなさそうだ。

灼熱の静内へ。

昨日の札幌競馬場ほどではないが、サマーセールも混んでいた。渡された購買者登録番号の数字もやたらと大きいし、セリの進行にも時間がかかっている。

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上場番号166・トウカイライフの2022は、レーベンスティールの半弟。父親はリアルスティールからナダルに変わっている。800万から始まったセリは、激しい攻防の末にJRAが競り落とした。その額1600万。

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父親がリアルスティールからナダルに変われば、タイプも大きく変わる。しかしこの2頭の種牡馬、普段生活している馬房が実は隣同士だったりするから面白い。ついさっきも680キロを誇る雄大な馬体を拝んできた。ナダルの「色」を言葉で表せば、馬格がありながら軽快なスピードがあることであろう。しかし父が変わっても母の父がトウカイテイオーであることは同じ。テイオーを彷彿とさせる柔軟な繋を見れば、芝での走りを見てみたくもなる。JRA育成部門の手腕に期待しつつ、来年を楽しみに待とう。

 

 

***** 2023/8/21 *****

 

 

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2023年8月20日 (日)

16年越しの札幌記念

札幌競馬場に来ている。

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2014年に新装なった札幌競馬場に足を運ぶのは初めて―――のつもりだったが、トレーニングセールには来ているから厳密には初めてではない。セールではスタンドから馬を走る姿を観るのはもちろん、パドック内から出張馬房まで歩き回っているのだから、むしろ隅から隅まで知っているつもり。ただ馬券を買ったことがないだけだ。

札幌記念を観戦するのはこれが初めて。我ながら意外な気がするが、これは間違いない。

過去に札幌記念が行われる日に札幌までやって来たことならある。このとき、北海道の知人に誘われて札幌記念で会おうという話になった。もともと翌日からのサマーセールに顔を出す予定である。ならばと北海道入りを一日早めたが、あろうことか競馬開催そのものが流れてしまった。2007年のこと。そう、馬インフルエンザの蔓延で競馬界が大混乱になった、あの8月の出来事だ。あれから16年。馬インフルエンザも新型コロナの惨禍さえもやり過ごしてようやく降り立った北海道の地は気温31度、湿度98%。大阪や京都をも遥かに凌ぐ、蒸し風呂地獄だった。

「なんだ。来てたのか。どうりで暑いはずだ」

私の顔を見つけた社台のスタッフが茶化しに来た。聞けば、いつもならお盆を過ぎれば一気に涼しくなるはずなのに、今年はまったくその気配が無い。しかも昨夜から今朝にかけてまとまった雨が降った。おかけでこの蒸し暑さだという。「馴れてない我々にはキツいよ。これでは馬場も乾かない。去年とは違う札幌記念になる」

最後のひと言は馬券のヒントだろうか。少なくとも陽気的には昨年の札幌記念とまったく違うレースになることはこころに留めておこう。それはともかく、ヒトを松岡修造さんみたいに言わないで欲しい。

実際、昨年とはまったく違うレースになった。絶好のスタートを切ったはずのジャックドールの行きっぷりが悪い。代わってハナを奪ったユニコーンライオンのペースにしても馬場を考えれば速すぎる。結果、1コーナーでは後方に控えながら徐々にポジションを上げる味のある競馬をしたプログノーシスの圧勝だった。「差し切った」とか「届いた」ではなく、この短い直線で4馬身も突き放してみせたのだから、強いのひと言に尽きる。

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高い能力は誰もが認めるところなのに、体質が弱く、続けてレースを使うことができない。ために条件戦をひとつひとつ勝ち上がってきた未完の大器が、前走の香港でついにGⅠに初挑戦して2着に健闘した。負けた相手は香港の至宝・ロマンティックウォーリアーである。香港の蒸し暑さや、緩い馬場を克服したことを思えば、今日の札幌なんてどうということもなかったか。

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体質が弱いなりに、陣営が思い描いた未来予想図通りの活躍を見せてきたプログノーシス(馬名は「予知」の意)なら、今日の札幌記念も勝って当然だったのかもしれない。思えば私が初めて札幌記念を観ようと足を運んだ2007年に、ディープインパクト産駒は未だこの世に存在していなかった。あれから16年が経ち、プログノーシスはディープインパクト産駒最後の大物となる可能性もある。歳月の速さには驚くばかり。「ポテンシャルは高いが、発揮するのが難しい馬」と川田将雅騎手が評する未完の大器から、この秋は目が離せそうもない。

 

 

***** 2023/8/20 *****

 

 

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2023年8月19日 (土)

常識を変えてゆけ

阪神競馬場にやってきた。

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もちろん今日はパークウインズ。つまり馬の姿はない。ついでに人の姿もほとんどない。この暑さなら当然であろう。

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先週、和歌山市内のビルの地下にある場外でベットリ馬券を買って過ごしたせいか、今日はもっと風通しのよい場所で馬券を楽しみたくなった。ついでに「フランケル」のうどんも食べたい。宝塚記念から2か月近く。ぼちぼち禁断症状が出てきている。そういう意味では「ついで」は馬券の方で、主たる目的はうどんであろう。そういう仁川訪問も悪くない。

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仁川駅を降りたのは正午過ぎ。時間が時間だけに並ぶことを覚悟したが、行列の姿が見えない。やばい!ひょっとしてお盆休みか?!と思ったが順番待ち用の椅子は出ている。恐る恐る店内を覗いたらやっていた。ご主人から「いらっしゃいませ!」の声が飛んでくる。つまりいつもの客の大半は競馬ファンということか。カウンター席に座ると「開催していないのにありがとうございます」と言われたから、そういうことなのだろう。

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うどんを食べにわざわざ来たのだから、いつものように鶏天ぶっかけをサッと啜って終わりにするのはもったいない。そこで選んだのが「高菜しらす明太釜玉」。こちらで釜玉を食べるのは初めてだが、生醤油ではなく、専用のダシをかけて食べるところが珍しい。ダシじゃ物足りないような気もするが、様々な具材の味を生かすための配慮に思える。実際、食べ終えた時点で物足りなさは一切感じなかった。いつもと違うメニューにトライできるのも、非開催日の心のゆとりが為せる業かもしれない。

新潟のメイン・日本海Sは特別戦にしては半世紀以上の歴史を誇る名物レース。ダイワテキサスもこのレースの優勝馬にその名を刻んでいる。
1998年当時、新潟競馬場は右回りだった。当時7月に行われていたこのレースを7馬身差で勝ったダイワテキサスは、次走に関屋記念をチョイス。一気の距離短縮をものともせず、1分32秒7の好時計で快勝している。重賞を5勝もしたダイワテキサスの、これが初めての重賞タイトルだった。

日本海Sが準オープンになった1997年以降、新潟競馬場の改修工事等もあり施行回数は20回だが、3歳馬による優勝は記録されていない。理由は、3歳馬の出走そのものが少ないから。なにせ20回でわずか4頭である。菊花賞を展望するような3歳馬にとって、トライアルを使うにせよ、トライアルを使うにせよ、3つ勝っていれば賞金的にはほぼ足りている。わざわざ新潟まで連れて行って使う必要を感じないのかもしれない。

しかし今年は3歳馬が3頭も出走してきた。大レースであればあるほど間隔を空ける傾向が広がりつつある昨今の潮流が影響しているのかもしれない。

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結果は1番人気の3歳馬ドゥレッツァが4連勝でオープン入りを果たした(※写真は前走時のもの)。父はドゥラメンテ、母はNZのオークス馬だから3000mは歓迎のクチであろう。本番でも一定の人気を集めることは間違いない。明日の札幌記念は天皇賞を占う重要な一戦。いつもと違うことにトライしていれば、いずれそれが当たり前になるということだ。

 

 

***** 2023/8/19 *****

 

 

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2023年8月18日 (金)

走り続けるダービー馬

おととい笠松で行われた重賞・くろゆり賞に遠征していた兵庫のスマイルサルファーが、並み居る強敵を堂々差し切って重賞3勝目を挙げた。ダノンファラオを筆頭に強力南関東勢4頭を相手にしての勝利だから価値がある。4角では後方3番手。小回りの笠松では絶望的なポジションと言っても良い。そこから大外を豪快に追い込んでの快勝ぶりに、2年前の兵庫ダービーを思い出した。同期のツムタイザンが摂津盃で復活を遂げたことで、スマイルサルファーにも期するところがあったのかもしれない。

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ともあれ、一昨年のダービー馬がこうして他地区の重賞を勝った。今年のダービー馬スマイルミーシャも、つい先日行われた初の古馬対戦を圧勝でクリアしたばかり。そうなると昨年のダービー馬バウチェイサーの動向が気になる。そう思っていたら、今日の園田メイン・競馬ブック杯の出馬表に名前があるではないか。

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1番人気は園田再転入から3連勝中のメイプルプリン。驚くことにオッズ1.1倍となっている。ここ2戦はワンサイドの逃げ。なのに摂津盃を補欠1番手のまま除外されたことが、結果的にファンをインスパイアさせたのかもしれない。

意外なことに17戦のキャリアで1700mは初めて。園田の1700mはスタートしてすぐコーナーを迎えるため、ペースがあがりやすい。1870mで5勝していることを考えれば、距離の壁に泣くことはあるまいが、思うような競馬ができるかどうかは気になるところ。

一方のバウチェイサーは2番人気。1400mばかり使われて4連敗中だが、1700mに変わるのは悪いことではあるまい。あとはマイペースの逃げを打てるかどうか。同型メイプルプリンより内側の枠を引いた以上、ダービー馬の意地とプライドに賭けてハナを奪いに行くはずだ。

しかし終わってみればメイプルプリンの圧勝。1キロの斤量増も、逃げられなくても、ダービー馬相手でも関係なかった。なにせ8馬身差は凄い。20年前の船橋・クイーン賞を5馬身差でぶっちぎった祖母メイプルスプリングの爆発力を思い出す。こうなると除外された摂津盃での走りを観てみたかったと思わずにいられない。

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バウチェイサーは逃げることはできたものの、最後は脚が上がって4着。もともと暑い時期は得意ではないとも聞く。そもそもダービー馬の看板を背負って走り続けること自体が楽なことではない。あさっては札幌記念。シャフリヤールも走り続けている。

 

 

***** 2023/8/18 *****

 

 

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2023年8月17日 (木)

早いか、遅いか

しつこく和歌山の話を続ける。

和歌山県の皆さんにはスーパー「オークワ」と同じくらいお馴染みのことだと思うが、和歌山のラーメン屋さんには「早寿司(はやずし)」というお寿司がテーブルに置いてあることが多い。今回、DASH和歌山近くの食料品店に2種類並んでいたので、つい両方とも買ってしまった。どちらも和歌山市内のラーメン店でよく見かけるお寿司だ。

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DASH和歌山に戻ってさっそく食べてみた。箸が無くても食べることができるが、お手拭きはあった方が良い。そのぶん、DASH和歌山の有料席はお手拭きが貰えるので助かる。

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中身は鯖の押し寿司みたいなもの。ラーメン店に入ったお客さんは、この寿司をつまみながらラーメンの出来上がりを待ったり、ラーメンを食べながら箸休めに寿司をつまんだりしている。私のような凡人からするとラーメンと寿司が合うというイメージは無かったが、実際にやってみると、こってりした炭水化物とさっぱりした炭水化物のサイクルは悪くない。ラーメン店では会計時に食べた早すしの数を自己申告するのが一般的。初めて和歌山ラーメンのお店に入ったとき、凡人の私はそれに驚かされた。

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それにしてもいったい何が「早い」のか。逆に「遅寿司」もあるのか。凡人の疑問は尽きない。

もともと和歌山県には「なれ寿司」の文化があった。ご飯と魚を樽に詰めて発酵、熟成させるタイプの寿司で、滋賀の鮒寿司はつとに有名。和歌山ではサバやサンマを使うらしい。その熟成期間は通常1か月ほどだが、それを1日で済ませてしまうものを「早寿司」と呼んで区別しているのだそうだ。早くできるから早寿司。逆に時間のかかる本来のなれ寿司は本当に「遅寿司」と呼ぶらしい。

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早寿司は塩を振って酢ジメしたサバにシャリを合わせてアセの葉で包み、木枠に入れて重しを乗せたら、そのままひと晩置いて完成。こうすることで肉厚で脂が乗ったサバはもちろん、その旨味が移った酢飯を含めたすべてが旨味の塊となる。なのに程よい酸味がさっぱりしてあとを引くから不思議。この味わいは握りでは味わえない。乳酸発酵した独特の匂いを伴う遅寿司に比べて圧倒的な人気を誇るというのも頷けよう。もとより競馬ファンにしてみれば「遅い」より「早い」方が嬉しいに決まっている。

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もちろん和歌山と言えばラーメンも有名。地元では単に「中華そば」とか「中華」と呼ばれ、豚骨しょうゆに鶏ガラを加えたほんのりと甘いスープで知られる。今でこそ和歌山ラーメンとして全国のラーメン愛好家に認知されるようになったが、30年ほど前までは博多、札幌、喜多方のような有名ブランドにはほど遠く、地元では単に「中華そば」と呼ばれるだけの存在だった。それを一躍全国区に押し上げた「井出商店」は今も行列が絶えない人気店。写真の特製中華そば(チャーシュー増し)の美味さもさることながら、こちらでは早寿司以外に巻き寿司も食べることができる。お腹を空かせて行こう。

 

 

***** 2023/8/17 *****

 

 

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2023年8月16日 (水)

停電こわい

昨日は一日中停電に怯えながら過ごした。もちろん台風7号のこと。仕事への影響が甚大―――なんてのはタテマエで、自身の生活への心配の方が大きいに決まっている。マンション暮らしなので停電はすなわち断水を意味する。11階まで階段を昇るなんて到底無理。そもそもエアコンが止まれば命にもかかわるご時世だ。買いためた冷凍食品たちもレンジが使えなければ冷たいまま齧るしかない。

私が幼少の当時は―――いちおう都内で暮らしていたのだが―――停電というものは今よりもっと身近なものだった気がする。日常茶飯事とまでは言わないにせよ、少なくとも「停電」と聞いただけで、人々がコンビニやスーパーに押し掛けて乾電池とカセットコンロを買い漁ってパニックになるようなことはなかった。

テレビを見ながら家族揃って夕食をとっている時に、突然音もなく舞台が暗転するのである。テレビの音が消え、逆に隣宅の声が遠くに聞こえたりすると、否応なく静寂感が増す。

「あらいやだ。停電……」

母親がポツリとそう呟くと、他の誰かが何も言わずに立ち上がり、手探りで懐中電灯とロウソクを取り出したものだ。薄暗い夜が続く時間はマチマチだったけど、それで困ったという記憶は特に持たない。

何年か前のこと、昼メシがてら馬券でも買おうと土曜の昼前に銀座に出たら、銀座中が停電していたことがある。信号機はもちろん「伊東屋」も「銀座松屋」も餃子の名店「天龍」も、ことごとく停電していた。

ただ、その中にあって、WINS銀座だけは何事もなかったかのように煌々と明かりが灯り、発券機は馬券を売り続け、モニターにはレース映像が流され、天井のスピーカーからはレース実況が轟き、それに合わせてオヤジどもが声を張りあげていたのだ。私も、いつもと同じようにエスカレーターで上階に昇り、いつもと同じように馬券を買い、いつもと同じように散々な負け方をした。そしてWINSを出ると、街はまだ停電の静寂の中にあった。

そのとき私は「JRAって凄ぇな」という印象を強く持ったのである。その思いは色々あった今でも基本的に変わっていない。非常時に受ける印象というものは、普段にも増してより強く刷り込まれるものだ。

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今回の台風で言えば、阪急電鉄が頑張った印象が強い。いろいろ問題山積のJR西はともかく、南海や近鉄、さらには「ゴジラが来ても止まらない」と地元で評判の阪神電車までもが運転を見送るなか、阪急だけは普通列車のみとはいえ嵐の中淡々と運行を続けていた。心強い上にありがたい。次回仁川に行くときは感謝の気持ちを忘れぬようにしよう。なんて言いつつ、勝とうが撒けようが、帰り電車ではそんなこと忘れているに違いない。それが競馬ファンだ。

 

 

***** 2023/8/16 *****

 

 

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2023年8月15日 (火)

台風7号襲来

台風7号が大阪を直撃した。被害に遭われた方にはお見舞い申し上げます。

私自身、停電に備えて水の入ったペットボトルを冷凍庫で凍らせたり、断水に備えて湯船に水を張ったり、非常食代わりにパンを買ったりしていたのだけど、何が辛かったって、近所の仕事場に行くだけでずぶ濡れになったことですよ。傘なんてまったく役に立たない。それでも無理矢理さそうとすると瞬時に“お猪口”になり、同時に身体ごと風に飛ばされそうになった。実際、一瞬身体が浮いた気もする。そういう意味では雨より風の方が怖い。傘をさすのは諦め、あとは濡れるに任せて仕事場にたどり着いたが、それでも「被害」と呼ぶには小さい話であろう。

幸いにも西日本では競馬開催が無かったが、笠松競馬が開催中止になった。事前の予報ではもう少し東寄りの進路を通るとされていたせいもあろう。今日は6場開催の予定だった、お盆は地方競馬のかき入れ時。笠松の主催者にとって痛いのはもちろんだが、馬を管理する側も痛くないはずはない。なにせ走ってナンボの競走馬。番組賞金加算、権利確保の貴重な機会を失うことにもつながる。とくに若駒にとっては一生を左右する一大事といっても過言ではない。

かつて、我が国台風史上最悪の被害をもたらすことになる伊勢湾台風が刻々と近づく中、京都競馬が普通に開催されたという記録が残されている。現在のような精密な予報ができなかった時代の話とはいえ、激しい風雨をものともせず1923人の来場者を記録した。古来より競馬ファンは多少の風雪にはくじけない。

近年では1990年のサファイアS当日の中京競馬が、いわゆる「台風競馬」だった。死者不明4名を出し、東海道新幹線を全線でストップさせた台風20号が東海地方に上陸。しかし、その強い雨と風のさなか1万6569人の来場者を集めて中京競馬は開催されたのである。

ターフビジョンでは再三にわたってNHKの台風情報が流され、風速11m/sの風が吹きつける馬場で第8回サファイアS(GⅢ)は行われた。レースは逃げるイクノディクタスを3番手から追走したヌエボトウショウが直線で鮮やかに抜け出して完勝。ちなみに翌年の朝日チャレンジカップも台風17号の通過直後に行われたが、このレースもヌエボトウショウが勝っている。「雨の鬼」は珍しくないが、「台風の鬼」となるとあまり聞いたことがない。

ヌエボトウショウとは逆にJR武蔵野線は台風に滅法弱いことで知られる。そのあおりで中山も東京も、ちょっとした台風の接近ですぐ中止になる印象が強い。ちなみに東京競馬が初めて中止となったのは1961年9月16日のことだった。1レースから4レースまで行ったところで、台風が近づいていることを理由に中止が決まったという。

中止直前に行われた新馬戦を勝ったのは翌62年のダービーを勝つことになるフエアーウイン。この日は名手・野平祐二の手綱で、芝1100mを1分7秒0のレコード勝ちだった。そう、台風が近づいているとか言いながら、中止直前まで馬場状態は「良」だったのである。その時点で東京に雨は降っていなかった。

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「たしかに風は強かったかもしれないけど、中止になるほどとは思いませんでしたね」とは生前の野平氏の言葉。だが、その台風こそ死者不明202名という甚大な被害をもたらすことになる第2室戸台風だったのである。この日、東京4レースが行われたことはフエアーウインにとって幸運だったと言うべきであろう。もし中止の判断がちょっとでも早まっていたら、1962年のダービー馬は違っていたかもしれない。やはり台風が馬の一生を左右することもあるのである。

 

 

***** 2023/8/15 *****

 

 

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2023年8月14日 (月)

チャレンジの行方

昨日の話の続き。

紀三井寺競馬場跡地の訪問を終えたあとは、「スーパーセンター・オークワ・セントラルシティ和歌山店」に向かった。先週金曜に続いての「オークワチャレンジ」。これは決してオオクワガタを捕まえようというチャレンジではない。和歌山県内を中心にスーパーを展開する「オークワ」限定発売のチューハイを買ってこいという家族からの指示に基づく商品探索チャレンジで、大阪府の南摂津駅前店を訪問した前回は残念ながら見つけることができなかった。和歌山市南部最大のオークワなら、きっと売られているに違いない。

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―――と期待を胸にやって来たのだが、サッカー場と見まごうばかりの巨大な売り場にも目指すチューハイは置いていなかった。オークワチャレンジは2連敗。これはまずい。もうどこの店舗にも置いていないのかも。オオクワガタを捕まえる方がまだラクなんじゃあるまいか。

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意気消沈して和歌山駅方面に向かう途中、道路沿いにオークワの看板が目に入った。なんと全146のオークワ店舗を束ねる本社らしい。ならば品揃えも違うかも……と淡い期待を抱いて店内に入ってみると―――。

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ユリイカ!(われ発見せり!)

私がずっと探していたのは、この「はちみつゆずチューハイ」。オークワと「古座川ゆず平井の里」とのコラボ商品で、古座川町のユズ果汁を使って開発された商品らしい。今回私も初めて飲むことができたが、ハチミツを謳っている割には甘さは控え目で、スッキリした味わいは夏の暑い時季にこそ飲みたくなる。ともあれ3度目のオークワチャレンジで見事発見。こうなったら店にあるだけ全部買い占めて……というのはもちろんウソで、手に持てる数本ばかりを購入して次の目的地に向かった。

向かった先は―――。

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昨年の夏にも訪れた兵庫県競馬の場外馬券売り場「DUSH和歌山」。J-PLACEの施設も兼ねており、今日はJRA3場と高知競馬の馬券が発売される。

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有料席エリアにはソファに個人用のモニターや電源コンセントが設置されており、スポーツ紙と自販機飲料(1杯分)がオマケで貰える。各種オッズは前方の大型モニターに随時表示されているから競馬場にいるのと変わりはない。実に快適。ただし、J-PLACEであるため締切時刻が競馬場やWINSよりも若干早い点に注意が必要だ。それで前回は万馬券を買い損ねた。今回の来訪はそのリベンジを兼ねての「ダッシュチャレンジ」である。

しかし、しばらく馬券を買ってみるも成績が芳しくない。気分転換にと建物を出て、評判の和歌山ラーメン店まで炎天下を歩いたら、あろうことかお盆休みだった。オークワチャレンジの成功で運を使い果たしてしまったのか。それならそれで仕方ない。やむなく入った別の店で何気なくスポーツ紙をめくると、小倉記念のプレゼンターに見上愛さんが来場するという記事を見つけた。

あれ? たしか、昨年の七夕賞でも見上愛さんがプレゼンターを務めたんだよな。あのレースを勝ったのはエヒトだ。「夏の芝を懸命に駆けるエヒトの姿に感動しました」。レース後に彼女はそんなコメントを残していた。「夏の芝を」のフレーズが妙に気になったので今も覚えている。彼女が来るなら、小倉記念はエヒトで決まりなんじゃないか。

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結果はご存知の通り。馬券も当たって昨年のリベンジを果たすことにも成功した。見上愛さんに感謝せねばなるまい。その見上さんのコメントは「真夏の芝を懸命に駆け抜けたエヒトの力強さ、美しさに心を打たれました」だった。「夏」が「真夏」になっただけで、なんとなく昨年の七夕賞と似たような文面になってしまったのは勝ち馬が同じだったせいもある。見上さんは悪くない。ともあれ見上さん来場時のエヒトは「買い」だ。

 

 

***** 2023/8/24 *****

 

 

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2023年8月13日 (日)

始まりの地

再び和歌山へ足を運んだ。しかし今回の目的地は和歌山市内。その用事の合間にちょっと足を延ばしてみることに。和歌山駅からJRで2駅。積年の念願叶ってついに紀三井寺の地に降り立った。

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紀三井寺は奈良時代から続くとされる日本最古の巡礼路「西国三十三所」の2番札所。たまたまだが1番札所の那智山・青岸渡寺は先週訪れたばかり。だから2番目に来たかった―――ワケではない。奈良時代からの歴史には負けるが、この地には明治から続く紀三井寺競馬場があった。かつての鳴尾競馬場に次いで関西で2番目に開場した競馬場だという点は、どことなく2番札所・紀三井寺に通じるところもある。

この駅も寺の参拝客と競馬ファンでごった返した時代があったはずだ。しかし1988年に競馬場は廃止。競馬ファンの姿がないのは当然だが、この暑さでは参拝客の姿もない。私以外に降りたのは3人組の外国人バックパッカーだけだった。

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競馬場跡地はいまでは和歌山県立医大が建っている。立派な建物だ。この建物のおかげで、とかくモメがちな廃止話も実にあっさり決まった。県立医大の移転候補地を探していた県に、競馬場を所有していた市が66億円で売却。競馬関係者の補償金と累積赤字を一気に解消したといわれる。駅徒歩5分の立地は魅力だったに違いない。

紀三井寺にとって不運だったのは春木競馬場の廃止だ。岸和田市にあった春木競馬とブロック開催を続けていたが、1974年の春木競馬廃止で、ブロック機能を失った。もう少し先には園田があったが、当時の園田はアラブ専業だったため連携が難しい。結果的に同じようなメンバーによる同じような競馬が行われるようになり、ファン離れが加速。瞬く間に廃止へと至った。

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35年前までこの地が競馬場であったことを示す遺構はいっさい残されていない。ただそのその敷地をぐるりと囲う道路はかつての右回り1000mのコースの面影を残している。大学正面の道路はかつてのバックストレッチ。42勝のカンテツオーも、帝王賞馬トムカウントも、東京ダービー馬タカフジミノルも、このコーナーを回ってゴールを目指していたのである。

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学生時代、山口瞳の「草競馬流浪記」を読んで、いつか自分も地方競馬全27場を踏破してみたいと願ったのもつかの間、真っ先に廃止となったのが紀三井寺だった。そのショックは今も忘れない。その後も地方競馬の廃止ドミノは止まることなく、あれから13の競馬場が姿を消した。私にとっての紀三井寺はドミノ倒しが始まった地。そのネガティブな印象も、跡地を訪問してみて少しは薄らいだかもしれない。炎天下に医大の建物をぼんやりと眺める中年オヤジは、さぞかし奇異に映ったことだろう。

 

 

***** 2023/8/13 *****

 

 

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2023年8月12日 (土)

ダービー馬の産駒たち

今日の新潟4レースの3歳未勝利戦で、松岡正海騎手のヒサメが2番手から抜け出して勝ち上がった。なんと今回がデビュー戦。単勝オッズ208倍という伏兵中の伏兵である。それでも2着に4馬身差はフロックではできない。同じゴドルフィンの初出走ということでは、先週の新潟でも8番人気のクリーンエアが新馬を勝って穴を開けたばかり。こうした事実は頭の片隅に入れておきたい。

ヒサメは父がタニノギムレットで母はスプリングレイン。「氷雨」というゴドルフィンにしては渋い馬名は、母からの着想だ。タニノギムレット産駒はこれが今年の初勝利だという。それでネットが少し沸いた。この世代のタニノギムレット産駒は競走馬登録されているだけで7頭。そこからJRA勝ち馬が出る確率は、たしかに少なかろう。

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かつてのダービー馬とはいえ、そのダービーから20年あまりも経過すれば産駒が少なくなってくるのも仕方ない。明日の関屋記念にはタニノギムレットの1年後輩のダービー馬、ネオユニヴァース産駒のサクラトゥジュールが出走するとあって、これも一部で注目を集めている。

初年度産駒からアンライバルドとロジユニヴァースで父子クラシック制覇を果たし、翌年はヴィクトワールピサを送った20年前のダービー馬も、最近はその産駒を目にする機会もめっきり減った。JRAに登録されているネオユニヴァース産駒はわずか12頭。今年のJRA勝利数が1勝なのはタニノギムレットと同じで、それもサクラトゥジュールが勝ったメイSだったりする。

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こうなるとタニノギムレットのひとつ先輩のジャングルポケットの成績成績も気になってくる。今年はJRAで3勝していた。いずれも特別でうち2勝は4歳牡馬のエナジーグランによるものである。エナジーグランは来週の北九州記念に出走を予定している。こうなると注目せぬわけにはいくまい。

3頭のダービー馬とも種牡馬としてクラシックホースを輩出した。とくにタニノギムレットとネオユニヴァースに関しては、20世紀はわずか4例に留まった父子によるダービー制覇を実現した種牡馬であることを忘れてはならない。産駒によるJRA重賞勝利数は、ジャングルポケット37勝、タニノギムレット25勝、そしてネオユニヴァースが32勝。彼らの後に登場したダービー馬2頭が種牡馬としても異次元の活躍を見せたことを考えれば、決して悪い数字でもなかろう。いずれにせよ競馬ファンにとってダービー馬は特別な存在。その産駒を長く応援したいと考えるファンの心理は理解できる。

ちなみにタニノギムレットの最後のJRA平地重賞勝ちはメドウラークが勝った2018年の七夕賞。ヒサメは久しぶりのタイトルを父に贈る存在になれるだろうか。祖母ストームソングはBCジュヴェナイルフィリーズの勝ち馬。そのストームソングとタニノギムレットとの間に生まれた産駒としてミッドサマーフェアがいる。似通った血統構成を持つヒサメの今後に期待したい。

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***** 2023/8/12 *****

 

 

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2023年8月11日 (金)

回り道

地下鉄とモノレールを乗り継いで摂津市を訪れた。地理的には大阪府の北部中央に位置する都市。新幹線で東京から大阪に向かうと、新大阪到着前に右手に新幹線の車両基地が見えてくるが、あそこも摂津市。現在の大阪府北中部から兵庫県南東部はかつて「摂津国」と呼ばれたが、そこからのネーミングらしい。1966年に誕生した比較的新しい市だ。

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自宅から30分かけてわざわざやって来たのにはもちろんワケがある。モノレール南摂津駅前にあるスーパー「オークワ」は和歌山県内を中心に展開している小売りチェーンだが、先日新宮市内のオークワに立ち寄った際に見つけた柚子の缶チューハイがあまりに美味かった。それを飲んだ東京の家族から買ってこいと命じられたのである。オークワ限定発売の品だから東京では手に入らない。我が家からいちばん近いオークワが、この南摂津駅前店だった。そんな理由でもなければ、私が摂津市に足を踏み入れることはなかったに違いない。

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しかし南摂津のオークワに目当ての缶チューハイは売っていなかった。数量限定だったから売り切れたのかもしれないし、そもそも大阪府内の店舗には置いてないのかもしれない。結果的に私の初摂津訪問は成果ゼロ。うつむきながら摂津国を横断する形で園田競馬場へと向かう。今宵は真夏の古馬重賞・摂津盃。南摂津からモノレールと阪急とバスを乗り継いで1時間あまり。無駄な回り道をしてしまった。

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摂津盃は正月の新春杯と並ぶ名物ハンデ重賞。過去の成績を見る限りは実力馬が斤量を克服して好走するケースが珍しくない。昨年はオープン特別5勝の実績を誇ったシェダルが58.5キロを背負って重賞初制覇を果たし、2010年にはアルドラゴンが59キロをものともせず差し切った。ただ今年のトップハンデは56キロ。昨年のこのレースで好走した馬の出走もない。新星誕生への期待が高まる。

勝ったのは55.5キロを背負ったツムタイザン。先行策を得意とするはずが、先行争いが激化すると見るや敢えて6番手に控えた。向こう正面から徐々に進出。外から捲るように4角で先頭に並びかけるとゴール前ではしっかり半馬身前に出ていた

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3年前の最優秀2歳馬だから新星とは呼べまい。しかし彼にとって2年半ぶりとなる重賞制覇は夏の夜空に鮮烈な輝きを放った。思えば2歳時の園田ジュニアカップで2着に退けたのは、のちのダービー馬スマイルサルファーで、兵庫若駒賞で2着に負かした相手が、のちの菊水賞馬シェナキングである。しかしその後に屈腱炎を発症し1年以上の休養を余儀なくされた。復帰後はB1クラスからの再スタート。大きな回り道を強いられたが、それも今夜の勝利のために必要な道のりだったのであろう。缶チューハイが買えなかった程度で回り道を嘆いた自分が恥ずかしい。ツムタイザンは年内休養とのこと。大きな回り道を経験しただけあって、半年程度の時間を惜しむ様子もなさそうだ。

 

 

***** 2023/8/11 *****

 

 

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2023年8月10日 (木)

レジェンドを目指せ

昨夜、船橋でフリオーソレジェンドカップが行われた。

私の知るフリオーソレジェンドカップは平和賞トライアルの2歳戦。2012年には、のちにクラウンカップや東京湾カップを勝つことになるアメイジアが勝ち、翌13年にはその弟のファイトが勝った。レース名に冠されたフリオーソ自身も、このレースの前身となる「ナドアルシバ競馬場カップ」を勝っている。そのレースが今年から重賞に格上げされた。ならば「第1回」だ。「第1回フリーク」の私としては、観に行くことができないまでも注目はしておきたい。

出馬表の「リッカルド」という馬名に目が留まった。

「ああ、そういえば、むかしリッカルドという馬が南関東で活躍していたっけ。芦毛のセン馬で、JRA時代にはエルムSも勝ったんだ。そうか、もう2代目が出てきたんだ。早いもんだなぁ……」

―――と遠い目で懐かしがっていたら、その芦毛のリッカルド本人だと分かってひっくり返った。なんと、まだ現役だったのか。12歳である。というか、なんで2歳戦に出てるんだ? さては「2歳限定」を「12歳限定」と勘違いしたか。そう思っていたら、フリオーソレジェンドカップが古馬混合戦になっていたと知って、またひっくり返った。

レースは1番人気のギガキングがスタートで遅れるハプニング。向こう正面で徐々に進出するも、手応えは良くない。中間は夏負けの兆候もあったと聞く。一瞬、アスクビクターモアの一件が頭を過ぎった。しかし直線に向くとしっかり反応。余裕の差し切りで重賞6勝目をマークした。これで勝ち切れたことは自信につながったはず。優先出走権を獲得した日本テレビ盃では、ウシュバテソーロ相手にどこまでやれるか注目したい。

リッカルドはブービーの11着に敗れた。そこは12歳馬。ワンアンドオンリーやイスラボニータの同期だと思えば悲観する必要もあるまい。

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なにせ2歳11月のJRA新馬戦で敗れた相手はアジアエクスプレスである。5歳時にエルムSを勝って重賞初制覇。その後も、コパノリッキー、モーニン、ベストウォーリア、インカンテーションといった面々を相手にダート戦線で活躍した。7歳になって南関東に移籍するや、報知グランプリカップ、フジノウェーブ記念、ブリリアントカップ、大井記念の重賞4連勝は語り草だ。NARグランプリで7年連続表彰のフリオーソには及ばないにせよ、これだけのキャリアを引っ提げながら現役を続けるリッカルドもレジェンドの域であろう。そういう意味では、勝ったとはいえギガキングが歩むレジェンドへの道のりはまだまだ遠いということになる。

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それにしても、2歳限定戦だったかつてのフリオーソレジェンドカップに代わる平和賞トライアルは、今では何という名で行われているのだろうか。昨夜のように何度もひっくり返っていては身体が持たないぞ。

 

 

***** 2023/8/10 *****

 

 

 

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2023年8月 9日 (水)

【訃報】アスクビクターモア

突然の訃報に驚いた方も多いと思う。昨年の菊花賞馬アスクビクターモアが放牧先で亡くなった。熱中症だという。ラインクラフトのように現役GⅠ馬が放牧中に亡くなった例は過去に無いわけでもないが、それが熱中症によるものとなると聞いたことがない。

ウマは暑さに弱い動物だ。またヒトと同じく汗をかく珍しい動物でもある。ただしヒトは周囲が暑くなれば自然と汗をかくが、ウマの場合は暑さだけでは汗をかかない。ウマは運動や興奮、緊張によって体温が上がると汗をかく。だから真冬のパドックでも汗びっしょりの馬を見かけることになる。

それにしてもアスクビクターモアが勝った菊花賞のレースはアツかった。スタートから飛ばしたセイウンハーデスの1000m通過は58秒7。その数字に場内がドッと沸く。5馬身ほど離れて2番手を追走するアスクビクターモアにしても59秒5~6といったところだから、どちらにしても速い。ちなみに前年のタイトルホルダーは1分ちょうどだった。

アスクビクターモアは2週目の3~4コーナーで早くも前をかわして先頭。しかしそこからだと残り450mもある。「早いんじゃないか?」という声が聞こえたが、田辺騎手の手綱に迷いは感じられない。

思い返せばダービーもそうだった。先行馬総崩れの中、アスクビクターモアだけが2番手追走から残り450mの地点で先頭に立つと、あわやの3着に粘っている。あのレースにアスクビクターモアの無尽蔵のスタミナが凝縮されていたような気がしてならない。菊花賞でも直線でボルドグフーシュに猛然と迫られたが、結果的にあの位置から仕掛けて正解だった。競馬はゴールの瞬間に1センチでも前にいれば勝ち。馬の力を信じてスタミナ勝負に持ち込んだ田辺騎手の好騎乗が光った。

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阪神3000mを3分2秒台で勝った馬は過去に2頭しかいない。ナリタトップロード(3分2秒5)とサトノダイヤモンド(3分2秒6)。いずれも名うてのステイヤーである。その2頭を上回るコースレコードで駆けたアスクビクターモアのステイヤーとしての資質は相当なもの。快挙の瞬間を目撃した多くのファンがのちに自慢できるよう、アスクビクターモアにはもっと活躍してもらいたい―――そんな願いはもう叶うことはなくなった。

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相馬野馬追でも2頭が熱中症で死亡したとしてニュースになったばかり。亡くなったのは2頭だが、実際には祭りに参加した361頭の約3割にあたる111頭に熱中症の症状が確認されたという。この夏の暑さは尋常ではない。今日、新潟競馬場近くの新潟市東区で観測史上最高の39.7度を記録した。暑熱対策が必要なのは小倉だけではないような気がしてならない。相馬野馬追は開催時期の見直しに向けて動き出した。競馬にしても、小倉の休催や昼休みの導入程度では足りないのではないか。モノ言わぬウマの声に耳を傾ける努力を続けよう。

 

 

***** 2023/8/9 *****

 

 

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2023年8月 8日 (火)

もうしご

今週末の関屋記念に一昨年の覇者ロータスランドが登録してきた。

今年58回目を迎える関屋記念を2度勝っている馬は過去に3頭しかいない。1996-97年連覇のエイシンガイモン。98年、2000年のダイワテキサス。そして01-02年連覇のマグナーテン。特にマグナーテンは、関屋記念の前哨戦として行われていたオープン特別も連覇していたから、新潟芝はオープンクラスばかりで4戦4勝。まさに新潟のもう死語、もとい「申し子」と言える。

この4勝すべての手綱を取ったのが伝説の名騎手・岡部幸雄さん。中でも連覇を果たした02年の関屋記念のレースぶりが圧巻だった。新潟の1600mは向こう正面をスタートしてから3コーナーまでの距離が長く、スピードのある馬は引っ掛かることが多い。ハナを切ったミデオンビットの半マイルは46秒4。決して速いとは言えないこの流れを、2番手で追いかけているマグナーテンは、たしかに引っ掛かっているように見えた。だが岡部騎手は拳は低い位置に保ち、馬とケンカする寸前のところで我慢させていたという。

馬を我慢させるには、人も我慢を強いられる。見た目には引っ掛かっているようにも見えるこの姿勢を保つのも、実際はかなり苦しい。いずれにせよ後続の騎手たちは「マグナーテンは止まる」と思ったことだろう。

マグナーテンのデビューは3歳夏と遅かった。しかもそこから未勝利を6戦するも勝ち上がることができない。初勝利は去勢手術を経た4歳の6月。盛岡の中央交流レースである。2勝目も同じ盛岡。珍しいことに岡部騎手がわざわざ駆け付けて手綱を取った。未勝利の当時から、その高い素質に惚れ込んでいたのであろう。そんな人馬のコンビは、関屋記念で通算21戦目を迎えていた。岡部騎手はマグナーテンをすっかり手の内に入れていたに違いない。

02年の関屋記念に話を戻す。ミデオンビットが先頭のまま馬群は直線を向いた。

徐々に後続馬が接近してくる。すると岡部騎手はハミを緩めながらマグナーテンを徐々に加速させた。マグナーテンが気を抜かぬよう、ミデオンビットに馬体を併せにいったのである。残り200mで一気に追い始めると、懸命に粘るミデオンビットをあっさりと競り落とした。1年前と寸分違わぬ時計で連覇達成。繊細にして大胆とは、まさにこのこと。わずか1分32秒足らずとはいえ、それはそれは濃密な時間だった。

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今年の関屋記念に出走予定のロータスランドは内田博幸騎手に乗り替わるらしい。デビュー戦は福永祐一騎手で完勝。京都牝馬Sの勝利は岩田望来騎手の初重賞制覇だった。藤田菜七子騎手や武豊騎手が手綱を取ったこともあある。一昨年のこのレースでは田辺裕信騎手が意表を突く逃げの手に打って出て、見事栄冠を勝ち取った。今回迎える内田騎手は実に10人目の鞍上。「お手馬」という言葉はもう死語になりつつあるが、内田騎手のかつてのお手馬ゴールドシップと同じ勝負服での重賞制覇に期待せずにはいられない。注目しよう。

 

 

***** 2023/8/8 *****

 

 

 

 

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2023年8月 7日 (月)

初ダートの壁を越えろ

昨日のJRAは古馬と3歳馬のダート重賞が行われ、芝の実績馬が注目を集めた。3歳限定のレパードSに史上初めて日本ダービーから参戦したのはパクスオトマニカ。エルムSにはジャパンC2着で重賞4勝のオーソリティが出走。いずれも初めてのダート戦だが、ソコソコ人気を集めた。GⅢなら実績がモノを言って当然。レース前には例によってこんな予想やコメントが飛び交っていた。

「調教ではダートを苦にしない」

「フットワークがパワフル」

「掻き込むようなストライド」

「血統的にはむしろダート向き」

「逃げてしまえば芝もダートも関係ない」

「なにせ戦ってきた相手が違う」

しかし結果はご存知の通り。毎度のことながら、競馬の神様が初ダートの馬に与える洗礼はつくづく厳しい。

エルムSのオーソリティは3番人気。スタートは五分に出たが5~6番手に収まった。キックバックを嫌がるそぶりは見えない。そのまま直線へ。しかし、さあここからというところからまったく伸びて来ない。勝ち馬から2秒以上も離された12着でゴールするとC.ルメール騎手が下馬。ひやっとしたがエックス線検査では異常は認められなかった。なにせ過去3度の骨折に見舞われた脚である。それでわざわざ脚元に負担の少ないダートに矛先を向けたのに、水の浮く不良馬場では意味がない。レース後に左前脚を気にしているのは事実のようで、陣営はあらためて検査を行うそうだ。

父オルフェーヴルに母の父シンボリクリスエスならダートを使ってみたくなる気持ちも分かる。今回の結果を以て「ダート適性×」と決めつけてしまうのは早計であろう。苦手な右回り(しかも小回り)、経験の無い短距離(1800m未満は初めて)、1年2か月ぶりの競馬(しかも直前で宝塚記念を回避)といった要因の方が、ハードルとしては高かったように思えてならない。

レパードSのパスクオトマニカはもっとひどかった。スタートで出負けし、逃げることはおろか、最後方を追走。プリンシパルSを逃げ切った軽快なスピードを発揮することもなく、勝ち馬から100mほど離されたしんがりに敗れている。ジョッキーは「砂の上のスタートでダッシュが効かなかった」とコメントした。「力強いフットワーク」も「掻き込むようなストライド」もまともなスタートが出来なければ意味がない。ダービーより着順を落としているのだから、こちらはダートが合わなかったと考えてしまっても良さそうだ。

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初めてのダートでJRAの重賞を勝った例となると、この10年ではモズアスコットの根岸SとワイドファラオのユニコーンSの2頭しかいない。それだけハードルは高いということだが、だからと言ってファンが期待をしないのは間違っている。現代では競走馬の大半がダートOKの血統背景を持つことに加え、芝だけ、あるいはダートだけと活躍の限定するのではなく、どんなコースでも快走する馬こそが真のチャンピオンであると認識されるようになった。そんな時代の流れもある。

初ダート組に死角を唱えて的中させるのも馬券だが、逆にプラスと考えて的中させる馬券の方が絶対に楽しい。クロフネが東京ダート1600mで1分33秒3という破格のタイムをたたき出したのも、メイショウボーラーが中山ダート1200mを3馬身差で独走したのも、エスポワールシチーが小倉ダート1700mを日本レコードと大差ない1分42秒4で圧勝したのも、みんなみんな初ダートの一戦だった。それを当てた人の慧眼は素晴らしい。自慢しよう。

 

 

***** 2023/8/7 *****

 

 

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2023年8月 6日 (日)

海を見ている午後

那智勝浦は蒸し暑い日が続いている。旅先で熱中症搬送はシャレにならないから、熊野古道巡りやシーカヤック遊びは午前中で切り上げて、午後は宿に籠もっておとなしく過ごさざるを得ない。温泉で汗を流し、昼ごはんを食べたらあとはひたすら海を見て午後を過ごすことになる。

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松任谷由実さんの名曲「海を見ていた午後」の歌詞に登場するレストラン「山手のドルフィン」は実在する。横浜根岸の競馬博物館にほど近い高台から見えると歌われる「三浦岬」が、実際には見えないこともファンの間では語り草だが、昔はそれを知らずに訪れてガッカリするファンも少なくなかったそうだ。実際に見えるのはコンビナートの煙突越しに見える都会の海と彼方に広がる房総半島。「半島というより、岬という小ぢんまりした響きが歌に合っていたから」と、のちに松任谷由実さんは明かしている。

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ここ那智勝浦から眺める海は熊野灘。その先は果てしない太平洋が広がる。岬や半島はおろか、沖合に浮かぶ小島ひとつ見当たらない。一直線に海と空を分かつ水平線以外は、行き交う船が見える程度。その船にしても東京湾に比べれば圧倒的に数は少ない。あとは太陽と月が交互に姿を現すのみ。こういう景色こそ海と呼びたい。

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なのに海を見ている観光客がほとんどいないのはどういうことか。海沿いの駐車場はガラガラ。宿近くのビーチにも人っ子ひとりいない。ひと昔前なら「暑ければ海に行く」が普通だったのに、あまりの暑さに海にすら行かなくなったのか。炎天下の砂浜はたしかに危険な感じがする。

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ここ那智勝浦の観光客が、そもそも少ないせいもあろう。駐車場にせよ、飲食店にせよ、土産物店にせよ、混んでいるということがない。要するに穴場なのである。

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むかし馬券発売窓口のことを「穴場」と呼んだ。若いファンにはピンとこないかもしれない。馬券売場にズラリと窓口が並んでいるのは同じ。しかし窓口の上には「1-2」とか「1-3」などと書かれた札が掛かっている。これは枠連の目。その窓口ではその目しか買うことができない。「窓口」と言っても実際には大人の拳が入る程度の「穴」で、そこに金を突っ込むと、中のオバちゃんがサッと金を受け取り、代わりに馬券をギュッと握らせてくれた。ゆえに馬券にお金を投じることを、「突っ込む」と言うのである。

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そんなことを思い出しながら、海を眺めているとあっと言う間に時間が過ぎてゆく。今日はスコールのような雨が降ったり止んだりを繰り返した。海上を雨が移動して行く様を見るのは楽しい。

 

 

***** 2023/8/6 *****

 

 

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2023年8月 5日 (土)

氷の味

那智勝浦は南国のイメージがあるがそこまで暑くはない。いや、夏だから暑いことは暑いんですよ。それでも同じ近畿内の舞鶴や豊岡で連日38度を超える猛暑日を記録しているのに、こちらは30度をちょっと超える程度。おとといは30度にも届かなかった。

そのぶん湿度は高いから不快指数や熱中症リスクはさほど変わらない。新宮市内の熊野速玉大社を普通に参拝しただけで、頭がクラクラしてきた。これはいかん。どこかで涼を取らねば。

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這うように入店したのは「仲氷店」というお店。名水として名高い古座川の清水を3日間かけてゆっくりと凍らせた純氷のかき氷は、綿雪のごときフワフワ感を湛えているという。その冷たさはひときわ優しく、頭がキーンと痛むこともないらしい。

かき氷を庶民が口にするようになったのは明治時代とされる。見馴れた「氷」の旗の登場もその頃のようだ。とはいえ、冬から貯蔵しておいた氷を夏に食べる「夏氷」の歴史は古い。日本書紀には、古代の冷凍庫「氷室」の記述も残る。

清少納言は枕草子の中で「あてなるもの」(気品高いもの)として、「削り氷にあまずら入れて、新しき金鋺に入れたる」と紹介している。削った氷を金属の器に盛り、「あまずら」、すなわち葛の汁をシロップ代わりにかけて食べるのである。これこそが元祖・かき氷の姿にほかならない。

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こちらのお店でも手作りの果汁をかけて味わう。ゆえに見慣れたシロップような色鮮やかさはないが、いにしえのかき氷にはむしろ近い。私のチョイスは「氷みかん」。古座川と温州みかんが澄み切った南紀の味を醸し出す。

自然氷のかき氷を都内で注文すれば千円は下らないが、ここでは五百円だからありがたい。「氷スイカ」に至っては三百円だという。これなら近所の小学生でも食べることができそう。店構えも私の子供の頃にあった昭和の氷屋さんの雰囲気そのままだった。長く続けてもらいたい。

 

 

***** 2023/8/5 *****

 

 

 

 

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2023年8月 4日 (金)

さんまの味

那智勝浦から海沿いに北上して、三重県に入ったあたりで立ち寄った国道沿の店にサンマ寿司を見つけて、思わず買ってしまった。

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サンマの不漁が続いて久しい。今年も昨年並の不漁が見込まれると先日水産庁が発表したばかり。かつては秋の風物詩だったサンマも、今ではその不漁のニュースが夏の風物詩になりつつある。

ここ熊野灘もかつてはサンマの一大水揚げ地だった。日本一の漁獲高を誇っていた時期もある。しかし今はほとんど揚がらないらしい。「サンマ寿司発祥の地」のみならず「サンマ漁発祥の地」をも謳うお土地柄だけに悩みも深刻だ。それでも姿寿司が600円で買えるのだから旅行者にとってはありがたい。

幼少の一時期を目黒で過ごした。サンマと競馬場で有名な、あの目黒である。と言っても、毎年参加者全員にサンマを振舞ってきた「目黒さんま祭り」は、昨年ついに抽選制に様変わりした。なにせ豊洲で1尾数千円で取り引きされる高級魚。もはや庶民の魚とは呼べまい。サンマが「秋の味覚」と呼ばれたのは、何より安くて美味いからではないか。

むかしメジロサンマンという馬がいた。オールドファンならテイトオーの勝ったダービーで落馬、競走中止した馬として記憶されている方もいらっしゃるかもしれない。

実はこの馬が現役生活の最後に勝ち取った唯一の重賞タイトルが目黒記念なのである。これをして、当時の競馬ファンが「サンマンは目黒に限る」などという駄ジャレを吐いたかどうかは定かではないが、目黒記念のタイトルを得たことで種牡馬になれたのだとしたら、これは小さからぬ出来事だった。産駒のメジロイーグルを経てメジロパーマーへと続く父系種牡馬の祖となったばかりでなく、メジロライアンの母の父としてもその名を残すこととなったからである。

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サンマ不漁の原因のひとつが海水温にあるらしい。サンマの漁場は海面水温が13~15度が適しているとされるが、今年の日本近海はそれを1度ほど上回っており、漁に出てもサンマが見つからないのだという。これを地球温暖化問題にリンクさせるかどうかは慎重になるべきだが、実際に熊野灘の海水に足を浸してみたら温泉のような温かさに驚いた。熊野詣も暑さとの戦いになりつつある。

 

 

***** 2023/8/4 *****

 

 

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2023年8月 3日 (木)

マグロの味

数日前から和歌山県の那智勝浦町に滞在している。

近年は熊野古道や那智の滝といった世界遺産で知られるが、その前は「マグロの街」として知られていた。今でも生マグロの水揚げ量は日本一。駅前の小さな商店街にはマグロを出すお店が軒を連ねている。私とてマグロは嫌いではない。ゆえに勢い三度の食事はマグロばかりになる。刺し身だけではない。マグロカツにマグロステーキ、竜田揚げ、煮付け、ヅケ、昆布締め等々。漁港の観光施設にはマグロカレーがセルフサービスで提供されていた。五百円は安い。

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驚くことに生マグロの無人販売はあちこちで行われている。サクやヅケなど、客が自ら好きなものを取って店頭の料金箱にお金を投入するシステム。赤身のヅケが大量に入ったパックも五百円。安い。晩酌のアテにしようと買ってみたが、いざ食べてみると酒よりも白飯が欲しくなる。コンビニのおにぎりに載せて食べたら驚くほど美味かった。おにぎりの追加を買いに行こう。

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ちなみにマグロ丼なら昨日の昼飯に食べた。赤身もトロも美味いが、中でも丼の中央に盛られた中落ちがことのほか美味い。

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皮身もスジ身も何でもかんでも叩き込んだものを「中落ち」と称して売っていたりする昨今は、本物の中落ちを見て「えっ? これが中落ちなの?」と驚く人もいるようだが、これこそが中落ち。ただし、鮮魚店を営んでいた私の祖父は、三枚におろしたカツオの骨付きの部分を甘辛く煮たものを「中落ち」と呼び、マグロには「中落ち」という言葉を使わなかったように思う。そもそも中落ちは商品として流通するようなものではなかった。

ともあれ、スプーンでこそぎ取った独特の形をした身は、赤身ゆえのきっぱりした美味しさと、微妙な歯ごたえの妙が楽しめる。「中落ちは脂がのってうまい」と言ったりするタレントもいたりして困るが、人間であれマグロであれ脂というのは皮膚の直下にもっとも溜まるもので、身体の中心部に向かうにつれ脂分は少なくなる。赤身中の赤身の味わいを存分に堪能できるのもマグロの町ならではであろう。

 

 

***** 2023/8/3 *****

 

 

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2023年8月 2日 (水)

夏と言えば冷やしカレー

今日8月2日は「カレーうどんの日」らしい。さほどメジャーではない記念日だが、そんな日の大井3レースを「カレーウドン」が勝った。それを知ってて馬券を的中させた人たちは喝采を叫んだことだろう。今夜はぜひカレーうどんで乾杯してください。その一方てま暑い時期にアツアツのカレーうどんは合わないという声も聞く。そんな悩める貴兄にありがたいのは、玉造の人気店「極楽うどんTKU」の「冷やし鶏卵カレーうどん」をぜひ紹介したい。

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一見するとただの鶏卵うどん。しかし一口すすればカレー風味の味付けがされていることが分かる。とはいえカレーが主役と言うほどではない。むしろ上品なダシの旨味と吉野葛のトロみと溶き玉子の甘味が際立つ。ところが丼の底に冷たいカレージュレが潜んでいた。これを豪快にかき混ぜると一気にカレーが主役に躍り出る。冷やしたカレーがこんなにも美味いのか。本来なら冷やすことで失われるはずが辛さや風味がまったく失われぬまま、名物の太麺とがっぷり四つに組んで熱い一番を繰り広げる。

もともと冷やして食べることもある麺と冷たいカレーとの組み合わせは、さほど珍しい存在ではない。夏の暑さが厳しい京都の人気店「味味香」の「冷やしカレーきつねうどん」は、もはや夏の定番といった趣すらある。鰹と昆布で取ったダシに、11種類のスパイスを調合されたスパイシーなカレーを合わせてキンキンに冷やしたら、氷水でシメた細打ちのうどんを投入。トッピングは冷たいお揚げさんと半熟卵と九条ネギ。温かいカレーうどんとビジュアルはさほど変わらない。

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レンゲでダシをすくうとトロりと濃厚なのに、口に含めると意外にもサラッとした口当たり。ダシの風味も手伝って、どことなくヴィシソワーズのよう。冷たさのせいか、口に入れた瞬間にカレーの辛さはさほど感じない。なのに食べ終えるとちゃんとカレーの後味と辛さが残るから不思議だ。

かつて東京の虎ノ門にあったカレー店「Nagafuchi(ながふち)」には「アイスカレー」というメニューがあった。アイスクリームにカレーをかけた食べ物ではない。文字通りシャーベット状に凍らせたカレールーが、ふりかけのようにご飯にかけられていたと記憶する。食べている最中は、あまりの冷たさに辛さを感じることはないのだけど、店を出てから辛さを感じるという不思議な一皿だった。しかし残念ながら「Nagafuchi」は閉店してしまったと聞く。

もちろんカレーはアツアツが美味いという声があるのも当然。むしろそれが王道であろう。しかし冷たくて美味しいカレーを提供したいという料理人の探求心は目を見張るものがある。彼らのそんな情熱がカレーうどんやタラコスパゲティー、冷やし中華という日本独自のアレンジを次々と生み出した。「冷やしカレー」の世界には、まだまだ研究の余地があるに違いない。

 

 

***** 2023/8/2 *****

 

 

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2023年8月 1日 (火)

夏と言えばカレーラーメン

我が家の近くに一風変ったラーメンの専門店が暖簾を掲げている。

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「ミスターパピー」はカレーラーメンの専門店。カレーラーメンも出すラーメン店は珍しくないが、カレーラーメン一本鎗は珍しい。カレーうどんにカレースパ。スパイスカレーもすっかり名物になった大阪のカレー好きはここにも現れている

カレーとラーメンは国民的人気メニューの双璧。ならばそれを組み合わせたメニューが美味しくないはずがない。誰だってそう考える。でもそれがメジャーにならない現実を我々は知っている。完成された者同士のコラボは難しい。カレーラーメン専門店の希少性はその裏返しでもあろう。

こちらの店では野菜と果物をペースト状にてから味噌や牛乳などを加え、そこに鶏ガラから取ったスープを加えてベースとしているそうで、カレースープはスパイシーではあるけれども辛くて食べられないということはない。見た目よりもアッサリしていながら奥深いスープが絡んだ中太麺を一口すすれば、カレーラーメンの概念がガラリと変わる。もちろん辛味は追加可能なので、激辛が好きな人は試してみると良い。

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カレーラーメンと言えば苫小牧を思い浮かべるという方も多いだろう。社台グループの牧場見学ツアーでは苫小牧に一泊するのだが、ホテルに置いてあるカレーラーメンマップは、年を追うごとに掲載店舗が増えていた。たしか室蘭でも官民挙げて「カレーラーメンの街」をアピールしていたはず。門別競馬場では「室蘭カレーラーメン賞」も行われ、歴代の勝ち馬には、のちに帝王賞を勝つゴルトブリッツの名も刻まれている。

苫小牧の『味の大王』総本店には何度かお世話になったことがある。新千歳空港に降り立ち、レンタカーをピックアップして国道36号線を一路日高に向かう途中の左側にでっかい看板を出している、あのお店。

そこには親子2代、半世紀にも及ぶ研究の末に開花した一杯がある。カレーラーメンは今の主人のお父さんが1965年に考案。しかし、当時は珍メニューの粋を出ないゲテモノとして相手にされなかった。しかし、その後も試行錯誤を繰り返し、ようやく現在の味に到達。今では新千歳空港の土産物店にも並んでいるらしい。なんて言いながら、最後に行ったのはもう10年くらい前の話になる。新型コロナと大阪転勤のせいで苫小牧は遠くなった。ホテルの部屋から眺めた、あの霧に煙る街の景色が今となっては懐かしい。

 

 

***** 2023/8/1 *****

 

 

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