星合の夜に
1週間前の話になる。すなわち七夕の当日、大阪は夕方から雨模様となった。もちろん天の川は見えない。ただ、たとえ晴れたとしても見えないことは同じ。都市化による光害のあおりを受けて、日本中の夜空から天の川が姿を消して久しい。
「さえのぼる月のひかりにことそひて 秋のいろなるほしあひのそら」
藤原定家はそう詠んだ。しかし「星合」という言葉自体ももはや風前の灯に近い。むろん七夕の別名である。我が家の隣に広がる大阪天満宮に「星合の池」という名の池がある。池に映った星に祈ると恋が実るという言い伝えがあるのだが、池を照らすのは周りを囲むビルの灯りばかり。星の光を見つけ出すのは至難の業だ。
7月7日の夜、年に一度だけ天の川を挟んだ二つの星、牽牛と織姫が出会うという話の起源が中国にあることは想像に難しくない。両岸に離ればなれになると会えなくなるような大河は、日本にはそう多くはないからだ。実際、この話は中国の南北朝時代にまで遡れるが、かの地ではすでに七夕の風習は廃れている。
しかし、奈良時代に七夕が伝わってきた日本では今日まで受け継がれているのはもちろん、様々な風習や言葉を生み出しながらその伝統を今に伝えている。風習の話は先週書いたばかり。言葉に関しては前出の「星合」の他に「催涙雨」「妻迎船」「天の小夜橋」などがある。それぞれの意味はググっていただければお分かりいただけると思うが、実はこれら4つの言葉を使ったレースが七夕当日の笠松で行われていた。廃れつつも美しいこうした言葉たちをレース名に使った笠松競馬のセンスには敬意を表したい。
メインの天の小夜橋特別にベガの血を受け継ぐ一頭を見つけた。4番人気のスクリーンアピールは母の父がアドマイヤベガでその母がベガ。すなわち「織姫」である。
「天の小夜橋」とは、牽牛と織姫が相会する際、天の川を埋め尽くしたカササギが橋を成し織姫を渡すという中国の古伝説に登場する橋のこと。スクリーンアピールもこの橋を渡ってゴールにたどり着くかと期待してチラッと単勝を勝ってみたが、結果は7着。そんなうまい話があるはずも無い。先週土曜の佐賀・遠賀川特別は大雨のため取り止めとなった。2週間後の吉野ヶ里記念に向けての大事なステップレースである。泣きたくなった陣営もあったに違いない。これも催涙雨と呼ぶのだろうか。
***** 2023/7/14 *****
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