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2023年7月19日 (水)

敵は酷暑か、酷量か

ラジオNIKKEI賞、七夕賞、函館記念、そして今週は中京記念。ローカル開催らしく7月のJRAは毎週のようにハンデ重賞が続く。中京記念は2012年から真夏のマイル重賞として生まれ変わった。過去11回で1~3番人気での決着は一度もない。ハンデに加え、この時季らしく道悪になることが人気馬を苦しめている。

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今年はダノンスコーピオンが登録してきた。昨年のNHKマイルC優勝馬に課されたハンデは59キロ。GⅠ勝ちの実績を踏まえれば妥当かなと思う一方で、2012年以降の中京記念で59キロを背負った馬はいない。もっとも背負わされたのは2015年のカレンブラックヒル。トップハンデとなる58.5キロに加え1番人気の重圧まで背負わされ、結果7着に敗れている。

「重いね。仕方ないことかもしれませんが59キロはやはり重い」

ダノンスコーピオンを管理する安田隆調教師は「重い」という言葉を二度繰り返した。前2走は58キロを背負っていずれも二桁着順に敗れているのに、そこからさらに1キロ増えるのだからその気持ちは分からないでもない。しかし、今年から基本重量が1キロ加増になっていることを踏まえれば、昨年までなら58キロ換算になる。つまりある意味ではカレンブラックヒルよりも「軽い」。別定の関屋記念に出ても59キロなのだからこの斤量は想定内のはず。あとは我々がそれをどう馬券に反映させるかだ。

それにしても、と思う。すでにGⅠを勝っているような実力馬は、春の連戦の疲れを取り、さらに秋競馬に向けて英気を養わなければならない。そのために夏場は涼しい牧場でゆっくりと休養する―――。ひと昔前ならそれが当たり前だった。だから夏場は重賞のない週末もあったし、たまの重賞もオープン馬だけでは頭数が揃わない。夏の重賞にハンデ戦が多いのは下級条件からの参加を促すためでもある。

しかし時代は変わった。今や年間を通じてJRA重賞の行われない週末はない。売上げを伸ばしたいという主催者側の思惑と、GⅠ馬だからといって休ませてもいられぬ馬主側の思惑が一致した結果、夏のローカルにGⅠ馬が登場することも珍しくはなくなった。2018年の中京記念に出走したワンアンドオンリーなどはその最たる例であろう。涼しい北海道シリーズならまだしも、天下のダービー馬が真夏の中京で行われるハンデGⅢに出てくるなど前代未聞。シーズンオフ感の強かったかつての夏競馬のイメージは、もはやない。

昨日の浦和競馬の話を書きながらつくづく思った。夏の甲子園でさえ健康面を配慮して中止や日程見直しの声が挙がる昨今、動物愛護の観点から真夏の競馬に対する異論が出ぬのは逆に不思議にさえ感じる。ダノンスコーピオンの敵は酷量よりも酷暑であろう。名古屋の暑さは厳しい。よりによって中京記念が行われる日曜日は、二十四節気の「大暑」でもある。人間が堪える暑さに馬が堪えぬわけがない。

 

 

***** 2023/7/19 *****

 

 

 

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