香りと甘さに誘われて
プロキオンS当日の話を続ける。
久しぶりの名古屋だったので、名古屋ならではのうどんを食べようと思った。しかし蒸し暑さが尋常ではない。さすがは名古屋。全身にへばりつくような独特な湿気の中に立てば、名物の味噌煮込みうどんを食べようという気にはとてもなれない。
どうしたものかと悩んだ末に、競馬場に向かう途中の金山駅で降りてみた。
「さぬき安べえ」は駅ビル2階に店を構える半セルフのうどん屋さん。「さぬき」を謳うだけあって、麺も天ぷらもたしかに讃岐スタイル。小麦粉も「さぬきの夢」を使うこだわりようだが、讃岐では決して見かけることのないメニューがある。
それがコチラの「ころ」。
真上からだと分かりづらいが、丼の下の方はこういう感じで麺がツユに浸っている。このツユこそが「ころ」なのである。
「ころ」は漢字で「香露」と書く。すなわち香るツユ。香りが際立つ溜まり醤油をかけて食べるから、このように名付けられた。生醤油とは違った独特の甘さが味覚をくすぐる。なのに後味はさっぱりとしているから不思議。讃岐のぶっかけとも、関東の冷やしうどんとも違う。蒸し暑い夏の名古屋ならではの味だ。
あっと言う間に平らげてしまったのでもう一杯注文する。今度は玉子を載せたその名も「冷玉(ひやたま)」。玉子と言うから生玉子かと思ったら、スクランブルエッグが載っていた。この店だけのオリジナルなのか、あるいはどこでもやっていることなのかは不明だが、食中毒が心配な夏のメニューならではの工夫であろう。うどんの白にネギの緑、そして玉子の黄色。3色のコントラストがなんとも美しい。
ぐるぐるとかき混ぜてひと啜り。2杯目だというのに香りと甘さはなお際立つ。この甘いツユは玉子焼きにも合うようだ。普段、ぶっかけのツユを飲み干すことはしないが、これは飲んでしまった。あとで喉が渇くかもしれない。でも美味いんだからしょうがない。
注文カウンターからは「ころ!」とか「冷玉」という声がひっきりなしに聞こえてくる。ぶっかけや冷やしうどんに比べて知名度は決して高くはない。だが、独特の蒸し暑さを誇る夏の名古屋で、味噌煮込みうどんに代わるうどんを食べたいという強い思いがころうどんを生み、ここ東海の地に根付いた。それをいま私は食べている。なんだか大袈裟な話になったけど、うどん自体はシンプルに美味いです。夏の中京開催の間にもう一度食べに行こう。
***** 2023/7/11 *****
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