父に捧ぐ
種牡馬引退のニュースが相次いでいる。
2010年の宝塚記念を勝ち、続く凱旋門賞でワークフォースの2着となったナカヤマフェスタの種牡馬引退が発表されたのはちょうど一週間前の7月13日。今後は「うらかわ優駿ビレッジAERU」で功労馬となる予定だという。
そして昨日、きさらぎ賞や読売マイラーズCなどを勝ち、皐月賞でも2着したワールドエースの種牡馬引退も発表された。こちらはノーザンホースパークで乗馬となるとのこと。全弟にワールドプレミア、半弟にヴェルトライゼンデがいる良血だが、種牡馬としても苦戦を強いられていた。地方では道営のシルトプレが北海優駿やダービーグランプリを勝っているものの、産駒によるJRAの重賞タイトル獲得はまだない。
折しも、今週の中京記念に出走するメイショウシンタケは、JRAにおけるワールドエース産駒の筆頭格。サマーマイルシリーズ初戦の米子Sは10番人気の低評価をあざ笑うかのような快勝だった。中京記念を勝てば、自身のみならず父にとっても初めてのJRA重賞タイトル獲得となる。
今にして思えば「ワールドエース」というやや振り被り過ぎの感があるその名前が、彼にとって重荷になってしまっていたのかもしれない。皐月賞は「稍重」の発表以上に悪い馬場を正攻法で追い込むもゴールドシップのイン突きに屈し、1番人気で迎えたダービーでも「8番枠の呪い」の前に敗れ去った。
「8番枠の呪い」とは何か。ことの始まりは第16回日本ダービーに遡る。歴史に残る単勝配当55430円というタチカゼの大穴馬券を許したこの年の1番人気馬は、8番枠に入ったトサミドリ。他馬に競られて暴走の挙句、7着と敗れた。
以来、ダイナナホウシユウ、トウショウボーイ、ウアルドマイン、カネツセーキ、アズマハンターといった1番人気馬が、8番のゼッケンを付けてダービーを走り、そして敗れ去ってきた。唯一の例外はミハルオー。だが、1番人気を背負って8番枠に収まったのもつかの間、ゲート内で暴れて外枠発走となってしまったのだから厳密には「8番枠からの発走」ではない。そのおかげか結果は優勝。馬自身が「8番枠の呪い」を知っていたに違いないと私は密かに疑っている。
ちなみに8番枠そのものが忌まわしいわけではない。現にメリーナイスなどは8番のゼッケンを背負って6馬身差の独走だった。同馬は4番人気。不思議なことに、8番枠の呪いは1番人気馬だけを狙い撃ちする。
そして2012年、アズマハンター以来30年ぶりに1番人気を背負ってダービーの8番枠に入ったワールドエースも4着と敗れた。30年を経てなお呪いは生きていたのである。
ナカヤマフェスタは現役引退後にブリーダーズスタリオンステーションで種牡馬入りしたが、成績が思わしくなく一度は種付けを中止した。しかし産駒のガンコが18年日経賞を制したこともあって翌年からアロースタッドで種付けを再開。2020年のラジオNIKKEI賞とセントライト記念を制したバビットを輩出している。供用停止直後に産駒が走るのはよくあること。孝行息子メイショウシンタケは、父ワールドエースに良いニュースを届けることができるだろうか。
***** 2023/7/20 *****
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