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2023年7月21日 (金)

「5刀流」の名馬を偲ぶ

2011年の中山金杯と中日新聞杯を制し、競走馬引退後は金沢大学馬術部で乗馬として活躍していたコスモファントムが亡くなった。同部のツイッターが伝えている。16歳。エースとして同部の活動を9年間も支え、全日本学生馬術連盟の大会に4度の出場を果たした。元競走馬のリトレーニングの難しさを考えれば立派な成績であろう。

芝、ダート、障害の「三刀流」馬として訃報を伝えたメディアもあるが、そう呼ばれる所以をここで紹介しておきたい。ダートの未勝利戦を5馬身差で勝ち上がると、2歳秋の萩Sではのちのダービー馬・エイシンフラッシュに3馬身余りの差をつけて圧勝。その勝ち時計1分46秒7はレコードタイである。強さだけでなく、芝・ダートを問わない2刀流であることを、ここで早くも証明してみせた。

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続くラジオNIKKEI杯ではヴィクトワールピサにクビだけ及ばず2着と敗れるも、ダノンシャンティやヒルノダムールに先着した事実は特記しておきたい。もちろん日本ダービー出走の栄誉にも恵まれた。ジャパンダートダービーでは、マグニフィカの逃げを捉えることはできなかったとはいえ、のちにダートグレードを席捲するミラクルレジェンドには先着してしっかり2着を確保している。

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今世紀でも粒ぞろいと評される2007年生まれ世代にあって、のちのGⅠホースたちと遜色のない実力を発揮していたのが、誰あろうこのコスモファントムなのである。引退レースとなった障害未勝利戦も楽勝。これが初障害であったことを考えれば、あのまま現役を続けていれば障害でも重賞を賑わす存在となったに違いない。

父のステファンゴットイーヴンは2000年のドンH(米GⅠ)の覇者。日本では馴染みが薄いが、半姉ドレミファバンブーが日本に輸入されており、その子キングバンブーは金沢競馬で4勝をマーク。また近親には金沢の女傑ハクサンルドルフの名前もあるから、少なくとも金沢との縁はなくもなかった。

金沢大学に来てからのコスモファントムは前述の通り馬術部のエースとして活躍。さらに羽咋市の平国祭に神馬(しんめ)として出張し、行列に参加するなど地元のためにも尽くしてくれた。それを考えれば、彼の活躍のステージは芝、ダート、障害に留まらず、馬術、神馬まで加えなければ正確とは言えまい。多くの人に愛された5刀流の名馬の冥福を祈ろう。

 

 

***** 2023/7/21 *****

 

 

 

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