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2023年7月25日 (火)

テンジン祭りの夜空に

天神祭は今日がクライマックスの「本宮」。大阪天満宮からほど近い大川では、約3千発の花火が上がった。我が家から天満橋までは徒歩2分。見に行こうかとも思ったが、すでに道路は群衆で埋め尽くされており、身動きが取れない。それなら部屋から見よう。暑いし、テレビ大阪の中継番組も気になる。

天神祭の話ばかりしていたせいで、「テンジン」の馬たちを懐かしく思い出した。「黄、青二本輪、赤袖」のカラフルな勝負服。「テンジン」の冠名でも知られるが、ワシントンカラー、ロイスアンドロイス、ヘッドシップ、ブランディニーなど、活躍馬にはなぜか冠名の無い馬名が目立った。

実際のオーナーは故・清水道一さん。神奈川ダイハツの社長さんで、2013年にお亡くなりなったのだが、縁あって一度だけお会いしたことがある。若い頃から仕事一筋。しかし60歳で大病を患ってから考え方が変わった。仕事だけで終わりじゃつまらない。もっと人生を楽しもう―――。そういう考えに立って、さて何をしようか模索するうち、東京ダイハツの社長と出かけたイタリアの牧場で突然ひらめいたという。

「そうだ。馬を持とう」

それですぐ馬を持てるんだから羨ましいと私は言った。

「でもね。馬主を続けるというのも気苦労の連続でね。最初に持った馬がたまたま走ってくれたせいで、しばらく勝てないとくさったりするんですよ。それを周囲にたしなめられてね。『清水さん、何年も我慢して、何千万円もかけて、それでも勝てない馬主さんがたくさんいるんですよ』って(笑)」

Brandiny

真っ白な馬体がまぶしいワシントンカラーや、ナイスネイチャをしのぐ善戦マンとも言われたロイスアンドロイスといった個性派が揃う中にあって、競馬ファンに強烈なインパクトを残した一頭を挙げろと言われれば、やはりテンジンショウグンであろう。1998年の日経賞をしんがり12番人気で優勝。9歳で障害帰りでは人気薄も頷けるが、ステイゴールドやローゼンカバリーを相手に堂々の差し切りだった点は協調しておきたい。

Tenjin

単勝3万5570円。枠連5万9000円と馬連21万3370円はJRA重賞において今も破られぬ最高配当記録。NHKのニュースに登場した名馬は数あれど、「大穴馬」として取り上げられたのは、彼をおいてほかにはあるまい。

「さすがに勝ち目はないと家族の誰も競馬場へ行こうとしない。仕方なく私ひとりで出かけたら、唯一のGⅡ勝ちになるなんてね(笑)」

テンジンショウグンは彼は競走馬を引退したあと、警視庁騎馬隊で第二の“馬生”を送ったのち、5年前に天寿を全うした。清水オーナーは天国でテンジンショウグンとの再会を果たしただろうか。天神祭の花火が照らす夜空を見ながら、ついそんなことを考えた。私だってたまにはそういうことを考える。

 

 

***** 2023/7/25 *****

 

 

 

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