« 2023年6月 | トップページ | 2023年8月 »

2023年7月31日 (月)

夏と言えばカレースパ

今日も暑かったですね。人は暑いとなぜカレーを恋しくなるのだろうか。私とて例外ではいられない。先週土曜はウインズ梅田に行くついでに阪急三番街の「インディアンカレー」に飛び込んだ。

Indian

ただし注文はカレーライスではなくインディアンスパである。口に運ぶとほんのりとした甘さが広がり、ひと呼吸遅れて喉の方から刺激がせり上がってくるあの独特のカレーを、ライスではなくパスタに絡めて食べるのもまた格別。冷房漬けでカチコチになった身体が徐々に息を吹き返すのが分かる。う~辛い。辛いけど旨い。

だが、敢えて希望を言わせていただれば、もう少しロメスパ感がほしい。

「ロメスパ」とは「路面スパゲティ」の略。路面にある立ち食い蕎麦屋のように、気軽に立ち寄って素早く食べられるスパゲティという意味が込められた造語で、立ち食い蕎麦のように茹で置きの太麺を炒め直すスタイルが多い。

K21そんなことを考えてみたら、もう一杯行きたくしたくなった。阪急三番街から地上に出て、阪急のガード下に沿って歩くこと2分。「カレーハウスK2」は1979年創業の老舗カレー専門店だが、初訪問客はその安さにきっと驚くに違いない。メニューはすべて600円。ビーフカレーも、ポークカツカレーも、チキンカツカレーも、エビフライカレーも、コロッケカレーもすべて600円。安い。

K22

スパゲティーも「600円」と書かれているが、ポークカツ、チキンカツ、エビフライ、コロッケからトッピングを選ぶことができる。つまりすべてのカレーが600円で、ライスにするか、スパゲティーにするかを選ぶ感じ。スパゲティーはピーマンと玉ねぎと一緒に炒めてあり、そこにカレーがたっぷりかけられている。トッピングにはポークカツをチョイス。大阪を席巻する「スパイスカレー」とは異なり、欧風スタイルのカレーは辛さの中にも奥深い味わいがあり、スパゲティー絡めるとさらに旨味が倍加する。ライスも捨てがたいが、私はここではスパゲティー以外を注文したことがない。

Chikagoro

ここからウインズ梅田までは歩いて5分。馬券を仕入れて、JR大阪駅の反対側へと歩き、大丸で買い物をしてから、大阪第2ビルへ。このビルの地下1階に「ちかごろのカレー屋さんKANAE」という一風変わった名前のカレー専門店がある。こちらにもスパゲティーメニューがあることを思い出した。3杯目は「インディアンカレー」と「K2」の中間くらいの辛さ。3杯ともカレーの味も、麺の風味もまるで違うから飽きない。そこは大阪の底力であろう。

Chika2

それにしても先ほどの「K2」でも、こちらの「KANAE」でも、「カレースパゲティー」ではなく「スパゲティーカレー」と呼んでいるところに興味を惹かれる。あくまでもカレーが主役ということか。このあたりは引き続き調査したい。

Chika3

 

 

***** 2023/7/31 *****

 

 

|

2023年7月30日 (日)

「う」の付く食べ物

今日は土用の丑の日でした。みなさん、ウナギは食べましたか?

母の日の花屋に大晦日の蕎麦屋、そしてクリスマスイブのケンタッキーフライドチキン。それらと同じくらい土用の丑の日の鰻屋さんは多忙を極める。私の母親の実家は鰻屋だったから、「丑の日」を知らないとトボけることなどできない。夏休みで帰省中だった小学生当時の私も、否応なしに手伝わされた。そんな特別な日に私ごときの昼食で鰻屋さんの手を煩わせるのは申し訳ないので、私の今日のお昼は大阪中崎町の讃岐うどんの名店「今雪」で明太バター釜玉。鰻丼とはかけ離れた一杯だけど、これはこれで美味しい。

Udon_20230730144001 

江戸時代の戯作者で、エレキテルの発明者でもある平賀源内が、客の夏枯れに困った鰻屋に頼まれて、「今日は丑の日」という意味の貼り紙を書いて宣伝したところ、思いのほか繁盛したのがそもそもの始まり―――。

土用の丑の日にウナギを食べる習慣については、こんな話がまことしやかやに語られているが、実はこのエピソードには確たる証拠はないらしい。つまり単なる俗説。言われてみれば、たしかに話として出来過ぎの感はある。

立秋前の土用の時季に、夏バテを避けるため栄養価の高いウナギやドジョウ、ナマズといった川魚を食べる習慣は、既に奈良時代から始まっていた。ウナギが手に入らなければ、ウナギに似たゴボウでも良いとされたらしい。京都の夏にハモが好まれるのも、この流れだと主張する人もいる。ともあれ相手がウナギだけに、どうにも捕らえどころがない。

ウナギに限らず、名前に「う」の付くものを食べると夏負けしないという言い伝えもある。もちろん「牛」も例外ではない。丑の日に牛を食べるという風習は明快だ。ということは「馬」もきっと……アリなんでしょうね。これはちと真似できない。

他にも「う」の付く食べ物として、丑の日にうどんを食べるという地方もある。ならば、私が昼に食べた釜玉は土用の丑の日に食べるメニューとして相応しくないこともない。そもそもウナギが美味いのは秋から冬にかけて。炎天下に行列してまで食べることもあるまい。むしろ夏バテを助長するだけだ。

ちなみに、この「夏バテ」にも使われる「バテる」という言葉。この語源が実は競馬にあることをご存知だろうか。馬が走り疲れた様子を、競馬用語で「バタバタになる」と言う。これが簡略化されて「バテる」になったというワケ。念のために書いておくが、これは俗説ではない。キングジョージのオーギュストロダンのバテぶりには驚いた。なにか「う」の付くものを彼に食べさせてあげたい。

 

 

***** 2023/7/30 *****

 

 

|

2023年7月29日 (土)

オーナーの色

新潟開催開幕日の最終レースは直線1000mの名物コースを使った1勝クラスの一戦。そこにミルファームが5頭を送り込んできた。

これがいわゆる「夏のミルファーム祭りなのか?」と問われればさにあらず。5頭程度では「祭り」とは呼べまい。なにせ、2020年の新潟開幕週の直線1000mに大挙12頭を出走させたオーナーである。これがJRAでの同一馬主による最多出走記録。「白、赤格子、赤袖」の服色の身に纏った12組の人馬がずらっと横に広がって攻防を繰り広げたレースは、今思い出しても壮観のひと言だった。

Mil

かようにミルファームと言えば新潟1000mと言えるほどそのイメージは強く結びついているわけだが、実際に同コースにおける出走頭数、勝利回数ともトップの数字を誇っている。昨年は同コースで2勝。今年の春開催でも1勝をマーク。なによりオーナーとして初めての重賞タイトルが昨年のアイビスサマーダッシュだった。このレースへの思い入れは特別なものがあるに違いない。明日のアイビスサマーダッシュには6歳牝馬のトキメキで挑む。

「メジロ」と聞けばステイヤーの印象が強いし、短距離やマイルのレースでは「タイキ」の勝負服を買いたくなったもの。小倉の新馬には「テイエム」の勝負服が溢れがちで、「マイネル」は2歳戦に強く、「サクラ」は雨に弱い。「セイウン」や「ニシノ」の西山オーナーの所有馬はしばしば大穴を空ける―――。

馬の個性は一頭一頭異なるはずのに服色ごとに特定の印象が定まるのは、あながちおかしな話ではない。血統には馬主の嗜好が現れるもの。育成方法にもオーナーの考えが一定程度反映されるはずだ。そもそも預託厩舎を決める段階で、ある程度の色に染まっているとも言える。

Kopa_20230729192001 

先日の習志野きらっとスプリントをキモンルビーで勝った「ドクター・コパ」こと小林祥晃オーナーの色は、ずばり「船橋の短距離」。創設13年の習志野きらっとスプリントを5勝は凄い。キモンルビーにしても船橋の1200m以下に限れば(10,4,0,0)のスペシャリスト。ミルファームの「新潟1000m」と並び、注意すべき服色であろう。

もちろんこうした印象は単なる思い込みということもある。タイキエルドラドは2500mのアルゼンチン共和国杯を勝っているし、サクラチトセオーも雨のAJC杯を勝った。アイビスサマーダッシュの初代チャンピオンがメジロダーリングであることも忘れてはならない。しかし服色に個性を見い出すことが思わぬ大穴に繋がることもある。今年の夏の新潟で最初に行われる3歳未勝利戦は8月13日の7レース。はたして今年も「ミルファーム祭り」になるのか。楽しみに待ちたい。

 

 

***** 2023/7/29 *****

 

 

|

2023年7月28日 (金)

決戦、桶狭間

先週は名古屋が熱かった。中京記念だけではない。プロ野球オールスターゲームに大相撲名古屋場所。もちろん梅雨明け直後の猛暑もここに加わる。

NHK大河ドラマ「どうする家康」も例外ではない。先週はドラマ前半の大一番、本能寺の変を迎えた。しかも単なる光秀の謀反として描かれたのではない。信長と家康、愛知にゆかりの深い二大英傑の絆に深く切り込む内容だったけに、とくに名古屋の皆さんは熱くご覧になったのではあるまいか。

だからというわけでもないが、中京記念の前に有松から桶狭間周辺を歩いてみた。なにせこの日の中京9レースは有松特別。そして10レースは桶狭間S。中京開催のクライマックスに相応しい。JRAもそこはよく分かっている。

Arimatsu1

名古屋から向かうと有松駅は中京競馬場前駅のひとつ手前にあたる。その名の通り、かつては松しかなかったそうだが、今では駅の北側にイオンモールが聳え立つ近代的な街。しかし南側は江戸時代の風情そのままだ。ゆるやかに曲がりくねった旧東海道に沿って伝統的な家並みが今も残されている。

Arimatsu2

街道沿いに一軒のうどん店を見つけた。

明治時代の建物を改装したという店構えは一見してうどん店とは分からない。しかし周囲にはすっかり馴染んでいる。それにしても暑い。なにはともあれ冷たいうどんでも一杯ひっかけて行こう。店内も風情はある。お客さんも多い。先日金山駅で食べたような甘く香る濃い目のツユを期待した。ところが、そうでもない。麺もいくぶん硬過ぎた。きっとこういうものなのだろう。

店を出て旧東海道を東へと歩く。右に見える桶狭間、左は競馬場。そんな感じ。450年前、信長、家康、そして今川義元といった名将がこの地で争った。それで戦国のロマンに思いを馳せるのではなく、「ならば今日はメイショウの馬を狙おう」と考えてしまうあたりが競馬ファンの悲しい性。競馬場に着くなり片っ端からメイショウの馬券を購入すると、さっそく7レースをメイショウオオミネが勝った。4番人気。手綱を取ったのは角田「大河」騎手だから良くできている。

7r_20230724185801

しかしその後の名将たちは苦戦を強いられた。そりゃそうですよね。桶狭間Sが行われる日だからといって、松本オーナーばかりが勝つはずがない。そもそも450年前の桶狭間では苦戦したり死んだりした名将もいたはず。勝ったと言えるのはほんのひと握りに過ぎない。

10r_20230724185801

ちなみに今年の桶狭間の電撃戦を制したのは牝馬のアルファマムだった。その馬名には「リーダー格のママ」という意味があるらしい。さしずめ家康の母「於大の方」といったところか。他馬をなぎ倒すようなその末脚に、また熱くなった。来週から大河ドラマは新たな時代に入る。夏競馬も折り返しだ。

 

 

***** 2023/7/28 *****

 

 

|

2023年7月27日 (木)

単勝元返しが意味するもの

兵庫ではスマイルミーシャが早くも始動。しかし重賞ではないし、それどころかオープンですらない。今日のメインはB1クラスの特別戦。そこに重賞3勝、最優秀2歳馬にして今年のダービー馬が出てくるのだから単勝元返しのオッズも頷ける。

Paddock_20230727211801

別にスマイルミーシャがズルをしたわけではない。ダービー馬でもB1クラスに格付けされるのは、クラス分けにポイント制度を採用している兵庫ならでは。3歳以降のクラス分けに獲得賞金は意味をなさない。昨年ダービー馬バウチェイサーも、おととしのスマイルサルファーも、3年前のディアタイザンもB1クラスからスタートして、ちゃんと勝っている。しかしそれでも単勝元返しにはならなかった。このあとのスマイルミーシャの走りが、現在の格付けルールに一石を投じることになるかもしれない。

レースは大方の予想通りに進んだ。好発を決めたスマイルミーシャは逃げ馬を先に行かせてスンナリと2番手に収まる。2周目の向こう正面。後続に手応えの良さそうな馬はいない。それを確認してじわっと先頭に並びかけると、4コーナーから一気にスパート。瞬く間に後続に5馬身差をつけると、最後は手綱を抑える余裕を見せながらゴールを果たした。

Smile1_20230727211801

ダービーから1か月余り。この中間は在厩での調整だったそうだが、まずは疲労回復を最優先にしたはず。パドックでもそこまで作っている印象は受けなかった。それでも終わってみればこの楽勝ぶりである。それこそ「格」が違ったとしか言いようがない

Smile2_20230727211801

それでもスマイルミーシャはこのレースに出てポイントを稼ぎ、自らの格付けを上げておく必要があった。でないとこの先のレース選択の幅が狭まる恐れがある。過去のダービー馬たちも事情は同じだ。

一緒に走る馬にとってはいい迷惑かもしれない。このレースを「ケン」したファンも多かろう。ダービーの勝ちっぷりからして、B1の器ではないことは明白だった。今日のレース結果は明白な事実の証明に過ぎない。JRAでタスティエーラやリバティアイランドが2勝クラスに出てきたらファンはどう思うか。1.0倍のオッズはファンたちの声なき声。兵庫が導入したポイント制度は大筋では良くできているだけに、画竜に点睛を欠くようなことはあって欲しくない。

 

 

***** 2023/7/27 *****

 

 

|

2023年7月26日 (水)

笹川翼騎手1700勝

昨日の船橋1レースをイロハニオエが勝ち、騎乗していた笹川翼騎手は地方通算1700勝目をマークした。

1994年7月17日生まれ、新潟県出身の29歳。2013年4月にデビューすると、いきなり43勝を挙げ、NARグランプリ優秀新人騎手賞を受賞した。地方競馬教養センターの同期は石川倭、井上幹太、瀧川寿希也、木之前葵といった面々。若手ながら各地でリーディングを争う腕達者が揃ことから、地方競馬教養センターではこの世代を「華の91期生」と呼んだりもする。

Sasa1

2013年4月7日からわずか10年余りでの1700勝到達は、大井所属ジョッキーとしては御神本訓史騎手やJRAに移籍した戸崎圭太騎手をも上回る。今日の船橋終了時点で今年161勝。これは年間280勝を超えるペースで、数字の面ではキャリアハイの一年になる可能性が高い。このまま無事にいけば来年にも2000勝に届くはずだ。

勝率では御神本騎手や戸崎騎手に及ばないのに、その二人を上回るペースで勝ち星を積み重ねることができているのは、長い休みがなかったせいであろう。怪我なく乗り続けることも騎手の資質のひとつ。ただし2016年、彼は1か月間ほど南関東での騎乗を休んだことがある。

怪我ではない。フランスで開業する小林智調教師のもとで現地の競馬に触れるチャンスを得た。ちょうどマカヒキの遠征と重なったことから、ニエル賞と凱旋門賞も現地で観戦したという。もちろんレースにも騎乗。勝利には至らなかったが、直線1600mや3000mの長距離レースは、JRA騎手でもなかなか経験できることではない。

本人によれば、フランスの競馬に乗ってみて、自分の技術がまったく通用しないことを痛感したそうだ。若手ながら南関東では上位の成績にランクされていたから、ある程度の自信を持って渡仏したのであろう。それが世界ではまったく通用しなかった。そういうことを身をもって知ることができただけでも、本人にとっては大きな経験に違いない。その後、私の馬などにも乗ってもらう機会があったが、以前にも増して周りが見えている印象を受ける。それでも勝てなかったのは、きっと彼のせいではない。馬が弱いのである。

Sasa2_20230727193601

彼の祖父・此村与志松氏は、かつての新潟県営競馬で騎手をしていた。 胴黄に赤という笹川騎手の勝負服の配色は、此村氏の服色に由来する。騎手引退後にはシンボリ牧場で育成調教に携わり、あのシンボリルドルフの調教パートナーを務めた人物。岡部幸雄騎手、野平祐二調教師、そして此村与志松氏。全盛期のシンボリルドルフに跨ることができた人間は、そう多くない。

1700勝を達成した昨日の船橋1レースを勝ったイロハニオエの祖母は2001年のマーメイドSを勝ったタイキポーラ。その父の父はシンボリルドルフだ。

 

 

***** 2023/7/26 *****

 

 

|

2023年7月25日 (火)

テンジン祭りの夜空に

天神祭は今日がクライマックスの「本宮」。大阪天満宮からほど近い大川では、約3千発の花火が上がった。我が家から天満橋までは徒歩2分。見に行こうかとも思ったが、すでに道路は群衆で埋め尽くされており、身動きが取れない。それなら部屋から見よう。暑いし、テレビ大阪の中継番組も気になる。

天神祭の話ばかりしていたせいで、「テンジン」の馬たちを懐かしく思い出した。「黄、青二本輪、赤袖」のカラフルな勝負服。「テンジン」の冠名でも知られるが、ワシントンカラー、ロイスアンドロイス、ヘッドシップ、ブランディニーなど、活躍馬にはなぜか冠名の無い馬名が目立った。

実際のオーナーは故・清水道一さん。神奈川ダイハツの社長さんで、2013年にお亡くなりなったのだが、縁あって一度だけお会いしたことがある。若い頃から仕事一筋。しかし60歳で大病を患ってから考え方が変わった。仕事だけで終わりじゃつまらない。もっと人生を楽しもう―――。そういう考えに立って、さて何をしようか模索するうち、東京ダイハツの社長と出かけたイタリアの牧場で突然ひらめいたという。

「そうだ。馬を持とう」

それですぐ馬を持てるんだから羨ましいと私は言った。

「でもね。馬主を続けるというのも気苦労の連続でね。最初に持った馬がたまたま走ってくれたせいで、しばらく勝てないとくさったりするんですよ。それを周囲にたしなめられてね。『清水さん、何年も我慢して、何千万円もかけて、それでも勝てない馬主さんがたくさんいるんですよ』って(笑)」

Brandiny

真っ白な馬体がまぶしいワシントンカラーや、ナイスネイチャをしのぐ善戦マンとも言われたロイスアンドロイスといった個性派が揃う中にあって、競馬ファンに強烈なインパクトを残した一頭を挙げろと言われれば、やはりテンジンショウグンであろう。1998年の日経賞をしんがり12番人気で優勝。9歳で障害帰りでは人気薄も頷けるが、ステイゴールドやローゼンカバリーを相手に堂々の差し切りだった点は協調しておきたい。

Tenjin

単勝3万5570円。枠連5万9000円と馬連21万3370円はJRA重賞において今も破られぬ最高配当記録。NHKのニュースに登場した名馬は数あれど、「大穴馬」として取り上げられたのは、彼をおいてほかにはあるまい。

「さすがに勝ち目はないと家族の誰も競馬場へ行こうとしない。仕方なく私ひとりで出かけたら、唯一のGⅡ勝ちになるなんてね(笑)」

テンジンショウグンは彼は競走馬を引退したあと、警視庁騎馬隊で第二の“馬生”を送ったのち、5年前に天寿を全うした。清水オーナーは天国でテンジンショウグンとの再会を果たしただろうか。天神祭の花火が照らす夜空を見ながら、ついそんなことを考えた。私だってたまにはそういうことを考える。

 

 

***** 2023/7/25 *****

 

 

 

|

2023年7月24日 (月)

まつりだ!

雷鳴で目が覚めた。

朝から雷雨とは珍しい。昨日はたくさん歩いたので疲れている。もう少し寝ていたい。しかし窓の外は晴れている。ならばカミナリの音ではない。ふんじゃあ何だ?

答えは天神祭。隣の大阪天満宮から聞こえてくる太鼓の音だった。

昨年とおととしはコロナ禍を受けて中止。今年は4年ぶりに通常開催される。だからみんな張り切っているのだろう。太鼓の音に4年間の音が漲っている。

4年前、私は大阪に来ていなかった。その後、今のマンションに入居する際に「天神祭のときはすごいことになりますよ」と不動産業者から聞かされた覚えがある。とはいっても、たかがお祭りではないか。それこそ高みの見物を決め込めば良い。窓の下を覗くとハッピを来た大勢の人が集まっている。

「祭り」と聞いて競馬ファンが思い起こすのは何か?

2017年の有馬記念で北島三郎さんが熱唱された「まつり」も忘れがたいが、やはりここはマツリダゴッホに代表される冠名「マツリダ」の馬たちではなかろうか。

Matsutida

「マツリダ」の冠号を使っていらっしゃるのは、八幡平市在住の高橋文枝オーナー。夫の福三郎さんが大の祭り好きということで、この冠号を付けるようになった。それより前は「ハッピー」とか「フジノ」の冠号も使っていたが、「マツリダ」と付けた馬たちが活躍したことで、最近では「マツリダ」一本で勝負していると聞く。最近はJRAでその馬名を聞く機会は減ったが、地元岩手ではマツリダスティールが不来方賞を勝つなどファンにインパクトを与え続けている。

一方で、種牡馬マツリダゴッホの勢には陰りが見え始めている。リンゴアメが勝った2020年函館2歳S以来JRAの重賞勝ちもない。今週のアイビスサマーダッシュにはチェアリングソングが登録しているが、近走の成績を見る限りでは、首尾よく外枠を引き当てたとしても厳しい競馬になりそうだ。

あれほどの栄華を極めたサンデー直子の種牡馬も、気づけばマツリダゴッホ以外ではダイワメジャーくらい。これも時代の流れか。諸行無常。盛者必衰。祭り騒ぎも永遠に続くわけではない。

Matsuri_20230724190601

天神祭は明日がハイライトの「本宮」。なんとテレビ大阪で生中継されるそうだ。隙間番組かと思いきやゴールデンタイムの2時間半特番である。しかもMCは西川きよし師匠とハイヒールのふたり。ゲスト出演者も多数。地上波がお祭りの中継をするなんて、東京ではまず聞かない。しかしテレビ大阪では開局以来ずっと天神祭の生中継を続けているそうだ。凄いですね。

高みの見物を決め込んだが、それでは済まぬような気もしてきた。いったい明日はどうなるのか。覚悟を決めて寝よう。

 

 

***** 2023/7/24 *****

 

 

|

2023年7月23日 (日)

70年の時を経て

中京競馬場は1953年7月26日に竣工。翌8月22日に初の競馬開催が行われた。左回りは現在と同じだが、コースは芝でもダートでもなく、なんと「砂」。当時の予想紙は「砂は深く船橋競馬場に近い」と表現している。

開催2日目の8月23日に「中京開設記念」が1800mで行われた。この年の天皇賞(春)を勝ったレダが出走するとあって、猛暑にもかかわらず1万3千人の入場者が詰め掛けたと記録に残る。レースは逃げたキヨストロングをゴール前で強襲したレダがハナ差で勝った。慣れぬ砂コースに苦労したのかもしれない。ともあれその翌年から「中京記念」と名を変えて現在に至る。今日は70周年の中京競馬場で第71回目の中京記念が行われる記念すべき日。第1回の中京開設記念と同じく1万人を超える観衆で大いに賑わっている。

16901111666160

その観衆が最初に湧いたのは6レースだった。3歳上1勝クラスのダート1800m戦。初ダートの4番人気サーマルソアリングがハナを奪って直線に向くと、さらにその差をぐんぐん広げて2着に2秒2もの大差を付けてゴールした。良馬場の勝ち時計は1分51秒8。今年の中京ダート1800mを51秒台が出たのは、良馬場に限れば先週の名鉄杯と東海Sの2鞍のみ。一線級古馬が出す時計を初ダートの3歳馬が叩き出したのだから凄い。しかもゴール前は手綱を抑える余裕まであった。

6r_20230723201401

ヴァーミリアンも、カネヒキリも、エスポワールシチーも、ゴールドアリュールも、ブルーコンコルドも、メイショウボーラーも、トランセンドも、芝からキャリアを初めたダートチャンピオンの初ダート戦はみんな疑われた。彼らですら初めてのダート戦では、ことごとく他馬に1番人気を譲っていたのである。そういう意味ではサーマルソアリングも同じ。砂コースでその歴史が始まった中京から、新たな砂の女王が生まれたのかもしれない。

そうは言ってもファンのお目当ては中京記念である。中京記念の歴史は中京競馬場の歴史。今日、中京の歴史にまた新たな1ページが加わる。

中京記念は夏のマイル戦になってから、なぜか4歳馬が一度も連対していない。しかしそれはわずか11回だけのこと。70年の歴史を思えば取るに足らないジンクスであろう。実際レースでは4歳馬セルバーグがまんまと逃げ切ってみせた。今年1月の中京で勝ったときも、開催末期の荒れ馬場だったことを思い出す。その時の勝ち時計が1分32秒9。今日は1分33秒0。つまり今日のような荒れ気味の良馬場が得意なのだろう。

11r_20230723201401

コース適性の分かれ目は芝とダートだけでなない。パンパンの芝より荒れた芝を得意とする馬もいれば、ダートよりガチの砂を得意とする馬だっているはず。いろんなタイプの馬がいて、いろんなタイプの馬場があり、しかも四季を通じて行われるから日本の競馬は楽しい。暑さを承知でこれだけの人が競馬場に足を運ぶ理由は、それしかないような気がした。

 

 

***** 2023/7/23 *****

 

 

|

2023年7月22日 (土)

ワンターンに賭ける夏

来週火曜は船橋で習志野きらっとスプリントが行われる。全国各地のスプリンターたちが凌ぎを削るスーパースプリントシリーズのファイナルレース。ワンターンに賭ける夏が今年もやってきた。

注目は2連覇がかかるギシギシ。昨年このレースを勝ってからは6連敗と振るわないが、それでも前走は久しぶりの5ハロン戦で2着と復調を伺わせた。左回りの1000m重賞は全国的にも施行例が少ないから、しばしばスペシャリストの世界となる。連覇があっても不思議ではない

昨年そのギシギシにクビ差で敗れたキモンルビーは、休み明けの川崎スパーキングスプリントを3馬身差の圧勝。昨年と同じローテで雪辱を狙う。

個人的注目は園田から遠征する2頭。とくにメイプルシスターは、兵庫FCスプリントで後続を5馬身突き放す圧巻のパフォーマンスを見せた。800~820mでは(5,2,0,0)とスピード能力なら上記2頭にひけはとらない。あとは「1000mでも長かった」ということにならぬよう祈るばかりだ。

Dirt_20230722182901

ところで明日は福島でもダートスプリントの注目の一戦が行われる。

メインの安達太良Sは過去の1・2着馬にダイワテキサスやグルメフロンティアらが名を連ねる中距離の準オープン特別としてオールドファンにはお馴染みの存在だったが、昨年からダート1150mに条件が変更となり、今年はなんとオープン特別で行われることになった。福島ダート1150mは2004年秋から使われるようになった比較的新しいコース設定だが、20年近い歴史の中でオープンの競走は今回が初めて。いや、そもそも1200m未満のダートのオープンレース自体がJRAでは極めて珍しい。アラブのレースを除けば、1994年の函館3歳Sがダート1000mで行われて以来になる。

函館3歳Sがなぜダートだったのか。実はこの年の函館は馬場改修の真っ最中で、芝コースが使えなかった。ダートの1200mという設定もなかったため、すべてのレースはダートの1000mか1700mで行われたのである。それでよくお客さんが飽きなかったと関心するけど、まあ現在の高知競馬でも同じようなことになっているからさほど気にすることでもないのかもしれない。

ちなみに、その函館3歳Sにはデビュー1年目の吉田豊騎手がマイネルノルデンに騎乗していた。6番人気で結果は9着。それでもルーキーで重賞の手綱を任されるのだから才能の片鱗は見せていたのであろう。約30年の歳月を経て、パンサラッサとのコンビで世界にその名をとどろかせる存在にまでなった吉田豊騎手は、明日の安達太良Sでアーバンイェーガーの手綱を取る。瞬き厳禁。真夏のワンターンに注目しよう。

 

 

***** 2023/7/22 *****

 

 

 

 

|

2023年7月21日 (金)

「5刀流」の名馬を偲ぶ

2011年の中山金杯と中日新聞杯を制し、競走馬引退後は金沢大学馬術部で乗馬として活躍していたコスモファントムが亡くなった。同部のツイッターが伝えている。16歳。エースとして同部の活動を9年間も支え、全日本学生馬術連盟の大会に4度の出場を果たした。元競走馬のリトレーニングの難しさを考えれば立派な成績であろう。

芝、ダート、障害の「三刀流」馬として訃報を伝えたメディアもあるが、そう呼ばれる所以をここで紹介しておきたい。ダートの未勝利戦を5馬身差で勝ち上がると、2歳秋の萩Sではのちのダービー馬・エイシンフラッシュに3馬身余りの差をつけて圧勝。その勝ち時計1分46秒7はレコードタイである。強さだけでなく、芝・ダートを問わない2刀流であることを、ここで早くも証明してみせた。

Cosmo1

続くラジオNIKKEI杯ではヴィクトワールピサにクビだけ及ばず2着と敗れるも、ダノンシャンティやヒルノダムールに先着した事実は特記しておきたい。もちろん日本ダービー出走の栄誉にも恵まれた。ジャパンダートダービーでは、マグニフィカの逃げを捉えることはできなかったとはいえ、のちにダートグレードを席捲するミラクルレジェンドには先着してしっかり2着を確保している。

Cosmo2

今世紀でも粒ぞろいと評される2007年生まれ世代にあって、のちのGⅠホースたちと遜色のない実力を発揮していたのが、誰あろうこのコスモファントムなのである。引退レースとなった障害未勝利戦も楽勝。これが初障害であったことを考えれば、あのまま現役を続けていれば障害でも重賞を賑わす存在となったに違いない。

父のステファンゴットイーヴンは2000年のドンH(米GⅠ)の覇者。日本では馴染みが薄いが、半姉ドレミファバンブーが日本に輸入されており、その子キングバンブーは金沢競馬で4勝をマーク。また近親には金沢の女傑ハクサンルドルフの名前もあるから、少なくとも金沢との縁はなくもなかった。

金沢大学に来てからのコスモファントムは前述の通り馬術部のエースとして活躍。さらに羽咋市の平国祭に神馬(しんめ)として出張し、行列に参加するなど地元のためにも尽くしてくれた。それを考えれば、彼の活躍のステージは芝、ダート、障害に留まらず、馬術、神馬まで加えなければ正確とは言えまい。多くの人に愛された5刀流の名馬の冥福を祈ろう。

 

 

***** 2023/7/21 *****

 

 

 

|

2023年7月20日 (木)

父に捧ぐ

種牡馬引退のニュースが相次いでいる。

2010年の宝塚記念を勝ち、続く凱旋門賞でワークフォースの2着となったナカヤマフェスタの種牡馬引退が発表されたのはちょうど一週間前の7月13日。今後は「うらかわ優駿ビレッジAERU」で功労馬となる予定だという。

そして昨日、きさらぎ賞や読売マイラーズCなどを勝ち、皐月賞でも2着したワールドエースの種牡馬引退も発表された。こちらはノーザンホースパークで乗馬となるとのこと。全弟にワールドプレミア、半弟にヴェルトライゼンデがいる良血だが、種牡馬としても苦戦を強いられていた。地方では道営のシルトプレが北海優駿やダービーグランプリを勝っているものの、産駒によるJRAの重賞タイトル獲得はまだない。

折しも、今週の中京記念に出走するメイショウシンタケは、JRAにおけるワールドエース産駒の筆頭格。サマーマイルシリーズ初戦の米子Sは10番人気の低評価をあざ笑うかのような快勝だった。中京記念を勝てば、自身のみならず父にとっても初めてのJRA重賞タイトル獲得となる。

今にして思えば「ワールドエース」というやや振り被り過ぎの感があるその名前が、彼にとって重荷になってしまっていたのかもしれない。皐月賞は「稍重」の発表以上に悪い馬場を正攻法で追い込むもゴールドシップのイン突きに屈し、1番人気で迎えたダービーでも「8番枠の呪い」の前に敗れ去った。

「8番枠の呪い」とは何か。ことの始まりは第16回日本ダービーに遡る。歴史に残る単勝配当55430円というタチカゼの大穴馬券を許したこの年の1番人気馬は、8番枠に入ったトサミドリ。他馬に競られて暴走の挙句、7着と敗れた。

以来、ダイナナホウシユウ、トウショウボーイ、ウアルドマイン、カネツセーキ、アズマハンターといった1番人気馬が、8番のゼッケンを付けてダービーを走り、そして敗れ去ってきた。唯一の例外はミハルオー。だが、1番人気を背負って8番枠に収まったのもつかの間、ゲート内で暴れて外枠発走となってしまったのだから厳密には「8番枠からの発走」ではない。そのおかげか結果は優勝。馬自身が「8番枠の呪い」を知っていたに違いないと私は密かに疑っている。 

ちなみに8番枠そのものが忌まわしいわけではない。現にメリーナイスなどは8番のゼッケンを背負って6馬身差の独走だった。同馬は4番人気。不思議なことに、8番枠の呪いは1番人気馬だけを狙い撃ちする。

そして2012年、アズマハンター以来30年ぶりに1番人気を背負ってダービーの8番枠に入ったワールドエースも4着と敗れた。30年を経てなお呪いは生きていたのである。

Ace

ナカヤマフェスタは現役引退後にブリーダーズスタリオンステーションで種牡馬入りしたが、成績が思わしくなく一度は種付けを中止した。しかし産駒のガンコが18年日経賞を制したこともあって翌年からアロースタッドで種付けを再開。2020年のラジオNIKKEI賞とセントライト記念を制したバビットを輩出している。供用停止直後に産駒が走るのはよくあること。孝行息子メイショウシンタケは、父ワールドエースに良いニュースを届けることができるだろうか。

 

 

***** 2023/7/20 *****

 

 

 

|

2023年7月19日 (水)

敵は酷暑か、酷量か

ラジオNIKKEI賞、七夕賞、函館記念、そして今週は中京記念。ローカル開催らしく7月のJRAは毎週のようにハンデ重賞が続く。中京記念は2012年から真夏のマイル重賞として生まれ変わった。過去11回で1~3番人気での決着は一度もない。ハンデに加え、この時季らしく道悪になることが人気馬を苦しめている。

Danon_20230719213601

今年はダノンスコーピオンが登録してきた。昨年のNHKマイルC優勝馬に課されたハンデは59キロ。GⅠ勝ちの実績を踏まえれば妥当かなと思う一方で、2012年以降の中京記念で59キロを背負った馬はいない。もっとも背負わされたのは2015年のカレンブラックヒル。トップハンデとなる58.5キロに加え1番人気の重圧まで背負わされ、結果7着に敗れている。

「重いね。仕方ないことかもしれませんが59キロはやはり重い」

ダノンスコーピオンを管理する安田隆調教師は「重い」という言葉を二度繰り返した。前2走は58キロを背負っていずれも二桁着順に敗れているのに、そこからさらに1キロ増えるのだからその気持ちは分からないでもない。しかし、今年から基本重量が1キロ加増になっていることを踏まえれば、昨年までなら58キロ換算になる。つまりある意味ではカレンブラックヒルよりも「軽い」。別定の関屋記念に出ても59キロなのだからこの斤量は想定内のはず。あとは我々がそれをどう馬券に反映させるかだ。

それにしても、と思う。すでにGⅠを勝っているような実力馬は、春の連戦の疲れを取り、さらに秋競馬に向けて英気を養わなければならない。そのために夏場は涼しい牧場でゆっくりと休養する―――。ひと昔前ならそれが当たり前だった。だから夏場は重賞のない週末もあったし、たまの重賞もオープン馬だけでは頭数が揃わない。夏の重賞にハンデ戦が多いのは下級条件からの参加を促すためでもある。

しかし時代は変わった。今や年間を通じてJRA重賞の行われない週末はない。売上げを伸ばしたいという主催者側の思惑と、GⅠ馬だからといって休ませてもいられぬ馬主側の思惑が一致した結果、夏のローカルにGⅠ馬が登場することも珍しくはなくなった。2018年の中京記念に出走したワンアンドオンリーなどはその最たる例であろう。涼しい北海道シリーズならまだしも、天下のダービー馬が真夏の中京で行われるハンデGⅢに出てくるなど前代未聞。シーズンオフ感の強かったかつての夏競馬のイメージは、もはやない。

昨日の浦和競馬の話を書きながらつくづく思った。夏の甲子園でさえ健康面を配慮して中止や日程見直しの声が挙がる昨今、動物愛護の観点から真夏の競馬に対する異論が出ぬのは逆に不思議にさえ感じる。ダノンスコーピオンの敵は酷量よりも酷暑であろう。名古屋の暑さは厳しい。よりによって中京記念が行われる日曜日は、二十四節気の「大暑」でもある。人間が堪える暑さに馬が堪えぬわけがない。

 

 

***** 2023/7/19 *****

 

 

 

|

2023年7月18日 (火)

地方にも昼休みを

大阪から福島に行くのが大変だという話を先日書いたけど、私が子供の頃は東京から行くのも一苦労だった。競馬目的ではないが、福島に行くのに夜行列車を使ったこともある。上野23:55発の急行あずま3号。福島駅には明け方に到着した。今なら新幹線で東京から福島まで1時間半。これを「隔世の感」と呼ぶのだろう。

さらに歴史を遡ると、今から半世紀ほど前まで福島の夏競馬は8月に開催されていた。7月でも福島は暑いのに、8月となったら想像を絶する。戦前にはアラブのミスカズオーが熱中症で死んでしまうという出来事もあった。夏競馬の主体が福島から新潟に移ったのは、暑さと無関係ではない。

Paddock_20230718224901

今日は各地で猛暑となった。名古屋市は学校での体育の授業を中止。もちろん部活動も中止。猛暑による授業中止ははじめてだという。環境省と気象庁が愛知県に「熱中症警戒アラート」を発出し外出を避けるよう警告していたのだから、ある意味で順当な措置と言える。

さいたま市にも39度の予報が出て熱中症警戒アラートが発出された。しかし、さいたま市で開催された浦和競馬は中止になっていない。猛暑の中1808人の勇者が来場している。パドックや屋外スタンドは熱中症と隣り合わせ。競馬を観るのも命がけだ。

もちろんお客さんより馬と騎手の方がたいへん。気温39度ということは砂の上は45度を超える。騎手は意識が朦朧とするし、馬がフラフラになって制御不能になることも。とくにモノ言わぬ馬の体調には細心の注意を払いたい。気温が38度を超えた15時過ぎの浦和8レースは、事故が起こりやしないかとヒヤヒヤだった。現場はアツアツだっただろうけど。

JRAは来年から真夏の新潟開催における暑熱対策として、11時半から15時までレースを一時休止する方針を発表している。その間、新潟競馬場ではレースは行われない。お客さんは他場のレースを観たり馬券を買ったりして過ごすことになる。そして暑さのピークを過ぎた15時過ぎにレース再開。最終レースは18時過ぎるから薄暮開催だ。効果を可視化するのは難しそうな取り組みだし、不便に感じる人もいそうだが、なにより優先すべきは馬の健康であることは間違いない。

同じことが浦和でもできないか。月曜は盛岡と、火~木曜は門別と連携すればできないこともあるまい。金曜はあとで考えよう。せっかく整えた薄暮開催の体制を馬の福祉に役立ててほしい。

 

 

***** 2023/7/18 *****

 

 

|

2023年7月17日 (月)

じゃじゃ麺の流儀

梅雨明けが近づくと、盛岡競馬場が熱い季節を迎える。今日行われたマーキュリーカップはウィルソンテソーロが4馬身差で圧勝した。来月のクラスターカップにはドンフランキーが出走の可能性をほのめかしている。OROカップにダービーグランプリ、そして大一番の南部杯。この夏から秋にかけて盛岡競馬場を訪れるファンも多かろう。わんこそばや盛岡冷麺を楽しみにしている貴兄もいるかもしれない。

盛岡の名物麺でありながら、わんこそばや冷麺ほど認知度が上がっていないのが「盛岡じゃじゃ麺」ではあるまいか。中華のジャージャー麺(炸醤麺)とは違う。それを日本人に好まれるようにアレンジしたのが「盛岡じゃじゃ麺」だ。

私が盛岡じゃじゃ麺を贔屓にするのは、その麺が中華麺よりもうどんに近いからかもしれない。モチモチっとした食感の平打ち麺に肉味噌とキュウリが乗って出てくる。それにお好みで卓上の調味料を加えながら全体をよく混ぜて、麺にまんべんなく肉みそが絡めば準備OK。自分で味を完成させるのが、じゃじゃ麺の醍醐味でもある。

盛岡じゃじゃ麺の元祖と言われる盛岡の「白龍」は、吉永小百合さんがJR東日本のCMで訪れたことでも知られる。カウンターとテーブル合わせて20席ほどの店内だが、そこを訪れて空席があったためしがない。さすが盛岡市民のソウルフードだと感心する。

Jaja1

盛岡まで行くお金も時間もないという貴兄には、三軒茶屋の「じゃじゃおいけん」をおすすめしたい。盛岡出身の店主は上京してモデルとして活躍した後、2003年にこの店を開いた。盛岡市内の人気店の味を思い出しながら独学で味を完成させたという。その味は伝統を守りつつも、特注の麺や自家製のラー油を使うこだわりようだ。

Jaja2

麺をすべて食べ終えても、すぐに「ごちそうさま」と席を立ってはいけない。卓上にある生玉子を落としてかき混ぜると、すかさず店主がお湯を投入してくれる。すると玉子スープの「鶏蛋湯(チータンタン)」が完成。ここまでをセットで味わうのが盛岡じゃじゃ麺の流儀だ。じゃじゃ麺も鶏蛋湯も、とにかくよく混ぜてからいただこう。大阪に盛岡じゃじゃ麺を出す店がないのが残念でならない。

 

 

***** 2023/7/17 *****

 

 

|

2023年7月16日 (日)

鉄路にて

独り暮らしをしている父に会うため川崎市の自宅から電車に揺られて春日部に向かった。田園都市線、半蔵門線、東武線で片道1時間半。ありがたいことに乗り換えの必要がないので、一度乗りさえすれば座っているたけで着く。しかしジッとしているというのも苦痛であることに変わりはない。だから以前は敢えて乗り換えが発生するルートを選んだりもした。

しかし最近は違う。新横浜〜新大阪間の移動が日常になったからかもしれない。たから大阪から中京競馬場へにも在来線を使う。二度の乗り換えを経て片道4時間。先日は片道5時間かけて松山へ行ったりもした。それを思えば春日部までの90分なんてあっと言う間ではないか。

中京なら新幹線、松山なら飛行機を使う方が早くて便利。それは分かっている。しかしそれでは「遠さ」を実感することができない。わさわさ遠くまで行くのなら、その遠さを実感することも旅の醍醐味。本来の「旅」の旅の本質は目的地の観光ばかりではなく、むしろその道中にこそあったはず。ガタンゴトンという列車の揺れを合わせてゆっくり流れる車窓を眺めていると、ふとそんな本質を感じたりする。

今日の中京メインは「名鉄杯」だった。

レース前に流れるファンファーレが名鉄電車の「ミュージックホーン」をアレンジした楽曲であることですっかり知られるようになった。しかも名鉄ブラスバンド部の皆さんによる生演奏。重賞レース以外でファンファーレの生演奏というのは極めて珍しく、テレビ中継で時間の都合などでファンファーレの映像が流れなかったりすると、視聴者から苦情が来るらしい。コロナ禍で生演奏は永らく中断していたが、今年は4年ぶりに復活。演奏後はスタンドから大きな拍手が送られた。

Meitetsu

しかし名鉄の皆さんが暑い中頑張ってくれているのに、名鉄杯がリステッドというのはいかがなものか。ちなみに他の鉄道系社杯レースを見ると、京王はGⅡをふたつ、京成がGⅢをふたつと南関東SⅡをひとつ、阪急がGⅢをひとつ、京阪がGⅢをひとつ、京急が南関東SⅡをひとつ持っている。つまり社杯を提供していながら、そのレースが重賞でないのは名鉄だけなのだ。

名鉄杯はそもそもレース条件に一貫性がない。コースはダート1400m、1800m、芝1800,2000m、2200m、条件も2勝クラス、3勝クラス、オープン、リステッド、そして施行時期も1月、3月、7月と目まぐるしく変わってきた。ご協力いただいている名鉄さんにも失礼であろう。先週行われたプロキオンS(GⅢ)を「名鉄杯(GⅢ)」とするわけにはいかないのだろうか。受験生の合格を願い運行時の滑り止め用の砂を配布するイベントを行っている名鉄さんである。砂との縁はなくもない。

 

 

***** 2023/7/16 *****

 

 

|

2023年7月15日 (土)

君たちはどの駅弁を食べるか

明日7月16日は「駅弁記念日」らしい。1885年7月16日に開業した東北本線宇都宮駅で、日本初の駅弁が発売されたことを受けて2001年に国土交通省が制定した。この手の記念日は業界団体が制定することが多い中で、お上による制定というのも珍しい。当時のメニューはゴマ塩をまぶした梅干し入りのおにぎり2個にたくあん。竹の皮に包まれ、「汽車弁当」と印刷した紙がかけられていたという。「列車内でご飯を食べる」というスタイルを提案したという点では期を画する出来事だった。

とはいえ、昨今の駅弁は必ずしも列車内で食べるものとは限らない。むしろ百貨店の催事場で目にすることの方が多いような気がする。全国の駅弁が一か所に集うイベントはたしかに便利には違いないが、やはり駅弁は列車に揺られ、前から後へと流れゆく車窓を眺めながら食べてこそ、その神髄を味わえるというものではないか。「旅情」は駅弁の味付けのひとつ。その思いを忘れぬようにと思ったわけではないが、新大阪駅で珍しく駅弁を買って新幹線の車中で食べてみた。その名も「ひょうご玉手箱弁当」。

画面左上の素麺はもちろん揖保乃糸。バジル風味というのは駅弁ならではか。左下の牛めしは但馬牛を使用しているが、それを姫路駅の名物駅そば「まねき」のだし汁で炊き上げたという。実は、この駅弁はその「まねき食品」が発売している。駅そばマニアならちょっと興味が沸くのではあるまいか。不思議な形状に切られた人参も、よくよく見れば姫路城のシルエットになっている。

Bento

ところで、JR高崎駅で「だるま弁当」などの人気駅弁を販売する「たかべん」も相当長い歴史を誇ると聞いたことがある。公式サイトには「1884年創業 上越線の開通に伴いおにぎりの販売を開始」とあった。あれ? 宇都宮駅の「汽車弁当」より1年早くないか?

実は似たような話は他にもあって、上野駅で1883年に駅弁が売られていたという資料が見つかったほか、1877年の時点で大阪梅田駅や神戸駅で駅弁が売られたという話もあるなど、「日本初の駅弁」発祥の地は諸説が飛び交っている状況らしい。

そこで、駅弁業界団体の日本鉄道構内営業中央会は1993年に4月10日を「駅弁の日」と制定した。4月10日とした根拠は弁当の「弁」の文字が4と十の組み合わせであるからだとか。「記念日」と「の日」があるのも、駅弁がそれだけ愛されている証拠であろう。

「たかべん」の公式サイトを見ていたら、かつて高崎駅で「上州の朝がゆ」という駅弁が売られていたことを思い出した。保温容器を開けると立ち上がる湯気の隙間からはエビや栗といった具材が見え隠れし、さらに漬物と練り梅が別添えで付いてくる。発売時間は朝の7時から9時まで。しかも100個限定。売れ残れば破棄される運命だが、売れ残ることは滅多になかったという。

高崎競馬場があった当時、競馬終わりにどんちゃん騒ぎを繰り広げ、そのまま高崎駅近くのホテルに泊まり、朝イチの新幹線で仕事場に向かう車中でこの「朝がゆ」を食べた。二日酔いの五臓六腑に優しく広がったあの味わいは忘れがたい。しかし「たかべん」の公式サイトに「朝がゆ」は掲載されていなかった。ということは販売停止になってしまったのか。ちょっと残念。高崎競馬の思い出と共にそっと胸にしまっておこう。

 

 

***** 2023/7/15 *****

 

 

|

2023年7月14日 (金)

星合の夜に

1週間前の話になる。すなわち七夕の当日、大阪は夕方から雨模様となった。もちろん天の川は見えない。ただ、たとえ晴れたとしても見えないことは同じ。都市化による光害のあおりを受けて、日本中の夜空から天の川が姿を消して久しい。

「さえのぼる月のひかりにことそひて 秋のいろなるほしあひのそら」

藤原定家はそう詠んだ。しかし「星合」という言葉自体ももはや風前の灯に近い。むろん七夕の別名である。我が家の隣に広がる大阪天満宮に「星合の池」という名の池がある。池に映った星に祈ると恋が実るという言い伝えがあるのだが、池を照らすのは周りを囲むビルの灯りばかり。星の光を見つけ出すのは至難の業だ。

16887805622680

7月7日の夜、年に一度だけ天の川を挟んだ二つの星、牽牛と織姫が出会うという話の起源が中国にあることは想像に難しくない。両岸に離ればなれになると会えなくなるような大河は、日本にはそう多くはないからだ。実際、この話は中国の南北朝時代にまで遡れるが、かの地ではすでに七夕の風習は廃れている。

しかし、奈良時代に七夕が伝わってきた日本では今日まで受け継がれているのはもちろん、様々な風習や言葉を生み出しながらその伝統を今に伝えている。風習の話は先週書いたばかり。言葉に関しては前出の「星合」の他に「催涙雨」「妻迎船」「天の小夜橋」などがある。それぞれの意味はググっていただければお分かりいただけると思うが、実はこれら4つの言葉を使ったレースが七夕当日の笠松で行われていた。廃れつつも美しいこうした言葉たちをレース名に使った笠松競馬のセンスには敬意を表したい。

メインの天の小夜橋特別にベガの血を受け継ぐ一頭を見つけた。4番人気のスクリーンアピールは母の父がアドマイヤベガでその母がベガ。すなわち「織姫」である。

「天の小夜橋」とは、牽牛と織姫が相会する際、天の川を埋め尽くしたカササギが橋を成し織姫を渡すという中国の古伝説に登場する橋のこと。スクリーンアピールもこの橋を渡ってゴールにたどり着くかと期待してチラッと単勝を勝ってみたが、結果は7着。そんなうまい話があるはずも無い。先週土曜の佐賀・遠賀川特別は大雨のため取り止めとなった。2週間後の吉野ヶ里記念に向けての大事なステップレースである。泣きたくなった陣営もあったに違いない。これも催涙雨と呼ぶのだろうか。

 

 

***** 2023/7/14 *****

 

 

 

|

2023年7月13日 (木)

痩せるのは思いだけ

昨日は八王子市で39.1度を記録。東京都心も37度を超えたという。こうなると夜になっても気温は下がりにくい。ジャパンダートダービーは暑さとの戦いでもある。そんな真夏のダービーも、四半世紀の歴史を以てその役割を終えた。

大阪も暑い日が続いている。かく言う私も昼間はまったく食欲がない。今日で4日続けて昼メシを抜いた。昼メシだけを楽しみに仕事場に足を運んでいる私にとって、これは一大事。自分でも驚いている。なのに思うほど痩せない。なぜだ。

そもそも巷では「夏痩せ」という言葉は死語になりつつあるようですね。

夏の暑さそのものは以前よりも厳しくなっているけど、生活の中で暑さにさらされる機会が減っているから、世間一般ではそこまで食欲が減退することもないのであろう。私の食欲減退はトシのせいもあるかもしれないが、昼を抜いたら夜は普段の3倍を食べることにしているので、結果的に食事を抜けば抜くほど私は太ってしまう運命にある。

昨夜も梅田での宴席を終えた帰宅途中に、ついふらふらとラーメン屋に吸い込まれたら馬券仲間とばったり遭遇。ラーメンを食べ終え、そんなら軽く飲もうかと入った店で、あろうことか山盛りのポテトフライとサバ寿司を注文してしまったのである。しかも帰宅してから柏餅を2個も平らげるという大失態。これで太らぬ方がおかしい。昼間はなにも食べる気がしないのに、夜になると訪れるこの暴力的なまでの食欲はいったいどこからやってくるのか。夏と言えば「夏痩せ」が定番だったあの頃が懐かしい。

16892461371520

その馬券仲間は、おととしのジャパンダートダービーを12番人気ながら逃げ切ったキャッスルトップを買い損ね、50万馬券を取り逃したというエピソードを持つ。逃げに転じてから直前のレースまで3連勝。JRA交流競走でも6馬身差の圧勝を飾っていた。それでもクラシック路線には乗れなかったから人気はない。しかし土壇場で買うのをやめてしまったのだという。

その理由はマイナス11キロもの馬体減りにあった。450キロ前後だから大型馬というわけではない。しかも育ち盛りの3歳馬。このレースはプラス体重馬が好走するというデータもある。

「絶対に夏負けだろうと思ったんだがなぁ……」

あれから2年が経っているというのに、今も彼は悔しさを隠そうとしない。

最近は馬たちの住環境も改善されたから、以前より夏負けする馬も減ってきている可能性はある。「馬体を大きく減らした馬は用無し」なんて夏競馬の格言を信じながら馬券を買ってきた我々世代にはまさに身も痩せる思いではあるが、「思い」だけで実際には痩せることもない。どちらにせよ困ったことである。

 

 

***** 2023/7/13 *****

 

 

|

2023年7月12日 (水)

枠連誕生60年

今年は競馬法制定100周年。実際に法律が施行されたのは1923年7月だから、まさに今が100周年の節目にある。当時、馬券は1着を当てる単勝式だけだった。さらに1931年になって複勝式が登場。連勝式が始まったのは戦後になってからだ。

数頭の馬を一つの枠でくくる枠番連勝式は、世界に類を見ない日本独自の発明品。当初は4枠制だったが、すぐに6枠単式となり、1963年から現在のような8枠制の連勝複式として定着した。すなわち今年は「枠連誕生60周年」の節目でもある。それを勝手に祝ってやろうと、プロキオンSでは珍しく枠連を買ってみた。そしたらなんと2枠③シャマルが除外である。同枠にはジレトールもいるから、払戻しの対象にはならない。幸か不幸か馬券は外れたが、もし枠連2-3で決まっていたりしたら、釈然としない思いを抱いていたかもしれない。

Baken_20230710200101

そういうトラブルを避けるため、かつては単枠指定(シード)制度があった。人気が予想される馬は1頭だけの枠に割り当てることで、出走取消によるトラブルを軽減させようとする工夫である。ただ、それでも同枠取り消し問題の根本解決にはなっていない。単枠指定馬を選定することそのものが、JRAによる予想行為にあたるとの批判もあった。結果、1991年の馬番連勝導入と同時に単枠指定制度もその役目を終えている。

一般的に馬連より枠連の方が配当は低い。これに説明の必要はあるまい。

だが、馬連導入当初はみんな手探り。テスト導入の舞台となった函館開催では枠番の方が馬番より配当がよかったレースが7回あった。とくに2回のゾロ目では、いずれも枠番の方が配当が高かったのである。枠連ではゾロ目は当たりにくいからと敬遠されがちだったが、馬連にゾロ目は存在しない。枠連時代の“癖”が抜けずにゾロ目の投票数が減ったせいであろう。

馬単、3連複、ワイド、3連単、そしてWIN5。馬券と言えば枠連を指した時代が過ぎ去って久しい。馬券売り上げのシェアでも3%前後。すっかり存在感を薄めた感のある枠連に、突如としてスポットが当たった。先週日曜の福島4Rで枠連史上最高配当となる14万9110円の配当が飛び出したのである。

1着 5枠⑨番 ボールドトップ 13番人気
2着 5枠⑩番 ダズリングダンス 10番人気
枠連5-5 149,110円
馬連⑨-⑩ 279,440円

しかし気になるところが2つある。ひとつはまったく同じ組み合わせとなる馬連⑨-⑩は27万9440円もついたこと。枠連を的中して狂喜乱舞した人は、その喜びもつかの間、13万余りを損したことに気付いて怒り狂ったに違いない。

そしてもうひとつは、枠連の配当記録が誕生する鍵は枠順抽選が握っているという点だ。枠連での高額配当はゾロ目の場合がほとんど。となれば、枠順抽選で人気薄同士が同じ枠に入らなければ話にならない。つまり偶然の産物。低評価の馬が下馬評を覆す走りを見せた結果とは言い切れないのである。

ちなみに、これまでの枠連最高配当記録は1970年2月22日小倉2Rで記録された12万3410円。この組み合わせは3-8である。とはいえ8頭立てだったから全馬が単枠指定だったことになる。ちなみに6番人気⇒8番人気の決着だった。それでも12万はつけ過ぎの感があろう。タネを明かせば、オッズ発表がなかったせい。当時はみな手探りで馬券を買っていた。

8頭立てであれば全ての組み合わせを買っても28通りでしかない。オッズを知っていれば、全買いした人も少なからずいただろう。とはいえ、オッズを知っていても、27万の馬連ではなく14万の枠連をわざわざ買ってしまうこともある。枠連も還暦を迎えたというのに、まだ我々はそれを手の内に入れられないでいる。つくづく馬券は難しい。

 

 

***** 2023/7/12 *****

 

 

|

2023年7月11日 (火)

香りと甘さに誘われて

プロキオンS当日の話を続ける。

久しぶりの名古屋だったので、名古屋ならではのうどんを食べようと思った。しかし蒸し暑さが尋常ではない。さすがは名古屋。全身にへばりつくような独特な湿気の中に立てば、名物の味噌煮込みうどんを食べようという気にはとてもなれない。

どうしたものかと悩んだ末に、競馬場に向かう途中の金山駅で降りてみた。

Yasu

「さぬき安べえ」は駅ビル2階に店を構える半セルフのうどん屋さん。「さぬき」を謳うだけあって、麺も天ぷらもたしかに讃岐スタイル。小麦粉も「さぬきの夢」を使うこだわりようだが、讃岐では決して見かけることのないメニューがある。

それがコチラの「ころ」。

Koro1

真上からだと分かりづらいが、丼の下の方はこういう感じで麺がツユに浸っている。このツユこそが「ころ」なのである。

Koro

「ころ」は漢字で「香露」と書く。すなわち香るツユ。香りが際立つ溜まり醤油をかけて食べるから、このように名付けられた。生醤油とは違った独特の甘さが味覚をくすぐる。なのに後味はさっぱりとしているから不思議。讃岐のぶっかけとも、関東の冷やしうどんとも違う。蒸し暑い夏の名古屋ならではの味だ。

あっと言う間に平らげてしまったのでもう一杯注文する。今度は玉子を載せたその名も「冷玉(ひやたま)」。玉子と言うから生玉子かと思ったら、スクランブルエッグが載っていた。この店だけのオリジナルなのか、あるいはどこでもやっていることなのかは不明だが、食中毒が心配な夏のメニューならではの工夫であろう。うどんの白にネギの緑、そして玉子の黄色。3色のコントラストがなんとも美しい。

Koro2

ぐるぐるとかき混ぜてひと啜り。2杯目だというのに香りと甘さはなお際立つ。この甘いツユは玉子焼きにも合うようだ。普段、ぶっかけのツユを飲み干すことはしないが、これは飲んでしまった。あとで喉が渇くかもしれない。でも美味いんだからしょうがない。

Koro4

注文カウンターからは「ころ!」とか「冷玉」という声がひっきりなしに聞こえてくる。ぶっかけや冷やしうどんに比べて知名度は決して高くはない。だが、独特の蒸し暑さを誇る夏の名古屋で、味噌煮込みうどんに代わるうどんを食べたいという強い思いがころうどんを生み、ここ東海の地に根付いた。それをいま私は食べている。なんだか大袈裟な話になったけど、うどん自体はシンプルに美味いです。夏の中京開催の間にもう一度食べに行こう。

 

 

***** 2023/7/11 *****

 

 

|

2023年7月10日 (月)

セレクトセールが始まった

セレクトセール初日ですね。

昨日の中京競馬場でもセレクトセールの話題が耳に入ってきた。馬主風のグループが立ち食いのきしめんを食べていたりするあたり、まさに夏のローカル開催という風情ですな。

「これはいくらくらいいきそうだ」とか「これは誰々さんが取りに行くから遠慮しておこう」とか、そんな会話が漏れてくる。そのうち「次のレース観てからまた考えようか」という声が聞こえた。

「次のレース」というのは、夏の中京開催ではすっかりお馴染みとなった芝2000mの新馬戦。2018年にはカテドラルが、さらに17年にはワグネリアンが勝っている出世レース。今年はセレクトセールで2億円以上の値が付いた2頭が出走するということで、注目が集まっている。2億2千万円のラケダイモーンと2億円のドゥマイシングだ。

セレクトセール前日の新馬戦に2億円ホースが登場するとなれば注目されるのも仕方ない。しかもそれが2頭となればスポーツ新聞各紙が一騎打ちを期待させるような煽り方をするのも、ある程度理解できる。しかし結果はミカエルパシャが鮮やかに逃げ切って初陣を飾った。2馬身半差の2着にラケダイモーン。さらにアタマ差でドゥマイシングが3着。高額馬が大事に乗り過ぎたあまり、伏兵の逃げ切りを許すことは間々あることだが、上がりタイムでもミカエルパシャが上回ったことは忘れないでおきたい。

5r_20230710192901

ミカエルパシャもセレクトセール取引馬。しかしその落札価格は比較的お手頃の3100円である。エピファネイアの牡馬にしては「安い」と言っても過言てはない。しかも迫田三果子オーナーにとっては、これが初めての所有馬だという。これも競馬の醍醐味のひとつ。お金をかければ勝てるというわけではない。そうでなければ私だって馬主になろうとは、決して思わなかった。

7r_20230710192901

この日の中京では芝2000mの3歳未勝利戦も行われた。勝ったのはルーラーシップ産駒のゴートゥファースト。3歳5月の遅いデビューから3戦目での勝ち上がりである。陣営の思いは果たして「安堵」か、あるいは「当然」か。実はこの馬もセレクトセール出身馬。4700万円で取引された。私なら安堵である。ちなみに同じレースには同じセレクトセール出身馬のレッドマジックも出走していたが、9着に敗れた。同馬の取引価格は1億2千万円だが、残されたチャンスはそう多くはない。

こうした結果が今日のセレクトセールにわずかでも影響するのだろうか―――。

そんな思いで見守ったセレクトセールでいきなり2億越えが飛び出してひっくり返った。上場番号1番、ヤングスターの2022(父キズナ)を2億1千万円で落札したのは、昨日負けたドゥマイシングやレッドマジックのオーナーでもある藤田晋氏。レース結果ごときで財布の紐は固くなったりしない。当たり前だが、さすがだ。

16890287686271

その後も高額取引馬が続出。11頭が2億以上で、うち3頭は3億を超えた。もはや1億を超えたくらいでわーわー騒ぐような時代ではない。初日の落札総額133億6500万円も、平均価格6188万円も、どちらも史上最高額だという。誕生から四半世紀の節目を迎えたセレクトセールは、異次元の領域に到達した。もとより我々とは無縁の世界ではあるが、ここまでくると馬券検討にも悪影響を及ぼしかねない。そこは肝に銘じておこう。

 

 

***** 2023/7/10 *****

 

 

 

|

2023年7月 9日 (日)

進撃の巨馬

傘が役に立たぬ豪雨に見舞われた名古屋駅を後にして中京競馬場駅に降り立ってみれば、雲の合間から陽射しが差し込んでいるではないか。全国的には大雨予報。中国・九州では大きな被害も出ているというのに、ここ東海では上手く雲を避ければ傘は要らない空模様。特別レースが始まる頃にはなんと青空も広がった。昨日と言い今日と言い、道悪競馬を期待していた向きには予想の前に予報に振り回された週末であろう。

Bataiju

パドックにドンフランキーが姿を現した。馬体重は594キロとある。それでちょっとガッカリしたファンも多かったようだ。600キロを超える巨漢馬がJRA重賞を勝った例はない。むろん594キロでも新記録。これまでの記録は2019年マーチSを勝ったサトノティターンの572キロだから、もしドンフランキーが勝てば記録を一気に22キロも更新することになる。

Don1

行きたい馬が多い中、抜群のスタートを決めたドンフランキーがすんなりとハナを奪った。外からメイショウテンスイが絡んでペースが速まったが、池添騎手の手綱に譲る気配は見られない。そのまま直線に向くと一気に後続を引き離した。しかしただ一頭、後続馬群から抜け出してドンフランキーに迫る馬がいる。

もちろん1番人気のリメイク。しかし、馬体を併せたところからドンフランキーがグイっともうひと伸びして見せたではないか。それでリメイクが一瞬怯んだようにも見えた。なにせ自分より一回りも二回りもデカい相手である。こうなるとどこまで行っても2頭の差は縮まることはあるまい。結果クビ差でドンフランキーが逃げ切った。

Don_20230709215501

ドンフランキーは3歳春のアーリントンCにも出走したことがある。その時の馬体重は574キロ。それでも勝てば記録更新だったが、残念ながら勝つことはできなかった。そこから20キロも馬体を増やして、この強さ。馬体の大きさ的にはこのあたりが完成形だろうか。

巨漢馬と言えばクリーンを思い出す方も多かろう。602キロでゴールデンスパートロフィーを勝ち、612キロで阿蘇Sを勝っている。彼は2歳の7月に562キロでデビューを果たし、8歳2月の洛陽S出走時には630キロにもなっていた。その差、実に68キロ。ずっと成長を続けていたことになる。ドンフランキーもまだまだ大きくなる。レース後には騎手も調教師も「まだ緩い」と声をそろえた。600キロ台の出走馬がJRA重賞を勝つ日は近い。

 

 

***** 2023/7/9 *****

 

 

|

2023年7月 8日 (土)

画面越しの競馬

パークウインズの阪神に来ている。

16888121841780

「競馬は競馬場で観る」という信念を貫くべく先週は福島まで出かけたが、さすがにすべての開催日に福島や函館まで出向くわけにはいかない。他にやらねばならぬことだってある。

それでも梅田のエクセルではなく阪神に来たのは、やはり馬場にこだわりたい気持ちがどこかにあるのであろう。しかしそこは馬のいない競馬場。少しわびしい。若干切ない。どことなく暗い。だが、そんな気持ちで眺めているゆえだろうか、逆にモニター画面の中で走る馬たちの気迫が漲っているのが分かる。こちらはエアコンの効いたスタンドの中に座っているはずなのに、画面越しに現地の暑さと人馬の熱さが伝わってきて、見ているこちらも思わずアツくなってしまう。それで昔の夏競馬の“匂い”を思い出した。

暑い夏の競馬をさらに熱くさせる存在が、しばしば牝馬であることは今も昔も同じ。ダイナオレンジ、ニフティニース、センゴクヒスイ。猛暑をものともせず健気に走る彼女たちを画面越しに見ては、すごいすごいと熱を上げていた。その後、競馬が中央場所に戻ってくれば、それまで画面越しに見ていた彼女たちを、今度は目の前で見ることができる。それでまた熱が上がったのか、ついつい大きく張り込んで泣きを見た。夏の思い出は、秋も深まらぬうちに、苦い思い出に変わる。その繰り返しだった。

「夏馬」の多くは「ローカル巧者」などとも呼ばれる。だが、本当にそうなのだろうか。デビューが遅れたり、デビュー後にひと頓挫あってクラシックを棒に振るかして、絶好調の時季がたまたま夏になった。そういうこともあろう。そこでポンポンと2つくらい勝ったとする。絶好調ならば、なくもない。こりゃあ今後の活躍が楽しみだ。秋は大きいところを狙わせよう。きっと周囲はそう考える。

だが、競走馬の調子のピークはそんなに長続きするものではない。疲れも出てくる。調子が落ちてきたところに「大きいところ」に挑むのは、馬にとってはただの災難であろう。案の定大敗して、すっかり調子を崩してしまったりする。「夏馬」とか「ローカル巧者」などと呼ばれた馬でも、実は「暑さが好き」とか「平坦が好き」というわけではないのかもしれない。だとすれば馬にとってはいい迷惑だ。画面越しに馬を見ていると、いろいろな物事を考える。現場にいては、そこまでの余裕はない。

16888153196610

場外のモニターであれ自宅のテレビであれ、かつて夏の競馬開催は画面越しに見るものだった。それが少なくとも私の決まりであり、さればこそ遥かなる競馬場に対する憧憬の念も募ったのである。場外で見る夏競馬を嘆いてはいけない。遠くにいることで見えてくるものも、きっとある。今日は中京のマカオジョッキークラブトロフィーを勝った3歳牝馬・ブライトジュエリーがのレースぶりが印象に残った。秋には大きいところを狙いたい。

 

 

***** 2023/7/8 *****

 

 

|

2023年7月 7日 (金)

短冊と冷麦に願いを込めて

七夕に素麺を食べる風習が知られるようになったのは、ここ数年のことではないか。平安時代から宮中での七夕の行事に素麺が供えられたほか、江戸時代には素麺を糸に見立て、七夕に裁縫の上達を願って食べる風習があったという。もちろん機を織る織姫にあやかってのこと。ちなみに7月7日は「そうめんの日」でもある。

麗しき習慣に倣って私も素麺を食べようかと思ったがやめた。ここは敢えて冷麦にしてみよう。うどんや素麺に比べて、いまひとつ虐げられている感のある冷麦に、七夕の夜くらいスポットを当ててあげるのも悪くはあるまい。

Hiyamugi

「手延べで作るの素麺に比べ、冷麦は機械打ちだからコシがなくて不味い」

そんな声も聞く。

大筋では間違ってはいないが、もちろん手延べの冷麦が存在しないわけではない。手延べ素麺で有名な播州名物「揖保乃糸」は冷麦も作っている。もちろん手延べ製法。だからこの太さであってもコシがあって美味しい。文句を言うなら、まずはこれを食べてからであろう。細いと言っても素麺に比べれば太いので、蕎麦のような軽快な喉越しが味わえるのも魅力のひとつ。これなら織姫様も文句はあるまい。

夏の麺としては、以前は西の素麺に対し東の冷麦という棲み分けができていた。とある研究によればその境目はしっかり関ケ原にあったそうだ。しかし昨今では関東でも冷麦の旗色は悪いという。以前、錦糸町にこだわりの冷麦を出すうどん屋さんがあって、このブログでも紹介したが、今でも冷麦を出し続けているかどうかは定かではない。

「素麺以上うどん以下」という中途半端な存在であることに冷麦の悲哀が凝縮されていると私は感じている。しかし、とあるテレビ番組でマツコ・デラックスさんが「一生同じ麺しか食べられないとしたら何を選ぶ?」という問いに対し、熟考の末「冷麦」と答えたことが意外にも大きな話題となった。密かに冷麦を支持する向きは、私が思うよりももっと多い可能性がある。

7月2日は「うどんの日」。7月7日は「そうめんの日」。しかし冷麦の日はどこを探しても見つからない。細さを極めた素麺は、うどんの対極的な存在として一定の立場を築き上げた。その細さゆえの美味しさも否定しようがない。しかし私は冷麦の持つその中庸さに、なぜか魅かれてしまう。「愛おしい」と書いた方が正しいかもしれない。七夕に食す理由として、それだけでじゅうぶんではないか。そんなことを考えつつ、七夕の夜は更けてゆくのである。

 

 

***** 2023/7/7 *****

 

 

|

2023年7月 6日 (木)

36年目のサラダ記念日

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

朝から「サラダ記念日」という言葉がトレンドワードの上位にランクインされ続けた。俵万智さんのファースト歌集「サラダ記念日」が発売されてから36年が経つというのに、その影響力はいまだ色褪せない。

Book_20230706201601

歌集・句集は、売れたとて2千部が関の山。しかし「サラダ記念日」の初版部数は8千部だった。短歌界ではすでに知名度が高かったとはいえ、異例の大量部数である。当時は一介の県立高校教諭に過ぎなかった俵さんは、「売れ残ったらどうしよう」と心配したという。

だが、そんな心配は杞憂に終わる。

何でもない今日が、誰かのひと言で特別な一日となる。そんな31文字のレトリックに魅せられた人たちは先を争って「サラダ記念日」を手に取った。実は私もそのひとり。その感想は「俵さん、野球好きなんだな」である。今も夏の甲子園に足を運び、早稲田大学在学中には神宮球場で場内アナウンスを担当した経験もある俵さんの作品に、野球に関するフレーズが使われることは決して珍しくない。ともあれ、今なお売れ続ける「サラダ記念日」は280万部の大ベストセラーだ。

サラダ記念日のきっかけも野球だったという。ボーイフレンドと野球を観に行くにあたり、から揚げを作って持参した。しかしいつも同じ味付けでは面白くない。それであるときカレー味のから揚げを作って持って行ったら、彼が「いいね」と言う。「やった。ウケた。今日は記念日だな」。そんなエピソードがベースになっているそうだ。

ここから創作に入る。から揚げでは重いからサラダに変えよう。そしてなんでもない日が良い。上の句を「この」と「君」のカ行で引き締めて、下の句では「七月」「サラダ」とサ行で爽やかにまとめている。実際には5月か6月のエピソードらしいが、敢えて7月としたのは「サ行」の音にこだわったから。いずれにせよ、なんでもないような相手のひと言を記念日にしたいという歌の出発点はひとつも損なわれていない。

一語一語にこだわり抜く俵さんが、もし馬の名付け親になったとしたら、いったいどんな名前を紡ぎ出すのだろうか。ありえないことは分かっているが、想像せずにはいられない。なにせ、今となっては世界を支配する「いいね」の元祖でもある。

Sarada

そんなことを考えながら、今宵は珍しく自宅でサラダっぽいものを作ってみた。トッピングはもちろんから揚げ。軽くカレー粉を振ってカレー味にしてみたのだが、なるほどこれは悪くない。自分に「いいね」をあげたい気分。今日は「から揚げサラダ記念日」だ。

 

 

***** 2023/7/6 *****

 

 

|

2023年7月 5日 (水)

隣同士あーなーたーと、あたし

さくらんぼ、の話。

二日連続で福島のハンデ戦の話になってしまい恐縮だが、とある調べものをしていて1994年7月10日福島10R・さくらんぼSの成績が目に留まった。

19940710

当時、夏の福島開催では2歳競馬は行われておらず、番組も「3歳」と「4歳上」に分かれていた。つまり夏の福島でも3歳馬はまだ同世代を相手に走っていたのである。さくらんぼSは3歳限定で行われる2勝クラスの条件戦。芝2000mのハンデキャップで行われていた。

この年の優勝馬はウインドフィールズだったが、注目すべきは着差にある。勝ち馬としんがり13着とのタイム差が0.8秒しかない。まばたきする間に全馬がゴールインを果たしたことになる。しかも1~5着馬はコンマ1秒以内にごった返した。ちなみに各馬に課された斤量は、下は50キロから上は55キロ。まさにハンデキャップの妙。そのゴール前の密集は、まさに鈴なりのサクランボを彷彿とさせたに違いない。

勝ったウインドフィールズは秋にセントライト記念を勝ち、5着のラグビーカイザーはそのセントライト記念で2着に入ることになる。その2頭の馬連は150倍もついた。さくらんぼSをしっかり観ていれば取れた馬券かもしれない。さらに、9着はのちに重賞を3勝もするカネツクロス。しんがり負けのシルクグレイッシュも半年後に福島記念を勝つ。しんがり負けとはいえ、勝ち馬からコンマ8秒しか離されていないと思えば、さほど驚くべき結果でもない。

さくらんぼSは今では「さくらんぼ特別」として夏の福島の2日目に行われているが、今年からダート1150mに条件が変更されて少しばかり驚いた。

さくらんぼ賞、さくらんぼS、さくらんぼ特別。微妙に名前は変わっていはいるが、実は半世紀以上の歴史を誇るレース。一介の2勝クラス条件戦でありながら、過去の優勝馬にマチカネフクキタルやセイウンコウセイといったGⅠホースが名を連ねるのは、その伝統があればこそであろう。そう思うと、ダート短距離戦への条件変更は少しばかり寂しい。

Sakurambo

日曜は福島駅でサクランボを買って帰った。しかし包装には山形県東根市産とある。山形県はサクランボの生産量全国一位。そのシェアはなんと7割を超える。福島県はというと全国6位。生産量は山形県の3%にも満たない。その割に我々は福島県にサクランボのイメージを抱き過ぎの印象もある。さくらんぼ賞のダート変更は、そんなことを危惧したJRAの忖度ではあるまいな。山形産であれ、福島産であれ、同じ東北のサクランボ。どちらも美味しいことに違いはない。

 

 

***** 2023/7/5 *****

 

 

|

2023年7月 4日 (火)

荒れてこそ福島

先日のラジオNIKKEI賞は圧倒的1番人気に推されたレーベンスティールが3着に敗れてソコソコの波乱となった。福島で荒れる重賞と言えば七夕賞のイメージが強いが、実はラジオNIKKEI賞もひと筋縄では収まっていない。

2006年にハンデ戦になってから1番人気馬による勝利は2回のみ。単勝2.5倍の支持を集めたフィエールマンでさえ2着に敗れている。単勝1.9倍ならば、と信じた本命党の願い虚しく、レーベンスティールも敗れた。勝ったエルトンバローズとは1キロのハンデ差があったから、もし同斤ならレーベンスティールが勝っていたと言われても否定はできない。秘める能力とハンデが一致するとは限らない3歳戦でハンデ戦を行なえば、こうなることは分かり切っていた。

Nikkei_20230704214001

ともあれ、これでラジオNIKKEI賞における1番人気馬の連敗記録は「7」に伸びたことになる。

今週のメインレースは、元祖荒れる重賞の七夕賞。開催2週目に固定されてからは、荒れ馬場に苦しむ本命馬が少なくなり、比較的平穏な決着も目立つようになったが、難解なレースを好む福島のファンは、こうした傾向をあまり歓迎してはいまい。2004年まで続いた「1番人気馬26連敗」こそが七夕賞のアイデンティティー。それでも的中させてしまうあたりが、福島のファンの凄さなのである。

重賞になる前にはアングロアラブのセイユウがサラブレッドの古馬を相手に楽勝したこともあった七夕賞が、重賞に格上げされたのは1965年のこと。1番人気26連敗の大記録は1979年のファーストアモンに始まった。皐月賞馬ハワイアンイメージが辛酸を舐め、単勝1.7倍のトウカイタローも馬群に沈んでいる。3歳時のラジオたんぱ賞(現・ラジオNIKKEI賞)勝ちの実績を買われたタカラフラッシュも、ハナ差まで迫ったがやはり勝てなかった。理由などない。それがジンクスたる所以であろう。

2005年にようやくダイワレイダースが1番人気の呪縛をほどくと、09年ミヤビランベリ、13年マイネルラクリマ、17年ゼーヴィントと1番人気の勝利は珍しいものではなくなった。しかし18年からは再び連敗が続いて、昨年時点で「5」まで数字を伸ばしている。さて、今年はどうなるか。

重賞での1番人気26連敗の記録を破るとすれば、それは七夕賞かラジオNIKKEI賞をおいて他にない―――。そう信じて疑わぬ私とすれば、どの馬が1番人気に推されるかどうかが気になるところだ。普通に考えればフェーングロッテンだろうが、58キロが嫌われる可能性もある。先行できるセイウンハーデスや3連勝中のテーオーソラネルも候補の一頭。ただ、どの馬も人気をあまり歓迎はしないだろう。ハンデ以外に余計なモノを背負合わされてはたまらない。

まさか……エヒトではあるまいな……。私は密かに2008-09年のミヤビランベリ以来となる連覇達成を期待するクチである。

 

 

***** 2023/7/4 *****

 

 

|

2023年7月 3日 (月)

同じ勝負服対決の決着は

昨日の福島5レースは芝1800mの新馬戦。16頭が周回するパドックには真夏の日差しが容赦なく降り注いでいる。ミスト装置はフル稼働。しかし、パドックが半屋内で風通しの悪い福島のパドックに大量のミスト噴射は逆効果ではあるまいか。とにかく蒸し暑さいことこの上ない。

「止ま~れぇ」の号令が響き渡って、カラフルな勝負服を纏ったジョッキーたちが駆け出した。社台レースホースの縦縞の勝負服が2人。G1レーシングの黒、赤襷の勝負服も2人。つまり2頭出しである。

Dsc_5722_20230703191101

誰もが目標とすべきレース、つまりGⅠレースや重賞において同一馬主の複数頭出しは躊躇なく行われる。出れるなら出るにこしたことはない。しかし、新馬戦や未勝利戦でとなると、その頻度は少なくなる傾向にある。どのレースであれ勝ち上がれるのは1頭のみ。ならば、わざわざ仲間内で星を潰し合うこともない。

それでも、2020年7月25日の新潟1レースでミルファームが12頭出しの記録を作った。勝利への執念の現れであろう。しかしミルファームのようにリアルな同一馬主ならともかく、クラブとなると多少話は違ってくる。同じ服色であっても、実際の出資者は違う可能性が高い。それでも勝ち上がることができるのは1頭のみ。ゆえに昨今では下級条件ではレースを上手く使い分けることが、クラブの成績を上げるひとつのポイントになっている。

果たせるかな、レースは私の懸念を絵に描いたような結末に終わった。

2番手から先に抜け出した社台レースホースのティンクめがけて、内ラチ沿いから同じ勝負服のトレミニョンが襲い掛かる。完全に馬体を並べての勝負は頸の上げ下げ。写真判定の結果、ゴールの瞬間には内のトレミニョンがハナだけ前に出ていた。

Shadai_20230703191401

負けたティンクの出資会員さんは悔しい。なにせ負けた相手は同じ勝負服である。クラブとして1勝ぶんを損したという考え方をする会員さんがいても不思議ではない。その煽りを自身の出資馬が被ったと思えば、やはり釈然とはしないだろう。

もともとティンクは東京最終週のデビューを予定していたが、敢えて1週延ばした経緯がある。その東京戦には同じ社台レースホースのミラキュラスドラマが出走していた。だからというわけではなかろうが、わざわざ1週待って同じ勝負服相手にハナ負けは切ない。馬主サイドとすれば差が差だけに、できることなら同着になってほしかったというのが本音ではあるまいか。

ともあれ、ティンクは再び初勝利を賭けて未勝利戦を戦わなくてはならない。除外のリスクもある。むろん勝てる保証だってない。

私がここまで気にするのは、ラジオNIKKEI賞でレーベンスティールが敗れる姿を目の当たりにしたからであろう。デビュー戦でソールオリエンスと接戦を演じたとはいえ、そこからソールオリエンスと同じ位置にまで追い付くのは簡単ではない。能力は誰もが認めるところ。しかし賞金加算にも失敗し、ソールオリエンスと同じ舞台に立てる日は一気に遠のいた。

競馬は必ずしも能力が結果に現れるのではなく、運にも恵まれる必要がある。その運をわざわざ手放すようなことをするのが得策とはどうしても思えない。ウマの一生、ひいては血の継承にまで懸念が及ぶ問題だと思うがゆえである。

昨日の新馬戦は除外の可能性があったから、100パーセント2頭出しになると思って出馬投票したわけでないことは分かっている。仕方ないと思うことにしよう。ティンクはこの福島開催での未勝利戦脱出を視野に入れているとのこと。注目したい。

 

 

***** 2023/7/3 *****

 

 

 

 

|

2023年7月 2日 (日)

福島遠征問題の根は深い

朝6時45分に自宅を出て、地下鉄と阪急とモノレールを乗り継いで伊丹空港に到着。指定された搭乗口の先には、昨日宮崎空港で発煙騒ぎを起こしたボンバルディア DHC-8-402Q が駐機されていた。

Dsc_5677

2日連続のトラブルはさすがに無かろう。意を強くしてタラップを上がり、シートに座ってウトウトしたと思ったら、ドンッという衝撃で起こされた。なんだ!また発煙か!?と慌てたら、福島空港到着である。なんという早さか。ともあれ今日はラジオNIKKEI賞のために福島に向かっている。

しかしここからが長かった。「福島空港」と言いながら、福島市街地への移動手段はなし。郡山駅へのバスがあるだけ。郡山駅までは40分もかかる。郡山から福島までは新幹線で15分。そこから満員のバスに揺られて、ようやくの福島競馬場到着は10時45分。自宅玄関からちょうど4時間の長旅だった。

Dsc_5712_20230703190901

関西から福島競馬場に行くのは難しい。春の福島牝馬S観戦時は仙台空港経由でその不便さに打ちひしがれたので、今日は福島空港を使ってみた。しかし結論は「どちらも不便」である。空港からレンタカーを使えば話は違ってくるかもしれないが、そこは未検証だ。

Dsc_5713_20230703190901

いろいろあって早くも帰り。

今日は最終レースまでいたので、仙台にせよ福島にせよ関西への最終便には間に合わない。つまり東北→東海道の新幹線乗り継ぎで帰阪することになる。事前に決めていたこととはいえ、競馬場から福島駅に向かうタクシー車内で少し怖気づいた。なにせ、つい2、3日前に大阪~松山往復10時間の電車旅を味わされたばかりである。

ともあれ福島18時16分発の東北新幹線に乗り込む。東京駅で新幹線の乗り換えをするのは初めてだ。東北と東海道を繋ぐ連絡改札は「スマートEX」が使えない。日曜夜の下り新幹線は案外混んでいる。いろいろ勉強になった。

乗り換えたのは20時ちょうどの広島行き。そこからさらに2時間半の新幹線の辛いことと言ったらない。自宅到着は23時を過ぎていた。競馬場でタクシーの行列に並んでいる時間を含めれば、ゆうに6時間を要しているではないか。

実際にやってみて分かった。関西から福島に行くなら仙台空港が私にとってはもっともラクらしい。クビ差で福島空港。さらに5馬身離れて新幹線乗り継ぎと言ったところか。仙台空港と福島競馬場を結ぶ直行バスの運行再開を切に願う。

Nikkei_20230703000701

いずれにしても関西から福島競馬場は遠い。伊丹からの便がある上、空港から競馬場までタクシーで20分の新潟とは雲泥の差がある。関西馬が大挙して新潟に遠征する理由もそこにあるのではないか。それでも今日のラジオNIKKEI賞は関西所属騎手が乗った関西馬が勝ちましたけどね。もちろんそういうこともある。

 

 

***** 2023/7/2 *****

 

 

|

2023年7月 1日 (土)

明日は「うどんの日」

3日連続でのうどん話で恐縮だが、明日7月2日は「うどんの日」です。みなさん、ご存じでしたか?

夏至から数えて11日目は、二十四節季をさらに三分割した七十二候のひとつ「半夏生」(はんげしょう)にあたる。播磨ではこの日にタコを食べるという話を先日「半夏生にはタコを」で紹介したばかりだが、讃岐では農家はうどんを打って、田植えを手伝いに来た人をもてなす風習があった。「うどんの日」はそれにちなんで香川県の団体が制定したという。

しかし、地元讃岐でも認知度はそれほど高くないそうだ。なぜか。そもそも讃岐では毎日が「うどんの日」なのである。「今日はうどんの日だからうどんを食べよう」なんて意識が芽生えるような土壌ではない。讃岐のうどん文化の根強さをあらためて思い知らされる。

だけど、讃岐人ではない私にとっては特別な日。明日は事情があってうどんを食べる暇がないので、今日食べることにする。讃岐の風習だから、讃岐うどんにこだわりたい。そんなわけでウインズ梅田から歩いて10分。このエリアでいちばんの人気店だという「たけうちうどん」を訪れてみることに。開店10分前に到着したが、すでに15人ほどが並んでいた。この行列が壁となって足が遠のいていたのだが、うどんの日くらいはおとなしく並んでみようという気にはなる。

Takeuchi1

讃岐に敬意を表して、注文は生醤油とした。ダシのうどんも美味そうだが、今日に限ればとにかく麺を味わいたい。

Takeuchi2

運ばれてきた一杯を見て、ちょっと驚いた。思ったより分量が多い。讃岐で言う1.5玉といったところか。角が丸めでモチモチしており、啜ればびよ~んと伸びる麺は「柔らかい」と表現したくもなるが、実際には粘りとコシが強いれっきとした讃岐系のうどん。カウンターが中心なのに女性客が半分以上を占めるあたりにこの麺の特徴が現れている。

店を出て中崎町方面へ5~6分歩くと、「たけうち」と人気を二分する讃岐うどん店「きすけ」が暖簾を掲げている。こちらも到着は開店10分前だったのに、すでに20人が列をなしていた。それでも今日だけと自らに言い聞かせて列の最後に立つ。こういう機会でもないと、訪れる機会などあるまい。

Kiuske1

北海道産小麦粉の袋が山積みになっていることから分かるように、国産の小麦粉で打ったコシの強い麺に、昆布やいりこなどを使ったあっさりしたつゆをかけたぶっかけが人気だという。

Kisuke2

先ほどに比べればエッジは明確だが、こちらもやはり食感が滑らかなモチモチ系。そのせいか、やはりお客さんの大半は女性である。女性はおダシのうどんを好むのかと思ったけど、最近は生醤油とかぶっかけもイケるんですね。まあ、どちらのお店も行列するだけあって美味しかったです。ちなみに大阪では10月28日が「おだしの日」だとか。さすがの感がある。

 

 

***** 2023/7/1 *****

 

 

|

« 2023年6月 | トップページ | 2023年8月 »