競馬場の歩き方
脚が痛む。
馬ではない。自分の話。お医者の勧めで1日1万歩を目指して歩く日々を続けるうち、ついに脚部不安を発生してしまった。もとはと言えば腰痛改善のために始めたウォーキングなのに、それがために今度は脚を痛めてしまったとなれば本末転倒も甚だしい。
6月8日付「目指せ1万歩」でも書いたことだが、競馬場という場所は実によく歩く場所でもある。痛む足で競馬場を訪れてみると、それが身に染みてよくわかる。
指定席に入ったところで馬券を買うには背後の階段を昇り降りせねばならず、ちゃんとパドックを見ようと思えばパドックもしくはバルコニーまでの往復がそれに加わる。昼食時ともなれば空いている店を探して歩き回ることになるし、食後のコーヒーを飲むためにまた歩かねばならない。たばこ一本を吸うにも、遥か彼方の喫煙室まで歩かなければならないのが昨今の競馬場である。
とはいえ腰痛のみならずメタボも抱えた私などは、それを福音と捉えるべきであろう。とくだん身体を使う仕事をしているわけでもなく、スポーツやジムで身体を動かす習慣もない。競馬場に行かなければほとんど身体を動かすこともない日々。ローカル開催に突入する来月以降のことを思うと、ちょっと怖い。
ともあれ、健康法としてのウォーキングがもてはやされる昨今である。私も歩きやすいようにとシューズショップでは極力重量の軽い靴を選ぶようにしていたのだが、これは必ずしも正解ではないらしい。お店の方に聞けば、長時間を続けて歩くような場合は靴を振り子のようにして歩くので、ある程度の重量があった方が疲れが溜まりにくいのだとか。その目安は左右合わせて体重の1%。私なら片方400グラムが良いということになるが、これは歩き方やその距離によってもちろん異なる。
騎手が履くブーツは軽い方が良いに決まっている。ために一般的な乗馬用のブーツが天然皮革製であるのに対し、ジョッキーブーツは軽くて水にも強い合成皮革製。靴の底面には滑り止めのゴムを張るだけで、かかとの高さも数ミリ程度に留まる。「靴」というよりはもはや「靴下」。そこまでして軽量化にこだわる理由はフィット感だけではない。競走馬の負担重量は、騎手の体重に鞍とベストとブーツの重量を合算したもの。10グラム単位の減量に神経を擦り減らす騎手にしてみれば、ブーツの軽量化は死活問題であろう。
ちなみに東京競馬場7階の馬主席からパドックへの往還は、まさに気の遠くなるような距離がある。以前試しに歩数を計ってみたら、片道だけでなんと461歩を数えた。往復で900歩ちょい。1日12レース、律儀に往復を繰り返せばそれだけで1万歩に達してしまうのである。普段の生活で1万歩を稼ぐには相当の決意と努力を要することを思えば、競馬場とはやはり不思議な空間であると言わざるを得ない。
ところで私の脚の痛みであるが、具体的には足の裏が痛む。これを周囲に伝えたら「痛風やないか」と言われた。私の体型からして、たしかに痛風を発症してもおかしくはない。一方で、痛風は歩けないほど痛いものだと聞いた覚えがある。歩けている以上、私の症状は痛風ではない……はず。そう決め込んで明日も競馬場を歩こう。
***** 2023/6/13 *****
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