西に輝く一番星
関西の競馬は開催替わり。今週から2歳競馬が始まり、3歳馬は古馬と対戦するようになる。すなわち夏競馬。雨上がりの仁川上空には夏の雲が浮かんでいる。
かつての夏競馬は、北海道が1週だけ先行する形をとってきた。それだけに新馬でイの一番に勝つ馬、すなわち世代の一番星も北海道組と相場が決まっていた。「北の一番星」という語感の良さも手伝って、スポーツ紙でも大きく取り上げられたものである。
2002年の夏競馬から函館、福島、阪神3場が揃って6月3週目にスタートすることになったが、それでも一番星は北の空に輝き続けた。3場とも初日の第4レースに新馬が組まれるが、発送時刻の差で函館の新馬がもっとも早くスタートするのである。枠入り不良などで発走遅れなどがない限り、イの一番が函館になるのは自明の理だった。
ところが2012年になると、ダービーの翌週から新馬がスタートすることになる。ダービーからダービーへの番組改編。この期に及んで一番星は西の空に移った。昨年、一昨年は開催カレンダーの都合で尾張の空だったが、今年は3年ぶりに一番星が仁川の空に輝くことになる。
3回阪神初日第5レースは12時15分の発走。世代のトップを切って行われた芝1600mの新馬戦を勝ったのは牝馬のテラメリタだった。勝ち時計1分36秒5は平凡だが、ペースや馬場状態を考えればやむを得まい。5頭立てとはいえ出走全馬が社台グループの生産馬というレベルの高い一戦で、後続を3馬身半突き放した内容は高く評価できる。一気呵成に逃げ切ったそのスピードに祖母エアトゥーレはもとより、さらにその母スキーパラダイスの姿まで重なって見えた。
実は私、半世紀近いキャリアで世代最初の新馬戦を目撃したのはこれがようやく二度目。しかも阪神では初めてのこと。なにせ福島や東京では一番星を拝むことができないのである。だからと言って別に騒ぐほどのことではないかもしれない。そんな指摘はごもっとも。実際、15分後に府中に輝いた二番星の方がスケールは大きいように思える。
それでも勝負事である以上は「一番」にこだわりたい。1954年の中央競馬創立以後、一番星がクラシックホースになった例は、1982年の桜花賞馬・リーゼングロスただ一頭。しかし世代の一番星が阪神から誕生するようになってからは、レッドリヴェールやケイアイノーテックがのちにGⅠ馬の輝きを放っていることを忘れないでおきたい。さらにテラメリタは新種牡馬ブリックスアンドモルタルの一番星でもある。様々な意味で期待は大きい。西の空に光を放った一番星は、来春に同じ阪神のマイルで輝きを増すことができるだろうか。楽しみに見守りたい。
***** 2023/6/3 *****
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