岐阜羽島探訪記
京都駅を出発して滋賀県内を走行していた「のぞみ390号・東京行き」が、彦根市付近でゆっくりスピードを緩め、完全に停車した。
駅ではない。米原駅はまだ先だ。というか、のぞみは米原駅には停まらないはず。いや、私が知らないだけで、中には停まるのぞみもあるのかもしれない。でも、とにかく停まったのは駅ではなく田んぼの真ん中。これはおかしい。
ほどなくして社内アナウンスが流れる。三河安城〜豊橋間の雨量が規制値を超えた。それでしばらく運転を見合わせる。詳しくはJR東海のサイトを見ろという。
言われた通りにJR東海のサイトを見た。「遅れ」とは表示されているものの、「止まっている」とは書いてない。やれやれとため息をついてはみたものの、大雨を承知で新幹線に乗りこんだのはほかならぬこの私である。気の毒な車掌を責めるわけにもいかない。
のぞみ390号は岐阜羽島駅まで進行して、再び停車した。
「岐阜羽島にのぞみが停まったゾ」
若干テンションが上がったが、扉が開いたのを見て我に返った。あらためて見れば下りホームに停車している新幹線も東京行きではないか。これはタダごとではない。つまり運転再開の見込みが立っていないということ。それで諦めて改札を出ることにした。
岐阜羽島駅で降りたのは初めてだ。なにせ東海道新幹線でもっとも何もないと呼ばれる駅である。一歩外に出てそれを理解した。土産物屋はおろかコンビニすらない。駅前探訪は1秒で終了。駅構内に戻るとオシャレな外観のコーヒーショップがある。その店「Artrain」は、落ち着きのある内装でありながら、これでもかとばかりにガンダムやザクの大きな模型を飾っているところが気に入った。静かな店内でザクを眺めつつコーヒーを飲んでいると、自らの置かれた状況を忘れそうになる。
去年ならば、このまま岐阜に泊まったかもしれない。なにせ明日の鳴尾記念は中京での開催だった。しかし今年は阪神に戻る。それを「残念」と言ったらバチが当たりそうな気もするが、そう思ってしまったことは否定できない。そんなことをぼんやり考えるうちに臨時の新大阪行が出るとのアナウンスか流れた。ふんじゃぁ大阪に戻るとするか。園田のメインに出走するハナブサの応援にでも行こう。
台風2号と梅雨前線がもたらす大雨は新幹線を止めただけでなく、浦和、高知、園田の競馬開催をも流した。もちろんハナブサが出走予定していた初夏特別も取り止め。代替開催もない。不謹慎な話だが、そこに至ってようやく「被災」を実感。そう思った途端、ずしりと疲労感が押し寄せてきた。ほとんど座っていただけのはずなのに。
その後「のぞみ390号」は7時間遅れで名古屋駅に到着。そこで運転打ち切りとなったという。あのままジッと座り続けていたら果たしてどうなっていたか。車内にはまだ大勢の乗客が座ったまま運転再開を待っていた。今後は岐阜羽島駅を通するたびに、照明に照らされたあのザクを思い出すに違いない。
***** 2023/6/2 *****
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