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2023年5月29日 (月)

5月の梅雨入り

早くも梅雨入りでござる。

気象庁は今日午前、九州北部から東海の各地方で梅雨入りしたとみられると発表した。近畿地方としては平年と比べて8日早く、5月の梅雨入りは10年ぶりだという。だが競馬ファンの感性からすれば、キズナのダービーはさほど遠くにも感じない。

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でも「ちょっと待てよ」と思った。たしか一昨年も同じようなことがあったはず。たしか5月16日に近畿地方の梅雨入りが発表されてちょっとしたニュースになった。なにせ1951年の統計開始以来、史上最も早い梅雨入りである。1951年と言えばトキノミノルがダービーを勝った年。70年間無かったことが起きた。しかし競馬ならそれも起こり得る。なにせ69年ぶりに「テン乗り」での日本ダービー制覇が起きたばかり。しかしそれが気象現象となると、ちょっと心配にはなる。

しかしこの年の梅雨が終わり、夏も盛りを過ぎた9月になって大阪管区気象台から驚きの発表があった。梅雨入りの時期を修正する発表で、近畿地方で「観測史上最も早い」とされた5月16日の梅雨入りは「幻」で、実際はおよそ1か月遅く、ほぼ平年並みの6月12日だったことが分かったという。

梅雨入りは前後の天気と、その後1週間の予測などから判断する。後に修正することはあるが、1か月もずれるのは記録の残るこの20年で初めてだそうで、気象台職員は「経験則が通じない状況が増えた」とぼやいていた。しかし競馬では20年に一度のことなど珍しくもない。ダミアン・レーン騎手は2003年のミルコ・デムーロ騎手以来20年ぶりとなる短期免許でのダービー制覇を果たしたばかりだ。

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ともあれ今年は桜も早かった。全国各地で統計開始以来最も早い開花を更新。4月には東京で早くも真夏日を記録し、5月としては異例の「猛烈な」勢力にまで発達した台風2号は、ゆっくり沖縄に近づきつつある。すでに気象的には記録づくめの年なのだから、5月に梅雨入りしてもおかしくはない。

梅雨とは「春から夏に移る時期、その前後に比べて雨と曇りが多くなる季節現象」と定義される。気圧配置や降水量、気温などの基準があるわけではない。だから、梅雨入りの発表についても気象庁として「宣言」という言葉を使ったことはなく、あくまでも情報の提供という立場だが、それを受け取る側が「宣言」だと思い込んでいるフシがある。この辺の事情は「桜の開花宣言」の誤用にも近い。季節感をことさら大事にする日本人ならではであろう。

客観的な基準がないのなら、いっそ「桜の開花」とか「梅雨入り」といった発表などやめてしまってはどうか―――。

そんな意見も少なくはないが、百貨店の売り場展開やCMの差し替えなどに影響するとして、なくなっては困るという声の方が大きいらしい。梅雨入りの日は除湿グッズが、そして梅雨明けの日はビールがよく売れるというのも業界の常識になっている。

お上の声に生活感覚までコントロールされてしまう姿はいかにも日本人らしいが、それでも競馬ファンは強かだ。梅雨に入ったからと言って盲目的にステイゴールド産駒を追いかけたりはしない。信じるべきはキャリアに裏打ちされた己の記憶と感性のみ。69年ぶりの出来事が起きても、徒に驚いたり嘆いたりするのではなく、素直にそれを受け入れてただちに脳内をアップデートする。その潔さこそが、生きていく上で大事な役割を担うように思えてならないのである。

 

 

***** 2023/5/29 *****

 

 

 

 

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