山盛りの美学
先日、鳥羽街道駅から藤森のうどん屋さんを目指して歩いていたところ、途中に一軒の天ぷら屋さんを見つけた。その屋号につられて思わず入ってしまったのである。
その名も「天えい」。競馬ファンならこれは入らぬわけにはいくまい。いつもは「しがらき」を使うはずの堀調教師なのに、タスティエーラは皐月賞2着のあと「てんえい」へと放牧に出されて結果を出した。そこにいったいどんな秘密が隠されているのか。自分の眼で(舌で?)確かめてみよう。
どうやら天丼が人気らしい。丼物は迷わず大盛を頼むクチである。それで天丼・大盛をオーダー。しかるのちに、なんとも素晴らしいビジュアルの一杯が運ばれてきた。
たくさんの天ぷらたちが折り重なるように山盛りに配置されているではないか。視認できるタネはエビ、大葉、カボチャ、海苔、椎茸、シシトウ、タマネギなど。これらをかき分けて進むとようやく白メシが顔を出す。ちょっとでもミスれば、天ぷらが丼からこぼれてしまう。食べるのが難しいが、これほど楽しい難しさもほかにあるまい。これが「てんえい」の秘密か。
そしたら京都競馬場のお膝元。淀駅近くにも似たような丼を出す店があった。「似たような」というのは、具在がこぼれそうになるという意味。淀駅の競馬場とは反対側の改札口を出て歩くこと1分。「魚楽(ととらく)」は美味しい海鮮丼を安く食べられると評判の一軒で、土日も営業していることから開催日は競馬ファンも訪れて行列ができることもある。
ポイントはタネがこぼれんばかりに山盛りされたこのビジュアル。まるで漫画に出てくるような一杯にテンションは上がるが、いざ食すとなるとこれがまた難しい。写真はトロたく丼。これにそのまま醤油をかければ丼外に流出する恐れがある。食べ方の難しさという点では、丼というよりはかき氷に近い。ともあれ「山」の崩し方さえも楽しんでしまうことが、こうした山盛り丼の醍醐味のひとつであろう。
そういえば、京都競馬場内にも美しい山盛り丼を提供する店があった。
それが吉野屋の「肉増し増し最強パワー丼」。このポスターの絵ヅラにしばし見とれた。なんという美しいフォルムであろうか。まさに肉の山。その頂から丼の淵へと広がる稜線は富士山を彷彿とさせる。通常の大盛弁当700円にプラス350円でこれが食べられるなら出しても良い。さっそく注文。期待に胸を躍らせて蓋を開けたらこんな感じ。
あれ?
ちょっと違うな。。。
まあ、よくよく考えたらあくまでも「持ち帰り弁当」なので、提供時に蓋をされてしまうのですよ。それで肉がギュッと押し潰されてしまうのである。そうは言っても、肉の量はポスターに比べれば明らかに少ない。この手のポスターを鵜呑みにしてはいけないという好例であろう。肉を丼メシにかける回数が増えるので、結果的に「つゆだく」になることも特記しておきたい。ともあれ「いくら肉を食べてもまったく肉が減らない」という夢のシチュエーションは堪能できた。今週から阪神開催。仁川界隈にも山盛り丼を出す店はあるだろうか。
***** 2023/5/30 *****
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