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2023年3月12日 (日)

鍵を握る失点率

WBC一次ラウンドB組は侍ジャパンの快進撃で盛り上がっているが、台湾で行われたA組は稀に見る大激戦となった。なんと5チームが総当たりで4戦してすべて2勝2敗だから凄い。こうなると当該チームとの対戦での失点率が鍵を握る。途中から日本VSオーストラリアよりも、イタリアVSオランダの行方が気になって仕方なかった。ともあれ日本の次の相手はイタリア。しかし毎回のこととはいえ、この失点率の計算というのは分かりにくい。

関係者の間でさえ「失点率より得失点差を重視すべき」と賛否両論あるものの、失点率のルール自体は国際野球連盟の規定にのっとったものだ。失点を最小限に留めれば道は開けるというシンプルな考え方は、投手力を中心とした守りの野球を旨とする日本にも味方している。このルールのおかげで序盤で大差がついた試合に一定の緊張感を与えている点も見逃せない。同じ「1敗」でも、そこに微妙な差が生じるからだ。

それが大きくモノを言ったのは、2006年に行われた第1回WBCの2次ラウンド。4チームの対戦が終了した時点で、3戦全勝の韓国を除き、日本、米国、メキシコの3チームが1勝2敗で並んだ。結果、失点率の争いとなったのである。

まず18イニングで7失点のメキシコは失点率3.89で脱落。17イニングで5失点の米国は失点率0.29。そして日本は17回2/3を5失点だから0.28。わずか0.01差で米国を上回った日本が決勝トーナメント進出を果たし、その勢いのまま世界一へと上り詰めることとなる。

実はこの2次予選で日本は米国にサヨナラ負けを喫していたのだが、9回2アウトまで進んでいたことが大きかった。アウト一つと言えど、バカにはできない。

だが、巷間騒がれているように、このルールには欠陥がある。「延長10回で1-0勝利なら失点率で勝ち上がれる」というチームは、9回まで点を取ろうとせず故意に凡退するだろうし、「9回1失点なら試合に負けても失点率で勝ち上がれる」というチームが0-0で9回ウラの守備を迎えれば、4者連続敬遠の暴挙に出るかもしれない。

その点、競馬には「抽選」という麗しき伝統がある。明瞭簡潔であり、なおかつ故意に負けるようなルール上の抜け穴もない。必要とされるのはただひとつ。「運」のみ。そこからノーリーズン(皐月賞)、トールポピー(阪神JF)、ゴスホークケン(朝日杯)のように、頂点に上り詰めた馬もいなくはない。

Noleason

一方で、こうした抽選組の活躍は、GⅠを勝つだけの力を持ちながら抽選で涙をのんだ馬が多くいた可能性を示唆している。2013年の朝日杯ではモーリスやミッキーアイルが除外の憂き目を見た。いま思えば、JRAも思い切ったことをする。でも、公平な抽選の結果である以上、主催者が文句を言われることにはならない。そこがミソ。「麗しき」というのは精一杯の皮肉だ。分かりにくいと揶揄される失点率でも、少なくともそこには関係者の努力の跡を感じ取ることができる。ルールの欠陥を突くような真似をするようなチームは、きっとWBCの舞台にはいないのであろう。

 

 

***** 2023/3/12 *****

 

 

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