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2023年3月 5日 (日)

【訃報】オリオンザサンクス

1999年の東京ダービー馬でNAR最優秀4歳馬にも選ばれたオリオンザサンクスが、おととい亡くなった。27歳。現役引退後は種牡馬となり、2008年の九州ダービー馬・オリオンザナイトなどを輩出したが、18年に種牡馬を引退してからは功労馬として過ごしていたという。

大逃げのまま大差で後続を千切り捨てた若獅子特別。影をも踏ませず逃げ切ってみせた羽田盃と東京ダービー。JRA所属馬相手でも臆することなく、スタートから猛スピードで逃げたフェブラリーSとJCダート。一見暴走にも映る大逃げはファンを大いに沸かせた。

Tokyodarby

中でも1999年ジャパンダートダービーのレースぶりが印象深い。JRAの有力馬を差し置いて堂々の1番人気に推されて気負ったのか、前半から明らかなハイペースで飛ばしていく。4コーナーでも後続は10馬身後方に置き去りのまま。だが、そこでおつりがなくなった。「これは何かに差される」。鞍上の早田秀治騎手は負けを覚悟したらしい。それでも直線で猛然と追い込んだオペラハットをクビ差退けて1着ゴール。上がりに40秒7を要しながらゴールまで持たせた騎手の技術もさることながら、馬の頑張りも賞賛されるべきであろう。

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ジャパンダートダービーはこの年に創設されたばかり。すでにダートグレード競走は各地で行われてはいたが、JRAと地方を含めた3歳春のダートGⅠレースは初めての試みである。迎え撃つ立場の地方勢だが、JRAにまったく歯が立たないかもしれない。もしそんなことになれば「ダービー」の看板を汚すことにもなる。そんな不安と期待が交錯する中で行われたレースを、地元のダービー馬が勝った意義は小さくない。やがてジャパンダートダービーはJRA、地方各地の3歳馬が目指すべきもっとも大きなタイトルとして認知され、このレースを軸にJRAのユニコーンSや全国各地のダービーが展開される体系が整った。それはジャパンダートダービー創設の理念そのものだったように思う。

そのレース体系が来年から大幅改正されると発表されたのは昨年11月のこと。「全日本的なダート競走の体系整備について」という記者会見で、3歳ダート3冠路線が整備されることが発表された。現在は南関東ローカル重賞の羽田盃と東京ダービーがダートグレード競走となりJRA所属のまま出走が可能となり、東京ダービーの賞金を1億円に増額してこれを頂点とする。

ジャパンダートダービーは開催時期を秋に移して名前も「ジャパンダートクラシック」に改称されるらしい。創設時から観続けてきた立場からすれば若干の寂しさもあるが、創設から四半世紀を経てその役割をじゅうぶんに果たしたということであろう。その道筋を作った功労馬の一頭がオリオンザサンクスであることは忘れないでおきたい。このタイミングでの訃報は、まったくの偶然ではないような気もしてしまう。

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クラシックレースで活躍したことで、種牡馬になってからもその産駒は中距離向きと見られることが多いが、実は1200m以下では(5,1,0,2)。重賞も二つ勝っている。特に3歳(当時表記)時の栄冠賞では、その快速をいかんなく発揮。自らの持つレコードをコンマ6秒更新し、3歳馬として旭川競馬場で初めて1分の壁を破る59秒9で優勝した。私は彼の真骨頂はスピード能力にあったと思う。中距離戦で幾度となく放たれた彼の大逃げは、きっとその溢れるスピードの発露だったに違いない。20世紀の最後に現れた快速馬の冥福を祈る。合掌。

 

 

***** 2023/3/5 *****

 

 

 

 

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コメント

ともくん様

コメントありがとうございます。
2年余りの大阪暮らしで「我らの南関競馬」から遠ざかっておりますが、今後もたまに覗いていただけると幸いです。所有されている馬たちの活躍を願っております。

投稿: 店主 | 2023年3月 8日 (水) 07時49分

はじめまして!
時々覗かして貰ってます。
とはいうもののポーカーアリスでしたか?
あの頃からです。私も大阪でサラリーマンの身ですが南関に2頭ほど個人所有して競馬を楽しんでいます。特に南関競馬の事はお詳しいので興味深く、今後も変わらず楽しく拝見させて頂きます。

投稿: ともくん | 2023年3月 6日 (月) 06時54分

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