数学の日
今日3月14日は一般には「ホワイトデー」だが「数学の日」でもある。由来は円周率のもっともメジャーな近似値「3.14」にちなむ。ゆえに海外には「円周率の日」と定めている国も。ちなみに日本では7月22日が「円周率近似値の日」であるらしい。これは7分の22(22÷7)の値が、3.1428……と円周率に比較的近いから。ちょっと無理がありそうにも思えるが、紀元前2千年頃の古代バビロニアでは、この「7分の22」が円周率の近似値として実際に使われていたことを思えばあながち的外れでもない。
円周率は3.1415……と永遠に続く。それゆえ3月14日に結婚するカップルもいるらしい。ただ、永遠に続くだけなら3月1日(3分の1=0.3333……)でも同じですけどね。でも、有理数と無理数の話をすると長くなるので、これ以上は深入りしない。ちなみに円周率は「π」とも表記されるため、米国ではアップルパイを食べて祝う習慣があるそうだ。これは楽しい。なので私もアップルパイを食べながら、数学について書くことにする。
数学とギャンブルに密接な関わりがあることは言うまでもない。ギャンブルが数学を生んだ―――とまでは言わないが、ギャンブルが数学のいち学問の「確率論」を生んだことは、まず間違いないだろう。
「一つのサイコロを続けて4回投げ、『六の目が少なくとも一度は出る』という結果に賭ける行為は、果たしてどれくらい有利なのか?」
これは賭け事が大好きなフランスの貴族メレが、数学者パスカルに問うた有名な問題である。
「サイコロを1回投げて六の目の出る確率は1/6。だから、これを4回くり返せば、確率は4/6(=0.67)になる」
当時の人たちは、このように考えていたらしい。
だが、この“少なくとも”の部分がくせ者。「少なくとも一度は六の目が出る」というのは、実は「4回とも六の目が出ない」の反対であり、そのように計算すれば、真の確率は0.52という案外拮抗した数値に収まる。
パスカルは、同じ数学者のフェルマーと手紙をやりとりしながら、この問題に対する解法を探った。やがてその考え方はギャンブルのみならず、保険や気象、さらには量子力学のような物理学にも必要とされ、今日の確率論にまで発展を遂げる。
昔の人はリスクを最小限にしようと頭を凝らし、様々な思考を戦わせた末に確率論という類い希な学問を生み出した。逆に、確率論は敢えてリスクを引き受けるという人間の冒険心を燃え上がらせ、結果それが社会経済の発展を生みだすことになる。そういう意味では人類史とはすなわち賭けの歴史だったのである。
パスカルは、すべての運・不運にまつわる謎を解明せしめ、あらゆる偶然を人知の及ぶ処にしようと確率論を発展させたが、そこに秘められた大きな謎を手中に収めることはついにできなかった。それどころか、晩年はギャンブルに溺れる生活を送ったのち、やはり39歳の若さでこの世を去っている。稀代の大数学者を以てしても、最終的には運には逆らえなかったということであろう。
***** 2023/3/14 *****
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