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2023年3月 6日 (月)

ベテランの壁

昨日の阪神競馬場は穏やかな好天に恵まれたにも関わらず場内はガラガラだった。

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昼メシの「とんかつ和幸」に向かったのは昼休み前の障害未勝利が終わり、さらに払戻金を確認してからである。ちょっとのんびりし過ぎた。普段なら大出遅れ。まず行列は避けられまい。そんな覚悟を抱いていざ店前に立つと、スンナリ席に通されたから驚く。こんなことは過去に経験したことがない。あとで聞いたら、昨日の入場者数は8319人だった。ちなみに前日は18383人が入ったという。日曜の入場者数が前日土曜の半分にも届かないことなんてそうそうあるまい。

前日に何があったか。そう、それは福永祐一騎手の引退式。最終レース後にも関わらず約1万人以上のファンが競馬場に残り「福永騎手」の幕引きを見届けた。チューリップ賞の本馬場入場時には誘導馬に跨るサービスも。そのレースを勝ったのが武豊騎手とはよくできてる。来週54歳になるレジェンドの手綱さばきは、まだまだ衰えることがない。それを「福永先生」はどのように観たのだろうか。

昨日は熊沢重文騎手も477日ぶりの勝利を挙げている。昨年2月の落馬で頸椎を骨折。一時は再起不能とも言われた絶望的な状況からの復活勝利に、空いているとはいえそれでも大きな拍手がスタンドから送られた。こちらは武豊騎手よりひとつ年上の55歳。「これからも泥臭く頑張っていきます」と笑顔がはじける大ベテランの手腕も、まだまだ衰えそうにない。

ほかにもこの土日だけでも、55歳・横山典弘騎手が2勝。52歳・内田博幸騎手も2勝。勝てはしなかったものの56歳・柴田善臣騎手は13番人気で2着するなど、東西でベテランジョッキーが存在感を示した。だが本来なら、JRAの3月第1週は新人ジョッキーがスポットを浴びるはずの週である。今年は6人のルーキーが計39頭の手綱を取って初勝利を目指したが、開幕週での快挙達成はならなかった。

惜しかったのは土曜の阪神1Rで2着に食い込んだ田口貫太騎手。道中7番手でしっかり折り合い、直線で猛然と追い込んだが残念ながら前にあと一頭いた。その背中に乗っていたのはベテラン横山典弘騎手。老獪な逃げの前にまったく歯が立たなかった。

プロスポーツ界広しと言えども、デビュー戦でいきなり2910勝のベテランと勝負しなければならない騎手という職業は、かなり異質な環境に違いない。巨人の高校生ルーキー・浅野選手が開幕スタメンを勝ち取って相手のエースからホームランを打つようなもの。リーディングジョッキーとの実力差は3キロの減量得点ごときで簡単に埋まるものではない。そういう意味で、私は若き騎手たちに深く同情する。

それでもベテランの壁を破らないことには食っていけないのが騎手の世界。それを承知でこの世界に飛び込んだ以上、相当の覚悟を抱いているはずだ。むろん「とんかつ和幸」で行列に並ぶ覚悟とはわけが違う。27年前、福永祐一騎手はその壁を打ち破って一流騎手への第一歩を踏み出した。今年の新人6人は果たしてどのような道を歩むのか。長い目で見守りたい。

 

 

***** 2023/3/6 *****

 

 

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