赤星
大阪に来て2年余り。東京にいる時は、ちょっと高くてもゆったり座れたり、良い魚を仕入れていたり、珍しい日本酒があるようなお店を選んでばかりいたのだが、大阪に来てまったく考えが変わった。タバコの煙が立ち込める狭い立ち飲み屋や角打ちで、隣の客と肩をぶつけ合いながら、380円の赤星大瓶を飲んでいる時間が一番楽しい。東京にいたときの私はどうかしていた。少しでも安い店を探して今宵も梅田の街を彷徨っている。
阪急梅田駅の北側にある「ビンゴヤ」は界隈で有名な角打ち。酒屋さんの倉庫で飲ませていただくスタイルで、100人以上が入れるというから角打ちにしては広い。つまみはおでんや缶詰、乾きモノが中心。中でも醤油を垂らしたコンビーフが美味い。燗酒は松竹梅「豪快」。中山グランドジャンプ連覇の名ジャンパーに思いを馳せながら一口飲むと、これがまた美味い。千円でじゅうぶんおつりがくる。
さらに北に向かって中津まで歩くと「大阪はなび」という異世界が広がっていた。
ビールケースの上に板を載せただけのテーブル。椅子もビールケース。そして頭上には裸電球と短冊メニュー。一見カオスな光景に東南アジアのどこかの街に迷い込んだような錯覚を覚える。
ここでも赤星大瓶を注文。
正式名は「サッポロラガービール」。通称「赤星」。いわゆる「生」とは違い、熱処理ビールならではの苦味が特徴だ。
サッポロと言えば「黒ラベル」のイメージが強う。北海道にお住まいの方なら「クラシック」であろう。どちらも非熱処理の「生」であり、どちらもラベルには金色の星★が描かれている。一方の赤星★はコンビニや居酒屋チェーンで見かけることはほぼない。それでもこうした大衆酒場では稀に見かける。主たる客層は中高年男性。それを「通」と呼ぶかどうかの議論はさておき、いわゆるビール好きのオジさんに好まれるビールとして、秘かに愛され続けてきた。
ところが、最近ではこれを目当てに来る若い客が増えているのだそうだ。いわゆる昭和レトロブームと無関係ではあるまい。昭和感たっぷりのラベルデザインは映えるし、クラフトビールのような感覚で味わう人もいるらしい。そこに実は我が国でもっとも古いビールブランドだといトリビアが加わる。なにせ発売開始は1877年であるから、その歴史は150年に近い。一周どころか、3~4周回ってブームが巡って来た可能性はある。
その味は瓶で、しかも大瓶で味わいたい。この店のようなビールケースに板を乗せただけのようなテーブルには、生ビールのジョッキよりも大瓶とグラスが似合う。アテには大盛ソーセージと厚切りベーコンの炭火焼があればじゅうぶん。写真はその大盛ソーセージ。短冊に書かれた「大盛」の表記に偽りはなかった。
***** 2023/3/20 *****
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