牝馬の皐月賞
阪神JF2着のシンリョクカが皐月賞に出走するかもしれないと話題になっている。
1700万円の収得賞金を持ちながら桜花賞は除外対象。一方の皐月賞はフルゲート割れとなる公算が高い。しかも牝馬ながら皐月賞、ダービー、菊花賞へのクラシック登録も済ませていると聞く。すなわち追加登録料は発生しない。さらに吉田豊騎手を確保済みとあらば、皐月賞出走の可能性は一定程度ありそうだ。
牝馬の皐月賞出走が実現すればファンディーナ以来6年ぶりのこと。しかし、ファンディーナは出走可能な桜花賞をソデにして、わざわざ200万円の追加登録料を支払っての皐月賞参戦だった。だからファンは彼女を皐月賞で1番人気に支持したのである。
仮に牝馬が皐月賞を勝てば1948年のヒデヒカリ以来75年ぶり―――。
出走が確実になれば、メディアはそう書いて盛り上げようとするだろう。
ヒデヒカリの当時、オークスは秋に行われていた。したがって3歳馬は牡牝を問わずダービーを目指すことになる。その前哨戦たる皐月賞に牝馬が参戦したところで、さほど驚くことではない。実際、この年の皐月賞は7頭立てで行われたのだが、うち3頭が牝馬であった。ちなみにこの前の年の皐月賞も牝馬のトキツカゼが勝っている。
ダービーの権威に比べて、当時の皐月賞の評価が今ほど高くはなかったことは否定できない。そも名称からして「農林省賞典四歳呼馬競走」である。しかも5月中旬の東京競馬場で行われていた。現在の皐月賞とは全然違う。そういう意味ではシンリョクカが皐月賞を勝つようなことがあれば、実質的には史上初の快挙に等しい。
むろんシンリョクカ陣営にしても、何の勝算もなく牡馬に挑むようなことはするまい。分かりやすいところでは距離適性が挙げられる。我が国のクラシックは英国に範を取ったと言っていながら、なぜか1冠目は牡馬と牝馬とで距離が異なる。それを「選択肢」と捉えれば、牝馬が皐月賞を選んだところでおかしくはない。シンリョクカの父はサトノダイヤモンド。距離は少しでも長い方が良かろう。
リバティアイランドの存在も無視できない。阪神JFでつけられた2馬身半の差を同じ舞台で逆転するのは至難の業。確たる中心馬が不在の牡馬路線の方が組みやすいと考えたとしても不思議ではあるまい。阪神JFのリバティアイランドに与えられたレーティングは114ポンド。牡馬に換算すれば118ポンドに相当する。これは朝日FSドルチェモア(116)やホープフルSドゥラエレーデ(114)より高い評価だ。
もちろん一回勝負の舞台でシンリョクカが勝ち切るのは正直難しいかもしれない。なにせ相手は15〜16頭。それでも、そのチャレンジは一見の価値があろう。ウオッカの快挙からもう16年になる。
***** 2023/3/29 *****
| 固定リンク
「競馬」カテゴリの記事
- ディープインパクトと子と孫と(2023.06.04)
- 西に輝く一番星(2023.06.03)
- 岐阜羽島探訪記(2023.06.02)
- 鳴尾競馬の記憶(2023.06.01)
コメント