高松宮記念の注目は
高松宮記念の出走馬が確定した。注目はピクシーナイト。もし勝てば、1993年の有馬記念を勝ったトウカイテイオーの中363日を上回る中468日でのGⅠ制覇となる。競馬史に残る大復活劇を期待する向きは多かろう。
「常識的には……」と思いつつ、常識を超えた優勝を我々はWBCで目の当たりにしたばかり。スプリンターズSの優勝インタビューで「想像を超えていた」と福永祐一騎手に言わしめたその素質に、賭けてみるのも悪くない。
もう一頭の注目はトウシンマカオ。こちらには血統的な注目が集まっている。
長い歴史の中でも父系血脈の持続が至難であることに説明の必要はなかろう。一時代を築いた人気の主流父系も、長くて3代ぐらい経つと活力を失い、勢いを得た別のラインに屈し姿を消していく。ヒンドスタン、ネヴァービート、パーソロン、ノーザンテースト。天下無双に思えたサンデーサイレンスから続く父系とて例外ではいられない。
その中にあってテスコボーイからサクラユタカオー、サクラバクシンオーと続いて、ショウナンカンプやグランプリボス、そしてビッグアーサーへと流れゆく父系は世界的にも貴重な存在だ。1972年の皐月賞馬ランドプリンスに始まり、昨秋にトウシンマカオが勝った京阪杯までなんと41年間も重賞勝ちを記録しているのである。42年目の今年、日本が誇るこのサイアーラインから高松宮記念出走馬が出ること自体がそれだけで奇跡的。もし勝てば、内国産馬による父子4代連続GⅠ制覇の大偉業の達成だけでなく、同時に「5代連続」への期待も繋がる。
内国産馬にこだわらなければ「父子4代連続GⅠ制覇」は既に一組だけ前例がある。それを成し遂げたのが前述のピクシーナイト。一昨年のスプリンターズS勝利で、グラスワンダー、スクリーンヒーロー、モーリスと続いた父子連続GⅠ制覇の記録を「4代」にまで広げた。
その父系は必ずしも日本の主流血脈ではないが、血統の歴史を振り返れば逆にそここそが魅力であろう。グラスワンダーは有馬記念連覇のイメージが強いが、実は1400mのGⅡを2勝し、朝日杯3歳Sをレコードで優勝したスピード馬。スクリーンヒーローの祖母ダイナアクトレスからのサポートも受けて磨きがかけられたその豊かなスピード能力は、マイルGⅠ4勝のモーリスを経てピクシーナイトに余すところなく伝えられているに違いない。
ピクシーナイトもやがて種牡馬となり、父子連続GⅠ制覇の記録を「5代」にまで広げる仕事が待ち受けている。それを思えば、重度の骨折明けの競馬で決して無理はして欲しくない。期待と不安が交錯する高松宮記念。だからこそ我々ファンは注目せずにいられないのである。
***** 2023/3/23 *****
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