盃と杯
明日は大井で金盃が行われる。
1956年創設とその歴史は古い。距離2600mは国内における最長距離のダート重賞としても知られる。ロッキータイガー、カウンテスアップ、ダイコウガルダン、コンサートボーイ、インテリパワー、ボンネビルレコードと、南関東を代表するダートの猛者たちがその名を刻んできた。
一方JRAには「金杯」がある。現在は「中山金杯」と「京都金杯」にその名を変えたが、1995年まではどちらも「金杯」だった。創設は中山が1952年で京都は1963年だからやはり古い。いずれにせよ正月の名物レースとしてすっかり定着している。
どちらも同じ「金のさかずき」を争う一戦。海外なら「ゴールドカップ」である。なのになぜ大井は「盃」でJRAは「杯」と異なる文字を使うのか。それが昔から不思議でならなかった。そして今も謎のままである。
金盃だけではない。羽田盃、黒潮盃、東京盃、京浜盃、TCK女王盃という具合に大井は「盃」を使うことを徹底している。南関東では京成盃グランドマイラーズや日本テレビ盃の船橋が「盃」派である一方、エンプレス杯の川崎と、さきたま杯、テレ玉杯オーバルスプリントの浦和が「杯」派というあたりは興味深い。むろんJRAでは「盃」の字は使われていない。
そもそも「盃」と「杯」の字は何が違うのか?
どちらも読みは「さかずき」で同じ。「盃」は「杯」の俗字(異体字)という説が有力。ちなみに「盃」は常用漢字ではない。
どちらも同じ意味を持つ文字ではあるが、一般的に「盃」は酒の器に使われ、「杯」は1杯、2杯と量を数える場合のほか競技会や大会の賞典として使われることが多いようだ。梅田の人気立ち飲み店「金盃」の店名が「金杯」ではないのはそういう事情によるのであろう。逆にレース名としては「杯」を使うのが自然の流れのように思えるが、「盃」もけっして間違ってはいないということになる。このあたりに大井の矜持を感じなくもない。
とはいえ大昔はJRAも「盃」の字を使っていた。中央競馬当時のことだから「使っていた」と言い切るのは間違いかもしれないが、変えたということはやはり何らかの判断が働いたということになる。それが何かは分からない。謎だ。
写真はコンサートボーイが勝った1996年の金盃。1995年の南関東クラシック戦線で「3強」と呼ばれたヒカリルーファス、ジョージタイセイ、コンサートボーイの3頭が古馬になって初めて顔を揃えた。羽田盃ではヒカリルーファスに、そして東京ダービーでもジョージタイセイに、いずれもわずかに及ばず2着と敗れたコンサートボーイだったが、この日はそんな勝負弱さは影を潜めて羽田盃馬ヒカリルーファスを半馬身抑えて完勝。ついに雪辱を果たしたのである。
***** 2023/2/21 *****
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