引退は突然に
エフフォーリアの電撃引退、種牡馬入りが発表された。
おとといの京都記念に出走するも心房細動で競走中止の憂き目を見たばかり。症状が悪化したわけではないという。ただ、今後の選択肢が極めて少なくなっていたことも事実。ならば請われるうちに、そして壊れぬうちに、種牡馬にしてあげることは人間にできるベストの選択であろう。苦渋の決断だったに違いないが、関係者の判断を支持したい。
年度代表馬の引退発表が2月に行われた例は少ないはずだ。そもそも2月は競馬界においては「人」の引退シーズンである。今年も橋田満氏、南井克巳氏、五十嵐忠雄氏、池添兼雄氏、大江原哲氏が調教師を引退。そして福永祐一騎手がそっと鞭を置く。
54歳になった私も「引き際」というものを少しは考えるようになった。ひと昔前なら定年間近。車いすテニスの国枝慎吾さんやプロ野球の名リーバー・増井浩俊投手の引退報道が気になって仕方ない。あろうことが部下も「辞める」と言い出した。自分もいずれ辞める。死ぬまで今の仕事を続けることは不可能だ。あと2~3年はやれるんじゃないかと思えた佐賀のグレイトパールさえ引退してしまった。
かつて、大半の地方競馬には定年制があったのをご存じだろうか。現役でいられるのは8歳まで。益田で13歳まで走ったウズシオタローは特例で、9歳になると定年のない中央入りするケースまであった。グレイトパールは9歳秋に九州大賞典を勝ったのだから引き際の選択としては悪くない。もったいない。そう言ってもらえるうちが華だ。
引退決断の難しさは一流馬になるほど関係者に重くのしかかる。とくにJRAで年度代表馬のタイトルを手にして、種牡馬入りを横目に見ながら現役を続ける古馬の牡馬となると悩みは切実だ。
欲を言えば、秋シーズンのGⅠを勝って、そのまま引退するのが理想であろう。勝って終わるのと、負けて終わるのとでは、印象がまるで違う。かつて8歳まで現役を続けながらGⅠ連勝で引退を飾ったカンパニーは前者の好例。逆に昨秋8歳で現役を引退したマカヒキのケースは、引き際の難しさを象徴している。
昨今の日本では、いわゆる実力者と呼ばれる人たちが、相当の年齢までトップで頑張ってきた。それはそれでいいが晩年になると何かと揉める。政治家などはその最たる例であろう。人にせよ馬にせよ引き際の難しさに変わりはない。
***** 2023/2/14 *****
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