たまには蕎麦も
神保町の『満留賀静邨』は蕎麦の美味さもさることながら、蕎麦屋ならではのアテが豊富。東京に帰るたびについ立ち寄ってしまう。うどんばかり食べているようで、実は夜になると蕎麦っ喰いに変貌していたりする。
蕎麦というのはワインなどと同じく薀蓄の温床なので、あまりうかつなことは書きたくない。とはいえ蕎麦屋のアテについてならば神経質になることもなかろう。今宵は「立派な鯵が入った」ということで、そのまま塩焼きにしてもらった。これをつついてさえいれば、しばらくアテに困ることはない。
最近では「蕎麦屋で一杯」というのが大人の飲み方という具合にもてはやされて、夜の蕎麦屋が存外混んでて驚かされたりする。ただ見ていると、席に着くなり出汁巻を注文する率が多くないか。むろんそれも悪くはないのだが、まずは焼き味噌や叩き海苔といった軽めのアテでお酒を一本飲んでみてはいかがだろう。しかるのちに出汁巻や鴨焼き、あるいは天ヌキでもう一本を飲む。そして最後に蕎麦を手繰りながらもう一本。それでシメる。
焼き味噌を最初にアテるのは、それ自体が酒を恋しくする味わいだからだ。大阪でも屈指の酒場・新梅田食道街の名店「金盃」のアテと言えばこの焼き味噌。こんがり焼かれた味噌は、その味の濃密さと香ばしさが素晴らしい。盃の合いの手程度にちょいと舐めれば、その後の酒の進み方が断然違ってくる。そういや来週の大井のメインは金盃。真島大輔騎手がスーパーパワーで勝ってから12年になりますな。
話を蕎麦に戻す。
若くして亡くなられた江戸風俗研究家の杉浦日向子さんも、大の蕎麦好きだった。「東京のソバ屋のいいところは、昼さがり、女ひとりふらりと入って、席に着くや開口一番、『お酒冷やで一本』といっても、『ハーイ』と、しごく当たり前に、つきだしと徳利が気持ち良く目前にあらわれること」と著書に残されている。さらには「究極の酒のアテは蕎麦湯である」とも。
スーパーパワーが活躍していた頃は、そんな杉浦さんの言葉を思い出しながら昼下がりに築地の蕎麦屋さんの暖簾をくぐったりもしていた。すると店内には女性の一人客。ちょうど徳利を片付けて、ざるで締めているところである。既に仕事終わりということは、市場で働いている方だったのかもしれない。その格好良さにほれぼれした覚えがある。築地にも久しく行ってないなぁ。
***** 2023/2/17 *****
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