スルーオダイナの凄さ
今週土曜に行われるダイヤモンドSのハンデが発表になった。トップハンデはアスクワイルドモア、カウディーリョ、スタッドリー、トーセンカンビーナ、ヒュミドール、ミクソロジー、レクセランスの56キロ。一方の最軽量はタイセイモナークとマリノアズラの53キロ。トップハンデとの差は3キロしかない。牝馬ながら55キロを背負うウインキートスが事実上の“トップハンデ”という扱いにはなるが、いずれにせよ斤量差が極めて小さなハンデ戦ということになる。
ハンデ戦は、騎手の体重や鞍などを含めた負担重量を加減することで、出走各馬の能力差の均等化を図る意図で行われる。だから個々の馬が背負う斤量よりも、他馬との「差」が大きな意味を持つ。過去のダイヤモンドSが上下3キロ差で行われたことはない。今年から別定戦になったのかと心配したが、そんなこともなさそうだ。
実はダイヤモンドSはハンデ戦として象徴的なレースだ。48キロが下限の目安とされる中、1964年には異例の軽さとも言える45キロのハンデでリンドウが出走した記録がある一方で、1990年にはスルーオダイナが61キロのトップハンデを克服して優勝を果たしてもいる。61キロでの勝利はグレード制導入後の平地重賞におけるもっとも重い負担重量での優勝記録。33年経った現在もそれは破られていない。直線対決したわけではないが、リンドウとスルーオダイナの斤量差は実に16キロ。これくらいあってこそ「ハンデ戦」を名乗ることができよう。
スルーオダイナは57.5キロで制した前年に続く連覇だったのだが、当時の感覚からしても61キロは背負わせ過ぎの感があった。今なら58キロから59キロが妥当であろう。しかもスルーオダイナが凄かったのは単に酷量を克服しただけではない。他馬とのハンデ差があまりに大きかった。
61キロ スルーオダイナ
54キロ ベルクラウン、オンワードフォコン、レイクブラック
53キロ シャイニングスター、スマイルオンユー、ローランシンガー、ハッピーシャトー
52キロ ブラウンアイボリー
51キロ コンバットビック
50キロ メジロバークレイ
なんと次位ハンデとの差は7キロ。しかもそのハンデ差を抱えて3200m(当時)も走らなければならないのだから、同じトップハンデと言っても相手も背負っていたフェイムゲームやアルバートの例とは比較にならない。それでもスルーオダイナはベルクラウンの逃げを果敢に追いかけ、2番手から抜け出す際には岡部騎手が後ろを振り返るほどの余裕があった。追い込んだオンワードフォコンに2馬身差をつける完勝だから凄いのひと言に尽きる。実力差は7キロ程度では埋め切れなかったわけだ。
今年から負担重量はこれまでより概ね1キロ増で運用されている。東西の金杯でも、また日経新春杯や愛知杯でも、多くの馬が普段より背負う羽目になった。なのに今回トップハンデが56キロに据え置かれたことはどういうことか。百戦錬磨のJRAハンデキャッパーからの大事なメッセージとして読み解く必要があろう。
***** 2023/2/13 *****
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