続・一寸先は闇か光か
好天に恵まれた阪神競馬場はGⅠ並みのお客さんで溢れている。飲食店は14時の時点で売り切れ続出。メインレース後には退場制限も行われた。
GⅠ開催日にしか見ない光景を生み出したはのはエフフォーリアとドウデュースの2頭。競馬ファンには何を差し置いてもその目で見なければならないレースが稀にある。サイレンススズカの毎日王冠しかり。ナリタブライアンとマヤノトップガンの阪神大賞典もまたしかり。その手のレースは意外にもGⅠではないことが少なくない。今日の京都記念にそれを期待したファンが多かったということか。当たり前だがファンファーレはGⅡ・GⅢのそれである。しかしファンファーレに合わせて手拍子が沸き起こった。これも珍しい。
京都記念のレース中にはファンから大きな声が三度上がった。
最初の歓声はスタート直後。ユニコーンライオンがハナを切るのは大方の予想通りだが、エフフォーリアが仕掛けて並びかけていくではないか。それもハナを奪わんかという勢いで1コーナーに飛び込んでいく。おかげで1000mの通過は59秒5。思っていたより流れる結果となった。
これを後方で見ていたドウデュースは3コーナー手前あたりから徐々に進出。抑えきれない手応えが伝わってくる。そして直線。軽く仕掛けられたドウデュースが瞬く間に弾けるように伸びたその瞬間、二度目の歓声が上がった。
誰もが同じタイミングで声を上げたのは、それだけドウデュースのギアが入ったことが誰の目にも明らかだったからに他ならない。頸が下がり、脚の回転が速くなった。あのイクイノックスを彷彿とさせる脚でありながら、あのイクイノックスを完封した脚でもある。ケタ違いとはこういうことを言うのであろう。レース後に「もう一度最強と言われたい」と武豊騎手は語ったらしいが、光は見えたに違いない。
激しい2着争いを見届けたあと、馬群から大きく離れて歩きながらゴールを目指す一頭に観衆が気付いた。それがエフフォーリアであることが分かるとこのレース三度目の声が上がる。歓声というよりは悲鳴に近い。ゴールまでわずか1メートルを残して横山武史騎手が下馬。もう一頭の主役は、なんとゴールを果たすことができなかった。
脚元に問題が無かったのは何より。それでもエフフォーリアにはかける言葉は見つからない。気配も悪くなかったし、鞍上の覚悟も見て取れた。もちろん能力は証明済み。陣営もやれることは惜しみなくやっている。無事であれば、あのまま4角先頭に踊り出てドウデュースとのマッチレースを繰り広げていたかもしれない。のちに伝説と呼ばれる一戦になっていたかもしれない。なのにこんな試練を与える競馬の神様は残酷だ。心房細動は誰のせいでもない。誰のせいでもないのだけれど、もはや関西への遠征は決断しにくかろう。じっくり立て直して秋を目指すが良いのか。長い長いトンネルの先に光はまだ見えてこない。
***** 2023/2/12 *****
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