頂上遥かなり
今日は浦和でユングフラウ賞が行われた。桜花賞に向けた重要ステップレース。JRAクイーンカップに挑戦したメイドイットマムの動向が気になるところではあるが、勝ったサーフズアップは桜花賞の最有力候補であろう。
このレースが近づくたび、知人から「ユングフラウって馬がいたのか?」と聞かれたエピソードを思い出す。モエレエターナルが勝った年だから、かれこれ14年も前の話だ。
「ユングフラウ」はたしかに馬の名前にありそうな響きだが、残念ながらこれはセントライトやシンザンのような名馬の名前ではない。スイスアルプスにそびえる山の名前。標高は4158mで、その名はドイツ語で「乙女」を意味する。この時季に行われる3歳牝馬限定戦の名称としては、なるほど悪くない。美しさと気高さを感じさせる。
ところで来週は大井で雲取賞が行われるが、この「雲取」も山の名前に由来する。ユングフラウ賞が牝馬クラシックのトライアルなら、雲取賞は牡馬クラシックの重要なステップ。そもそも山の名前を頂いた重賞レースは数が少ない。JRAでは富士ステークスただひとつ。南関東でもこの2鞍しかない。それが立て続けに行われるのは、3歳クラシック戦線を登山になぞらえてのことだろうか?
よもや主催者にそんな意図があるとも思えぬが、こう続くとそんな勝手な想像もしたくなる。むろん頂上は東京ダービーで異論はあるまい。その頂を遥か遠くに眺めつつ、今はこの先に待ち構える険しい山道に備えて力を蓄えているところ。むろん頂上にアタックできるのは、選ばれた一部のメンバーだけだ。
雲取山にしても、登山をする人でなければ耳にする機会は少ないかもしれない。私自身、毎年決まってこの季節の大井で行われるレースで名前を聞くことがなければ、その存在すら知ることはなかった。
東京都、埼玉県、山梨県の3県にまたがる雲取山は、実は東京都の最高峰だという。「都内最高峰」と聞いても、たいしたことのないように聞こえるかもしれないが、なんとその標高は2017mもある。ちなみに高尾山は599mだから比較にならない。よって登山者の遭難事故もしばしば。「都内の山」だからとナメてはいけない。
一方で、レースの「雲取」の方もステップだからと言ってナメてかかると痛い目に遭う。過去、このレースを足掛かりにクラシックを制した名馬は、グレイドショウリ、ツキフクオー、セントリック、サプライズパワー、ミスジュディ、シーチャリオットと列挙に暇がない。ここ数年はしばらく落ち着いているが、それでも2019年の優勝馬ヒカリオーソはその後にダービーを制した。ちなみに2着はミューチャリーで、3着はカジノフォンテンである。いまだメジャーな登山ルートのひとつであることに変わりはない。
雲取賞は来週木曜、天皇誕生日の大井で行われる。ぜひとも注目していただきたい。週間予報では火曜あたりに雪マークもあったが、どうやら降られずに済みそうだ。登山であれ競馬であれ雪はありがたくない。
***** 2023/2/15 *****
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