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2023年2月28日 (火)

カワサキから世界へ

明日行われるエンプレス杯は回を重ねて今年が69回目。1995年からJRAとの交流重賞となったが、その最初の6年間はホクトベガ、シルクフェニックス、ファストフレンドがそれぞれ連覇している。思えば、このレースの第1目の覇者ミスアサヒロからして翌年の第2回目を勝っているのだから、エンプレス杯は連覇の歴史と言えなくもない。

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写真は98年のこのレースを勝って連覇を果たしたシルクフェニックス。前年の覇者であるにも関わらず5番人気に留まったのは、前走の大敗に加え、牡馬相手の日経新春杯を勝っていたメジロランバダらが相手だったからだろうか。だが、そんな低評価をあざ笑うかのような完勝劇に、福永祐一騎手も渾身のガッツポーズを繰り出した。

福永騎手にとってエンプレス杯とシルクフェニックスには特別な思い出がある。97年に騎手デビューを果たした福永騎手にとって、シルクフェニックスとのコンビで勝ったエンプレス杯は記念すべき重賞初制覇だった。JRA重賞160勝。海外でもGⅠを5勝している福永騎手の、その重賞キャリアのスタートはここ川崎だったのである。

2001年 香港マイル エイシンプレストン
2002年 QE2世C エイシンプレストン
2003年 QE2世C エイシンプレストン
2005年 アメリカンオークス シーザリオ
2014年 ドバイDF ジャスタウェイ

川崎を起点に世界への飛躍を果たしたのは、なにも福永騎手に限らない。のちに世界の舞台で活躍することになるアグネスデジタルやユートピアも、自身初の重賞勝利はこの川崎だった。先日のサウジダービーで日本馬最先着の3着に健闘したデルマソトガケも、全日本2歳優駿で初重賞制覇を果たしたばかり。次走のドバイ・UAEダービーでの巻き返しはじゅうぶんあり得る。川崎から世界への道はいまも存在感を失っていない。

「福永騎手」と書けるのは今日まで。それに気付いてハッとした。明日からは「福永先生」と呼ばなければならない。その違和感に慣れるのにどれほど時間が必要だろうか。あのエンプレス杯から四半世紀。そのキャリアを海外で終えることになったのは、どこか必然だったような気がしてならないのである。

 

 

***** 2023/2/28 *****

 

 

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2023年2月27日 (月)

ぼっかけて明石

過日、姫路競馬場に向かう道中の明石駅で途中下車してみた。

目当ては明石焼きでなければ、明石城址や子午線でもない。それは「ぼっかけ」。以前「阪神競馬場でぼっかけカレーを食べた」という話を書いたが、できることならぼっかけうどんが食べたかった。でも阪神競馬場にはそれを出している店が無い。大阪市内でも「ぼっかけうどん」というメニューを稀に見かけるが、それは茹でたうどんの上から濃い味のつけツユをかけた代物であることがほとんど。讃岐で言う「ぶっかけ」である。「ぼっかけ」とは「ぶっかけ」の「ぶ」が「ぼ」に訛った呼び名であるので、ぶっかけうどんでも間違いではないのだろうが、私が食べたいと願う一杯はそれではない。

ぼっかけとは牛スジとこんにゃくを甘辛く炊いたものの俗称。そのルーツは神戸市長田区にあるらしい。彼の地のお母さん方の間で「安くて、美味しくて、一度作っておけばいつでも食べられる」と広まった。いわば長田版おふくろの味。お好み焼きや焼きそばの具として地元では長く愛されているそうだ。そしてうどんのトッピングにも使われている。

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JR明石駅を降りて、隣接する山陽明石駅の改札口の近く、ちょっと分かりにくい立地に「山陽そば」の暖簾を見つけた。食券の販売機には「ぼっかけうどん」の文字がある。立ち食いのカウンター越しに食券を渡すと「ぼっかけいっちょう!」という声が狭い店内に響く。一人のおばちゃんが茹で麺をサッと湯がいて丼に投入すると、もう一人のおばちゃんがぼっかけをとネギを手早く載せてダシをかけた。このあたりのコンビネーションは見ていて楽しい。

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うどんは茹で麺だから想像通りの味。ただこちらの店はダシが美味い。駅の立ち食いでこのレベルを出すとは恐れ入った。淡い色合いの優しいダシには、旨味たっぷりのぼっかけから良い感じに脂が染み出している。これは飲まずにはいられない。一杯目なので控えようと思っていたのだが、結局全部飲み干してしまった。

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海に向かって5分ほど歩くと二軒目の暖簾が海風になびいている。その名も「ぼっかけ家」。焼肉屋さんも兼ねているこちらの店では、ぼっかけの材料に国産和牛を使っているそうだ。その一杯は先ほどの店よりぼっかけもネギもたっぷり入っている。

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先ほどの店に比べると麺はがっしり強靭で、それに合わせるダシは麺の強さに負けぬよう醤油が効いた濃い目の味わい。そこにお好みでショウガとニンニクを入れるのがこの店の流儀らしい。大量のぼっかけもしっかりした味付けで炊かれており、ご飯のおかずとしても申し分なさそう。―――てなわけで、ご飯に載せて食べることもお店はオススメしている。まあ、これが旨くないわけがない。

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明石駅に戻って今度は駅の反対側で暖簾を掲げる屋さんを覗いてみる。こちらの「スタミナうどん」というメニューが、ぼっかけうどんであるという情報を聞いてやってきた。ところが、うどんの上に載っているのが、ぼっかけというよりはただの牛スジのように見えたのでパスすることに。私が食べたいのはぼっかけうどんであって、牛スジうどんではない。

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代わりに「ぼっかけ家」の近くの肉屋さんで売られていた総菜の「ぼっかけ」を買って帰ることに。これで200円。肉屋のおばちゃんは「うち自慢の味付け」と言ってた。これを「どん兵衛」の上に載せれば、「ぼっかけどん兵衛」の出来上がり。

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これは久々のヒットだった。関西エリアで販売されている「どん兵衛」はもともと美味いのだが、そこにはぼっかけを受け入れる懐の深さもあったと再認識。ぼっかけの甘味が染み出たダシの美味さはカップ麺としてほかに類を見ない。おばちゃんが味付けを自慢したくなるのも分かる気がした。

 

 

***** 2023/2/27 *****

 

 

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2023年2月26日 (日)

マラソン界の新星

朝から大阪中心部では大阪マラソンが行われた。新型コロナの影響で一般ランナーの参加は3年ぶり。しかもパリ五輪を目指して服部勇馬や川内優輝といったメジャー選手が参加する。たまたま我が家の前の通りがコースになっているのだが、きっと沿道は応援の人垣で埋め尽くされるに違いない。外出は控えた方が良いだろうか。

―――と身構えながら朝メシに出たのだが、沿道で選手の到着を待つ人は数えるほど。観客より警備・ボランティアの人数が圧倒的に多いという異様な雰囲気の中を、先頭集団が風のように駆け抜けていった。

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最近ではマラソン大会にもグレード制が導入されているらしい。今日の大阪マラソンは「G1」。来週は東京マラソン、再来週は名古屋ウイメンズマラソンと「G1レース」が続く。ネットで調べてみると、名の知れた大会はすべて「G1」に格付けされているから、最高峰という位置付けではないようだ。今後は「G1」を上回る「GS」という格付けも検討されているらしい。

競馬はGⅠレースの谷間だが「マラソン」は行われている。阪神9レースの松籟Sは3勝クラスの芝3000m戦。条件戦とはいえ昨年の同レース2着馬に加え万葉S好走馬も加わり興味深い一戦となった。

勝ったゼーゲンは前走の尼崎Sで8着に敗れている。どうしてもスタートが遅く、2400mのペースでも最後方に置かれてしまうのが難だったが、初めての3000mで追走が楽になったのか、今回は2週目の3コーナーで6番手の好位置をキープ。直線で大外から豪快に伸びて、ゴール前できっちり前を捉えた。このような長距離の条件戦がなければゼーゲンはずっと追走に苦労していたに違いない。8歳馬とはいえ、これがキャリア18戦目。競馬のマラソン界に遅れて輝き始めた新星になる可能性は秘めている。

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一時期は絶滅の危機に瀕した長距離戦だが、最近は増加に転じている。2019年1月の万葉Sの9頭立てを最後に、30戦連続して一桁頭数も記録されてない。先週のダイヤモンドSも、先月の万葉Sもフルゲート16頭。以前のようにレース成立を心配することもなくなった。

昨夜サウジアラビアで行われた国際競走・レッドシーターフHを制したシルヴァーソニックも一昨年の松籟Sで長距離への扉を開いた一頭だ。2200~2400mで結果が出ずに悩んでいたとき、この年から3200mに距離が延長された松籟Sを試しに使ってみたら3着と結果が出た。長距離のペースがこの馬のペースに合ったのだろう。もとよりオルフェーヴルの産駒なのだから、距離に不安はない。

オルフェーヴル産駒はダイヤモンドSでもワンツーフィニッシュを決めたばかり。なかでも2戦連続レコード勝ちのミクソロジーは正真正銘の新星だ。ゼーゲンもそこに加わりたい。大阪マラソンではマラソン初挑戦の西山和弥が2時間6分46秒の好タイムで6位に入った。初マラソンにおける日本記録も更新してみせたのだから、こちらも衆目一致の「新星」であろう。人も馬もマラソン界に新星が続々出現する。群雄割拠の時代は面白い。

 

 

***** 2023/2/26 *****

 

 

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2023年2月25日 (土)

傍らに潜む幸運

枠連の話を続ける。

普段は単複か馬連ばかりを買うので、それ以外の賭式を楽しむことはほとんどない。だが、キャリアがキャリアなので初心に戻ろうとして敢えて枠連を買うこともあるし、馬より枠を重視する場合も枠連を買ったりする。

「枠を重視」というのは、例えばこういうことだ。冬の小倉は開催が進むにつれて内ラチ沿いの痛みが激しくなる。雨や雪が降ればなおさら。それで目を瞑って外枠の組み合わせだけを買う。ポイントは枠順の影響を受けやすい芝1200mであることと、なにより枠連であること。外「枠」を狙うのだから、買うのも枠連でなければおかしい。

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5~8枠のBOXとゾロ目。それを百円ずつ買うとちょうど千円で済む。これが馬連だと10頭BOXの4500円にもなりかねない。そうなると買い目を減らしたくなるから、つい成績欄を見てしまう。「なんだ前走しんがり負けじゃん。こんなの来るワケないよなぁ」などと予想行為を始めたらもうおしまい。それならきちんと馬を見て買え!ってコトになる。

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ともあれ「外枠、外枠!」と念じながらレースを観る。帽子の色を追いかけていればいいから楽と言えば楽。しかもこれが案外当たる。小倉の馬場が荒れだした2月11日から今日までの5日間、小倉の芝1200mは計13鞍行われた。購入額1万3000円に対して、払戻金額はなんと2万2950円。回収率176%は悪くない。北九州短距離Sが6-6のゾロ目決着で、5250円の高配当だったことが大きかった。

ちなみに、この北九州短距離Sの馬連⑪-⑫の配当は5110円。同じ組み合わせの枠連より140円ほど安いが、ゾロ目決着ではよくあることだ。ただ昨年12月17日の阪神11RタンザナイトSは、馬連⑤-⑥が40980円だったのに対し、枠連3-3が30570円に留まった。同じ組み合わせなのに1万円以上も安い。幸い私は買っていなかったが、もし枠連3-3を持っていたら配当を聞いて悶絶死したのではあるまいか。万馬券を当てながら悔しくて死んだとなれば、歴史に名を遺したに違いない。

こういうハプニングは枠連につきもの。これが枠連の奥深さを倍化させている。

典型的な例は大本命馬がスタート直前に発走除外になるケースであろう。2014年の浦和・桜花賞は大本命のノットオーソリティが発送直前で競走除外になるというハプニング。レースは騒然とする中で行われ、5番人気シャークファングが勝った。2着は2番人気のブルーセレブが追い込んで馬連は1400円。だがしかし、枠連は4320円もついたのである。

馬連売り上げの大半はノットオーソリティ絡み。全額返還されたが、枠連の売上は同じ6枠にオープンベルトが同居していたから全額残る。結果的には単勝では6番人気に過ぎないオープンベルトが、枠連では圧倒的1番人気を背負って敗れた形になった。それが枠連党に福音をもたらしたのである。

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馬券の主体が枠連から馬連に移っても、代用的中の有難味も見落とせない。例えば先週日曜の東京2R。枠連は2番人気の3-4で決まってその配当は400円だったが、馬連は59500円もついた。1番人気のモーメントキャッチが敗れたものの、同枠の11番人気ダスクがハプニングを演出したのである。ハプニングが競馬と不可分ならば、馬連を買う場合でも理屈抜きで代用品に2割程度の保険をかけるのもひとつの方法に違いない。自分が狙った馬のすぐそばに幸運が潜んでいることは少なくないのだから。

 

 

***** 2023/2/25 *****

 

 

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2023年2月24日 (金)

枠色を楽しもう

先週土曜の東京競馬場でこんなモノを食べてみた。

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その名も「枠色小籠包」。富士ビュースタンドの「台湾食堂八福」というお店で購入できる。中は枠色に見立てた8色の小籠包がズラリ。それぞれ味も違うというから面白い。4枠青帽「クラムシーフード」なんてとても食べ物とは思えぬ強烈な色をしているが、実際に食べてみた娘の感想は「悪くない」だった。意外にも2枠黒帽のコクノハニービーフがもっともオーソドックスな小籠包の味らしい。ただ、私は6枠緑帽のカオルジェノベーゼが気に入った。ジェノベーゼパスタの味そのものなのだが、それが小籠包に絶妙にマッチする。見た目はスライムそのものなんですけどね。こういうのは食べてみないと分からない。

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最近はすっかりマイナーな存在になった枠連だが、競馬初心者が買いやすい馬券として今も独特の存在感を漂わせている。レース観戦において初心者が真っ先に戸惑うのが、自分の買った馬を見失ってしまうこと。勝負服で判断ができるようになるまでは時間がかかるだろうし、密集した馬群の中で、ゼッケン番号を視認するのは実況アナウンサーでも難しい。

だから枠連。自分が買った馬は騎手の帽子の色で判別がつくから、レースが追いやすい。しかも、代用的中というオマケも期待できる。

「枠番」というシステムのない欧米では、勝負服と同じように馬主に帽子の色を決める権利がある。我が国でも、かつては枠とは無関係に馬主独自の色を用いていた。

帽色が採用されたのは、戦後の4枠制から5枠制を経て6枠制に移行した1957年のこと。この時の色は、1枠から白、赤、青、緑、黄、水だった。配色の根拠となったのは、「一白・二黒・三碧・四緑・五黄・六白・七赤・八白・九紫」の「九星」とされる。さらに1963年の8枠制移行に伴い、7枠の茶、8枠の黒が追加されたが、「茶色は見にくい」という大井のファンの声がきっかけとなり、色相学の専門家などの意見を基に現行の配色に落ち着いたという。オレンジとピンクという蛍光色は確かに見やすく、結果それを中央競馬が真似る形となった。

枠色小籠包を食べた翌日は、東京競馬場「BAR2400@TOKYO」で枠色カクテルを飲んでみることに。7枠をイメージした「音速の末脚」はカシスリキュールをベースにアイスティーリキュールとオレンジジュースのカクテル。ひと口飲んで7枠橙帽で府中の2400mを駆け抜けたフサイチコンコルドを思い出した―――というのは嘘。でも、まあ美味しいです。色味が橙色というより茶色に近いのは、本来の枠色に寄せたわけではなくカシスと紅茶の影響であろう。

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同行の娘は8枠「九冠女王」を注文した。レモンウオッカをベースに杏仁ジュースとレモンの組み合わせ。それでこの日のフェブラリーSは8枠から買ったりせずに、しっかり「レモン」ポップの馬券を的中するのだから立派だ。私は7枠から流して撃沈。でも、もともとスピーディーキックが本命だったのだから、これはこれで仕方ない。

 

 

***** 2023/2/24 *****

 

 

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2023年2月23日 (木)

一年前の幻影

兵庫ウインターカップは姫路競馬場において休日に行われる唯一の重賞レース。そのせいか昨年は3538人の観客で大盛り上がり。一日の売得金レコードをマークした。今年も場内は大盛況。昨年よりも場内は混雑している気がする。もし4千人に届いたら入場者数もレコードだろうか。そう思って姫路の入場者数の最多記録を調べてみたら、昭和48年には2万人以上が入っていたと聞いてびっくり。この狭い敷地のどこにそれだけの人数が入ったのか。不思議でならない。

ともあれ兵庫ウインターCには昨年の1~3着馬が顔を揃えた。となればそこに人気が集中するのは仕方ない。しかも昨年の優勝馬インペリシャブルは直後に東海桜花賞を勝ち、昨年の2着馬ベストマッチョは名古屋のゴールド争覇を勝ち、昨年の3着馬サンロアノークは笠松の白銀争覇を勝っている。つまり昨年のレースはフロックではない。さらに大井所属ながらフジノウェーブ記念ではなく敢えてここを狙って遠征してきたマックスを加えた4頭が上位人気を形成。それぞれの鞍上には赤岡修次、田中学、吉村智洋、吉原寛人と名手が揃って、ますます視線はこの4頭に集まった。

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芦毛の牝馬パールプレミアが素晴らしいスタートを決めた。そのまま先手を奪って1コーナーへ。逃げると思われたベストマッチョは3番手に控えた。サンロアノークとマックスは中団。インペリシャブルは後方で脚を溜めながら馬群は向こう正面へ向かう。

すると名手たちの手綱が一斉に動き始めた。ペースが遅いのかもしれない。しかしどの馬も反応はいまひとつのようだ。パールプレミアは相変わらず気分良く逃げている。ベストマッチョが2番手に上がるも、パールプレミアとの差は縮まらない。それを交わしてマックスが迫ってくる。そして直線。マックスがその差をジワジワと詰めるが、前半で楽をしたパールプレミアもバテることがない。結果、7番人気で紅一点のパールプレミアがまんまと逃げ切った。

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思えばこの馬も3歳時に名古屋に遠征して若草賞を勝った重賞ウイナー。その後7連勝も記録している。ただ、地元の重賞では4戦して⑥着、⑥着、②着、⑤着だった。人気の盲点になったのは、そこに「壁」を感じたファンが多かったということか。実績馬に名手が跨った割には……の感もあるが、そういう時こそ人気薄の逃げ馬に注意しなければならない。昨年の幻影がその注意から皆の視線を奪っていた。

6~10歳馬が人気を集める中、パールプレミアは出走メンバー中もっとも若い5歳馬。今をときめく新子調教師の管理馬から、また一頭スター候補生が誕生した。ここを勝てば胸を張って黒船賞に向かうこともできるが、寮馬イグナイターやバウチェイサーとの兼ね合いをどうするか。二頭出しのもう一頭、タガノプレトリアもこのメンバーで4着なら次につながる。今年も新子厩舎の所属馬からは目が離せそうもない。

 

 

***** 2023/2/23 *****

 

 

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2023年2月22日 (水)

同着の可能性

とあるスポーツ新聞の関係者が嘆いていた。JRAからレース結果のデータを受け取って記事に変換するコンピューターシステムを昨年刷新したのだが、それが「重賞での2着同着」に対応できていなかったらしい。昨年のエリザベス女王杯でそれが明らかになった。慌てて手作業で対応して事なきを得たが、意外なことに「1着同着」には対応できていたという。

プロが使うシステムでそんなアホなことが?と耳を疑ったが、システムを作った担当者は2着以下で同着が起きるという考えそのものがなかったそうだ。ならば3頭による1着同着には対応できるのか。念のために聞いてみたら「そんなこと起きるわけがない」と言ってのけたという。そんな話を聞くとそういう事態が起きることを期待してしまうのが人間の性(さが)である。

3頭による同着は、最近では2012年10月20日の室町Sの3着争いで記録されている。ファリダット、タンジブルアセット、ワールドワイドの3頭が3着を分け合った。地方競馬に目をやれば大井、笠松、川崎、高崎で3頭による1着同着が記録されている。同着は時と場所、そして頭数を選ばない。

中でも1986年8月の川崎10R新涼特別のゴール前の争いは熾烈を極めた。このレースは、

テスコカチドキ(佐々木竹見)
アーノルドフジ(桑島孝春)
トランスワンスター(中地健夫)

の3頭が1着同着となったのだが、驚くべきは猛然と追い込んで4着となった石崎隆之騎乗のガーデスイチフジの着差はなんと「ハナ」。あわや4頭の同着という歴史的大記録の誕生まで、あとほんのわずかだった。

我が国では4頭による1着同着の記録はない。それを知っていた私は一昨日の大井9R梅見月特別で手に汗を握った。直線で内から鋭く伸びて先頭に立ったインザライフ目掛けて馬場の真ん中をカワイイが迫ってくる。そこへシトラスダルとサイキョウノオンナが猛然と追い込んで、4頭がまったく並んでゴールした。スロー映像でも見た目には分からない。「ぜんぶ同着じゃないか?」と誰かが叫んだ。たまたま訪れた大井で世紀の出来事を目撃してしまったのかもしれない―――。そう思うと背中を冷たいものが走ったのである。

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しかし、結果は2頭による2着同着のみ。それ以外は「ハナ」と判定された。とはいえ「ハナ中のハナ」だったらしい。うーむ、残念。せめて3頭による同着をナマで見てみたかった。

英国では4頭による1着同着が二度も記録されている。さすが本場は歴史が深い。単勝馬券は4通りが的中。もし3連単があれば24通りが的中することになる。JRAのシステムはそういうケースまで対応しているのだろうか? 仮にJRAが対応していたとしても、それを伝えるメディア側のシステムは対応できていない。まあ、4頭が1着同着ならそれ自体がビッグニュースだから、記事を作るのも手作業であろう。

今週末の阪急杯では2007年にプリサイスマシーンとエイシンドーバーが同着で優勝を分け合った。同着と逃げ馬は忘れた頃にやってくる。競馬である以上、その可能性を排除することはできない。

 

 

***** 2023/2/22 *****

 

 

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2023年2月21日 (火)

盃と杯

明日は大井で金盃が行われる。

1956年創設とその歴史は古い。距離2600mは国内における最長距離のダート重賞としても知られる。ロッキータイガー、カウンテスアップ、ダイコウガルダン、コンサートボーイ、インテリパワー、ボンネビルレコードと、南関東を代表するダートの猛者たちがその名を刻んできた。

一方JRAには「金杯」がある。現在は「中山金杯」と「京都金杯」にその名を変えたが、1995年まではどちらも「金杯」だった。創設は中山が1952年で京都は1963年だからやはり古い。いずれにせよ正月の名物レースとしてすっかり定着している。

どちらも同じ「金のさかずき」を争う一戦。海外なら「ゴールドカップ」である。なのになぜ大井は「盃」でJRAは「杯」と異なる文字を使うのか。それが昔から不思議でならなかった。そして今も謎のままである。

金盃だけではない。羽田盃、黒潮盃、東京盃、京浜盃、TCK女王盃という具合に大井は「盃」を使うことを徹底している。南関東では京成盃グランドマイラーズや日本テレビ盃の船橋が「盃」派である一方、エンプレス杯の川崎と、さきたま杯、テレ玉杯オーバルスプリントの浦和が「杯」派というあたりは興味深い。むろんJRAでは「盃」の字は使われていない。

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そもそも「盃」と「杯」の字は何が違うのか?

どちらも読みは「さかずき」で同じ。「盃」は「杯」の俗字(異体字)という説が有力。ちなみに「盃」は常用漢字ではない。

どちらも同じ意味を持つ文字ではあるが、一般的に「盃」は酒の器に使われ、「杯」は1杯、2杯と量を数える場合のほか競技会や大会の賞典として使われることが多いようだ。梅田の人気立ち飲み店「金盃」の店名が「金杯」ではないのはそういう事情によるのであろう。逆にレース名としては「杯」を使うのが自然の流れのように思えるが、「盃」もけっして間違ってはいないということになる。このあたりに大井の矜持を感じなくもない。

とはいえ大昔はJRAも「盃」の字を使っていた。中央競馬当時のことだから「使っていた」と言い切るのは間違いかもしれないが、変えたということはやはり何らかの判断が働いたということになる。それが何かは分からない。謎だ。

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写真はコンサートボーイが勝った1996年の金盃。1995年の南関東クラシック戦線で「3強」と呼ばれたヒカリルーファス、ジョージタイセイ、コンサートボーイの3頭が古馬になって初めて顔を揃えた。羽田盃ではヒカリルーファスに、そして東京ダービーでもジョージタイセイに、いずれもわずかに及ばず2着と敗れたコンサートボーイだったが、この日はそんな勝負弱さは影を潜めて羽田盃馬ヒカリルーファスを半馬身抑えて完勝。ついに雪辱を果たしたのである。

 

 

***** 2023/2/21 *****

 

 

 

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2023年2月20日 (月)

3年ぶりの大井で

大井競馬場にやって来るのはいつ以来だろうか?

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撮影データを調べてみた。最後に来たのはサウンドトゥルーが連覇を果たした2020年の金盃だから、丸3年ぶりということになる。厳密に言えば2020年2月5日。まだ世がコロナ禍に見舞われる前だった。入場制限もマスクもない。コロナよりも羽田空港への新たな着陸ルートの試験飛行が始まったばかりで、巨大な飛行機が頭上を通るたびにカメラマン同士ワーワー盛り上がっていた記憶がある。わずか3年前のことなのに、世界はすっかり変わってしまった。

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久しぶりの大井は、そんな思いをより鮮明にさせてくれる。入場門の消毒と検温はJRAと同じ。とはいえ初めての身にはやはり慣れない。東門を入ってすぐ左のトイレがとてつもなく新しくなっていた。パドック手前に馬主会のビルが建っている。パドックに立つと以前と比べて自分の視線がやたらと低い。パドックが高くなったのではなく、客が立つ位置が掘り下げられたようだ。Lウイングに入って2階に上がると「松屋」が無い。「KFC」もない。代わりに「うまたせドーナツ」なるものを売っている。

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私が大井で撮っていたときの食事は、ほぼ「松屋」か「KFC」の2択だった。他のカメラマンもだいたい同じだったように思う。みなさん食事はどうしているのだろう? ちょっと心配になる。

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スタンドから馬場を見ると、ウイナーズサークルが広くなっていた。広いのは良いが、そのぶんファンの居場所が削られたのだと思うとちょっと戸惑う。ウイナーズサークルと賞典台とを結ぶ花道も短くなっていた。これでは大レースの時にカメラマンが入りきらない。ただ、それはコロナ禍前の私が知る大井競馬場の話。最近はカメラマンが減っているのかもしれない。

レースを観るが、知らぬ勝負服ばかりが活躍している。真島大輔がいない。左海誠二がいない。早田功駿もいない。御神本訓史もいないが、彼の場合は昨日の代休かもしれない。そんな中、メインレースを的場文男騎手が勝った。これで通算7398勝。帝王が健在なことに安堵する。こればかりは大井の点景として変っていない。

折も折、南関東は現状の格付けルールを改正すると発表した。これまでの格付け制度は獲得賞金が基準となっていたが、大井、川崎、船橋、浦和の4場で番組賞金が異なるため、分かりにくいという声があったのも事実。今後はレースの格ごとに統一したポイントが付与されて、それに基づいた格付け設定が行われるという。ただ、賞金積算方式に馴染んだ身としては、ポイント方式に馴染むにも時間がかかりそうだ。いまや「三年一昔」と言われる時代。次に大井に来るときはまた戸惑うことになるのだろうか。

 

 

***** 2023/2/20 *****

 

 

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2023年2月19日 (日)

府中で大井の競演を

2月にしては暖かく穏やかな陽気に恵まれた東京競馬場には、4万人を超えるお客さんが入った。フェブラリーステークスとしては、コロナ禍前とさほど変わらない。競馬場にあの熱狂と歓声が帰ってきた。むろん国内最終騎乗の福永祐一騎手目当てのお客さんも相当数いるはずだ。

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福永騎手については後日書く。今日はあくまでフェブラリーS。1番人気の外国産馬レモンポップが好位から抜け出し、根岸Sに続く連勝でビッグタイトルを手にした。200mの距離延長も、中2週のキツいローテも、テン乗りもまったく関係ない。余裕たっぷりに馬群から抜け出すと、瞬く間に後続を突き放してみせた。

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私が気にしていたのはテン乗り、つまり戸崎圭太騎手からの乗り替わりである。この馬は戸崎騎手からの手綱で(7,1,0,0)。なのに今回戸崎騎手はドライスタウトの先約があった。こちらも有力候補だから仕方ない。それで坂井瑠星騎手に白羽の矢が立った。

戸崎騎手はフェブラリーSを勝ったことがない。内田博幸騎手も、岩田康誠騎手も、安藤勝己元騎手も勝っているのに、である。やはり地方競馬出身の騎手としてはダートのビックタイトルを獲っておいてほしい。そんな私のささやかな願いは、ちょっとした成り行きの都合で今年も成就しなかった。

ただ、坂井瑠星騎手のお父さんは大井で騎手として活躍した坂井英光調教師だから、まあ私としても悪い気はしていない。しかもテン乗りながら完璧な騎乗だった。きっと坂井英光調教師も喜んだことだろう。

結果、戸崎騎手のドライスタウトは4着だった。これは仕方ない。内田博幸騎手のアドマイヤルプスが5着に食い込んでいる。14番人気を考えれば大健闘であろう。6着は御神本訓史騎手のスピーディーキック。スムースなら掲示板はあったかもしれないが、スムースにいかないのが競馬だ。思ったより人気になってしまい、マークが厳しくなったのが仇となった感は否めない。 

戸崎、内田、御神本。歴代大井リーディングジョッキーの名が4〜6着に並んだ。これが1〜3着なら壮挙だが、これはこれでじゅうぶん価値のある結果であるように思える。なにせ外国人ジョッキーのワンツーが当たり前の昨今である。地方騎手による上位争いなど奇跡であろう。来年のフェブラリーSでは3人による表彰台独占を夢見よう。

 

 

***** 2023/2/19 *****

 

 

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2023年2月18日 (土)

長距離のレコード

今日の東京メインはダイヤモンドS。4連勝で初重賞制覇を果たしたのは2番人気のミクソロジー。その勝ち時計3分29秒1は、2009年の同レースでモンテクリスエスがマークした時計をコンマ3秒更新するコースレコードだった。

Diamonds

3400mは特殊な距離なので比較の尺度が難しいが、2周目の4コーナーを回って脱落する馬が多くなった終盤3000m通過が3分4秒8。コースは異なるとはいえ、ほぼ菊花賞の勝ち時計に相当する。さらに特筆すべきはハロンラップ。スタート直後の1ハロンは別として、2ハロン目からはハロン13秒台のラップが一度も出現していない。ずっと息の入れにくい11〜12秒台で展開していた。

長距離戦では一般に走破時計が強調されることはない。だが、実は長距離戦こそ能力のバロメーターは時計に現れるとされる。しょせんハンデGⅢと侮ってはいけない。今日の一戦は長距離としてはハイレベルだった可能性を秘めている。

ダイヤモンドSを明け4歳馬が勝つことは珍しくないが、ハンデ戦ゆえに斤量面で恩恵を受けることがほとんど。トップハンデの4歳馬が勝った例となると、1995年のエアダブリンまで遡らなくてはならない。この時もレコード勝ちだった。2戦連続でのレコード勝ちだったという点では、今日のミクソロジーと似ている。

ただし、エアダブリンがダイヤモンドSで課されたハンデは59キロ。トップハンデとはいえ56キロのミクソロジーと比べるのは失礼かもしれない。それでも、強いと言われる4歳世代から、また一頭個性的な重賞ウイナーが誕生したことは事実。アスクビクターモアやタイトルホルダーとの対戦が楽しみだ。

 

 

***** 2023/2/18 *****

 

 

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2023年2月17日 (金)

たまには蕎麦も

神保町の『満留賀静邨』は蕎麦の美味さもさることながら、蕎麦屋ならではのアテが豊富。東京に帰るたびについ立ち寄ってしまう。うどんばかり食べているようで、実は夜になると蕎麦っ喰いに変貌していたりする。

Seison

蕎麦というのはワインなどと同じく薀蓄の温床なので、あまりうかつなことは書きたくない。とはいえ蕎麦屋のアテについてならば神経質になることもなかろう。今宵は「立派な鯵が入った」ということで、そのまま塩焼きにしてもらった。これをつついてさえいれば、しばらくアテに困ることはない。

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最近では「蕎麦屋で一杯」というのが大人の飲み方という具合にもてはやされて、夜の蕎麦屋が存外混んでて驚かされたりする。ただ見ていると、席に着くなり出汁巻を注文する率が多くないか。むろんそれも悪くはないのだが、まずは焼き味噌や叩き海苔といった軽めのアテでお酒を一本飲んでみてはいかがだろう。しかるのちに出汁巻や鴨焼き、あるいは天ヌキでもう一本を飲む。そして最後に蕎麦を手繰りながらもう一本。それでシメる。

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焼き味噌を最初にアテるのは、それ自体が酒を恋しくする味わいだからだ。大阪でも屈指の酒場・新梅田食道街の名店「金盃」のアテと言えばこの焼き味噌。こんがり焼かれた味噌は、その味の濃密さと香ばしさが素晴らしい。盃の合いの手程度にちょいと舐めれば、その後の酒の進み方が断然違ってくる。そういや来週の大井のメインは金盃。真島大輔騎手がスーパーパワーで勝ってから12年になりますな。

Majima

話を蕎麦に戻す。

若くして亡くなられた江戸風俗研究家の杉浦日向子さんも、大の蕎麦好きだった。「東京のソバ屋のいいところは、昼さがり、女ひとりふらりと入って、席に着くや開口一番、『お酒冷やで一本』といっても、『ハーイ』と、しごく当たり前に、つきだしと徳利が気持ち良く目前にあらわれること」と著書に残されている。さらには「究極の酒のアテは蕎麦湯である」とも。

スーパーパワーが活躍していた頃は、そんな杉浦さんの言葉を思い出しながら昼下がりに築地の蕎麦屋さんの暖簾をくぐったりもしていた。すると店内には女性の一人客。ちょうど徳利を片付けて、ざるで締めているところである。既に仕事終わりということは、市場で働いている方だったのかもしれない。その格好良さにほれぼれした覚えがある。築地にも久しく行ってないなぁ。

 

 

***** 2023/2/17 *****

 

 

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2023年2月16日 (木)

実は大事なこぶし賞

先週日曜の阪神では3歳1勝クラスによる「こぶし賞」が行われた。芝のマイルに7頭。少頭数ということで、レース番号が繰り上がって8レースだったが、こぶし賞は少頭数が珍しくない。4年前から順に8頭、7頭、9頭、そして昨年は6頭。今年を含めた5年間の平均が7.4頭である。それでも稀にここからGⅠを獲るような名馬が誕生するものだから、少頭数の1勝クラスとはいえ目が離せない。

2022

こぶし賞からは、ミヤマポピー、ノーリーズン、ウインクリューガー、カレンブラックヒル、メイショウマンボ、ディアドラ、ケイアイノーテック、そして昨年のスタニングローズとたくさんのGⅠ馬が出ている。そのいずれもが3歳時のGⅠを勝っているのは偶然だろうか。ほかにもナルシスノワール、エイシンテネシー、マイシンザン、ケイウーマン、エイシンワシントン、オースミタイクーン、メルシーステージ、シェイクハンド、オースミジェット、スエヒロコマンダー、マルカキャンディ、フサイチゼノン、トーセンキャプテン、オウケンサクラ、マイスタイル、サトノインプレッサ、ギルデッドミラー……等々。重賞勝ち馬を挙げればきりがない。

2023

今年のこぶし賞を勝ったモズメイメイは父リアルインパクト、母の父フランケルという血統の牝馬。リアルインパクトは既にラウダシオンというGⅠ馬を送り出し、母の父としてのフランケルもルージュエヴァイユという活躍馬を輩出している点は心強い。「軽い走りをするし、きれいな馬場は良かった」とは手綱を取った武豊騎手のコメント。すんなりハナを切ることができたことなど、たしかに条件が揃った感は否めない。

モズメイメイは前走の「つわぶき賞」で3着に敗れたが、このレースで2着だったダルエスサラームはその後に紅梅Sを勝ち、5着ユリーシャはエルフィンSを勝って2頭とも桜花賞候補となっている。そういう意味ではつわぶき賞のレベルは高かった。だがしかし、つわぶき賞を走ったのちにGⅠタイトルを掴んだ馬というのが過去にいないのである。重賞勝ち馬にしても、エモシオン、ラントゥザフリーズ、サウンドキアラくらいしか見当たらない。粒ぞろいの今年こそはGⅠホースが誕生するかもしれないが、モズメイメイには気になるデータだ。

そういう意味では、先週のこぶし賞で出遅れながら33秒台の脚で半馬身差まで迫ったオーシャントライブも気にしておいた方が良いかもしれない。ついでに3着マイネルメモリーの堅実なレースぶりも忘れないでおこう。こぶし賞は勝ち馬だけでなくレース全体の印象を大事にしておきたい。なにせ2017年のディアドラにしても、こぶし賞では3番人気で3着に敗れていたのである。

 

 

***** 2023/2/16 *****

 

 

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2023年2月15日 (水)

頂上遥かなり

今日は浦和でユングフラウ賞が行われた。桜花賞に向けた重要ステップレース。JRAクイーンカップに挑戦したメイドイットマムの動向が気になるところではあるが、勝ったサーフズアップは桜花賞の最有力候補であろう。

このレースが近づくたび、知人から「ユングフラウって馬がいたのか?」と聞かれたエピソードを思い出す。モエレエターナルが勝った年だから、かれこれ14年も前の話だ。

Moere

「ユングフラウ」はたしかに馬の名前にありそうな響きだが、残念ながらこれはセントライトやシンザンのような名馬の名前ではない。スイスアルプスにそびえる山の名前。標高は4158mで、その名はドイツ語で「乙女」を意味する。この時季に行われる3歳牝馬限定戦の名称としては、なるほど悪くない。美しさと気高さを感じさせる。

ところで来週は大井で雲取賞が行われるが、この「雲取」も山の名前に由来する。ユングフラウ賞が牝馬クラシックのトライアルなら、雲取賞は牡馬クラシックの重要なステップ。そもそも山の名前を頂いた重賞レースは数が少ない。JRAでは富士ステークスただひとつ。南関東でもこの2鞍しかない。それが立て続けに行われるのは、3歳クラシック戦線を登山になぞらえてのことだろうか?

よもや主催者にそんな意図があるとも思えぬが、こう続くとそんな勝手な想像もしたくなる。むろん頂上は東京ダービーで異論はあるまい。その頂を遥か遠くに眺めつつ、今はこの先に待ち構える険しい山道に備えて力を蓄えているところ。むろん頂上にアタックできるのは、選ばれた一部のメンバーだけだ。

雲取山にしても、登山をする人でなければ耳にする機会は少ないかもしれない。私自身、毎年決まってこの季節の大井で行われるレースで名前を聞くことがなければ、その存在すら知ることはなかった。

東京都、埼玉県、山梨県の3県にまたがる雲取山は、実は東京都の最高峰だという。「都内最高峰」と聞いても、たいしたことのないように聞こえるかもしれないが、なんとその標高は2017mもある。ちなみに高尾山は599mだから比較にならない。よって登山者の遭難事故もしばしば。「都内の山」だからとナメてはいけない。

一方で、レースの「雲取」の方もステップだからと言ってナメてかかると痛い目に遭う。過去、このレースを足掛かりにクラシックを制した名馬は、グレイドショウリ、ツキフクオー、セントリック、サプライズパワー、ミスジュディ、シーチャリオットと列挙に暇がない。ここ数年はしばらく落ち着いているが、それでも2019年の優勝馬ヒカリオーソはその後にダービーを制した。ちなみに2着はミューチャリーで、3着はカジノフォンテンである。いまだメジャーな登山ルートのひとつであることに変わりはない。

雲取賞は来週木曜、天皇誕生日の大井で行われる。ぜひとも注目していただきたい。週間予報では火曜あたりに雪マークもあったが、どうやら降られずに済みそうだ。登山であれ競馬であれ雪はありがたくない。

 

 

***** 2023/2/15 *****

 

 

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2023年2月14日 (火)

引退は突然に

エフフォーリアの電撃引退、種牡馬入りが発表された。

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おとといの京都記念に出走するも心房細動で競走中止の憂き目を見たばかり。症状が悪化したわけではないという。ただ、今後の選択肢が極めて少なくなっていたことも事実。ならば請われるうちに、そして壊れぬうちに、種牡馬にしてあげることは人間にできるベストの選択であろう。苦渋の決断だったに違いないが、関係者の判断を支持したい。

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年度代表馬の引退発表が2月に行われた例は少ないはずだ。そもそも2月は競馬界においては「人」の引退シーズンである。今年も橋田満氏、南井克巳氏、五十嵐忠雄氏、池添兼雄氏、大江原哲氏が調教師を引退。そして福永祐一騎手がそっと鞭を置く。

54歳になった私も「引き際」というものを少しは考えるようになった。ひと昔前なら定年間近。車いすテニスの国枝慎吾さんやプロ野球の名リーバー・増井浩俊投手の引退報道が気になって仕方ない。あろうことが部下も「辞める」と言い出した。自分もいずれ辞める。死ぬまで今の仕事を続けることは不可能だ。あと2~3年はやれるんじゃないかと思えた佐賀のグレイトパールさえ引退してしまった。

かつて、大半の地方競馬には定年制があったのをご存じだろうか。現役でいられるのは8歳まで。益田で13歳まで走ったウズシオタローは特例で、9歳になると定年のない中央入りするケースまであった。グレイトパールは9歳秋に九州大賞典を勝ったのだから引き際の選択としては悪くない。もったいない。そう言ってもらえるうちが華だ。

引退決断の難しさは一流馬になるほど関係者に重くのしかかる。とくにJRAで年度代表馬のタイトルを手にして、種牡馬入りを横目に見ながら現役を続ける古馬の牡馬となると悩みは切実だ。

欲を言えば、秋シーズンのGⅠを勝って、そのまま引退するのが理想であろう。勝って終わるのと、負けて終わるのとでは、印象がまるで違う。かつて8歳まで現役を続けながらGⅠ連勝で引退を飾ったカンパニーは前者の好例。逆に昨秋8歳で現役を引退したマカヒキのケースは、引き際の難しさを象徴している。

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昨今の日本では、いわゆる実力者と呼ばれる人たちが、相当の年齢までトップで頑張ってきた。それはそれでいいが晩年になると何かと揉める。政治家などはその最たる例であろう。人にせよ馬にせよ引き際の難しさに変わりはない。

 

 

***** 2023/2/14 *****

 

 

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2023年2月13日 (月)

スルーオダイナの凄さ

今週土曜に行われるダイヤモンドSのハンデが発表になった。トップハンデはアスクワイルドモア、カウディーリョ、スタッドリー、トーセンカンビーナ、ヒュミドール、ミクソロジー、レクセランスの56キロ。一方の最軽量はタイセイモナークとマリノアズラの53キロ。トップハンデとの差は3キロしかない。牝馬ながら55キロを背負うウインキートスが事実上の“トップハンデ”という扱いにはなるが、いずれにせよ斤量差が極めて小さなハンデ戦ということになる。

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ハンデ戦は、騎手の体重や鞍などを含めた負担重量を加減することで、出走各馬の能力差の均等化を図る意図で行われる。だから個々の馬が背負う斤量よりも、他馬との「差」が大きな意味を持つ。過去のダイヤモンドSが上下3キロ差で行われたことはない。今年から別定戦になったのかと心配したが、そんなこともなさそうだ。

実はダイヤモンドSはハンデ戦として象徴的なレースだ。48キロが下限の目安とされる中、1964年には異例の軽さとも言える45キロのハンデでリンドウが出走した記録がある一方で、1990年にはスルーオダイナが61キロのトップハンデを克服して優勝を果たしてもいる。61キロでの勝利はグレード制導入後の平地重賞におけるもっとも重い負担重量での優勝記録。33年経った現在もそれは破られていない。直線対決したわけではないが、リンドウとスルーオダイナの斤量差は実に16キロ。これくらいあってこそ「ハンデ戦」を名乗ることができよう。

スルーオダイナは57.5キロで制した前年に続く連覇だったのだが、当時の感覚からしても61キロは背負わせ過ぎの感があった。今なら58キロから59キロが妥当であろう。しかもスルーオダイナが凄かったのは単に酷量を克服しただけではない。他馬とのハンデ差があまりに大きかった。

61キロ スルーオダイナ
54キロ ベルクラウン、オンワードフォコン、レイクブラック
53キロ シャイニングスター、スマイルオンユー、ローランシンガー、ハッピーシャトー
52キロ ブラウンアイボリー
51キロ コンバットビック
50キロ メジロバークレイ

なんと次位ハンデとの差は7キロ。しかもそのハンデ差を抱えて3200m(当時)も走らなければならないのだから、同じトップハンデと言っても相手も背負っていたフェイムゲームやアルバートの例とは比較にならない。それでもスルーオダイナはベルクラウンの逃げを果敢に追いかけ、2番手から抜け出す際には岡部騎手が後ろを振り返るほどの余裕があった。追い込んだオンワードフォコンに2馬身差をつける完勝だから凄いのひと言に尽きる。実力差は7キロ程度では埋め切れなかったわけだ。

今年から負担重量はこれまでより概ね1キロ増で運用されている。東西の金杯でも、また日経新春杯や愛知杯でも、多くの馬が普段より背負う羽目になった。なのに今回トップハンデが56キロに据え置かれたことはどういうことか。百戦錬磨のJRAハンデキャッパーからの大事なメッセージとして読み解く必要があろう。

 

 

***** 2023/2/13 *****

 

 

 

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2023年2月12日 (日)

続・一寸先は闇か光か

好天に恵まれた阪神競馬場はGⅠ並みのお客さんで溢れている。飲食店は14時の時点で売り切れ続出。メインレース後には退場制限も行われた。

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GⅠ開催日にしか見ない光景を生み出したはのはエフフォーリアとドウデュースの2頭。競馬ファンには何を差し置いてもその目で見なければならないレースが稀にある。サイレンススズカの毎日王冠しかり。ナリタブライアンとマヤノトップガンの阪神大賞典もまたしかり。その手のレースは意外にもGⅠではないことが少なくない。今日の京都記念にそれを期待したファンが多かったということか。当たり前だがファンファーレはGⅡ・GⅢのそれである。しかしファンファーレに合わせて手拍子が沸き起こった。これも珍しい。

京都記念のレース中にはファンから大きな声が三度上がった。

最初の歓声はスタート直後。ユニコーンライオンがハナを切るのは大方の予想通りだが、エフフォーリアが仕掛けて並びかけていくではないか。それもハナを奪わんかという勢いで1コーナーに飛び込んでいく。おかげで1000mの通過は59秒5。思っていたより流れる結果となった。

これを後方で見ていたドウデュースは3コーナー手前あたりから徐々に進出。抑えきれない手応えが伝わってくる。そして直線。軽く仕掛けられたドウデュースが瞬く間に弾けるように伸びたその瞬間、二度目の歓声が上がった。

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誰もが同じタイミングで声を上げたのは、それだけドウデュースのギアが入ったことが誰の目にも明らかだったからに他ならない。頸が下がり、脚の回転が速くなった。あのイクイノックスを彷彿とさせる脚でありながら、あのイクイノックスを完封した脚でもある。ケタ違いとはこういうことを言うのであろう。レース後に「もう一度最強と言われたい」と武豊騎手は語ったらしいが、光は見えたに違いない。

激しい2着争いを見届けたあと、馬群から大きく離れて歩きながらゴールを目指す一頭に観衆が気付いた。それがエフフォーリアであることが分かるとこのレース三度目の声が上がる。歓声というよりは悲鳴に近い。ゴールまでわずか1メートルを残して横山武史騎手が下馬。もう一頭の主役は、なんとゴールを果たすことができなかった。

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脚元に問題が無かったのは何より。それでもエフフォーリアにはかける言葉は見つからない。気配も悪くなかったし、鞍上の覚悟も見て取れた。もちろん能力は証明済み。陣営もやれることは惜しみなくやっている。無事であれば、あのまま4角先頭に踊り出てドウデュースとのマッチレースを繰り広げていたかもしれない。のちに伝説と呼ばれる一戦になっていたかもしれない。なのにこんな試練を与える競馬の神様は残酷だ。心房細動は誰のせいでもない。誰のせいでもないのだけれど、もはや関西への遠征は決断しにくかろう。じっくり立て直して秋を目指すが良いのか。長い長いトンネルの先に光はまだ見えてこない。

 

 

***** 2023/2/12 *****

 

 

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2023年2月11日 (土)

一寸先は闇か光か

中京開催が終了し、西日本の主場は阪神に移る。中京は芝の状態が目まぐるしく変わって馬よりも馬場に振り回された感があったが、阪神の馬場は絶好。桜花賞までこの状態を保ってほしい。

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開催初日の特別3鞍はすべて芝で行われた。9レース須磨特別は2勝クラスの芝1800m戦。一昨年はロータスランドが勝ったレースだが、今年も好メンバーが揃っている。中でも注目はロン。新馬、野路菊Sを連勝してクラシック最有力候補と騒がれた素質馬は、屈腱炎による一年余りの休養から復帰してから自己条件を2着、3着とまだかつての輝きは取り戻せていない。逃げるにはもってこいの1枠1番を引いた今回3度目の正直は為るだろうか。

しかしロンは逃げなかった。発馬は悪くない。行こうと思えば行けたはずだが、デビットバローズを先に行かせて3番手に控えた。逃げて直線甘くなった前走を踏まえたか。しかし直線に向いてもデビットバローズとの差は詰まらない。それどころか外から次々と交わされて5着。5戦目にして初めて馬券圏内を外してしまった。復帰してからはどうも色んなことが上手く噛み合わない。一方、勝ったデビットバローズは、馬体の成長に加え蹄の不安も解消。さらに逃げのスタイルを確立させたことがうまく噛み合っての3連勝であろう。明け4歳。まだまだ強くなる。

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続く但馬Sも上りの速い競馬。33秒フラットで追い込んだゼッフィーロの追い込みを凌いだリューベックの上りは33秒2。母ライツェントだから先週のきさらぎ賞を勝ったフリームファクシの半兄ということになり、父ハービンジャーだからディアドラ姉さんの全弟ということになるから、こちらもまだ4歳。膝の骨折で3歳時の大半を棒に振ったが、色んなことが噛み合い始めたのかもしれない。

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メインの洛陽Sを勝ったのも勢いに乗る明け4歳馬。中団を追走した1番人気ジャスティンスカイが先行集団を見ながら直線に向くと、馬群がバラけるのを待って一気に抜け出した。こちらは距離をマイルに変えてから3連勝。ちょっとしたことが変って色々なことが噛み合うこともあり、噛み合わないこともある。思えば一昨年8月の函館新馬戦、2着に敗れたジャスティンスカイを3馬身半もちぎり捨てて勝ったのがロンだった。一寸先は闇か光か。ジャスティンスカイには安田記念へと続く一筋の光が見えたに違いない。

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***** 2023/2/11 *****

 

 

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2023年2月10日 (金)

帝王の血

先週日曜の中京8レースは古馬1勝クラスによる芝2000m戦。2番人気のオオキニが早めに先頭に立つと、1番人気セルケトの猛追をハナ差凌いで2勝目を挙げた。

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父アドマイヤムーンは珍しくない。注目は母のポポチャンの父がトウカイテイオーであること。これがBMSとしてのトウカイテイオーの今年のJRA初勝利である。

トウカイテイオーが亡くなって10年。すでに父系ラインは途絶えたも同然で、母の父としてもその名を見る機会はめっきり減った。JRAでトウカイテイオーをBMSに持つ現役馬はオオキニなど11頭。その母は8頭に集約される。

1995年から種牡馬となったトウカイテイオーは、初年度産駒からマイルCS優勝馬トウカイポイントを送ると、ヤマニンシュクル(阪神JF)やストロングブラッド(かしわ記念)など芝・ダートを問わず活躍馬を送り続けたが、これと言った代表産駒に恵まれなかったのも事実。それでも2002年には158頭の高配相手を集めるなど人気を集めたのは、一時代を築いたパーソロンの父系を大事にしたいという生産現場の熱い思いがあったからに違いない。

シンボリルドルフ~トウカイテイオーのみならず、メジロアサマ~メジロティターン~メジロマックイーンのラインも既に途絶えた。国内で父系を繋げることの難しさを痛感する。3代に渡るダービー制覇が未だ達成されぬ事実はその象徴であろう。

しかし母系に入っても血は残る。オルフェーヴルやゴールドシップの母の父がメジロマックイーンであることはあまりに有名。トウカイテイオーにしても母の父として大物を残す可能性はゼロではない。

昨年暮れの中山で未勝利戦を勝ったレーベンスティールはその候補となり得る一頭。父リアルスティール、母トウカイライフ、母の父トウカイテイオーの明け3歳牡馬は持ったまま後続を3馬身半突き放した。バネの利いたその走りに、リアルスティールよりもトウカイテイオーの姿をダブらせた人も多かったのではないか。私はそんな一人。直後に社台スタリオンのスタッフからも同じ声が届いた。そう思えたのは舞台が中山だったせいもある。

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父リアルスティールは中山では4戦して未勝利だったのに対し、母の父トウカイテイオーは皐月賞、有馬記念など中山で4戦3勝。さらにその父シンボリルドルフは1984年の弥生賞を手始めに1985年有馬記念まで中山は6戦全勝だった。中山で見せた圧倒的な強さはトウカイテイオーの血が騒いだとしか思えない。今は大事を取って休養中だが、春の中山での復帰を強く願う。

 

 

***** 2023/2/10 *****

 

 

 

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2023年2月 9日 (木)

魅惑の肉うどん

今日2月9日は年に一度の「ニク(=29)の日」。皆さん、お肉食べてますか?

きさらぎ賞の中京競馬場に向かう途中、名古屋丸の内で一軒のうどん屋に立ち寄った。

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その名も「肉うどん さんすけ」。名物は店の名を冠した「さんすけうどん」と聞いている。それを肉増しで頼んだらこんな一杯が運ばれてきた。うひゃー、なんじゃこりゃ? 肉うどんとちゃうんか?

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「肉」の正体はチャーシューであった。上に載っているのは暑さ1センチはあろうかという増し肉。それをやっけると今度は暑さ3ミリ程度のデフォルトの肉の層が姿を現す。それを片付けたところでようやく麺が姿を現した。

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麺は平打ち。最初はきしめんかと思った。なにせ名古屋である。しかしそうではない。そのモチモチした食感と強烈なコシはまさにうどん。そしてスープは魚介系のダシが効いたラーメンそのもの。しかもこれが圧倒的に旨い。平打ちの麺が絶妙にスープに絡む。聞けば店主は関東では名の知られた「ラーメン二郎」の人気店で店主を務めた経歴の持ち主だという。なるほどね。この肉感たっぷりのチャーシューは確かにアレだ。

鯵をベースにしたダシはすっきりしていながら、岐阜県産のたまり醤油が濃厚な味わいを醸し出す。これは他のうどん屋では真似できまい。唯一無二の一杯が名古屋にあった。

大阪にも見た目にインパクトのある肉うどんを出す店がある。蛍池駅を下りてすぐ。「マルヨシ製麺所」の肉釜玉が凄いことになっている。

花びらのように盛り付けられているのはローストビーフ。肉釜玉と言えば、甘辛く炊いた牛バラ肉であることが多いが、これは珍しい。とはいえ牛肉であるところに大阪のこだわりを感じる。昨日の名古屋は豚肉の波状攻撃を受けたばかりなのに、今日は大阪で牛肉の一斉砲火を浴びることに。

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ローストビーフも美味いのだが、こちらも麺そのものが相当に美味い。こちらではかけダシ用、ぶっかけ用、釜玉用という具合に麺を作り分けているとのこと。それを確認するためには少なくとも3杯食べなければならないが、今宵はローストビーフでおなか一杯になってしまった。こうなれば仁川に行くルートを変更してでも立ち寄るしかないか。今週から阪神開催。春は近い。

 

 

***** 2023/2/9 *****

 

 

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2023年2月 8日 (水)

2強の死角

今週末の京都記念に向けて、東西トレセンでエフフォーリアとドゥデュースが追い切られた。年度代表馬とダービー馬の対決となれば注目が集まるのは当然。しかし、お互い一頓挫あったあとの一戦というところが難しい。特にエフフォーリアについては、ここからレース当日までの調整パターンを変えるという。

9着に敗れた大阪杯。横山武史騎手は馬にとって初体験の関西に敗因を求めた。その気持ちは分かる。見慣れぬ光景に耳慣れぬ言葉。何を食べても薄味に感じるし、話にオチがないと叱られる。私が2年2か月前に初めて大阪に来たときに感じた関西特有の問題に、エフフォーリアも戸惑ったのではあるまいか。

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―――と思ったら実際にはそうではないらしい。横山武騎手が問題視したのは輸送。関西への輸送のせいで金曜と土曜に乗ることができなかった。しかも輸送した翌日は放牧と勘違いするのかボーっとしてしまう。結果、まったく気持ちが入らないまま日曜の競馬を迎えざるを得なかったという。

それで今回は明日木曜に栗東に移動。金曜と土曜にしっかり乗って、緊張感を持たせたままレース当日を迎えるパターンに変更するそうだ。調教師としては一種の賭けであろう。もしこれで芳しい結果が出なければ、やはり関西に馴染めないということになろう。61キロを覚悟で春の最大目標を目黒記念に切り替えるほかあるまい。

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ドゥデュースにも不安がないわけではない。なにせダービー馬による京都記念の制覇は1948年を最後に75年間も途絶えている。むろんダービー馬の出走が無かったわけではない。むしろ京都記念はダービー馬の参戦が多いGⅡだ。

【ダービー馬の京都記念着順】

 2015年 キズナ③
 2016年 ワンアンドオンリー⑥
 2017年 マカヒキ③
 2018年 レイデオロ③
 2019年 マカヒキ③
 2021年 ワグネリアン⑤
 2022年 マカヒキ⑪

過去10年間でも7頭のダービー馬が参戦して(0,0,4,3)と良いトコなし。2008年には、あのウオッカもここを始動戦に選んだが6着に終わっている。彼らの敗因は「差し届かず」がほとんど。東京2400mと阪神内回り2200mでは、やはり求められる能力が多少異なる。ドゥデュースは阪神内回りの経験はないが、中山で2戦未勝利という点が気になるところ。穴党としては2強が揃って飛ぶシーンまで考えておいた方がよさそうだ。

 

 

***** 2023/2/8 *****

 

 

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2023年2月 7日 (火)

フィリピンの競馬

全国で相次いで発生している強盗事件を巡り、フィリピンの入管施設で拘束されている4人の容疑者のうち2人が強制送還となり、日本への機内で逮捕された。残る2人も明日送還されるらしい。新聞もテレビもその報道一色だ。

高飛び先としてのフィリピンというのは、伊藤素子容疑者の当時から今も変わらぬ定番コース。我が国が犯罪人引渡し条約を結んでいる国はアメリカと韓国の2か国だけなのだから、フィリピンにこだわらず中国やタイ、インドネシアなど他にいくらでも逃亡先のチョイスはありそうなものだ。それでもフィリピンが人気を集めるのは、支援組織や現地警察の実情によるところが大きい。つまりそれだけ汚職が深刻ということ。最近では覚せい剤取締法違反容疑で逮捕状が出た小向美奈子容疑者もマニラに飛んだ。

Komu

私が子供の頃、それこそ伊藤素子容疑者のニュースを耳にしたときは「フィリピンで逃亡生活」という言葉にとても嫌なイメージを抱いたものだ。ひどく暑そうだし(多分)、食べ物はマズそうだし(偏見)、絶対変な病気にかかりそうだし(さらなる偏見)、ともかく自分ならもう少し違う国を選ぶのになぁと思った記憶がある。

ところが、長じてからフィリピンのありようを知るようになって、そのイメージは覆された。その一番の決め手となったのは2003年にオープンしたサン・ラザロ・レジャーパーク競馬場だ。

実はフィリピンでの競馬の歴史は日本よりも古い。日本のJRAに相当するマニラ・ジョッキークラブは、なんと1867年の創立である。その誇りにかけて「フィリピンの競馬を世界水準に引き上げる」ために注力しただけあって、サン・ラザロ競馬場は日本のそれに負けないだけの設備とホスピタリティを誇る素晴らしい競馬場である。ここに通うことができば、逃亡ライフもグッと豊かなものになるに違いない。

フィリピンでは競走馬の生産も行っている。

2001年10月に川崎競馬場でデビューし、南関東で3勝を挙げたリーガルウエスタンは、Heza Gone West という種牡馬を父に持つフィリピン産馬。フィリピンには30頭ほどのサラブレッド種牡馬がいるらしい。Heza Gone West はその名の通り Gone West の直子だが、アメリカ・ハリウッドパーク競馬場のGⅢジェネラスSで3着という成績が残る程度。フィリピン国内での産駒成績までは私の知識に及ばぬが、大井で活躍していたウエルカムパーティの母の父にもその名を見つけることができる。

 

 

***** 2023/2/7 *****

 

 

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2023年2月 6日 (月)

ブログの日

ここ数日、このブログへのアクセス数が一時的に激増した。何があったかは知らないが、千が万になれば何かあったと考えるのが普通であろう。しかし、大半の来訪者は読んでガッカリで終わったのではあるまいか。なにせ、持ち馬はまるで走らず、馬券もまるで当たらず、暇に任せてうどんばかり食べ歩いているヤツが、しかも匿名で書いていることである。

今日2月6日は「ブログの日」らしい。

私がブログを書くのは、世の中の人に伝えたいことがあるから―――と書けば大袈裟に過ぎる。むろん伝えたいという気持ちはゼロではないから、ブログの閲覧数が伸びるのは悪い話ではない。だが、その中身の大半は私が考えたことのメモみたいなもの。ためになるような内容ではない。メモだから書き終えた時点で私の中では済んでしまった話。もう本人は次のことを考えている。このブログはそれを踏まえてお読みいただきたい。

今なら働き過ぎについて考えている。つい先日、仕事場でそういう事案があった。「もっと残業を減らす工夫をしろ」。上司からそう言われたから考えているに過ぎない。数年前には電通の長時間労働問題が世間を騒がせた。それを受けて真っ先に電通を指名停止にしたのは、ほかならぬJRAである。おかげで私の中ではあの事案を「過重労働問題」ではなく「競馬の問題」として認知したフシがある。

JRAのみなさんの働きぶりを知らぬわけではない。みなさん朝早くから夜遅くまで懸命に働いていらっしゃる。それはひとえにファンに良い番組を提供するためであろう。そんなJRAが「働き過ぎはけしからん」と言って電通を指名中止にした。JRAにしてみれば内規に従ったまでだろうが、なんとも不思議な世の中である。

たまに「何年何月何日のブログにあんたはこう書いたじゃないか!」などという指摘を頂戴することがある。最近の記事の内容が、過去のエントリの内容と矛盾するらしい。このURLで書き始めたのが2012年のジャパンカップ。さらにその前にも7年間ほど別のURLで書いていた。それだけ長くやっていれば、そういうお叱りのひとつやふたつ致し方ない。なにぜこの2頭の子が再度GⅠで勝ち負けを演じる時代である。

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新聞なら古い記事の大半は古新聞として捨てられるが、ブログは残る。むろんエントリを削除することもできるが、それじゃあメモの役目を果たさない。それでそんなお叱りが届く。しかし、そのおかげで自分の考えが変わっていることに気付かされるのだと思えば、悪い話でもない。そりゃあ、誰しも考えが変わることだってあるでしょうよ。

具体的な例をひとつ挙げる。ひと昔前まで私は馬券を買うにあたり競馬新聞など不要だと考えていた。馬券の買い目をなぜ他人に指南してもらわにゃならんのか?

大半のレースは過去に見ているわけし、そもそもパドックで馬を見て買う馬券こそ王道だと信じていたフシがあった。私が新聞が邪魔だと考えていたのは、そんな理由からであろう。馬券の成績は褒められたものではなかったが、そのスタンスでじゅうぶん楽しめたのだから、それで問題はなかった。

だが、今はなるべく競馬新聞を買うようにしている。最近は競馬場で大きなカメラを持ち歩かないので、手持ちぶさたになったことがひとつ。廃れゆく紙媒体を応援したいという気持ちもゼロではない。若い競馬記者がどんな記事を書いているのかも気になる。午前2時の調教から、夜9時のナイター競馬まで、ぶっ通しで仕事をこなす彼らの姿を知っていれば、気にならぬはずがない。そもそも過去に見たはずのレースを忘れるようにもなった。すなわちトシを取ったのである。トシと共に変わるのは何も容姿だけではない。

こう書くと失礼かもしれないが、新聞はちょうど良い暇潰しにもなる。隅から隅まで活字を追えば、数時間などあっという間。スマホの画面でここまで執拗に文字を追うのは難しい。忙しいと言いつつ、最近では一度暇になると徹底的に暇になるようになった。これもトシを取ったせいかもしれない。実は「暇潰し」こそ、これからの日本が考えるべき大きなテーマになる。ひそかに私はそう考えてもいる。

いい大人が暇潰しに没頭する姿が白い目で見られたのは、もはや過去のこと。必死に働かなければ生きていけない―――そんな昔の話だ。今はうっかり働きすぎると周囲から袋叩きに遭う。電通問題に端を発した働き方改革が叫ばれて久しい。私だけでなくJRAや競馬記者たちも気を付けるべきであろう。時代と共に人の考えも大きく変わる。それは私ひとりに限ったことではない。

 

 

***** 2023/2/6 *****

 

 

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2023年2月 5日 (日)

開催最終日の一番時計

冬の中京ロングラン開催も最終日。と同時に3年間に及んだ京都改修に伴う中京での代替開催も今日で終えることになる。大阪からの中京通いもおそらく今日が最後であろう。今日は近鉄から名鉄へと乗り継いで4時間かけて到着。ホッとする反面、少し寂しい。

そんな中京競馬場は気温12度。風も気にならない。屋外でも日なたはコートが邪魔になる暖かさに恵まれた。一昨日は節分。昨日は立春。2月の競馬は春を探す開催でもある。ただ開催が進んだ芝は傷みが激しい。特にインコースはレースが進むにつれてボコボコ掘れていく。

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だから、きさらぎ賞で大外からオープンファイアが追い込んできた時は、これは差し切るだろうと勝手に確信した。今日はスタートもまとも。道中も、おそらく本気を出してないだけだと思うが、折り合いを欠くようなシーンもない。それで終いは必ず33秒台の脚を使う。ならば届くだろう。そう思って観ていたのだが、結局アタマ差届かなかった。

手綱を取ったムルザバエフ騎手は「すごい馬になりそう。大事にいってほしい」と絶賛だったそうだが、長い目で観るにしてもいつになるのか。能力を秘めていることは分かるが、将来のことは誰もわからない。賞金を加算してオープン入りしたのが果たして良かったのか。血統的にもキャラクター的にも追いかけたくなる一頭だが、追いかけるにはそれなりの覚悟も必要な気がする。

どれだけ凄い脚を使っても競馬では勝った馬が偉い。勝ったフリームファクシは道中かかり通しで、川田将雅騎手もずっとファイトしていたように見えたが、それでも馬場の悪いインコースで粘り、オープンファイアの猛追を凌いで勝ち切ったことは賞賛に値しよう。

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レースの上がり3ハロンでは11秒台が3回連続し、しかも残り400mから200mでは11秒1というマイル戦のようなラップを自ら刻んだところにフリームファクシの能力が凝縮されているように思えてならない。年が明けてからの中京芝2000mで2分を切ったのは、このきさらぎ賞が初めて。これまでの一番時計は1月5日にフリームファクシ自身が記録した2分0秒2だったことを思えば、オープンファイアのみならずフリームファクシの能力の高さだって疑いようがない。

勝ち馬が課題ばかりを指摘されて、2着馬が素質を評価される珍しい結末になったが、手放しで褒められるほどの完成度の高い馬がいれば苦労はない。ディープインパクトだってこの時季はまだ課題を抱えていたし、キングカメハメハは京成杯で敗れていた。アラ探しも時には必要だが、勝った馬に対しては素直に頑張りを讃えたい。さすがディアドラ姉さんの弟。クラシックが楽しみだ。

 

 

***** 2023/2/5 *****

 

 

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2023年2月 4日 (土)

見えにくい節目

前人未踏のJRA4400勝にリーチをかけていた武豊騎手が、小倉の1レースをあっさり勝ってまたもや金字塔を打ち立てた。来月には54歳を迎えるレジェンドは「史上最年少記録やね」とおどけてみせたが、その騎乗ぶりに年齢による衰えは微塵も感じられない。

しかし水を差すようで申し訳ないが、武豊個人の勝利数はすでに4700勝を超えているはずだ。実際JRAのサイトでは2月3日現在で「4584勝」と記載されている。しかもここには地方の騎手招待レースや海外の競馬場で現地の馬で挙げた勝利は含まれていない。そんな勝利があと130勝くらいあったはずだ。

シーキングザパールで勝ったモーリス・ド・ゲスト賞はカウントするけど、スキーパラダイスで勝ったムーラン・ド・ロンシャン賞はノーカウント。一般のファンには分かりにくい話であり、コアなファンには理解しがたい話であろう。こんな意味不明なことをやっているのは、世界でも日本だけではあるまいか。

主催者ごとに馬のレベルが大きく異なる地方や外国の競馬の、競走馬の勝利数記録を同じ土俵で論じることに慎重であるべきことは分かる。だが、どのようなレベルの競走であれ、勝利を目指して馬を操るという騎手の評価において、JRAと地方・海外との間にさほどの差異があるとも思えない。いやむしろ、JRAを上回るレベルの争いが展開されている競馬場もあるではないか。だからこそ、武豊騎手は鞭一本で世界中の競馬場を飛び回っているのである。

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今日の小倉の入場者数は6942人で、5831人の中京を上回った。冬の小倉としては異例であろう。4400勝目の1レース、4401勝目の3レース、そして4402勝目の7レースを目撃した人は自慢していい。リハビリ中の池添謙一騎手もわざわざ小倉に駆け付けて、「4400勝」のプラカード持ち役を買って出ていた。そこで1日3勝の固め打ちだから役者が違う。この調子なら近いうちに「5000勝」も達成するに違いない。問題はそれを祝うイベントを行うのにあたり、どの数字を採用するかだ。現時点でJRAでは4402勝、そこに地方・海外のJRA所属馬での勝利を加えると4587勝。しかし騎手・武豊としてはもっと勝っている。

ちなみに2016年10月にJRAが「4000勝達成」のセレモニーを開いたときは地方・海外でのJRA所属馬の勝ち星を加えていた。本来見えやすいものを節目とするはずなのに、その節目が見えにくい。こういうおかしな問題が沸き起こるのも、世界を股にかけて活躍する第一人者ゆえであろう。

 

 

***** 2023/2/4 *****

 

 

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2023年2月 3日 (金)

真のナポリピッツァ

今日はピッツァの話です。ピッツァなんて呼び方はガラじゃねぇだろ!と言われることは重々承知だが、このあと「ナポリピッツァ」とい言葉を使うので、冒頭から「ピッツア」で統一させていただく。

ともかく、ピッツァ(=ピザ)の話。

かつて、竣工なったばかりの東京競馬場新スタンドに初めて足を踏み入れた私がもっとも驚かされたものは、空を覆い尽くさんばかりの巨大な屋根でなければ、絢爛豪華たるエントランスでもない。それはスタンド内の飲食コーナーに『ピザーラ』が入店したことであった。驚かされたと言うよりは、カルチャーショックを覚えたと言っても過言ではない。

かつて、競馬場の食堂には横文字のメニューなど無かった。パスタやピッツァなど、その存在すら知らぬであろう客がメインであったのだからそれも当然で、彼らにしてみればパスタよりは焼きそばであり、ピッツァよりはお好み焼きだったのである。そういえば最近の東京競馬場では、お好み焼きを売っている店を見かけない。お好み焼きからピッツァへのシフトは、「競馬」というレジャーの社会的位置付けの変遷を映し出しているように思えてならない。

そんな話はさておき、寒い季節はうどんも良いが、アツアツもちもちのナポリピッツァも悪くない。ひと昔前までの日本のピッツァと言えば、薄くてカリカリのクリスピータイプが人気の主流だった。しかし最近ではもっちりとした食感が特徴の「ナポリピッツァ」に注目が集まっている。我が家の近所に店を構える「ピッツェリア イルソーレ 天サン」も、そんなナポリピッツァを提供する人気店。ともあれ今日は思う存分ピッツァを頬張ることにした。

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こちらの店では、小麦粉と酵母、塩、水だけで作った生地を手でのばし、薪を燃料にした大きな窯で直焼きする。こうした製造法などは、本場ナポリの職人たちが1984年に設立した「真のナポリピッツァ協会」の国際基準に則っている。

そんなコダワリの生地の風味を味わうためには、トッピングは最小限に留めたい。となればオーダーはシンプルなマルゲリータに限る。生地の周囲にできた”額縁”を少しちぎってその断面を見ると、大小不揃いの空洞がいくつもある。これが独特のもっちり感を引き出すらしい。

様々なトッピングの味もさることながら、ベースとなる生地本来の味も楽しむ―――。そんなスタイルは、実はうどんや蕎麦にも通ずるところがあり、すなわち日本人の好むところであろう。そう考えれば、ナポリピッツァは今後ますますメジャーな存在になるはずだ。そんなことを考えながら天神橋の夜は更けてゆくのである。

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「真のナポリピッツァ協会」が定める真のナポリピッツァの条件(要約)

条件1:生地に使用する材料は、小麦粉、水、酵母、塩の4つのみ
条件2:生地は手だけを使って延ばす
条件3:窯の床面にて直焼きする
条件4:窯の燃料は薪もしくは木くずとする
条件5:仕上がりはふっくらとして「額縁」がある
条件6:上にのせる材料にもこだわる

 

 

***** 2023/2/3 *****

 

 

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2023年2月 2日 (木)

牝馬の東京新聞杯

東京新聞杯の負担重量規定はコロコロ変わるので詳細は分からないのだが、少なくともこの10年間ほどは賞金別定だった。収得賞金が多いと負担重量が増えるので、GⅠ勝ち馬の出走や好走例は少ない。最近では2014年に12年のヴィクトリアマイルを勝っていた6歳牝馬ホエールキャプチャが勝った程度だ。

一方で牝馬の出走は確実に増えている。ヴィクトリアマイルが春シーズンの牝馬の大目標として定着したことの裏返しであろう。この10年間、牝馬は延べ20頭が出走して【4,3,1,12】。実に4割が馬券に絡んだ。ちなみに、その前の10年間では延べ11頭の出走で【0,0,0,11】に留まる。

今年の牝馬の出走は3頭のみだが、いずれも明け4歳というところが興味深い。しかも3頭とも昨年は牝馬クラシックで活躍してきた。4歳牝馬の優勝例は決して多くなくこの四半世紀でも2018年のリスグラシューただ1頭しか記録がないが、期待は深まる。

リスグラシューは桜花賞2着、オークス5着、秋華賞2着と惜敗続き。東京新聞杯はアルテミスS以来1年3か月ぶりの勝利だった。昨年2着のファインルージュも前年の桜花賞3着、オークス11着、秋華賞2着と健闘していた実績がある。今年の4歳牝馬の筆頭格ナミュールは桜花賞10着、オークス3着、秋華賞2着。1番人気に推された桜花賞は出遅れという明確な敗因があり、それでもコンマ3秒差なら負けて強しと言えるかもしれない。

懸念があるとすれば初めて背負う56キロということになろうか。賞金別定から格付別定に変更された今年は、昨年のGⅡチューリップ賞勝ちのおかげで他馬より1キロ余計に背負わされる。

ただ、冒頭に紹介した2014年のホエールキャプチャは57キロを背負っていた。牡馬に換算すれば59キロ。59キロを背負ってこの東京新聞杯を勝った例となると、1994年のセキテイリュウオーまで遡らなければならない。

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ちなみに2014年の東京新聞杯は大雪の影響で1週間以上延期されていた。開催2週目のメイン競走であるはずの東京新聞杯が行われたのは3週目のメインである共同通信杯の翌月曜日。それでも東名道も中央道も通行止めのままで、関西の有力馬たちが軒並み16~17時間の輸送を強いられていた点は忘れないでおきたい。

実際、東京新聞杯はサトノシュレンとリルダヴァルが、ひとつ前の10レースでもシャドウバンガードが出走を取り消していた。いずれも関西馬で、取消理由は揃って「輸送熱」。そんな目に見えないアシストがあったにせよ、ホエールキャプチャが57キロを克服して勝ったことは事実だ。ナミュールも今後頻繁に背負うことになるであろう56キロごときで弱音を吐いてはいられまい。

 

 

***** 2023/2/2 *****

 

 

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2023年2月 1日 (水)

憂鬱な季節

帰宅すると社台から確定申告用の書類が届いていた。栗東では、永島まなみ騎手と、今村聖奈騎手が、オンライン申告「e-Tax」のPRをしたとニュースになっている。私の持ち馬はまったく稼いでない。ここ数年原稿料収入もゼロである。それなのに私も御多分に漏れず申告をしなければならない。オンライン申告できるようになったと言われても、面倒なことに変わりはない。

実は昨年、馬券の的中で5億円ほどの一時所得があったので、ほんの僅かだけど国家に貢献するため税金を納めに税務署にやって来た―――というのはもちろんウソ。まあおわかりでしょうけど諸々の還付申請ですよ、そりゃ。

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ともあれ世間はいずこも同じ申告の季節。他のスポーツ選手同様、この季節は騎手たちも頭が痛い。騎手の収入は、賞金の5%と約3万円の騎乗料が主だから、税務署から見れば明朗会計だ。常に命を危険にさらしている割に騎手の収入の歩留まりは悪い。

1997年春。岡部幸雄、武豊、横山典弘ら東西の有力騎手たちが一斉に国税の税務調査を受け、過去3年間に遡って申告漏れを指摘されるという事態が発生した。追徴税額額はそれぞれ2千万円~5千万円にも及び、新聞・TVは「有名騎手たちが申告漏れ」という見出しで、これを報じたのである。

だが、本来これは税務当局の非が問われるべき案件であった。先ほども書いたように騎手の収入はガラス張りである。申告のポイントは経費算出ということになるが、「35%の経費率を以て算出する」という税務当局が認めた慣例があり、騎手たちはそれに従って申告していたに過ぎない。

だが、この年突然当局は税務調査に踏み切った。その理由は、「騎手によって収入が大きく異なるのに、経費率が同じであるはずない」というもの。

そりゃそうだ。だが、それをいうなら、事前に次の申告からはこの慣例は適用できない旨を通達するべきであった。それなのに、唐突に掌を返して税務調査を行っただけでなく、過去にも遡って税金を搾取するなど話にもならない。他人の申告漏れを指摘する前に、自らの指導漏れが問われるべきだ。しかももっとひどいのは、それを新聞各社やTV各局にリークして、報道するようそそのかした点にある。普段、競馬関係者には努めて優しく、役人にはことのほか厳しい姿勢で臨むはずのマスコミも、このときはなぜか国税の言いなりだった。

「中央競馬××騎手の申告漏れが判明し……追徴課税○千万円を……」

なんて記事を平然と掲載して、そして申し訳程度に騎手本人の談話を添えるのである。

「税務署で認められてきた通りに申告してきたので、驚いている」

経費率35%の慣例はマスコミ関係者にしてみれば周知の事実であり、ちょっと調べれば……、いや普通に考えても当局の言っていることのほうがおかしいと気付いたはず。なのに、まるで騎手が意図的に所得隠したかのような印象を与えてしまうような報道姿勢に終始した。

この件に限らず、マスコミは税務当局との対峙を避けたがる。たとえ自らの社が税務調査を受けても、反論記事を掲載したりすることはなく、広報のコメントとして遺憾の意を示す程度だ。

まあ、税務署とイザコザを起こすのは誰だって嫌なもの。大のオトナが寒風の中わざわざやってきて、文句のひとつも言わずに長々と待たされている光景をこうして眺めてみると、分からないでもない。そうこうするうち花粉も飛び始めた。憂鬱な季節が始まる。

 

 

***** 2023/2/1 *****

 

 

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