ぼっかけ
阪神競馬場スタンド6階のレストラン「FLORA」は、コロナ禍の入場制限が大幅に緩和された今もなお休業が続いている。とはいえ寒い中わざわざ階下のフロアまで移動するのも面倒くさい。仕方ないから売店でカレーライスでも買って自席で食べよう。そう思いながら売店を覗き込んだら「神戸名物ぼっかけカレー」なるメニューが目に飛び込んできた。
ぼっかけとは牛スジとこんにゃくを甘辛く炊いたものの俗称。関西名物のお好み焼きや焼きそばの具として使われることが多く、そのルーツは神戸市長田区にあるらしい。かの地のお母さん方の間で「安くて、美味しくて、一度作っておけばいつでも食べられる」と広まった。いわば長田版おふくろの味。お好み焼きや焼きそばの具として地元では長く愛されているそうだ。
カレーライスを一口食べてみる。カレーの辛さとぼっかけの甘さが絶妙なコントラストを描いてなるほど美味い。そもそも牛スジはカレーに合うのだし、時折感じるクニャっとしたこんにゃくの歯ざわりは、食べるものを飽きさせぬ重要な役割を演じている。階下の売店でも売り出せばよいのにと思わないでもないが、何かしらの事情があるのかもしれない。
代わりに階下では、うどんの「KASUYA」が「ぼっかけ丼」なるメニューを提供している。白飯にぼっかけを豪快にかけて葱を散らした一杯。シンプルではあるが、ぼっかけは味付けが濃いからご飯との相性が抜群だ。
ぼっかけ。その一風変わった呼び名は、賭けに没頭するような輩が勝負事の合間に食べる食事の「没賭け」に由来する―――なんてことは当然なくて、「ぶっかけ」が訛ったものという見方が一般的だ。うどんや白飯に「ぶっかけ」て食べるところから来ているというわけ。
「ぶ」が「ぼ」に変化するという説には若干無理がありそうな気がしないでもないが、関西の方々のしゃべりをずっと聞いていると、ありそうな気もしてくるから不思議。なにより「ぼっかけ」の方が語感から関西風味が漂う。
大阪市内でも「ぼっかけうどん」というメニューを稀に見かけるが、それは茹でたうどんの上からつけツユをかけた、讃岐流の「ぶっかけ」であることがほとんど。筆者は大阪に住んで間もなく丸2年の節目を迎えるが、長田名物の「ぼっかけうどん」には残念ながらまだ巡り合えてない。3年目の宿題としよう。
***** 2022/12/9 *****
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