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2022年12月 8日 (木)

消えぬ芦毛

オメガパフュームの引退が発表された。

2018

2018年から東京大賞典を4連覇中。空前にしておそらく絶後となるであろう5連覇の大偉業に向けて調整中と聞いていたから、突然の引退発表に驚かないではいられない。思い返せば、もともとは昨年の4連覇を引っ提げて引退、種牡馬するはずだった。レックススタッドでの受け入れ準備も整っていたはず。「アンタレスSで始動予定」というニュースが流れたときは、古いニュースが流失したのではと本気で心配したほど。現役続行宣言が突然なら引退発表も突然。それでも規定路線通りにレックススタッドに入ることができるのであれば、馬にとって悪い話ではない。

父スウェプトオーヴァーボードの血を伝えることはもちろん大事。だが、私は彼が芦毛にことさら重きを置いている。若いファンや女性はたいてい芦毛馬を応援するもの。それはある意味正しい。その貴重な芦毛を伝えることになる種牡馬入りは、東京大賞典4連覇という偉大な記録以上に実は大きいようにも思える。

なぜ芦毛は少ないのか。基本的には芦毛馬の父親も、母親も、遺伝の法則によりその産駒に約半分しか芦毛を伝えないことが知られている。隔世遺伝はしないので、仮に地球上から一時期でも芦毛が消えてしまったら、もう二度と復活することはない。絶えず消滅の危険と隣り合わせ。ならば、逆に芦毛はどんどん減っていくかといえばそうでもない。そこが不思議でならない。

かつて芦毛馬はいわれのない迫害を受けてきた。「芦毛は能力に劣る」という迷信はまだ序の口。ナポレオン登場前の欧州では「芦毛が生まれたら悪魔にくれてやれ」とさえ言われたという。

我が国でも江戸時代は「芦毛は悪し毛なり」と武士に嫌われた。その理由は芦毛馬にありがちな弱い白爪にあったとされるが、明治期に入ると今度は敵の標的になりやすいという理由から馬政局は芦毛馬の競馬出走を禁止する命令を出す。芦毛は絶えず消滅の危険にさらされながら、今日まで生き延びてきたのである。

今年の凱旋門賞を勝ったアルピニストも、クロノジェネシスも、クロフネも、ここ一番で芦毛馬が見せる勝負強さに我々はしばしば驚かされる。オグリキャップなど最たる例であろう。遺伝法則からして、彼らは芦毛を伝えるか否かの両親の1回勝負のジャンケンに、だいたい30回くらい連続して勝ち続けた方の子孫。だから勝負強いのだという説を私は信じたい。

2019

白い馬体が躍動する姿を観るたび、この世から消えそうに思える芦毛馬はやはり途絶えないのだと再認識させられる。それが人が芦毛馬に惹かれるもっとも大きな理由のように思えてならない。オメガパフュームの子が競馬場に戻ってくるその日を、楽しみに待とう。

 

 

***** 2022/12/8 *****

 

 

 

 

 

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