矜持
先週日曜は北海道からやってきた知人ふたりを案内する形で中京に出かけた。名古屋駅から中京競馬場への乗り換えの難しさは知る人ぞ知る。しかし私のような体格の人間に期待するのは、きっと道案内だけではあるまい。だから朝から晩まで案内した店は首尾一貫して名古屋メシにこだわった。デブにはデブの矜持というものがある。
朝は名古屋駅で小倉トーストを頬張ったのをスタートに、昼に競馬場でコッテコテの味噌かつ丼をきしめんで流し込んだら、おやつの大あんまきを挟んで、名古屋駅に戻って手羽先とビールで乾杯。ラストは「稲生」のひつまぶしで締めた。ひつまぶしの後に、あんかけスパか、台湾まぜそか、味噌煮込みうどんはどうか?と聞いてみたのだが、「さすがにもういい」と白旗モード。分量には気を遣ったつもりなのだが、どうやらふたりとも名古屋メシ特有の濃い目の味付けの連続に心が折れたようだ。
「名古屋の方が濃い味を好む」という書き方をすると名古屋の方はたいてい否定されるが、少なくとも「名古屋メシ」と呼ばれるメニューが総じて濃い味付けなのは間違いない。食酢メーカーの方に聞いたところでは、寿司酢でも関東や関西に比べて甘みの強いものが好まれる傾向があるという。
実際、ただやみくもに濃い味を好んでいる訳でもない。たとえばうどん。
一般のうどんの麺には塩が練り込まれているが、味噌煮込みの麺には使われていない。だからこそ、あの豆味噌の濃い味に馴染む。濃い味が好きと言うより、濃い味の活かし方が上手なのである。
それは、ひつまぶしの食べ方にも言える。
最初におひつの中身を3等分して、1杯目はそのまま、2杯目はこの薬味をたっぷりかけて、そして最後の3杯目はダシをかけてお茶漬けにして食べる。広く知られた楽しみ方だが、じつはこうしないと最後まで美味しく食べられない。実際に食べてみると分かる。最初の一口はパリッと香ばしい鰻の風味を味わうためにそのまま食べるのがベスト。しかしだんだん濃いタレの味ばかりが気になってくる。そしたらワサビやネギをアクセントにすることで舌をリセット。しかしその効果も長くは続かないから、最終的にはダシの力に頼るというわけ。
「まず最初におひつの中身を4等分して、4杯目はいちばん好きな食べ方で食べるのが通」と言う地元の人もいるが、私が見た限り4杯目もお茶漬けにする人がほとんど。だからと言ってタレの味を薄くしようなどと考えたりはしない。それではひつまぶしの魅力自体が失われる。名古屋メシには名古屋メシの矜持というものがある。
ちなみに私は新大阪へ戻る新幹線の車中で「千寿」の天むすをいただいた。あれだけ食べたあとなのにまだ食べられる。名古屋メシって不思議だ。
***** 2022/12/14 *****
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