日常に溢れるGⅠ
「天皇賞(秋)を終えた時点でJRA東西所属別のGⅠ成績は関東10勝に対し関西6勝。「西高東低」が叫ばれて久しいが、今年24年ぶりに関東が勝ち越すかもしれない―――」
11月12日付けでそんなことを書いた途端、エリザベス女王杯、マイルCS、そしてJCと関西馬がGⅠを3連勝した。さすがは私の予言。口に出したそばから逆のことが起こる。そもそも「関東馬の逆襲」なんて見出しを付けたことからしてマズかった。美浦の関係者にも申し訳ない。
ともあれJCを終えた時点で関東の10勝9敗と関西が猛追している状況である。こういう展開では追い付かれる方が苦しい。今週のチャンピオンズカップで関東馬が再び突き放すことはできるのか―――?
そう思いつつチャンピオンズCの登録馬を見たら、なんと全て関西馬ではないか。実にあっけなく東西が10勝で並ぶことが確定した。関東馬にしてみればこの不戦敗は痛い。残るは阪神JF、朝日杯FS、有馬記念、ホープフルS。さらに「国内平地GⅠ」という観点では東京大賞典も含めて残すは5戦のみ。そこで関東馬が3勝するのは至難のような気がする。
折も折、既に発表済みだった羽田盃と東京ダービーをダートグレードレースに組み入れてJpn1格付けとすることに加え、さきたま杯をJpn1に昇格することが、NARやJRAなどから発表された。
持ち替わり開催のJBCを除けば、浦和にとって悲願のJpn1である。さきたま杯は交流元年の1997年からダートグレードレースに名を連ねるオリジナルメンバー。初代優勝馬は日本ダービー4着の実績を誇るフジノマッケンオーだった。あれから四半世紀余り。Jpn2昇格やJBC開催など一つずつステップを積み重ねて、ついにチャンピオンレースの誉れにたどり着いた関係者の思いはひとしおであろう。学生時代を浦和で過ごした私としても少しばかり誇らしい。
一方で、昨日の発表ではすべてのダートグレード競走を2028年から段階的に国際競走とすることで、「Jpn」表記に象徴されるローカル格付けからの脱却を目指すという。その結果、我が国の平地GⅠレースはJRA24競走と地方13競走の合計37競走となる計算。そういう意味で画期的な計画であることは間違いない。だが、その一方で若干の戸惑いもある。
ひと昔前までは、GⅠ以外のレースに1頭でもGⅠ馬が出てくれば、それだけで競馬場に人が溢れた。GⅠホースはチャンピオン。稀有な存在だったことは間違いない。なにせグレード制導入直後のGⅠは年間わずか15競走に過ぎなかった。それが37にも増える。平均すればひと月あたり3~4レース。GⅠが行われない週の方がむしろ珍しいなんてことにもなりかねない。
有馬記念では出走馬のファン投票応募が続いているが、タイトルホルダーやエフフォーリア、ヴェラアズールなど7〜8頭のGⅠホースが揃いそうな状況である。メディアは「豪華メンバー」を謳うに違いない。しかし、現時点で日本国内には実に47頭ものGⅠホースが現役を続けている。チャンピオンだらけの時代に「GⅠ馬×頭の豪華メンバー」の表現は実態に合っていると言えるのだろうか。
時代の移ろいと共に記録やタイトルの価値は少しずつ変化してゆく。それをメディアが教えてくれないのなら、情報を受け取る側が読み解く努力をするしかない。
***** 2022/11/30 *****
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