計るのも良いけれど
先週のJRAでは、前走からの体重変動が大きな馬の活躍が目立った。土曜東京はプラス14キロ同士の馬によるワンツーで幕を開けると8Rはプラス20キロのカトゥルスフェリスが快勝。日曜9Rを勝ったレッドモンレーヴも14キロ増だった。阪神でも土曜2Rをパラシュラーマがプラス18キロで勝つと、日曜1Rで3着したメイショウオトギはプラス20キロ。さらに9Rに至ってはベルクレスタがプラス22キロながら2着を確保するなど、馬体重をことさら重視する向きの方には辛い一日だった。
馬の仕上がりは「馬体重」という客観的な3桁の数字だけで量れるものではないということは重々承知しているが、実際に数字を見れば動揺せずにはいられない。
馬の体重は1日に10キロ以上変動する。20キロ変わることもなくはない。それを指標に馬の体調を推し量るのは無意味だという見方もある。パドックで筋肉の状態を見極め、かえし馬で心肺の状態を見極めるのがあるべき姿なのだろうが、それでも具体的な数字というものは、頭の片隅から離れないもの。だから、私は意識的に馬体重には関心を持たぬようにしている―――のだが、それでも20キロを超えるとさすがに気になる。よもや別馬じゃあるまいな。
JRAでは、通常のレースでは出走80分前に、GⅠレースでは90分前に各馬を集めて馬体重を量る。それは発育測定のためではなく、実馬検査や馬装のチェックの一環にすぎない。もし体重が前走から50キロ以上も異なっていれば、それが本当に出走登録している馬であるのかどうかを疑うべきだろう。
最近の馬体重計量の位置付けは、ファンサービスの一環へとシフトしているようだ。GⅠ出走馬の馬体重は女性の声で丁寧にアナウンスされ、上位人気馬の数字に大きな増減があれば、場内にはどよめきが起こる。これはGⅠレース当日にJRAとファンとの間で交わされる一種のセレモニーにも近い。10年ほど前から実施されている「調教後馬体重」の発表なども、ファンサービス拡充を目的に定着した。
だが、調教現場の一部はこうした方向性に懐疑的なようだ。もっとも問題視されているのは、調教後馬体重が各厩舎の自己申告に委ねられている点。出走馬体重はJRA係官立ち会いのもとで行われるが、調教後馬体重は、計測せず見た目で判断してもいいということになっている。中間と当日で体重があまりに違えば、逆にファンの混乱をきたしかねない。客観性にこそ存在価値がある馬体重という指標が、実は曖昧な面を残しているとなれば問題は大きくなる。
実際、馬体重の増減から体調を推理し、馬券購入の参考にするファンは決して少なくはない。私の周囲には「二桁増減は黙って消し」というスタイルを貫く人もいる。そんな人にとって先週の競馬は災難だった。ちなみに土曜に20キロ増で勝ったカトゥルスフェリスと、日曜に14キロ増で勝ったレッドモンレーヴは共に蛯名正義調教師のふ管理馬。偶然かもしれないが頭の片隅に置いて置きたい。
ちなみに私は馬体重だけでなく、自らの体重もさほど気にしない。それが今の我が身に繋がっているのだとすれば、もう少し体重に興味を持った方が良いのだろうが、それができないらこのザマなのである。明日11月1日は計量記念日。
***** 2022/10/31 *****
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