鳴りやまぬ拍手
圧倒的1番人気のオープンファイアがスタートで出遅れるとほぼ満員のスタンドが大きくどよめいた。
中京5レースは芝2000mの2歳新馬戦。1番人気のオープンファイアはディープインパクトのラストクロップということで大きな注目を集めている。国内でデビューを待つディープインパクト産駒は6頭。うち牡馬は2頭しかいない。そのうちの1頭となれば単勝1.3倍も当然だ。しかし当のオープンファイアにとって、そんな事情は知ったことではない。7頭立ての後方をのんびりと追走している。
直線に向いても後方のまま伸びてくる気配はない。これは飛んだか。視線は4〜5前方で繰り広げられている先頭争いに移る。逃げたサンライズジークをピースオブザライフが競り落とした。勝負あったか。その時、スタンド全体が揺れるような歓声が沸き起こった。
大声は控えるのが今の競馬場の約束である 。そんなルールをも置き去りにする脚色でオープンファイアが追い込んでくる。これは差し切る勢いだ。それが明らかだからこその大歓声であろう。結果きっちりクビだけ差し切ってゴール。その瞬間、満員のスタンドから万雷の拍手が沸き起こった。コロナ禍で競馬場の拍手は日常的な光景になったが、新馬戦での拍手は珍しい。この馬の将来にかけるファンの期待の発露。まずは第一関門突破だ。
メインのセントウルSの拍手はそれをさらに上回るものだった。直線で1番人気メイケイエールが先頭に立って拍手。後続を突き放して拍手。完勝でゴールを駆け抜けまた拍手。そして、掲示板に「レコード」の赤文字が点灯すると、さらにひときわ大きな拍手が沸き起こった。ダートコースをゆっくり引き揚げてくるメイケイエールに向けて拍手は鳴り止む気配がない。場内実況の「拍手が鳴りやみません!」の言葉に、拍手のボルテージがまた上がった。
久しぶりの中京競馬場は当日入場券の発売もあって大盛況。スマートシートは4人掛けに3人が座る配置に変更されていた。ビギナーズセミナーも再開。ベンチはどこも塞がってて、飲食店はどこも大行列。コロナ前にかなり近づいた印象を受ける。そんな競馬場に若干の戸惑いを感じた。人もまばらな景色も2年も見続ければ日常と化す。そうした中にあって拍手による応援はコロナ禍の遺産として競馬場に定着するのかもしれない。
拍手の大きさは人気のバロメーター。ソダシの従姉妹であり、ソダシと同じ重賞6勝を挙げながら、なぜかGⅠには手が届かない―――。それもまた応援したくなる理由のひとつ。現役競走馬としては異例となる写真集「メイケイエール ~一生懸命、全力疾走~」は今週金曜日に発売だ。
***** 2022/9/11 *****
| 固定リンク
「競馬」カテゴリの記事
- 20年目の引っ越し(2024.01.01)
- 2023年の大トリ(2023.12.31)
- アンカツルールの20年(2023.12.29)
コメント