連闘
戦後の国営競馬で走ったサシカタは通算159戦未勝利という昭和版ハルウララ。しかもその敗戦記録の半数を超える82戦を、8歳時の一年間に記録しているというから驚く。
一年は52週なのだから、毎週走っても足りない。いったいどうやったのか? 答えは「連闘」。当時の「連闘」といえば土日の2日連続出走を指した。一開催8日間全日出走という、とてつもない記録も残した彼女にしてみれば、現代の連闘など鼻で笑うに違いない。
サシカタの時代から70年を経て、先週日曜の新潟2歳Sを勝ったのは連闘策で挑んだキタウイング。2着ウインオーディンと合わせて連闘馬によるワンツーフィニッシュとなった。連闘での重賞勝利は2018年にモズアスコットが安田記念を勝って以来4年ぶり。だが、2着馬も連闘馬となると当方記憶にない。
年 レース名 馬名
95 関屋記念 フェスティブキング
愛知杯 サウンドバリヤー
96 阪急杯 トーワウィナー
CBC賞 エイシンワシントン
ウインターS トーヨーシアトル
97 北九州記念 ダンディコマンド
CBC賞 スギノハヤカゼ
98 北九州記念 トウショウオリオン
阪神3歳牝馬S スティンガー
99 クリスタルC タイキダイヤ
00 シルクロードS ブロードアピール
中日新聞杯 トウショウアンドレ
01 小倉2歳S タムロチェリー
02 ラジオたんぱ賞 カッツミー
03 東京新聞杯 ボールドブライアン
ニュージーランドT エイシンツルギザン
愛知杯 カゼニフカレテ
04 小倉2歳S コスモヴァレンチノ
05 札幌記念 ヘヴンリーロマンス
フェアリーS ダイワパッション
06 福島牝馬S ロフティーエイム
09 オーシャンS アーバニティ
11 京都金杯 シルポート
13 京王杯2歳S カラダレジェンド
14 オーシャンS スマートオリオン
函館2歳S アクティブミノル
18 安田記念 モズアスコット
22 新潟2歳S キタウイング
1995年以降で連闘馬による重賞勝利はご覧の通り。馬が慢性的に不足していた戦後の競馬場とは違い、「連闘」と聞くと、どうしてもネガティブにとらえられがちの昨今である。実際、連闘をしないことをポリシーとする調教師がいる一方、連闘にポジティブな調教師もいたりと様々。ポジティブ派のひとりでもあった角居・元調教師は、「調教で鍛えられない部分を実戦で鍛えることができる」と連闘のメリットを挙げている。
また、水曜や木曜に追って中3日でレースを迎えるより、期間にゆとりがある連闘の方が逆に調整しやすい場合もある。キタウイングに関して言えば、ちょうど一週間前の未勝利勝ち後も飼い葉が落ちることなく馬体もすぐに回復。木曜に調教師自らが跨って状態を確認した上で連闘に踏み切ったという。
初勝利の翌週に重賞を勝った例といえば、1984年の函館3歳Sを勝ったエルプスを思い出す。エルプスはその勢いのまま、翌年の桜花賞を逃げ切った。この世代初のマイル重賞勝ち馬となったキタウイングは、現時点でもっとも桜花賞に近い位置にいる。
***** 2022/8/31 *****
最近のコメント