31秒7の衝撃
「600の通過は……、さんじゅう、いちびょう、なな!?」
実況アナウンサーはその時計が信じられなかったのか、ターフビジョンに表示された数字をひと桁ずつ確認するように伝えた。今日行われたCBC賞。その勝ち時計1分5秒8にももちろん驚いたが、私もテンの3ハロンの時計に衝撃を受けたひとりだ。
多くの1200m戦がそうであるように、このレースでも先手を主張するであろう馬は少なくなかった。真っ先にゲートを飛び出したのはスティクス。メイショウチタンと大外ファストフォースが負けじと追いかける。テイエムスパーダは先行争いにワンテンポ遅れた。それでも今村聖奈騎手が押してハナを主張。だがスティクスも譲らない。それが驚くべき激流を呼んだ。
過去の1200m重賞で前半3ハロンに31秒台が記録されたことはない。これまでの最速記録は2007年と10年の北九州記念で記録された32秒1。向こう正面から緩やかな下り坂が続く小倉競馬場は前半の時計が速くなりやすい。しかし、32秒1のペースを記録した2頭の逃げ馬はともに後半は大きく失速して大敗している。それが競馬だ。だから騎手としてはハナを主張したくても、32秒台前半で逃げるような真似は怖くてできない。
2007年 北九州記念
タニノローゼ(中村将之) 32.1-37.2 1分9秒3 15着
2010年 北九州記念
ケイティラブ(野元昭嘉) 32.1-36.0 1分8秒1 13着
今日の競馬でテイエムスパーダの手綱を取って31秒8(公式記録は訂正された)で逃げた今村聖奈騎手は怖くなかったのだろうか。終わってみれば上がりも34秒0だから馬にはある程度余力が残っていたことになる。2番手に控えたスティクスの上がりは35秒0。上がりでテイエムスパーダを上回ったのは2頭しかいない。3馬身半の結果はむろんハンデの恩恵もあるだろうが、騎手の果たした役割も少なからずある。ただ、中山ではこうはいくまい。
今村聖奈騎手の初重賞制覇は素晴らしいニュースだ。多くのメディアも大きく取り上げている。だが、私としては種牡馬レッドスパーダの重賞初制覇にも注目したい。メイショウボーラーと並ぶタイキシャトルの数少ない後継種牡馬。その産駒が、4世代目にしてようやく重賞タイトルを獲得した意味は小さくなかろう。今村聖奈騎手も種牡馬レッドスパーダも、真価発揮はまだまだこれからだ。
***** 2022/7/3 *****
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