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2022年7月28日 (木)

夏の桜

アイビスサマーダッシュに出走予定のあるオールアットワンスは、昨年の同レースの優勝馬。勝てばカノヤザクラ(2008&09)、ベルカント(15&16)に続く連覇達成となる。カノヤザクラといえば2008年、09年と2年連続でサマースプリントチャンピオンに輝いた名牝。09年のスプリンターズSでも8番人気ながら3着と頑張った。

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彼女の能力の片鱗は、新馬を勝って臨んだ2戦目のかえで賞に垣間見ることができる。この日騎乗予定だった上村洋行騎手が午前中のレースで落馬負傷。急遽、手綱を任された安藤勝己騎手は、スタートから行きたがるカノヤザクラをなだめ通して進んだが、鞍上の制止を振り切るようにして突っ走って1着ゴール。その勝ち時計は、なんと1分20秒8のレコードタイムだった。

かえで賞の舞台は京都の内回り芝1400m。従来の2歳レコードは1995年にイブキパーシヴが樹立した1分21秒4だった。それを、さして追われることもなく0秒6も短縮してみせたのである。

その血統から距離に限界があるであろうことは誰もが感じていたはずだが、それでもこのレースぶりなら、桜花賞でもスピードで押し切れるかもしれない。なんと言っても「桜」を名前に戴く彼女である。勇躍、ダイワスカーレットとウオッカの待つ仁川の舞台に向かったが、結果は9着と大敗。彼女が生涯でマイル以上のレースに出走したのは、後にも先にもこの一回きり。以後、彼女は一貫してスプリンターの道を歩み続ける。

そんな彼女がもっとも輝いたのが、二度の優勝を果たしたアイビスサマーダッシュだったことは間違いあるまい。冬場は冬毛が伸びて調子を維持できないのに、夏場になるとどんどん調子を上げてくる典型的な夏女。しかもその馬体は500キロを超え、スプリンターであるのにスタートも決して速い方ではない。コーナーで置かれることのない新潟1000mはベストのコース。まさにアイビスサマーダッシュは彼女のために用意された舞台だった。2連覇に留まらず、3連覇を確実視する声があったのも無理はない。

だが、舞台は突然の暗転を迎える。3連覇をかけて臨んだ2010年のレースでは、ゴール目前で左第1指関節脱臼を発症。悲しくも予後不良となった。勝てば我が国初の牝馬による同一平地重賞3連覇の偉業達成だったが、そんなことより痛感させられるのは、毎度のことながら競馬の非情である。せめてもの救いは、そこが彼女がもっとも輝いた舞台であったということか。スタートから横一列になって疾風の如く迫り来る馬群を見たその時、きっと今年も彼女が輝いたあの夏を思い出すに違いない。

 

 

***** 2022/7/28 *****

 

 

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