今度こそ
昨日のこと。地方競馬全国協会(NAR)、特別区競馬組合(大井)、兵庫県競馬組合(園田)、全国公営競馬主催者協議会、そしてJRAの5団体の代表が、東京都内のホテルで記者会見を行い、3歳ダート3冠競走の創設を骨子としたダートグレード競走体系の整備の大幅見直しを発表した。
「交流元年」と謳われた1995年。ライデンリーダーとライブリマウントの活躍が中央と地方の垣根に風穴を開けると、1997年4月には交流重賞に統一の格付けを行うダートグレード競走がスタート。それからちょうど四半世紀が過ぎたこのタイミングでの見直しは、ダート競馬に対するファンの意識が変化してきたことに加え、見直しに必要なコストに対するメドが立ったということであろう。
サウジダービー、UAEダービー、そしてケンタッキーダービーに参戦し、しかも結果を伴っている昨今の風潮は、それだけ見れば素晴らしいことだが、裏を返せばダート適性の高い3歳馬が目指すべきレースが国内で行われていないことの現れでもある。
また、7月に行われるジャパンダートダービーに各地の有力馬が集まらないことも課題のひとつ。黒潮盃には来るのにJDDに来ないのは、相手関係もさることながら、各地のダービーが行われて1か月足らずに行われる日程面の問題も指摘されていた。各地の有力馬が地元のダービーに全力投球するのは当然のこと。しかも全国各地から大井までの輸送を伴うと思えば、参戦に二の足を踏んでもそりゃあ仕方ない。
今回の最大の見直しは、3歳ダート3冠競走が整備されること。南関東限定で実施されてきた羽田盃、東京ダービーを再来年からJpn1に格上げし、JRAや他地区の所属馬も出走できるように変更するらしい。ジャパンダートダービーは名称を変更した上で秋へ移す。これにより各地のクラシック戦線を戦い抜いた疲労をいったんリセット。フレッシュな状態で全国各地の有力馬同士の対決が期待できる。
3冠の頂点となる東京ダービーの1着賞金が現行から倍増の1億円となるなど、賞金も大幅アップ。これを目当てにJRAからさらなる強豪メンバーが大井に乗り込んでくる可能性は高い。しかし、それでも敢えて開放に踏み切った地方には、相当の覚悟を感じる。長い目で見れば地方側にプラスに働く可能性は高い。主催者も調教師もそこは分かっている。しかし馬主とすれば異論もあろう。牝馬路線に手を付けないのはそのせいかもしれない。
社台グループは数年前からダート血統の生産に力を入れ始めている。いずれこのような時代がくると読んでいたのか。マルシュロレーヌのBCディスタフ制覇は、そういった方針の現れとも聞く。いずれにせよ日本には優れたダート馬がたくさんいるのに、強ければ強いほど3歳時はどうしても芝を走らざるを得ない現状がある。今回の見直しは、そんな現状に一石を投じる程度にとどまって欲しくはない。今度こそ日本の3歳ダート路線問題にケリを付けてもらいたい。
ところで、開催時期が秋に移るジャパンダートダービーは、果たして何というレース名に生まれ変わるのだろうか。
少なくとも「スーパーダートダービー」だけはやめてほしい。1996年に誕生した秋の大井2000mで行われるこの3歳交流重賞を覚えている人は、もはや少数派であろう。ユニコーンS、ダービーグランプリ、そしてこのスーパーダートダービーの3鞍で「3歳ダート3冠」と銘打ったが、たいした盛り上がりも見せずにわずか3年で終焉を迎えた。「今度こそ」と私が強く願うのは、その辛酸が忘れられないからである。
***** 2022/6/21 *****
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