激走の代償
日本ダービーで2着だったイクイノックスがレース後の検査で両前脚にダメージを負っていることが判明した。オーナーのシルク・ホースクラブが2日にホームページ上で発表したもの。「屈腱炎との診断には至らなかった」という表現は意味深長だ。常識外れのローテで皐月賞を2着。そしてわずかキャリア4戦目のダービーを2分21秒9のレースレコードで駆けた才能の持ち主。まずは完治を願う。
それにしても今週はダービー出走馬の故障のニュースが多かった。ダービー7着のジオグリフは右前第1指骨の剥離骨折が判明して全治3か月。13着だったマテンロウレオも左トウ骨遠位端骨折が発表されている。1週間も経たないうちにたちまち3頭の故障が判明するとは珍しい。3歳春に府中の2400mを2分21秒台で駆けることの代償だろうか。
そう思って調べてみると、過去にも似たような年があった。
2004年
コスモサンビーム(12着) 左第1指節種子骨骨折
アドマイヤビッグ(14着) 右第3指骨骨折
マイネルブルック(競走中止) 左第1指関節脱臼
2015年
ドゥラメンテ(1着) 両トウ骨遠位端骨折
リアルスティール(4着) 左第1指骨剥離骨折
ベルラップ(15着) 右第3手根骨骨折
いずれの年もダービー後に3頭の故障馬が判明している。だが問題は頭数ではない。2004年はキングカメハメハの2分23秒3。2015年はドゥラメンテがその記録を11年ぶりに破る2分23秒2。そして今年のドウデュースはドゥラメンテの記録を破っての2分21秒9である。いずれの年もダービーレコードの決着だったことは見逃せまい。
速い時計でダービーを勝てば種牡馬としての価値も上がるなどメリットもある。一方でやはり脚もとへの負担が増すリスクは否定できまい。ここにもギャンブルとしての側面はある。
断っておくが、これをJRAの馬場管理の問題に繋げるつもりは毛頭ない。今年のダービー当日もほかのレースは平凡な勝ち時計だった。速い時計は馬場の問題でもあるが、馬の競走能力と脚もとのバランスの問題でもある。そのバランスにもっとも大きなギャップを与え得るのがダービーの大舞台であろう。故障に関してはむしろそういった要因が大きいような気もする。とはいえ「危ないから速く走るな」と言うわけにもいかない。掲示板に灯る「レコード」の赤い文字を見るたび、そんなジレンマを感じるのである。
***** 2022/6/3 *****
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