投票の不思議
参院選が公示され、選挙の夏がスタートした。
日本記者クラブが正月に実施する恒例の「予想アンケート」10問の中に、「12月31日現在のわが国の首相は誰か」や「11月1日時点のマイナンバーカードの普及率が70%を超えるか」などという設問に並び、「参院選後、参議院の女性議員比率が全体で3割を超えるか」という設問があった。さらには韓国大統領選と米国中間選挙に関する設問も。投票結果を読み切るのはプロでも難しい。ましてや正月の時点である。
人気投票といえば今週は宝塚記念。ファン投票1位はタイトルホルダーで19万1394票。2位はエフフォーリアの18万8525票。1990年オグリキャップの15万2016票を大きく上回って歴代最多記録を更新した。当時とは投票方法も異なるとはいえ、やはり競馬ファンは投票が好きなのだと実感する。
その一方で「人気の盲点」が生まれることも珍しくはない。「この組み合わせでこんなにつくのかよ! そうと分かってりゃ買ってたよ」というセリフは競馬場でよく耳にする負け犬の遠吠え。逆に筆者の知人は、先日のマーメイドSの3連複を1点で的中させて「こんなにつくの?」と驚いたという。いくら買ったかのは昨今の世間情勢を鑑みて伏せるが、受け取った払戻金が帯封であったことには間違いないようだ。しかしいちばん驚いたのはレース後に配当を知った本人だった。
「前走の成績を見て普通の馬券を買ったつもりのに、なんでみんな買わなかったんだろ?」
前走、牡馬相手のオープンでコンマ5秒差に来ていたのはウインマンティー、マリアエレーナ、ソフトフルートの3頭だけ。あとからそう聞けばなるほど頷ける部分はある。実際、私自身もウインマイティ―を本命としていた。とはいえあのメンバーで一点勝負に打って出ることは私には無理。なので100円馬券をバラバラ投じる結果となった。件の知人にしてみれば、それが不思議で仕方ないらしい。
最近の不思議な投票結果といえば、JRA顕彰馬選定投票でアーモンドアイが落選したことであろう。ご存知、歴代最多の芝GⅠ9勝を記録した歴史的名馬。資格初年度での選出はほぼ確実視されていたが、得票数は144票にとどまり、選定基準にあと8票届かなかった。
この問題については既にあちこちで論じられたから、ここで取り上げることは控える。これこそ投票の不思議―――。そう思って飲み込むしかない。議論の余地などないように思えるのに、なぜかこういう現象が起こる。人間とは不思議で複雑な生き物だと思えば良い。投票に穴はつきもの。馬券はその典型であろう。
ちなみに、冒頭に紹介した日本記者クラブの「予想アンケート」の2013年版には、「凱旋門賞で日本馬が優勝するか」という設問があった。前年、オルフェーヴルがあわやの2着となり、リベンジを期待する声が競馬ファンの垣根を超えて高まっていた当時の風潮を感じさせる。私なら「○」と答えたかもしれない。だが、結果は2年連続の2着。わずか2分先のレース結果さえも分らぬ私に、10か月も先の予想など無理からぬ話だった。
***** 2022/6/22 *****
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