地の利
「三里うどん本舗」を出て海岸沿いを競馬場へと向かう。天候は快晴。梅雨の季節を思えば奇跡的ともいえる天候に恵まれたことをお天道様に感謝したい。なにせ本日は高知のダービーデー。50回目の節目を迎える高知優駿が行われる。
1着賞金は昨年の1000万円から一気に1600万円に増額された。これは全国の地方競馬で行われるダービーとして、東京ダービー、兵庫ダービーに次ぐ高額。10年前の1着賞金が27万円だったことを思うと「ホントに同じレースか?」と疑いたくもなる。つまりは活況の裏返し。スタンドの設備も来るたび新しくなっているし、場内には若い女性や子供連れが目立つ。たまに聞こえる野太いヤジがなければ、「ああ、高知に来てるんだな」と実感することもない。昭和の鉄火場の面影はどんどん薄れてつつある。
高知優駿は全国地方交流競走であるから、高額賞金を狙って他地区から遠征してくる馬も少なくない。例年は兵庫と佐賀が中心だが、今年は南関東から3頭がやって来た。道営重賞勝ちで東京プリンセス賞2着のコスポポポラリタ(大井)などは、過去の遠征馬に比べて明らかに格上であろう。賞金が上がれば遠征馬のレベルも上がる。1着で1600万なら東京ダービーの2着賞金1750万とさほど変わらない。相手関係を天秤にかけて、敢えて高知を選んだ陣営もあるようだ。
オッズをそれを敏感に感じ取っている。1番人気がコスモポポラリタ。2番人気はアイウォール(浦和)。その関係者らしきグループから「この2頭で決まったら南関優駿だな」という声が漏れ聞こえてきた。
しかし、高知優駿が全国地方交流となった2017年以降、遠征馬が優勝したケースは、2018年スーパージェット(佐賀)の一度きり。理由は様々あろうが、やはり日本一とも言われるほど深い砂と無関係ではあるまい。同じ全国地方交流の黒潮スプリンターズカップでも、遠征馬で優勝したのは今年のイグナイターただ一頭。そのイグナイターは黒船賞でもJRA所属馬を相手にしなかったように、もともと深い砂への適正が備わっていた可能性が高い。
黒船賞では2頭の高知所属馬も掲示板に載る健闘を見せたし、黒船賞のひとつ前に行われたJRA条件交流はりやま盃では、6頭のJRA所属馬が人気を集めたものの、3着オンワードセルフ以外はことごとく掲示板を逃している。高知の砂を初めて経験する馬は、通常よりパワーを要する馬場に戸惑うこともしばしば。地元勢は文字通りの「地の利」を活かしたい。南関東の重賞級相手でも互角か、あるいはそれ以上に戦えるはずだ。
実際のレースでもコスモポポラリタは後方から徐々に進出。3コーナー過ぎから懸命にスパートしたが、ゴール前では逆に脚色が鈍って2着を逃した。圧倒的有利とされる外枠を活かせず、勝負所で砂のより深いインコースを通ったことで、体力消耗に拍車をかけた可能性は捨てきれないが、トップジョッキーを配しての結果となれば受け入れるしかない。
勝ったのは地元のガルボマンボ。2着は黒潮皐月賞馬で2冠を目指したヴェレノ。地元高知勢のワンツーフィニッシュにスタンドは大いに沸いた。
2戦続けてヴェレノに敗れていたガルボマンボだが、2走前の1400m戦がコンマ4秒差で、1800m戦の前走がハナ差。そして今回1900mでついに逆転を果たした格好になる。父のガルボは短距離戦線での活躍が目立ったが、その父がマンハッタンカフェであることを思えば、距離が伸びて真価発揮のタイプかもしれない。父にビッグタイトルをもたらした孝行息子は、高知のダービー馬として大井・ジャパンダートダービーに乗り込むことになる。注目しよう。
***** 2022/6/14 *****
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