坂の上のうどん
フェリーで松山に上陸すると、ただちに名物の鍋焼きうどんを一杯ひっかけた。
いりこの香り漂うダシには、独特の茶色いチクワや、牛肉、油揚げ、そして海老天などの具がたっぷり。松山で鍋焼きうどんが広まった理由ははっきりしないらしいが、戦後間もない頃には既に地元で親しまれ、現在も市内の100店舗以上で味わえるという。甘めのダシをたっぷり吸った麺は讃岐よりも柔らかく、旅の疲れた胃袋を優しく癒してくれる。この日はこれにて終了。
翌日曜日は朝から好天に恵まれた。遥か坂の上にそびえるのは松山城の天守。空には白い雲。小説「坂の上の雲」に登場する3人の主人公のうちのひとりは、「日本騎兵の父」と言われ日露戦争でコサック騎兵と死闘を繰り広げた秋山好古である。遥か昔の話。しかし、こうしている今もロシアと戦争をしている人たちがいる。
レンタカーをピックアップして高速を東へと向かう。途中、いよ小松ICでいったん高速を降りた。一般道を走ること5分。のどかな田園地帯に「優月」の看板が見えてくる。地元では知られた釜揚げうどん専門店。しかも1杯400円だから安い。注文して茹で上がり待つこと10分。並々とうどんの入ったドンブリとつけダレが姿を現した。
うどんは讃岐よりも太く、柔らかい。茹で汁のせいか塩味も控え目に感じる。だが、それをタレの旨味がしっかりとカバー。甘めのタレにはネギ、ゴマ、ショウガ、天かすといった薬味が入ってアクセントになっている。コロナ前は自分で好きなように薬味を投入して味の変化を楽しめたらしいが、残念ながら今はそれはできない。コロナが明けるのを待とう。
ドライブを再開。さらに東へと向かい。川之江東JCTから一転南下。高知を目指す。
高知では市街地を抜けて海沿いへ。一風変わったうどん屋さんがあると聞いてやってきたものの、カーナビをもってしても場所が分からない。仕方なく徒歩で店を探す。すると狭い路地を登った坂の上に「うどん」の幟を発見した。まさに「坂の上のうどん」だ。
お店の名前は「三里うどん本舗」。開放感満載の店内に先客の姿はなく、お店の方の姿もない。営業中なのかどうかも分からない。ただ、2匹の猫が軒先で遊んでいるだけ。その姿を眺めていると、店主と思しき人物が猫を呼びに来た。すかさず挨拶。すると店内へと手招きされた。どうやら営業中であった模様。醤油うどんを注文して茹で上がりを待つ。店の外では先ほどの猫たちが行ったり来たりしている。
うどんを運んできてくれたのは奥様だった。何種類かある醤油の説明を受けて「広島カキ醤油」をチョイス。代金と引き換えにドンブリを受け取るシステム。醤油をかけまわして、一口啜ると華やかな小麦の香りが口中に満ち溢れた。柔らかそうに見えて、のど越しも爽快至極。これは美味いうどんだ。
聞けば、香川県内で人気のうどん店をご夫婦で営まれていたのだが、うどん文化を広めたいとの一心で高知に移り住んだらしい。ならばこの味は納得できる。だがしかし、うどんを提供するのは土日祝のみで、月火金はラーメンを出しているという。実際、持ち帰り用の中華麺も販売していた。これだけ旨いうどんを出せるなら、うどん一本でも良さそうなものだが、そうでないあたりが「一風変わった」の理由。こうなるとラーメンの味も気になる。とはいえ高知競馬と組み合わせるとなれば土日以外に訪れるのは難しい。今後に向けた大きな課題だ。
***** 2022/6/13 *****
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