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2022年6月30日 (木)

観測史上最も暑い夏

いや~。暑い日が続きますね。関東では連日の40℃超えが報じられているが大阪だって暑い。おとといより昨日、昨日より今日という具合に暑さは増す一方。明日は今日より暑いらしい。驚くことに京都や岐阜には「40℃」の予報が出た。予報の段階で40℃は珍しい。岐阜・笠松では競馬開催が予定されている。人も心配だが、モノ言えぬウマはもっと心配。オーストラリアなどでは、暑さで競馬開催を中止することがある。日本もそろそろ考えた方が良い。

Tenkizu

予報を見ただけでさすがの私も食欲が失せてきた。頭も回らない。今週のJRA重賞はなんだっけ? 完全にバテている。

「逃げ切り」、「埒が開かない」、「デッドヒート」。変わったところでは「ドーピング」なども含め、一般的に使われながら実はその語源が競馬にあるという言葉は思いのほか多いのだが、この「バテる」という言葉もどうやら競馬から来たものらしい。

競馬をやっている人には説明の必要もないだろうけど、馬が走り疲れた様子を競馬では「バタバタになる」という。

たとえば調教欄に「終いバタバタ」と書いてあれば、ゴール寸前に足が上がって失速したことを意味する。この「バタバタになる」が簡略化されて「バテる」になったというのだ。

暑さに弱い馬は夏バテもおこしやすい。かつて益田競馬場があった頃、出走予定馬が次々と夏バテに倒れレースが不成立となる騒ぎもあった。夏バテの馬を見極めるのは、夏競馬の馬券作戦の初歩とも言える。 

Shadow

夏バテをおこした馬は、眼の周囲の毛が抜けて、汗が出なくなるため黒ずんで見える。さらに牡馬ならば睾丸が大きく膨れ上がることもある。「夏は牝馬」の格言はこの辺の事情にも裏打ちされている。

 

 

***** 2022/6/30 *****

 

 

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2022年6月29日 (水)

2度目の引退

JRAは宝塚記念で上半期の競馬を終えたが、ダート界は今宵の帝王賞が上半期の締め括り。だが、宝塚記念が18頭のフルゲートで盛り上がったのとは対照的に、帝王賞はその半分の9頭に留まった。これはいったいどうしたことか。

9頭のうち7頭はJRA所属馬。残る2頭にしても、JRAでデビューを果たし、ある程度活躍してから大井に移籍してきたことを思えば、実質的には「JRA所属馬9頭」と言っても差し支えない。文字通りの馬場貸し。せめてJRAから大井所属になった2頭のどちらかが上位争いをしてくれないものか。でなければ交流GⅠの看板が泣く。

2007年の帝王賞を優勝したボンネビルレコードは、JRA所属での勝利だったが、もとをたどれば大井所属馬。2004年10月の大井新馬戦でデビューを果たし、羽田盃5着、東京ダービー4着、ジャパンダートダービー3着とクラシックを好走。黒潮盃や金盃など4つの南関東重賞タイトルを獲得すると、5歳春にJRAへと移籍した。

南関東でもS2は勝てるがS1となると勝ちきれない。交流重賞でも勝ち負けに持ち込むまでいかない。もう一段階上がって真のチャンピオンとなるにはどうしたらよいか。考え抜いたオーナーの結論は「美浦の坂路で鍛えるしかない」というものだった。その信念が移籍4戦目で早くも実を結ぶ。先頭に立った1番人気ブルーコンコルドと内ラチの隙間を狙ったのは5番人気のボンネビルレコード。大井在籍時の主戦・的場文男騎手の豪快なアクションに応えて突き抜けた。割れんばかりの大歓声は地元大井の人馬への喝采を叫ぶ声だ。大井のファンはよく分かっている。

Bon4

引退後は大井競馬場の誘導馬として活躍を続けてきた。「誘導馬」と聞くと、種牡馬になれぬ馬の引き取り先みたいなイメージを持たれる方もいるようだが、実際にはそう簡単に務まるものではない。彼らも厳選されたエリートだ。まず、牡でなければならない。毛色も限定される。さらにゆったり堂々と歩けることこれだけでも、大半の馬がふるい落とされる。これらの条件をクリアしても誘導馬になれるとは限らない。もっとも肝心なポイントは馬の気性にある。

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なにせ、つい最近まで速く走ることだけを徹底して教え込まれてきたのである。かつての習性でファンファーレを聞いてイレ込むケースが少なくない。出走馬がすぐ隣をすり抜けていけば、負けじと走り出そうとするのも、競走馬としての性(さが)であろう。

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それをクリアするには長い訓練を経なければならない。早くて1年、遅い馬は3年と言われる。それを彼は引退から半年でクリアしてみせた。馬の頑張りとともに、調教関係者の熱意の賜物に違いあるまい。その後も暇さえあればひとり練習を繰り返していた姿が印象に残る。

Bon3

誘導馬生活も丸9年。そんなボンネビルレコードも今日を最後に誘導馬を引退するという。そこで帝王賞終了後の最終レースに「たくさんの感動をありがとう!ボンネビルレコード賞」が組まれた。先日の宝塚記念当日の最終レースが柴田未崎騎手のラストライドだったように、こういう演出があるのも「締め括り」ならでは。思えば未崎騎手もボンネビルレコードも2度目の引退。こうなるとある意味9頭立ての帝王賞より興味深い。大勢のファンが残ってボンネビルレコードを見送っていた光景は忘れないでおこう。

 

 

***** 2022/6/29 *****

 

 

 

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2022年6月28日 (火)

伝説と呼ぶなら

日曜の阪神新馬戦を勝ったのはシルバーステート産駒のカルロヴェローチェ。3番手追走からあっさり抜け出すと、あっという間に2馬身差突き放す完勝だった。先日このブログで紹介した「トウショウフリート~シーイズトウショウ」の系譜を継ぐ貴重な一頭。手綱を取ったルメールは機種が「まだ子供っぽいけど、いい勉強ができました。秋が楽しみです」と伸びしろに期待すれば、須貝調教師は「距離が長くなっても短くなっても対応できると」と万能性を感じている。

このレース、一部では「伝説の新馬戦」と呼ばれているらしい。とはいえ、この一戦だけを指してのことではない。宝塚記念当日に行われる新馬戦の優勝馬は、過去5年のうち4頭が重賞を勝っている。うち2頭はGⅠホース。それをして宝塚記念当日に行われる新馬戦全体が「伝説」と呼ばれているらしいのだが、勝ち馬がのちに活躍するレースであれば「出世レース」とするのが正しい。もともとGⅠ開催日の新馬戦は素質馬が集まることで知られている。陣営にしても有力騎手を確保しやすいし、その強さを多くのファンに見せつけたい。JRAもわざとGⅠ当日に芝1800mとか芝2000mのレースを組んで、多くのファンに名馬誕生の瞬間を見てもらえるよう工夫している。

「伝説の新馬戦」と呼ぶなら、やはり2008年10月26日、オウケンブルースリが勝った菊花賞当日の京都5レース(芝1800m)。この一戦をおいてほかにあるまい。

掲示板に載った5頭すべてがのちの重賞ウイナー。しかも3頭のGⅠホースとダービー2着馬を含むのである。上位4頭が翌年の有馬記念に出走する新馬戦など、そうそうあるまい。驚くことに11頭立ての最下位馬を除く10頭までが翌年の秋までに未勝利を勝ちあがった。

2008年10月26日京都5R 2歳新馬(芝1800)

1着 アンライバルド   岩田康
2着 リーチザクラウン  小牧太
3着 ブエナビスタ    安藤勝
4着 スリーロールス   横山典
5着 エーシンビートロン 内田博
6着 ネオイユドゥレーヌ 武豊
7着 アルティマタレント 四位洋
8着 ヒカリアスティル  幸英明
9着 テイエムシバスキー 和田竜
10着 ダノンイチロー   福永祐
11着 ファーエンドシュア 黒岩悠

ブエナビスタを管理していた松田博資厩舎はゲート試験に合格すると、すぐ新馬に使うことで知られていた。今のようにいったん外厩に出すのではない。馬の調子が優先。相手関係はあまり考えない。一方で吉田勝己オーナーは新馬戦のメンバーが強いことを懸念していたという。ただ、松田調教師はかつて自身が手掛けた名牝ベガに匹敵する能力を感じ取っており、強い相手でも勝負になるだろうと踏んでいた。

レースでは出遅れて後方を追走。ゲート練習をあまりやらない厩舎なので、デビュー戦での出遅れは仕方ない。それでもメンバー最速の33秒5の上がりで3着に食い込んだ。この脚を見て「これは走る」と確信したという。レベルが高いからこそ見える素質の片鱗もある。

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ひと昔前は、クラシックの本命馬は師走の阪神でデビューするのが通例だった。クラシックを目指す素質馬ほど本番までに消耗することは避けたい。無理して早期にデビューさせると心身の成長を阻害することもある。そこで意識的に出走を遅らせる手法が取られた。夏の早い時期は無理をせずにじっくりと成長を促して、12月の新馬を確実に勝ち上がり、ホープフルSやラジオたんぱ杯、あるいは年明けの3歳重賞などで賞金を上乗せするのである。ダンスインザダークも、スペシャルウィークも、アグネスタキオンも、そしてディープインパクトも暮れの阪神デビューだった。

しかし昨今は事情が異なる。ドゥデュースは9月、スターズオンアースは8月、そしてジオグリフに至っては6月のデビューだった。こうして見ると伝説の新馬戦が行われた10月のデビューすら遅く感じる。我々はもう来年のクラシックホースを目撃しているのかもしれない。

 

 

***** 2022/6/28 *****

 

 

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2022年6月27日 (月)

史上最短の梅雨

なんと東京は梅雨が明けてしまった。

気象庁は1951年の統計開始以来、最も早く関東甲信が梅雨明けしたとみられると発表。梅雨の期間としても観測史上最短だという。帝王賞が梅雨明け後に行われるのもレース史上初めて。過去20年の帝王賞のうち実に4分の3に相当する15回までが道悪で行われているのはダテではない。だが、今年は4年ぶりの良馬場で行われることになりそうだ。

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ところで、2001年の梅雨明けは「7月1日」と記録に残る。それに比べればわずか4日の差でしかない。2001年といえばジャングルポケットがダービーを勝ち、メイショウドトウがついにテイエムオペラオーを破って宝塚記念を勝った年である。だが、梅雨明けが早かったことが話題になったという記憶はない。

実は最初にこの年の梅雨明けが発表されたのは7月11日である。だが、9月に入ってから気象庁が梅雨明け日を訂正すると言い出した。あらためてデータを見直したところ、7月1日の時点で梅雨は明けていたという。結果的に統計開始以後最早の梅雨明けが記録されたわけだが、秋風が吹く季節に梅雨のニュースが人々の興味を誘うはずもなく、そのまま記録だけが残された。逆に言えば、今年の梅雨明け日にしてもあとから修正される可能性がないわけではない。「戻り梅雨」という言葉もある。

梅雨とは「春から夏に移る時期、その前後に比べて雨と曇りが多くなる季節現象」と定義されるそうだ。気圧配置や降水量、気温などの基準があるわけではない。だから、梅雨明けの発表についても気象庁として「宣言」という言葉を使ったことはなく、あくまでも情報の提供という立場だが、それを受け取る側が「宣言」だと思い込んでいるフシがある。この辺の事情は桜の開花宣言にも近い。季節感をことさら大事にする日本人ならではの誤解であろう。

客観的な基準がないのなら、いっそ梅雨入り・梅雨明けの発表などやめてしまってはどうか―――。

そんな意見も少なくはないが、百貨店の売り場展開やCMの差し替えなどに影響するとして、なくなっては困るという声の方が大きいらしい。梅雨明け宣言が出た日は、ビールがよく売れるというのも業界の常識になっている。

東京の梅雨が明けた一方で、北海道・道南地方の週間予報には一週間先まで晴れマークが見当たらない。こうなると牧草が心配。函館の馬場も心配。トシを取るといちいち心配事が増える。

いちおう北海道にも「蝦夷梅雨」という言葉がある。だが、これは発生のメカニズムからしていわゆる本州の「梅雨」とは別物らしい。だが、現在の天気図を見る限り、今の北海道に雨を降らせているのはまごうことなき梅雨前線。北海道に梅雨入りが宣言される日も近いのかもしれない。

 

 

***** 2022/6/27 *****

 

 

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2022年6月26日 (日)

猛暑とトラブル

遅い朝食の最中に一本の電話がかかってきた。

「仕事場でちょっとしたトラブルが起きてます。お休みのところ申し訳ありませんが、すぐ来ていただけませんか?」

疑問形ではあるがNOとは言わせぬ切迫感が伝わってくる。しかし今日は関西の競馬ファンにとっては特別な一日。私も仁川に行かねばならない。しかし「ちょっとした」トラブルなら昼過ぎには解決するだろう。どうせ仕事場は仁川に向かう途中にある。楽しみにしていた「フランケル」のうどんを我慢すればどうにかなろう。

「はい、わかりました」と言って電話を切った。いま思えばこれが間違いの始まり。現場に到着するなり、それが「ちょっとした」問題ではないことはすぐに分かった。己の楽観主義を戒めなければなるまい。結果を言えばそのトラブルがようやく解決を見たのは、なんと17時過ぎである。競馬どころか昼メシにすらありつけなかった。

なにが「ちょっとした」だよ!

文句のひとつも言いたくなるがそこは我慢。これだけ暑ければ人だって判断力を鈍らせるに違いない。なにせ6月としては記録的猛暑である。

もともとのトラブルの始まりは金曜に発生した機械の故障だった。すぐにメーカーの保守員さんが来て、修理して帰った。ところが昨日になって同じ現象が再発。直した場所が違ったのかもしれない。そう言ってまた保守員さんが別のところを直した。そしたら今日は同じ機械で別のトラブルが起きた。こうなると何が間違っていたのか分からない。それでも機械のことは分かる人に任せるしかない

ともあれ、終わってみれば北村友一騎手の復帰後初勝利も、タイトルホルダーの超絶レコード勝利も、なによりあれほど楽しみにしていた柴田未崎騎手のラスト騎乗も見逃してしまった。これを「痛恨」のひと言で済ますにはあまりに痛い。

Cocolog

使うことのなかったカメラとレンズを抱えて帰宅したらココログが死んでいる。こちらも機械のトラブルだろうか。宝塚記念で11着に敗れたポタジェの吉田隼人騎手は、その敗因を今日の異常な暑さに求めた。オーソリティにしても暑さが何らかの原因だった可能性がある。京都・向日町ミッドナイト競輪は原因不明の停電で開催中止となった。機械も暑さに弱いとされるが、機械にかかわる人間だって暑さで正常動作がままならなくなる。ともあれ、この恨みつらみをブログに刻みつけてやろうと思ったのに、それすら許されないとは、よほど神様に見放されたか。ブログの更新は明日にして、もう寝よう。

―――と思ったらココログは22時前に復旧。投稿して寝ます。

 

 

***** 2022/6/26 *****

 

 

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2022年6月25日 (土)

パラダイスS1993

明日の東京のメインは芝1400mのリステッド・パラダイスS。 すっかり宝塚記念の裏番組として定着した感がある。

だが、かつてのパラダイスSはGⅠ戦線における箸休めのような存在だった。なにせダービー翌週の土曜メインである。お客さんも、騎手も、そして馬たちも、どことなくのんびりしていたのは仕方あるまい。前週までの緊張感はどこへやら。本格的な夏のローカルが始まるまでの、一種の調整期間のような開催だった。

そんな1993年のパラダイスSを勝ったのはトウショウフリート。名繁殖牝馬ソシアルバターフライの3×3という強い牝系クロスを内包することで注目を集めた。

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ダート1000mで挙げた初勝利は8馬身差。初めての芝のレースとなった臥牛山特別は6馬身差。そして、このパラダイスSも5馬身差の圧勝である。しかしコンスタントに使うことができない。そもデビューからして4歳の10月である。強さと同居する体質の弱さは近親配合の光と陰だ。

トウショウフリートは、このパラダイスSを最後に引退、種牡馬入り。大レースを勝つような産駒は輩出できなかったが、産駒のジェーントウショウ(こちらはダンディルートの3×2)が母となって重賞5勝のシーイズトウショウを送った。さらに、シーイズトウショウの仔・トウショウピストは2020年のパラダイスSに出走している。そのときは14着に敗れたが、10歳になった今年も現役続行中。2年ぶりのパラダイスS出走に期待したものの、登録はなかった。どうやら来月の福島テレビオープンに出走予定らしい。

Sheis

ところで先週土曜阪神の新馬を勝ったファントムシーフは、2代父と2代母がともにデインヒル産駒なのでデインヒルの3×3、しかもその2頭の母は100%同血(全姉妹)だから、実質的には2×2に相当する。強いインブリードを持つ馬が血統表に加わると、稀にとてつもない大物を送ることがある。ファントムシーフの次走に注目だ。

 

 

***** 2022/6/25 *****

 

 

 

 

 

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2022年6月24日 (金)

柴田未崎騎手引退

JRA初の双子騎手としても知られる柴田未崎が今月限りで騎手を引退することが報じられた。わけあってデビューから贔屓にしていた騎手のひとり。1996年3月のデビューだから、その付き合いは27年間に及ぶ。JRA通算3171騎乗で積み上げた勝利は94。この数字だけを見れば、苦労の方が多い騎手人生だったかもしれないが、それでもここまで長くやれたことは立派だ。本人も「最高の時間を過ごせた」とコメントしている。寂しくないと言えば嘘になる。それでもまずはお疲れ様と言いたい。

Misaki2

同期に福永祐一、 和田竜二らがいる「花の12期生」として双子の兄・大知とともにデビュー。1年目から12勝、18勝、19勝と着実に勝ち星を積み重ねた。しかし、その後は成績が低迷。重賞は未勝利。1999年のスイートピーSをフレンドリーエースで勝って挑んだオークスが唯一のクラシック騎乗。2011年には一度騎手を引退し、調教助手に転じたこともある。

Misaki1

調教助手に転じた直後のことだった。兄の大知騎手が11年と12年の中山グランドジャンプを制覇。さらに13年にはマイネルホウオウでNHKマイルCで平地GⅠ初制覇を果たす。その活躍ぶりに彼が刺激を受けないはずはない。もともと11年の騎手引退時には、不完全燃焼のまま辞めてしまったことを自分でも悔やんでいたという。

2014年の正月。我が家に届いた一通の年賀状は今も忘れない。差出人は美浦・斎藤誠厩舎所属だった柴田未崎助手。きれいな文字で書かれたその文面は例年にも増して長かった。前年秋のJRA騎手試験の1次試験を受験したこと。見事合格を果たしたこと。そして今は騎手復帰へ向けての最終関門、2次試験に向けて鋭意準備中だということ。デビューから注目してきた騎手が再びターフに戻ってくる。私にとってこれほどの喜びはない。

だからその年の7月27日福島9R栗子特別を7番人気・ヴァンデミエールで彼が勝った時、私は競馬場で泣いた。未崎騎手も泣いたていた。競馬で泣いたことなど何年振りだっただろうか。

「どこまでできるか分からないんですけど、自分で納得できるまでやりきりたいんです」

Misaki3

4、5年前に東京競馬場で会ったとき、本人はそう言っていた。それ以後は会えてない。復帰後は8年で12勝。普通の騎手なら少ないが、彼の置かれた立場からすれば十分のような気もする。果たして本人はどう思っていたのか。「成績は伴わなかったけど、やりきったという感覚はあります」というコメントもあった。「やりきった」という言葉にまた泣きそうになる。ラストライドは日曜阪神最終レース。所属厩舎ハクサンライラックへの騎乗を最後に鞭を置く。宝塚記念が終わったあと、ぜひとももう1レース注目していただきたい。

 

 

***** 2022/6/24 *****

 

 

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2022年6月23日 (木)

ウナギが届いた

今日は朝から蒸し暑い一日だった。さすがの私も体調下降気味。こんな調子では宝塚記念の馬券も当たる気がしない。梅雨の晴れ間も、そろそろありがたくない季節に差し掛かっている。

そんな私の体調を見透かしたかのように娘から鰻が届いた。やはりここいちばんで頼りになるのはルメールさんと私の好みを知る家族である。土用の丑の日にはまだ早いが、ここで食わずしていつ食べるのか。さっそく鰻丼にしよう。

私の母の実家は目黒で鰻屋を営んでいたので、私は幼少の頃から日々三度の食事に鰻重を食べ続けて育った……なんてコトはあるはずないけど、母の実家が鰻屋なのはホントです。毎日とは言わないけど、鰻が珍しい献立ではなかったことも間違いない。自宅にはあの鰻のタレビンが売るほどあったし、中学時代に毎日食べた弁当(給食ではなかった)も、週に一度は必ずウナ弁という有様だった。弁当箱を開けて鰻だったりすると、「あぁ~、また鰻かよ~」と天井を仰いだ記憶がある。

えー、これは決して自慢ではありませんよ、ただ単に事実を書いているだけ。

ともあれ、大阪に来て驚いたのは鰻の違いである。

東京は背開きにして蒸してから焼く。関西は腹側を裂いて、蒸さずに火にかざす。この違いを「武士の町、江戸では切腹を嫌ったため」とする説があるが、私は見栄えの問題だと聞いた。関西風の腹開きだと身の薄い腹肉が両端になり、焼いた際に丸まりやすい。逆に両端に厚みのある背開きの関東風は丸まりにくい。実質の関西に対し、見栄えを気にする江戸気質ということだ。ただ真偽のほどは明らかではない。

もちろん鰻を食べるとスタミナが付くという考え方は東西共通。丑の日に鰻を食べるのが広まったのは江戸時代からだが、夏バテ防止のために鰻を食べるという風習そのものは、万葉時代からあったとされる。大伴家持の歌に「夏やせに良しといふものぞ鰻捕りめせ」とあるのもその一端。つまり夏痩せしている人に「鰻を捕まえて食べなさい」と勧めているのである。本来なら鰻の旬は冬眠に入る前の晩秋だが、冬眠を必要としない養殖の鰻に走りも旬も名残りもない。送られてきた鰻も実に旨かった。これで体調も鰻のぼり。宝塚記念もバッチリだ―――と良いんだが……。

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***** 2022/6/23 *****

 

 

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2022年6月22日 (水)

投票の不思議

参院選が公示され、選挙の夏がスタートした。

日本記者クラブが正月に実施する恒例の「予想アンケート」10問の中に、「12月31日現在のわが国の首相は誰か」や「11月1日時点のマイナンバーカードの普及率が70%を超えるか」などという設問に並び、「参院選後、参議院の女性議員比率が全体で3割を超えるか」という設問があった。さらには韓国大統領選と米国中間選挙に関する設問も。投票結果を読み切るのはプロでも難しい。ましてや正月の時点である。

人気投票といえば今週は宝塚記念。ファン投票1位はタイトルホルダーで19万1394票。2位はエフフォーリアの18万8525票。1990年オグリキャップの15万2016票を大きく上回って歴代最多記録を更新した。当時とは投票方法も異なるとはいえ、やはり競馬ファンは投票が好きなのだと実感する。

その一方で「人気の盲点」が生まれることも珍しくはない。「この組み合わせでこんなにつくのかよ! そうと分かってりゃ買ってたよ」というセリフは競馬場でよく耳にする負け犬の遠吠え。逆に筆者の知人は、先日のマーメイドSの3連複を1点で的中させて「こんなにつくの?」と驚いたという。いくら買ったかのは昨今の世間情勢を鑑みて伏せるが、受け取った払戻金が帯封であったことには間違いないようだ。しかしいちばん驚いたのはレース後に配当を知った本人だった。

「前走の成績を見て普通の馬券を買ったつもりのに、なんでみんな買わなかったんだろ?」

前走、牡馬相手のオープンでコンマ5秒差に来ていたのはウインマンティー、マリアエレーナ、ソフトフルートの3頭だけ。あとからそう聞けばなるほど頷ける部分はある。実際、私自身もウインマイティ―を本命としていた。とはいえあのメンバーで一点勝負に打って出ることは私には無理。なので100円馬券をバラバラ投じる結果となった。件の知人にしてみれば、それが不思議で仕方ないらしい。

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最近の不思議な投票結果といえば、JRA顕彰馬選定投票でアーモンドアイが落選したことであろう。ご存知、歴代最多の芝GⅠ9勝を記録した歴史的名馬。資格初年度での選出はほぼ確実視されていたが、得票数は144票にとどまり、選定基準にあと8票届かなかった。

この問題については既にあちこちで論じられたから、ここで取り上げることは控える。これこそ投票の不思議―――。そう思って飲み込むしかない。議論の余地などないように思えるのに、なぜかこういう現象が起こる。人間とは不思議で複雑な生き物だと思えば良い。投票に穴はつきもの。馬券はその典型であろう。

ちなみに、冒頭に紹介した日本記者クラブの「予想アンケート」の2013年版には、「凱旋門賞で日本馬が優勝するか」という設問があった。前年、オルフェーヴルがあわやの2着となり、リベンジを期待する声が競馬ファンの垣根を超えて高まっていた当時の風潮を感じさせる。私なら「○」と答えたかもしれない。だが、結果は2年連続の2着。わずか2分先のレース結果さえも分らぬ私に、10か月も先の予想など無理からぬ話だった。

 

 

***** 2022/6/22 *****

 

 

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2022年6月21日 (火)

今度こそ

昨日のこと。地方競馬全国協会(NAR)、特別区競馬組合(大井)、兵庫県競馬組合(園田)、全国公営競馬主催者協議会、そしてJRAの5団体の代表が、東京都内のホテルで記者会見を行い、3歳ダート3冠競走の創設を骨子としたダートグレード競走体系の整備の大幅見直しを発表した。

「交流元年」と謳われた1995年。ライデンリーダーとライブリマウントの活躍が中央と地方の垣根に風穴を開けると、1997年4月には交流重賞に統一の格付けを行うダートグレード競走がスタート。それからちょうど四半世紀が過ぎたこのタイミングでの見直しは、ダート競馬に対するファンの意識が変化してきたことに加え、見直しに必要なコストに対するメドが立ったということであろう。

サウジダービー、UAEダービー、そしてケンタッキーダービーに参戦し、しかも結果を伴っている昨今の風潮は、それだけ見れば素晴らしいことだが、裏を返せばダート適性の高い3歳馬が目指すべきレースが国内で行われていないことの現れでもある。

また、7月に行われるジャパンダートダービーに各地の有力馬が集まらないことも課題のひとつ。黒潮盃には来るのにJDDに来ないのは、相手関係もさることながら、各地のダービーが行われて1か月足らずに行われる日程面の問題も指摘されていた。各地の有力馬が地元のダービーに全力投球するのは当然のこと。しかも全国各地から大井までの輸送を伴うと思えば、参戦に二の足を踏んでもそりゃあ仕方ない。

今回の最大の見直しは、3歳ダート3冠競走が整備されること。南関東限定で実施されてきた羽田盃、東京ダービーを再来年からJpn1に格上げし、JRAや他地区の所属馬も出走できるように変更するらしい。ジャパンダートダービーは名称を変更した上で秋へ移す。これにより各地のクラシック戦線を戦い抜いた疲労をいったんリセット。フレッシュな状態で全国各地の有力馬同士の対決が期待できる。

3冠の頂点となる東京ダービーの1着賞金が現行から倍増の1億円となるなど、賞金も大幅アップ。これを目当てにJRAからさらなる強豪メンバーが大井に乗り込んでくる可能性は高い。しかし、それでも敢えて開放に踏み切った地方には、相当の覚悟を感じる。長い目で見れば地方側にプラスに働く可能性は高い。主催者も調教師もそこは分かっている。しかし馬主とすれば異論もあろう。牝馬路線に手を付けないのはそのせいかもしれない。

社台グループは数年前からダート血統の生産に力を入れ始めている。いずれこのような時代がくると読んでいたのか。マルシュロレーヌのBCディスタフ制覇は、そういった方針の現れとも聞く。いずれにせよ日本には優れたダート馬がたくさんいるのに、強ければ強いほど3歳時はどうしても芝を走らざるを得ない現状がある。今回の見直しは、そんな現状に一石を投じる程度にとどまって欲しくはない。今度こそ日本の3歳ダート路線問題にケリを付けてもらいたい。

ところで、開催時期が秋に移るジャパンダートダービーは、果たして何というレース名に生まれ変わるのだろうか。

少なくとも「スーパーダートダービー」だけはやめてほしい。1996年に誕生した秋の大井2000mで行われるこの3歳交流重賞を覚えている人は、もはや少数派であろう。ユニコーンS、ダービーグランプリ、そしてこのスーパーダートダービーの3鞍で「3歳ダート3冠」と銘打ったが、たいした盛り上がりも見せずにわずか3年で終焉を迎えた。「今度こそ」と私が強く願うのは、その辛酸が忘れられないからである。

Wing

 

 

***** 2022/6/21 *****

 

 

 

 

 

 

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2022年6月20日 (月)

駅 ~STATION~

金曜日に佐賀競馬場ではなく敢えて長崎を訪れたのは、「新幹線開業前の今のうちに訪れておかなければ」との切迫した思いがあったからだ。

ご存知の通り、9月23日に西九州新幹線「かもめ」が武雄温泉~長崎間で営業運転を開始する。長崎駅に造られた新たなホームは新幹線の到着をまつばかり。広大な更地が広がる駅前も再開発が急ピッチで進んでいる。新幹線の開業を今や遅しと待ち望んでいる方は多いと思うが、逆に在来線での旅路を体験しておきたいと思う人もいるに違いない。私もその一人である。

Nagasaki

旅の本質は目的地の観光ばかりではなく、むしろその道中にこそある。しかし交通手段の合理化に伴い、旅人はその本質たる部分を省略して、目的地における見聞のみを求めるようになってしまった。新幹線や飛行機の登場はその最たるものであろう。旅は本質的に変容してしまったのである。その変容の果てに道中は旅にとって必要のない要素に―――いや、ややもすれば目的地に着くまでの「我慢すべき時間」に成り下がった。そういう視点に立てば「変容」ではなく「退行」と呼ぶべきなのかも知れない。

Nagasaki2

そう考えると私が旅を楽しんだのは、長崎に滞在した3時間足らずではなく、往復に要した4時間を含めるべき。実際それは楽しい経験であった。田植え前の長閑な田園地帯が広がる車窓の風景が、肥前鹿島駅を過ぎると干潟が広がる有明海に様変わりする。特急とはいえ海岸沿いの曲がりくねった単線を進む速度は思いのほか遅く、車窓を楽しむには申し分ない。雲仙普賢岳や諫早湾の干拓堤防をこの目で見たのも初めてだ。

Tosu

翌日は佐賀競馬場に向かうため鳥栖駅で列車を降りた。

Rale

明治時代に建てられた駅舎は、現在も同じ姿をとどめている。当時使われていたレールの廃材はホームの柱として今も屋根を支えており、そのレトロ感から「駅」を目当てにわざわざ下車する人もいるそうだ。

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改札の待合室には「中央軒」が暖簾を守り続けている。かしわうどんが評判だが、中でも「5・6番線ホーム」がいちばん美味いという不思議な噂で知られることは以前このブログでも紹介した。鳥栖駅構内で営業するほかの店舗も使っている材料や調理法は全く同じ。なぜそんな噂が広まったのかは謎のままだ。

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ホームの店舗との違いと言えば、待合室の店舗には椅子があることか。駅弁の方で店番をしていたお母さんが、サッと一杯作って、また駅弁の方に戻っていった。たしかに座って食べるかしわうどんは、なんとなく味わいが異なる気がしないでもない。そもそも九州初の立ち食いうどん店という出自を考えれば「立って食べた方が美味い」説には頷ける部分もある。

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新幹線が走る隣の「新鳥栖」駅にも「中央軒」はある。しかし、この味が鉄道利用者に支持され、まことしやかな都市伝説まで生まれるその下地は、やはりこの駅そのものにあるに違いない。「旅」の本質は目的地への道中にこそある。こうした一軒に触れるにつれ、その言葉の重みを実感せずにはいられない。

 

 

***** 2022/6/20 *****

 

 

 

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2022年6月19日 (日)

今日は父の日

佐賀王冠賞に後ろ髪を引かれつつ、朝イチの便で福岡空港を発って仁川へ。梅雨の晴れ間に恵まれた阪神は芝の緑が眩しい。気分はすっかり夏競馬ですな。

8レースは1勝クラスの芝1400m。勝ったのはママコチャ。牝馬クラシック戦線で強い相手と接戦を演じてきた力は、ここでは一枚上だった。お父さんはクロフネ。ご存じソダシの全妹だがその姿は白くはない。

Mama

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9レース・三木特別は2勝クラスの芝1800m。前走で勝ち馬から5秒以上離されて、初めての芝挑戦だったロングランが勝ってしまうのだから競馬は分からない。ブービー人気での激走。お父さんが芝・ダートで頂点を極めたヴィクトワールピサというのも、いま振り返れば頷けるものがある。

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Vic

10レース・オークランドサラブレッドレーシングトロフィーは3勝クラスのダート1800m。速いペースで逃げたメイショウフンジンだったが、直線に向いて外から押し寄せた後続馬群に飲み込まれた。さあ、差し脚勝負だ!と身構えると、内からすごい勢いで伸びてくる一頭がいる。なんだとレンズを向ければ先ほど馬群に飲まれたはずのメイショウフンジンではないか。その勢いは他馬とは比べ物にならない。その力強い脚色はお父さんのホッコータルマエを彷彿させる。

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Hokko

11レース・マーメイドSはJRA屈指の荒れる重賞。前走で条件戦を負けた51キロ以下の格下馬が好走することはファンもよく知っている。もちろんJRAのハンデキャッパーも。そのせいか今年は毎年数頭いるはずの50キロ以下の超軽量馬がいない。JRAとしても格下馬ばかりに勝たれては困る。そうした匙加減が働いているのかもしれない。1番人気が6.2倍。10番人気でも14.6倍。ファンの迷いがオッズに現れている。

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Gold

勝ったのはその10番人気・ウインマイティ―であった。忘れな草賞以来2年ぶりの勝利。アカイイトやルビーカサブランカを一蹴したときと同じ阪神2000mで勝ち方を思い出したのかもしれない。その芦毛はお父さんのゴールドシップ譲り。ゴールドシップ産駒は昨年の目黒記念以来1年ぶりの重賞勝利となった。孝行娘の活躍にゴールドシップもさぞや喜んでいることだろう。今日は父の日。

 

 

***** 2022/6/19 *****

 

 

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2022年6月18日 (土)

薄暮競馬

昨夜は福岡に宿泊。

朝食を食べながら考えた。佐賀競馬場に行くことは決めているが、ナイター開催だから第1レース発走は昼過ぎになる。それまでどこかで過ごさなければならない。それで向かったのが中洲の繁華街に建つこちらのビル。

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エレベーターで4階に上がると、

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こんな空間が広がっていた。

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そう、ここはエクセル博多。革張りのシートには専用モニターが設置されており、函館、阪神、東京のオッズやパドックを映し出している。ここで佐賀が始まるまで時間を潰すことにしよう……と思ったが、あまりの快適さにここで1日過ごしてしまうかもしれない。

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何よりホテルの部屋からは3分とかからぬ距離。実質的にホテル内の施設に行き来するのと変わらない。実際、一度テレビを観るために部屋に戻った。食事はエクセルの地下に博多っ子御用達のウエストが燦然と営業している。レースの合間に肉ゴボウうどんをすすって席に戻ることも十分可能だ。

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しかし快適だから馬券が当たるわけでもない。阪神の10レースが外れたところで河岸を変えることを決断。地下鉄、JR、バスを乗り継いで1時間かけてたどり着いた先はこちら。

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佐賀競馬場ですね。阪神10レースを終えてからの移動でも、佐賀の6レースに十分間に合った。まだたっぷり買えてしまう。さすが日本最西端の競馬場だけあって日が長い。

19時になっても照明灯に頼らずレースが行われている光景に、かつて英国ウインザーで観た本場の薄暮競馬を思い出した。スタンドやパドックなどの設備が古いこともそうした印象を後押しする。薄暗いフロア。パドックの手書き馬名。新500玉を受け付けない券売機。たまに馬券が当たっても、フロアに3台しかない払戻専用機の前に行列しないと払戻金を手にすることができない。園田も高知も、地方競馬場の設備がどんどん新しくなっている中で、佐賀だけは昭和のまま時計が止まっている。エクセル博多の快適な設備を満喫した直後だけに、そのギャップが気になって仕方ない。

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18時55分発走の10レースは佐賀デビューの3歳馬による特別戦。圧倒的な人気を集めたラスクミソが九州ダービー栄城賞6着の実力を見せつけて完勝した。

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未勝利の身で望んだダービートライアルで待望の初勝利。ダービーはさすがに相手が強かったが、秋に向けての仕切り直しとしては申し分ない競馬だった。父ルーラーシップ。母の父フジキセキと奥も深そう。佐賀競馬場の古さはさておき、ラスクミソの走りの印象は忘れないでおきたい。明日は阪神だ。

 

 

***** 2022/6/18 *****

 

 

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2022年6月17日 (金)

3時間だけの長崎

先週の広島に続いて、今日は長崎へ。別に被爆地巡礼をするつもりはなかった。朝9時に博多到着。当初の予定はここから佐賀競馬である。しかしどうも勝てる気がしない。むしろ大負けの予感すら漂う。確たる根拠はない。だが、どうせ明日も佐賀の予定である。ならば足を踏み入れたことのない長崎に行ってみよう。時刻表を調べると、いちばん早い特急に乗れば11時23分に現地に到着。戻りは14時19分に乗れば約束の時間に間に合う。現地滞在3時間足らずで何ができるか。考えるより先に特急かもめ11号に飛び乗った。

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有明海とその先にそびえる雲仙普賢岳を眺めつつ、およそ2時間で長崎駅に到着。迷うことなく路面電車に乗り換える。のんびりしている暇はない。

普段は行き当たりばったりにひたすら歩くことを旨とするタチだが、今日に限れば2時間の車中でしっかり調べてきた。なにせ3時間しかないのである。目標は五島うどん、ちゃんぽん、そして世界遺産の3つ。ある程度事務的にこなさければ、コンプリートは難しい。

まずは五島うどん。路面電車を降りて、ネットの地図を頼りに歩く。すると地図に示された辺りに「うどん」の看板を発見。店舗外観撮影の時間も惜しんで、迷わず入店した。

メニューを見てゴボウ天うどんを注文。しかし、すぐに運ばれてきた一杯を見て「おや?」と思った。五島うどんの割には太い。しかも縮れが入っている。ストレート細麺が五島の特徴。慌ててメニューを確認すると「うどん・そば」とある。そこでようやく「店ちがい」に気付いた。しかし出された以上食べぬわけにはいかない。熱々のうどんを火傷上等とばかりに流し込んで店を出ると、目当ての「あじぽんず」は隣だった。うどん屋さんが二軒並んでいるなんて思わないけど、長崎では普通なんですかね。

ともあれ貴重な時間を15分もロスしてしまった。昼時にもかかわらず「あじぽんず」が比較的空いていたのは不幸中の幸い。しかも期待にたがわぬ一杯。アゴだしのすっきりした味わいと、ツルリと喉を通る独特の麺は、たった今他でうどんを食べてきたことを忘れさせるほど舌に馴染む。スタッフの雰囲気も良く、急ぐ私のために注文と同時に会計も済ませてくれた。おかしな奴だと思ったに違いない。しかしダシの旨さは捨てきれず、最後まで飲み干して次の目的地へと急ぐ。

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次はちゃんぽんの予定だったが、さすがに2杯食べた直後の腹にちゃんぽんはキツい。スケジュールも予定より押している。今となってはあの店違いが悔やまれるが、順番を変えて世界遺産にするしかない。それで大浦天主堂とグラバー邸を訪問したが詳細は割愛。ついでに映画「アオハライド」や「解夏」にも登場する祈念坂を登ってみた。

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息も絶え絶えに坂を登り切ると「南山手レストハウス」という施設がある。手入れされた庭にベンチとテラス席に自販機とトイレ。誰でも無料で利用できるが、今は誰もいない。ジトッとまとわりつくような蒸し暑さのせいか。それでも時折吹き抜ける海風が心地よい。空には手の届きそうな高さでトンビが円を描いている。港から汽笛が響いた。すぐ隣のグラバー邸の喧騒が嘘のような静かな時間が流れている。ここで先を急ぐのはもったいない。ここを今回の長崎のピークと定めよう。

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残り時間は少ないが、祈念坂を下りて「四海樓」でちゃんぽんを食べた。こちらの店はちゃんぽん発祥の店。当初は「支那饂飩(しなうどん)」の名で出されていたというから、このブログで取り上げても良かろう。うどんを2杯食べた直後でどうかと思ったが、なんだかんだ言って食べれるものですね。食べ終えたところで初めての長崎の旅は終了。帰りの車中で佐賀競馬の結果を確認すると、狙っていた馬が5番人気でしっかり勝っていた。予感なんてアテになりませんな。まあ、仕方ない。明日こそ佐賀で勝負だ。

 

 

***** 2022/6/17 *****

 

 

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2022年6月16日 (木)

ロングの馬たち

ロングはいったいどこへ行ってしまったのだろう―――。

遠くの空を見つめながらそんな風に呟くファンは、さすがにいまい。だが私には、かつて冠名「ロング」、すなわち中井オーナーの所有馬を追いかけた時代があった。菊花賞3着のロングイーグルにエリザベス女王杯優勝のロンググレイス。小林稔厩舎1~3着独占のダイヤモンドSで3着に入ったのはロングシンホニーで、ロングアポロンは障害戦で長く活躍した。七夕賞を勝ったロングカイウンも2400~2500m戦で4勝を挙げている。

彼らはその名の通り「長い」ところを得意とし、長距離レースで存在感を示した。そこが格好良い。ところが、相次ぐ距離体系の見直しにより長距離レースは姿を消す一方。それとまるで歩調を合せるかのように、ロングの馬たちを見る機会も減ってきた。現時点でJRAに登録されている冠名「ロング」の馬はロングファイナリーただ一頭しかいない。

今週の東京メインは、JRAではこの世代初めてとなるダートの重賞・ユニコーンS。2007年のこのレースを勝ったのは、武豊騎乗のロングプライドだった。いまのところ、これがサクラローレル産駒による最後のJRA重賞勝利であり、この勝負服による最後のJRA重賞勝利でもある。

それにしても、あれは強い競馬だった。4コーナーでは9番手。直線で外に出されてもなかなか伸びてこない。あと100。ダメか……。そう思った瞬間、矢のように伸びて先頭のフェラーリピサを差し切ると、武豊騎手の左手が挙がった。

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1600mでこんなに強いのなら、2000mではどれだけ強いのだろう。なにせ父はサクラローレル。しかも「ロング」の冠名を戴く馬である。そう思ったのは私だけではないのかもしれない。続く大井・ジャパンダートダービーでは単勝1.5倍の圧倒的人気を集めた。だが、結果は3着。武豊騎手は首をひねった。私も首をひねった。毎年カネヒキリ級が誕生するわけではない。それは分かっていたつもりである。それでも期待してしまうのは競馬に関わる人間の性(さが)としか言いようがない。

 

 

***** 2022/6/16 *****

 

 

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2022年6月15日 (水)

南関東牝馬3冠の難しさ

第58回関東オークスは、雨の川崎競馬場2100mに地方・中央合わせて13頭の3歳牝馬が集結して行われ、4番人気のグランブリッジが優勝。桜花賞と東京プリンセス賞の優勝馬で、チャームアスリープ以来2頭目となる南関東牝馬クラシック3冠に挑んだスピーディキックは3着に敗れた。

チャームアスリープを知らぬ人のために16年前の南関東牝馬クラシックを振り返ってみる。

まずは浦和の1600mで行われる桜花賞。ある程度前につけなければ厳しい小回りコースにもかかわらず、内田博幸騎手が選択したポジションは11頭中8番手。大丈夫か? 背後からたしかにそんな声を聞いた。

それでも向こう正面から一気に進出すると、3コーナー過ぎには早くも先頭に並びかける。こりゃあ、さすがに無理じゃないかと思いながら、そのまま粘るスターオブジェンヌを競り落とし、1馬身半差を付けてゴールを果たした。馬の力もさることながら、内田博幸騎手の手綱さばきが光った一戦でもある。東京プリンセス賞もさることながら、さらに距離が伸びる関東オークスへの展望が広がった。

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だが、その内田博幸騎手は東京プリンセス賞でチャープアスリープに騎乗できない。当時はダーレーへの騎乗を優先しなければならない立場だった。代打に指名されたのは今野忠成騎手である。騎乗依頼を受けた時は思わず「ぼくで良いんですか?」と言ってしまったらしい。

レースは雨水が浮く不良馬場。なのに、チャームアスリープはまたも馬群の後方で泥を浴びている。しかし今野騎手は慌てない。3~4コーナーにかけて1頭また1頭と前を交わしながらじわじわと進出。このあたりは今野騎手ならではの立ち回りの巧さであろう。直線に向けば前を交わすだけ。ゴール寸前できっちり捉えて2冠制覇を達成した。

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ちなみに桜花賞で2着に敗れたスターオブジェンヌの手綱を取っていたのは、当時まだ重賞未勝利だった真島大輔騎手。悲願の初タイトルは歴史に名を残す名牝の前に惜しくも先送りとなった。そして、東京プリンセス賞の2着は、当時まだ南関東リーディングのベストテンに名を連ねたことすらなかった戸崎圭太騎手である。つい最近のことだとばかり思っていたが、改めて振り返ると16年の月日は意外に重い。

史上初となる牝馬3冠への期待を背負い、JRA勢を迎え撃つ関東オークスは、この年からGⅡに格上げされ、JRAの出走馬もレベルが上がっていた。中でも筆頭格は前年の全日本2歳優駿を制するなど交流重賞3勝のグレイスティアラ。再びチャームアスリープの背中に戻ってきた内田博幸騎手は、相手をグレイスティアラただ一頭に絞っていたという。グレイスティアラは後続を大きく引き離して直線に向いた。しかしチャームアスリープもこれを猛追。ゴールのわずか手前で差し切ってみせたその姿は、まるで菊花賞のライスシャワーを彷彿とさせるようなシーンだったと記憶する。

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南関東でも屈指の難コースとされる浦和1600m。長い長い直線で底力が問われる大井1800m。さらに牡馬3冠でも設定されていない2100mという距離。3冠それぞれのレースが、まったく違った能力を求められるという点で、南関東における牡馬と牝馬の3冠戦線は大きく異なる。そういう意味ではチャームアスリープの牝馬3冠は、もっともっと評価されて良い。2歳時の成績ではチャームアスリープを遥かにしのぐスピーディキックの敗戦はそれを裏打ちするものであろう。とはいえ南関牝馬3冠の①着、①着、③着はじゅうぶん胸を張れる成績。スピーディキックの勝負はこれからだ。

 

 

***** 2022/6/15 *****

 

 

 

 

 

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2022年6月14日 (火)

地の利

「三里うどん本舗」を出て海岸沿いを競馬場へと向かう。天候は快晴。梅雨の季節を思えば奇跡的ともいえる天候に恵まれたことをお天道様に感謝したい。なにせ本日は高知のダービーデー。50回目の節目を迎える高知優駿が行われる。

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1着賞金は昨年の1000万円から一気に1600万円に増額された。これは全国の地方競馬で行われるダービーとして、東京ダービー、兵庫ダービーに次ぐ高額。10年前の1着賞金が27万円だったことを思うと「ホントに同じレースか?」と疑いたくもなる。つまりは活況の裏返し。スタンドの設備も来るたび新しくなっているし、場内には若い女性や子供連れが目立つ。たまに聞こえる野太いヤジがなければ、「ああ、高知に来てるんだな」と実感することもない。昭和の鉄火場の面影はどんどん薄れてつつある。

高知優駿は全国地方交流競走であるから、高額賞金を狙って他地区から遠征してくる馬も少なくない。例年は兵庫と佐賀が中心だが、今年は南関東から3頭がやって来た。道営重賞勝ちで東京プリンセス賞2着のコスポポポラリタ(大井)などは、過去の遠征馬に比べて明らかに格上であろう。賞金が上がれば遠征馬のレベルも上がる。1着で1600万なら東京ダービーの2着賞金1750万とさほど変わらない。相手関係を天秤にかけて、敢えて高知を選んだ陣営もあるようだ。

オッズをそれを敏感に感じ取っている。1番人気がコスモポポラリタ。2番人気はアイウォール(浦和)。その関係者らしきグループから「この2頭で決まったら南関優駿だな」という声が漏れ聞こえてきた。

しかし、高知優駿が全国地方交流となった2017年以降、遠征馬が優勝したケースは、2018年スーパージェット(佐賀)の一度きり。理由は様々あろうが、やはり日本一とも言われるほど深い砂と無関係ではあるまい。同じ全国地方交流の黒潮スプリンターズカップでも、遠征馬で優勝したのは今年のイグナイターただ一頭。そのイグナイターは黒船賞でもJRA所属馬を相手にしなかったように、もともと深い砂への適正が備わっていた可能性が高い。

黒船賞では2頭の高知所属馬も掲示板に載る健闘を見せたし、黒船賞のひとつ前に行われたJRA条件交流はりやま盃では、6頭のJRA所属馬が人気を集めたものの、3着オンワードセルフ以外はことごとく掲示板を逃している。高知の砂を初めて経験する馬は、通常よりパワーを要する馬場に戸惑うこともしばしば。地元勢は文字通りの「地の利」を活かしたい。南関東の重賞級相手でも互角か、あるいはそれ以上に戦えるはずだ。

実際のレースでもコスモポポラリタは後方から徐々に進出。3コーナー過ぎから懸命にスパートしたが、ゴール前では逆に脚色が鈍って2着を逃した。圧倒的有利とされる外枠を活かせず、勝負所で砂のより深いインコースを通ったことで、体力消耗に拍車をかけた可能性は捨てきれないが、トップジョッキーを配しての結果となれば受け入れるしかない。

勝ったのは地元のガルボマンボ。2着は黒潮皐月賞馬で2冠を目指したヴェレノ。地元高知勢のワンツーフィニッシュにスタンドは大いに沸いた。

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2戦続けてヴェレノに敗れていたガルボマンボだが、2走前の1400m戦がコンマ4秒差で、1800m戦の前走がハナ差。そして今回1900mでついに逆転を果たした格好になる。父のガルボは短距離戦線での活躍が目立ったが、その父がマンハッタンカフェであることを思えば、距離が伸びて真価発揮のタイプかもしれない。父にビッグタイトルをもたらした孝行息子は、高知のダービー馬として大井・ジャパンダートダービーに乗り込むことになる。注目しよう。

 

 

***** 2022/6/14 *****

 

 

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2022年6月13日 (月)

坂の上のうどん

フェリーで松山に上陸すると、ただちに名物の鍋焼きうどんを一杯ひっかけた。

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いりこの香り漂うダシには、独特の茶色いチクワや、牛肉、油揚げ、そして海老天などの具がたっぷり。松山で鍋焼きうどんが広まった理由ははっきりしないらしいが、戦後間もない頃には既に地元で親しまれ、現在も市内の100店舗以上で味わえるという。甘めのダシをたっぷり吸った麺は讃岐よりも柔らかく、旅の疲れた胃袋を優しく癒してくれる。この日はこれにて終了。

翌日曜日は朝から好天に恵まれた。遥か坂の上にそびえるのは松山城の天守。空には白い雲。小説「坂の上の雲」に登場する3人の主人公のうちのひとりは、「日本騎兵の父」と言われ日露戦争でコサック騎兵と死闘を繰り広げた秋山好古である。遥か昔の話。しかし、こうしている今もロシアと戦争をしている人たちがいる。

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レンタカーをピックアップして高速を東へと向かう。途中、いよ小松ICでいったん高速を降りた。一般道を走ること5分。のどかな田園地帯に「優月」の看板が見えてくる。地元では知られた釜揚げうどん専門店。しかも1杯400円だから安い。注文して茹で上がり待つこと10分。並々とうどんの入ったドンブリとつけダレが姿を現した。

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うどんは讃岐よりも太く、柔らかい。茹で汁のせいか塩味も控え目に感じる。だが、それをタレの旨味がしっかりとカバー。甘めのタレにはネギ、ゴマ、ショウガ、天かすといった薬味が入ってアクセントになっている。コロナ前は自分で好きなように薬味を投入して味の変化を楽しめたらしいが、残念ながら今はそれはできない。コロナが明けるのを待とう。

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ドライブを再開。さらに東へと向かい。川之江東JCTから一転南下。高知を目指す。

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高知では市街地を抜けて海沿いへ。一風変わったうどん屋さんがあると聞いてやってきたものの、カーナビをもってしても場所が分からない。仕方なく徒歩で店を探す。すると狭い路地を登った坂の上に「うどん」の幟を発見した。まさに「坂の上のうどん」だ。

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お店の名前は「三里うどん本舗」。開放感満載の店内に先客の姿はなく、お店の方の姿もない。営業中なのかどうかも分からない。ただ、2匹の猫が軒先で遊んでいるだけ。その姿を眺めていると、店主と思しき人物が猫を呼びに来た。すかさず挨拶。すると店内へと手招きされた。どうやら営業中であった模様。醤油うどんを注文して茹で上がりを待つ。店の外では先ほどの猫たちが行ったり来たりしている。

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うどんを運んできてくれたのは奥様だった。何種類かある醤油の説明を受けて「広島カキ醤油」をチョイス。代金と引き換えにドンブリを受け取るシステム。醤油をかけまわして、一口啜ると華やかな小麦の香りが口中に満ち溢れた。柔らかそうに見えて、のど越しも爽快至極。これは美味いうどんだ。

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聞けば、香川県内で人気のうどん店をご夫婦で営まれていたのだが、うどん文化を広めたいとの一心で高知に移り住んだらしい。ならばこの味は納得できる。だがしかし、うどんを提供するのは土日祝のみで、月火金はラーメンを出しているという。実際、持ち帰り用の中華麺も販売していた。これだけ旨いうどんを出せるなら、うどん一本でも良さそうなものだが、そうでないあたりが「一風変わった」の理由。こうなるとラーメンの味も気になる。とはいえ高知競馬と組み合わせるとなれば土日以外に訪れるのは難しい。今後に向けた大きな課題だ。

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***** 2022/6/13 *****

 

 

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2022年6月12日 (日)

呉に見つけた佐賀

昨日の続き。

広島から海沿いを電車に揺らて30分。呉に到着した。目当ては海上自衛隊呉資料館。「てつのくじら」の愛称で呼ばれているらしい。ショッピングモールを抜けると、突如として目の前に本物の潜水艦が現れた。

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横須賀で艦橋部分だけをちょこんと水面に出している姿は見てきたが、それはまさしく氷山の一角に過ぎないことを痛感する。なるほど「鉄の鯨」とは言い得て妙。しかし後ろを振り返れば、家族連れで賑わうショッピングモールである。さすがは呉。この感覚は来てみないと味わえない。

資料館は思いのほか混んでいた。若い男女もいれば、小さな子供連れの家族もあり。社会科見学か修学旅行か分からんが学生のグループがいて、さらには中年の団体の姿も。キャパのせいもあるが、先ほど訪れた平和記念資料館よりも混んでいる。そういう意味では来る価値があるのであろう。何より無料なのが嬉しい。

資料館を出て来た道を戻る。ショッピングモールの反対側の雑居ビルが立ち並ぶエリアに今度はこんな看板を見つけた。場外馬券売り場「DASH呉」。なんと、佐賀の馬券が買えるという。

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思わず「おぉ!」と声を上げてしまったが、つい1時間ほど前までウインズ広島にいたばかりである。なんでここまで来て佐賀の馬券なんて買わなきゃならんのか。なんて言いながらも、足は売り場に向かっているのが情けない。

驚いたことに館内の客は私ひとりであった。佐賀1レースの発走まで時間があるせいもあろうが「てつのくじら」とは正反対。受付で入館者の検温をしているおじさんも暇そうにしている。周りに人がいないとギャンブル感が希薄になるが、ご時世柄空いていることは悪くない。ズラリと並んだオッズモニターや券売機はすべて私専用である。馬券一枚を買うのに大行列に並んだ経験を持つ私にとって夢のような環境だ。

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気を良くした私は佐賀1レースで珍しく1番人気を買ってみた。せっかくなので、当てて記念の払い戻しを受けたかったのである。結果はまさかのシンガリ負け。単オッズ1.8倍ですよ。まさか私のせいだとは思わないけど、ついでに買った最終レースの馬券も外れたところを見ると私のせいなのかもしれない。オーナーに申し訳ない。

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初めての呉は潜水艦と佐賀競馬の印象を残して終了。ではこれより、フェリーに乗船して松山に向かう。

 

 

***** 2022/6/12 *****

 

 

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2022年6月11日 (土)

広島に見つけた京都

中央地方を合わせた国内全競馬場踏破はずいぶん昔に達成してしまったので、今は「国内全ウインズ踏破」を新たな目標にしている。ただ、そこまでして頑張るほど価値があるとも思えないので、まあボチボチやってます。それで今日はウインズ広島にやってきた。広島自体が初訪問なので、当然こちらのウインズも初訪問となる。

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人生初の広島に降り立って真っ先にウインズを訪れるなんて叱られてしまいそうだが、このあとちゃんと平和記念公園にも足を運びます。ご安心を。ここで一日過ごすほど暇ではない。はず。たぶん。

建物の中をぐるぐる歩いていたら、立派なお店が入っていた。それがまさかのうどん屋さん。ウインズ内にちゃんとしたうどん屋さんがあるなんて珍しい。その屋号を見れば「味味香」とある。京都祇園の有名カレーうどん店ではないか。お休みのようなので、味は確認できないが、間違いあるまい。

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京都祇園の本店はあのペリエ騎手のお気に入りだった。ペリエ騎手の好物がカレーうどんであることはつとに有名。トレセンの食堂でもカレーうどんを器用に啜りながら、会見に応じたりするほどだった。日本人でも食べるのが難しいとされるカレーうどんを器用に食べるその技にこそ、どんな癖馬でも手の内に入れてしまう秘密が隠されているのかもしれない。んなワケないか。

そんなペリエ騎手がルメール騎手を伴って祇園の本店を訪れたのは2009年11月末頃のこと。当時JRAのGⅠだけでも合わせて15勝もしていた2人が、一緒にカレーうどんを啜っている。なんというか凄い光景ですよね。もし、そんな場に居合わせてたりしたら、その週末のメインレースは、絶対にその2人の一点勝負に出ちゃいそうだ。

ちなみに、その週末に行われたレースはジャパンカップ。勝ったのは女傑ウオッカ。その手綱を取っていたのはルメール騎手である。オウケンブルースリとの壮絶な叩き合いの末に勝ち取ったあの僅かなハナ差は、味味香のカレーうどんのパワーによってもたらされたのかもしれない……と考えるのはうどん好きの勝手。あの日を思い出して、まもなく始まる東京4レースはルメール騎手と内田博幸騎手の単複で勝負したら。6番人気の内田さんが3着に入って少しだけ儲かった。味味香にはありつけなかったが、これで広島名物「むさし」のうどんでも食べることにしよう。

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***** 2022/6/11 *****

 

 

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2022年6月10日 (金)

女王陛下の情熱

英国のエリザベス女王陛下が即位70年を迎えられ、数日間にわたって記念行事「プラチナ・ジュビリー」が行われた。2日には近衛騎兵隊や軍楽隊によるパレードが盛大に行われ、女王陛下はパレードには参加されなかったものの、バッキンガム宮殿のバルコニーに姿を現し、近衛兵らから敬礼を受けている。

お元気そうで何より。そう思ったのだが、4日に行われたダービーの観戦は「身体的な負担を考慮」して欠席されたらしい。何より競馬が好きで、毎年欠かさず観戦されてきた女王不在のダービーは、的場文男騎手不在の東京ダービーとは比較にならないほどの衝撃を受けた。

女王陛下の競馬好きは英国人ならだれでも知ってる。自らサラブレッドの生産や所有をされていることは言うまでもない。愛読書はもちろんディック・フランシス。米国訪問があればケンタッキーダービーに合わせて渡米し、ホテルではなく現地の牧場に宿泊される。我々ファンは見習うべき存在だ。

女王陛下が来日されたのは1975年のこと。それを知ったJRAは、京都競馬場で来日記念レースを開催し、女王陛下によるご観戦を実現させるべく奔走する。だがしかし、結果的に京都競馬場への来場は叶わなかった。理由は「スケジュール多忙のため」とされたが、実際には警備上の問題であったらしい。なにせ先述の通り馬最優先の女王陛下のことである。競馬と聞けばスケジュールなど平気で変えてしまったに違いない。

ちなみに、この前年の英1000ギニーと仏オークスを優勝した名牝ハイクレアは女王陛下の自家生産馬として知られるが、もっと分かりやすいところではディープインパクトの3代母である。日本における歴史的名馬の血統には女王陛下の馬への情熱が、実は強く関わっている。

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そうなれば今週のエプソムカップでもディープインパクトの血を引く馬を応援するのが礼儀であろうか。なにせ今年のエプソムカップには「エリザベス女王即位70年記念」の副題が付いている。過去のエプソムカップを振り返れば、ディープインパクト産駒の成績は一目瞭然だ。

いや、ディープインパクト産駒を応援するなら、むしろ来週水曜にロイヤルアスコット開催に挑むシャフリヤールの方か。女王陛下主催の英国競馬の祭典にハイクレアの血を受け継ぐ日本のダービー馬が出走―――。これが競馬の世界においてどれだけ意義深いことか計り知れない。果たして女王陛下はアスコットに姿を現すだろうか。我が国のダービー馬の雄姿をぜひ直接ご覧いただきたいと願うのは、ひとり私のみではあるまい。

 

 

***** 2022/6/10 *****

 

 

 

 

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2022年6月 9日 (木)

梅雨競馬

東京は梅雨入りして最初の週末を迎える。そう思って日曜の予報をチェックしたら、昨日までなかった傘マークがついていた。さすが梅雨。エプソムカップは雨競馬になるかもしれない。

私が競馬を始めた頃は、「梅雨時は父内国産馬を狙え」と教えられた記憶がある。人も馬も体調を崩しがちな梅雨時は、日本の風土に馴染んだ土着の血統を狙えというわけ。それでエプソムカップが訪れるたび、ハシノケンシロウ(父ビゼンニシキ)とか、アンバーライオン(父アンバーシャダイ)とか、バンブーマリアッチ(父バンブーアトラス)などを買っては、負け続けてきた。

そう思いつつ、梅雨時の重賞の代表格たるエプソムカップの歴代の勝ち馬を振り返れば、タイキマーシャル、ツクバシンフォニー、ダッシングブレイズ、そして連覇のアメリカンボスと、むしろ外国産馬の活躍が目につく。父内国産馬と言っても、日本で繋いだ血は2代か、せいぜい3代。風土云々を言うには短過ぎるのであろう。

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私は雨の競馬が嫌いではない。傘から滴る滴越しに見たレースは、雨粒が傘を叩く音と共に、なぜか鮮明に記憶に残っている。中でも長距離戦が良い。ステイゴールドの初重賞勝利となった目黒記念も雨だった。霞に煙る向こう正面をゆっくりと進む人馬の、そのわずかにくすんで見える帽子や勝負服は、川面に浮かんで流れる花びらのように美しい。

予報によれば日曜東京の降水確率は60%。その目が出ればエプソムカップはノースブリッジに注目だ。母系を辿れば8代母に1938年生れの英月。さらに父モーリスの母系も7代母まで日本産が続く日本の風土に根付いた血統構成。ちなみに6代母はクリヒデだから道悪得意のディープボンドとは遠縁になる。何より母はアメ―ジングムーン。しかも前走は小雨のアメジストSを快勝だった。

 

 

***** 2022/6/9 *****

 

 

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2022年6月 8日 (水)

イワシミズと聞けば思い出す

日曜のこと。京都競馬場からの帰途、ふと思い立ちって石清水八幡宮に立ち寄ったのは一昨日書いた通り。予報では夕方から雨だった。しかし降り出すまでにはまだ余裕がありそう。ならば、あの源頼朝も厚く信仰した勝運の神様に参拝し、安田記念で私が密かに応援するロータスランドの必勝を祈願するのも悪くない。何より15分おきに発車するケーブルカーの時間にちょうど良いタイミングであった。

「徒然草」の第52段「仁和寺にある法師」に石清水八幡宮が登場する。曰く、年寄りの法師があるとき思い立って八幡宮への参拝に出かけ、「素晴らしかった」と得心して帰ってきた。しかし、実は山の麓にある末社を見ただけで、山頂の本殿を見ていなかったというのがオチである。今なら山頂近くまで3分でケーブルカーが運んでくれるから、肝心の本殿を見そびれる心配はまずあるまい。

「はちまんさん」として親しまれる石清水八幡宮は、標高142mの男山全体が境内になっている。平安初期の創建で、平安京の南西「裏鬼門」に位置することから、都の守護、国家鎮護の社として崇敬された。特に、武家として名をはせた清和源氏が八幡神を氏神としたため武神として広く信仰を集めたという。室町時代には6代将軍を決定する歴史的なクジ引きの舞台にもなった。その本殿は私が想像していたよりも大きく、美しく、立派。感心しながらロータスランドの勝利を祈願する。

私は自分のことで神頼みはしないが、他人のことに対してはその限りではない。ロータスランドは友人の生産馬ということもあり、デビュー当時から注目していた。昨年の須磨特別では出走馬の大半を社台グループ生産馬が占める中、唯一頭の非社台グループ生産馬のロータスランドが勝って喝采を叫んだ覚えがある。

Lotus

その当時から比べると最近は馬体の充実ぶりが著しい。どんどん大きくなって、どんどん重厚感を増している。関屋記念を勝ってサマーマイルシリーズのチャンピオンとなり、京都牝馬Sは56キロを背負いながら1分19秒台の好タイムで重賞2勝目をマークした。目下の充実ぶりならGⅠにも手が届くかもしれない。そう感じた高松宮記念があわやの2着。得意のマイルに戻ればこの相手でも……と、勝手な期待が膨らんだのも無理はあるまい。

結果は11番人気で10着。もっと積極的に乗って欲しかった———。ミルコには恨み言のひとつも言いたくなるが、終わったことはもう忘れよう。石清水八幡宮の神様を以てしても、できることとできないことがある。

ところで競馬ファンが石清水と聞いて思い出すのは、マチカネイワシミズもしくは石清水ステークスで異論はあるまい。前者はダビスタでお馴染み。後者は1月の京都で行われていた3勝クラスによる芝の短距離戦。ジャングルポケットの引退式のために訪れた2003年の京都で、このレースを観る機会を得た。勝ったのはブライアンズタイム産駒のボールドブライアン。この翌週に連闘で東京新聞杯を勝つことになるこの馬の勝負服も、ロータスランドと同じ小林英一HDの服色だった。

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***** 2022/6/8 *****

 

 

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2022年6月 7日 (火)

神様不在のダービー

今日の大阪はおおむね晴れ。最高気温も25度を下回って過ごしやすかった。昨日おとといは相当降ったが、この先の週間予報に傘マークは見当たらない。梅雨入りはもうしばらく先か。近畿地方の昨年の梅雨入りは5月16日だったが、これはいくらなんでも早過ぎた。

何気なく大井の中継を見たら向こうは雨。ダートに水が浮いている。どうも関東は既に梅雨入りしているらしい。ちょいと先を越された感がある。

明日は東京ダービー。もし天候「雨」で行われれば2018年以来となる。ハセノパイロが優勝し、矢野貴之騎手がついにダービージョッキーとなった年。東京に梅雨入りが宣言されたその夜の出来事だった。

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この年の2着馬クリスタルシルバーの手綱を握っていたのは、通算37回目の東京ダービー騎乗となる的場文男騎手である。彼が「人生の宿題」と呼ぶダービー制覇までクビ差と迫ったが、大願成就とはならなかった。しかも驚くことに、これが10回目のダービー2着。我が国にはダービー6勝のレジェンドジョッキーがいる一方で、こんなレジェンドもいる。

かつて東京ダービーは2400mで行われてきた。今もそれを懐かしむファンは多い。2000mに距離が短縮されたのは1999年のこと。この距離変更が仮に6年早く実施されていたら、的場さんはダービーを勝っていたかもしれない。

1993年、的場文男騎手はブルーファミリーという傑出した3歳馬とコンビを組んでクラシックシーズンに臨んだ。デビューから無傷の7連勝。だがこの馬、スタートに難を抱えていたことから、陣営は毎回「外枠発走」の希望を出していた。ダービー本番でも陣営は外枠にこだわりブルーファミリーは大外14番枠に収まる。だが、あろうことか肝心のスタートで大出遅れをカマしてしまった。大井2400mはスタートしてすぐに3コーナーに差し掛かる。外枠で後手を踏んでは勝負にならない。あっという間に後方に置かれたブルーファミリーは5着惨敗。もしこれが2000mだったら、多少の出遅れは長い長いホームストレッチで挽回できたかもしれない。

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通算39回目のダービー騎乗となった昨年はNHKの密着カメラが付くなど注目度は高かった。あれから1年を経た明日のダービー出走表に「的場文男」の名前はない。

あら、体調でも悪いのか―――?

そう思ったら、目の前のレースに的場文男騎手の勝負服があるではないか。元気そうでなによりだが、それを喜んでよいのかどうかは微妙だ。五体満足ながらダービーに騎乗馬がないのは屈辱である。目の前で行われていレースは偶然にも東京ダービーと同じ2000m。的場さんは1番人気に推されているらしい。しかし結果は2着。そこまでせんでも……。神様は「神様」に厳しい。

 

 

***** 2022/6/7 *****

 

 

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2022年6月 6日 (月)

淀へ

ダービー当日に京都場外に行けなかった話の中で、「京都に行くのはまた来年」なんてことを書いたのだけど、よくよく考えたら来年も私が大阪に住み続けているかどうかわからない。そんなことを思ってたら、今日が急に休みになった。これは京都へ行け!という神のお告げであろう。

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まずは改修工事中の京都競馬場へ。先週学んだのである。世の中何が起こるか分からんので馬券だけは早めに仕入れておいた方がよい。

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改修工事中の場外とはいえビッグスワンの飲食店は普通に営業しているので久しぶりの肉うどんを堪能。甘めのダシにヤワヤワの麺。そうこれこれ。京都に来たなと実感する。懐かしい。

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パドックはなく、芝コースはラチも植え込みも取り除かれ、コースの一部は重機が通行するために芝が剥がされている。ダートコースも砂が取り除かれて路盤がむき出し。ただ、内馬場の弁天池だけは以前のままの姿で安心した。世界広しと言えど、内馬場が一面の池になっている競馬場は、ここ京都をおいてほかにない。

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競馬場を出て駅の反対側を歩いてみる。すると駅から3分も歩かぬうちに、「辨慶」の看板を見つけた。

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京都五条の店には去年行った覚えがある(2021年7月17日付「京の底力」)。その系列店らしいが麺は五条の店に比べて細い。先ほど競馬場で食べた麺とは異なり、ブツリとした独特の歯応えは小倉肉うどんを彷彿させるものがある。甘めのダシものど越しもそれに近いが、こちらの方が上品な味に感じるのは仕方あるまい。五条のお店も美味しかったけど、こちらも違う味なのにちゃんと美味しいです。

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帰途に石清水八幡宮に立ち寄る。ケーブルカーにも乗ってみたかった。そもそも今日が休みになったのも神のお告げではなく、石清水八幡宮の氏神たる八幡大神様の思し召しかもしれない。

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展望台からは京都市街が一望。遠く比叡山から手前には先ほどまでいた京都競馬場の姿も見える。

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ここに立てば、宇治川、桂川、木津川の3つの河川が合流するこの地域の特性が一目瞭然。かつてこの地域は下流の淀川への流量を調整する遊水池として機能してきた歴史がある。弁天池はその名残かもしれない。そも京都競馬場はもともとは宇治川の中州だった土地の上に造られている。つまり地盤は軟弱。今回の工事期間がやたら長いのはそのせいだろうか。来年4月の竣工が待ち遠しい。

 

 

***** 2022/6/6 *****

 

 

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2022年6月 5日 (日)

新種牡馬を狙え

競馬のサイクルはダービーからダービーへ。2歳競馬の開始と同時に新種牡馬の話題が多くなるのは自然な流れであろう。なにせ昨年の新種牡馬ドレフォンが今年の皐月賞馬ジオクリフを送り出し、同じくキタサンブラック産駒のイクイノックスが皐月・ダービーで連続2着したばかり。今年の新種牡馬が来年のクラシックを賑わせる可能性は高い。

それを踏まえても今年はダービー直後の月曜日から新種牡馬の話題が多かった気がする。結果、土日の新馬戦5鞍で新種牡馬の産駒が3勝、2着3回と大活躍だった。ちなみに昨年の開幕週もまったく同じ5鞍が行われて新種牡馬の産駒は1勝。2着はない。そも出走自体が少なかった。

今日の中京5R(芝1400m)はミッキーロケット産駒のジョウショウホープが4番人気の評価を覆して完勝。コーナーをきれいに回れない馬がいて4コーナーで左右から進路を絞られるシーンもあったが、ひるむことなく抜け出した。2018年の宝塚記念で香港のワーザーに迫られながら抜かせなかった父の勝負根性を受け継いでいるのかもしれない。

このレースで2着したメイクザビートはマインドユアビスケッツの産駒。つまり新種牡馬のワンツーである。それでピンときた。ここ数年の種牡馬界は世代交代の流れにあるが、ディープインパクト産駒がほぼいなくなる今年こそ明確な潮目となるに違いない。となれば2歳世代は新種牡馬の産駒が強いはず。そこで東京6レース(芝1400m)の出馬表を見れば、新種牡馬産駒は2頭しかいない。なんだ簡単じゃないか。

クラックオブドーン(父サトノクラウン)1番人気

ロードディフィート(父デクラレーションオブウォー)7番人気

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レースは好発を決めたロードディフィートが3番手追走から、直線の坂を上って先頭。やった。当たる。ほら、やっぱ新種牡馬が強いんだ。そのままそのまま。

……と心の中で叫んでたら、どこにいたのか外からクラックオブドーンが追い込んでくる。おお! お前も来たか。サトノクラウンの仔も走るんだな;ぁ。でもちょっと待て。2頭の馬連は買ってない。2着に来られるとちょっとがっかりするから、4着とか3着あたりでいいぞ。

そんな私の声を聴いたのか、クラックオブドーンのギアがさらに上がった。2番手からロードディフィートを猛然と追い詰めてくる。

いや、待ってくれ。100円とはいえロードディフィートの単勝の方がつくんだよ。やめてくれ福永!やめてくれ~っ!。

2頭の頭が完全に並んだところがゴール。「これは微妙です」という実況アナの言葉は慰めにしか聞こえぬ。写真判定を待つまでもない。私はクラックオブドーンの勝利を確信していた。そも「この2頭」と決めたのに、なんで馬連買うてへんのやろ。100円でええのに。

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なんて思わず関西弁になったのはサトノクラウンが2017年宝塚記念の優勝馬であることを思い出したから。渋った馬場を味方に力強く抜け出したお父さんのイメージとは異なり、素軽さをも兼ね備えているようだ。父の新馬戦でも勝利に導いた福永騎手が手綱を取っていたことが、最後のハナ差につながったのかもしれない。それにしても私の馬券下手はどないすれば治るんやろか。「粗品の呪い」よりもヤバい気がする。

 

 

***** 2022/6/5 *****

 

 

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2022年6月 4日 (土)

右か、左か

JRAの競馬場は右回りが7場に対して左回りは3場しかない。だが、GⅠレースに限れば右回り12に対して左回りは10。一気にその差は縮まる。その一因にもなっているのが、先月から続く東京競馬場での5週連続GⅠ開催であろう。いやあ、長かったですねぇ。毎年のことだが財布が持ちませんよ。明日さえ凌げば……って言いつつ、翌週以降も同じように馬券は買うんですけど。

スプリントやマイルのGⅠが春と秋に行われるのは、興行的な側面もさることながら、右回りも左回りも関係のない普遍的な強さを求める理念の表れでもある。実際には、マツリダゴッホのように右回りが得意だという馬がいれば、オーソリティのようなサウスポーも存在する。なのにJRAのハンデキャッパーは、そういった左右の得意不得意をハンデに加味することはしないそうだ。

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それにしても、と思う。米国の競馬場はすべて左回り。我が国が範としたはずの英国にしても3分の2が左回りである。なのに、JRAでは2000年に新潟競馬場がようやく3番目の左回りコースとして生まれ変わったばかり。地方競馬に目を向けても、右回りが10場であるのに対し、左回りは4場しかない。思えば、旭川、上山、高崎、宇都宮、足利、福山、荒尾など、近年廃止となった競馬場にしてもことごとく右回りであった。我が国の競馬場にはなぜこんなに右回りコースが多いのであろうか。

日本における馬券発売を伴う近代競馬の嚆矢は、1861年に横浜の洲干弁天裏で行われたレース。ちなみにこの時のコースは直線のみだった。そしてその翌年、いまの横浜山下町に作られた日本最初の競馬場は、本場の英国に倣って左回りだったとされる。

その後、1866年に関係者の念願かなって本格的スタンドを備えた競馬場が根岸の丘の上に完成した。ここで話は昨日の根岸競馬場に戻ってくる。現在は公園となっているあの競馬場跡を訪れたことがある方なら想像できるだろう。あまりの起伏の激しさにどうしても左回りのコースがとれず、やむなく右回りにしたという逸話が残る。その後、各地の競馬関係者が根岸競馬場に倣って競馬場を造成したため、日本の競馬場には右回りが多くなった―――。どうやら、これがコトの真相らしい。

根岸競馬に倣った競馬場のひとつに目黒競馬場がある。この競馬場が右回りであったことは前に紹介した通り。だが、その目黒競馬場が移転して生まれた東京競馬場は原則左回りである。これについては、当時の東京競馬クラブの理事には外国人が多く、海外に倣って左回りに戻したとする説が有力。だが、それも先ほど書いたようにあくまでも「原則」に過ぎない。かつて東京競馬場の芝の1000m、1100m、1200m、およびダートの1000m、1100mは、右回りコースで行われていた。馬たちは向こう正面から2コーナーに向かってスタートを切り、1コーナーを右に回ってゴールを目指していたのである。

1962年のダービー馬・フェアーウインは東京コースで7戦して(4,1,2,0)と着外がない。これは典型的なサウスポーではないか―――と思ってよくよく見れば、そのうち3戦(1,1,1,0)は右回りコースでの成績だったりする。中山でも4勝を挙げていることを考えれば、むしろ得意なのは右回りだったのかもしれない。

ちなみに明日の安田記念に出走するイルーシヴパンサーは全5勝すべてを左回りコースで挙げている。並み居るGⅠ馬を差し置いて前売り2番人気に推されている背景には、そういった要素も含まれているのであろう。

 

 

***** 2022/6/4 *****

 

 

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2022年6月 3日 (金)

激走の代償

日本ダービーで2着だったイクイノックスがレース後の検査で両前脚にダメージを負っていることが判明した。オーナーのシルク・ホースクラブが2日にホームページ上で発表したもの。「屈腱炎との診断には至らなかった」という表現は意味深長だ。常識外れのローテで皐月賞を2着。そしてわずかキャリア4戦目のダービーを2分21秒9のレースレコードで駆けた才能の持ち主。まずは完治を願う。

それにしても今週はダービー出走馬の故障のニュースが多かった。ダービー7着のジオグリフは右前第1指骨の剥離骨折が判明して全治3か月。13着だったマテンロウレオも左トウ骨遠位端骨折が発表されている。1週間も経たないうちにたちまち3頭の故障が判明するとは珍しい。3歳春に府中の2400mを2分21秒台で駆けることの代償だろうか。

そう思って調べてみると、過去にも似たような年があった。

2004年
コスモサンビーム(12着) 左第1指節種子骨骨折
アドマイヤビッグ(14着) 右第3指骨骨折
マイネルブルック(競走中止) 左第1指関節脱臼

2004

2015年
ドゥラメンテ(1着) 両トウ骨遠位端骨折
リアルスティール(4着) 左第1指骨剥離骨折
ベルラップ(15着) 右第3手根骨骨折

2015

いずれの年もダービー後に3頭の故障馬が判明している。だが問題は頭数ではない。2004年はキングカメハメハの2分23秒3。2015年はドゥラメンテがその記録を11年ぶりに破る2分23秒2。そして今年のドウデュースはドゥラメンテの記録を破っての2分21秒9である。いずれの年もダービーレコードの決着だったことは見逃せまい。

速い時計でダービーを勝てば種牡馬としての価値も上がるなどメリットもある。一方でやはり脚もとへの負担が増すリスクは否定できまい。ここにもギャンブルとしての側面はある。

断っておくが、これをJRAの馬場管理の問題に繋げるつもりは毛頭ない。今年のダービー当日もほかのレースは平凡な勝ち時計だった。速い時計は馬場の問題でもあるが、馬の競走能力と脚もとのバランスの問題でもある。そのバランスにもっとも大きなギャップを与え得るのがダービーの大舞台であろう。故障に関してはむしろそういった要因が大きいような気もする。とはいえ「危ないから速く走るな」と言うわけにもいかない。掲示板に灯る「レコード」の赤い文字を見るたび、そんなジレンマを感じるのである。

 

 

***** 2022/6/3 *****

 

 

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2022年6月 2日 (木)

ダービーと体調問題

ここ数日は多忙を極めている。ブログの更新が滞ったのはそのせい。中には体調を気遣ってくださった方もいる。申し訳ありません。本人はいたって健康。新型コロナにもやられていません。

かつての私は日本ダービーが終わると決まって体調を崩していた。たいてい胃腸炎。オークス終了と同時に始まる連夜の酒席で弱った胃腸が、ダービー前夜の緊張と当日の興奮とレース後の脱力とで悲鳴を上げていたに違いない。それである年、オークス翌日から酒は一滴たりとも口にせず、ダービー当日は敢えて昼メシを抜くという荒業に出たのだが、それでもしっかり寝込む羽目になった。ダービー当日はコーヒーと夜にうどんを口にしただけ。コーヒー3杯は普通であろう。よもやうどんにアタるとも思えぬ。

眠れぬ夜、高熱と胃痛に苛まれながら布団の中で原因について頭を巡らせていると、今度は突然両脚のふくらはぎが攣った。

はっきり言って激痛である。それでも悲鳴をあげなかったのは寝静まる家族のため……ではなく、あまりの痛みに声さえ出なかったというのが正解。片脚の痙攣であれば、もう片方の脚を使って筋肉を伸ばすことができるが、いっぺんに両脚となると、それもできない。無理を承知で手で足首を掴まえて伸ばそうとしたら、今度は背中が攣りそうになったので、それも諦めた。

腹痛と痙攣に悶える地獄のような夜が明けると、全身が著しくダルい。倦怠感などという生やさしいレベルではなく、前日にフルマラソンを走ったかのような、絶望的な疲労感である。たしかに競馬場に行けば多少 なりとも歩くから、脚が張る程度なら分かる。だが、肩から二の腕にかけても、まるで草野球で一試合投げた翌日のごとき筋肉痛というのは、どう考えても解せぬ。マークカードに赤ペンを走らせる作業だけで、こんなことになるはずがない。謎は深まる。

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ダービーは1年間の長きに及ぶ講義の最終試験のようなもの。この1年間の成果が問われると思えば、自ずと心身の負担も増す。両脚痙攣に見舞われた際、私は悲鳴をあげることができなかったけれど、私の身体は様々な形で悲鳴をあげているに違いない。酒や昼メシを抜いた程度では、その悲鳴を抑えることなどできぬのであろう。なら、それを黙って受け入れるのが正しい競馬ファンの在り方か。ダービー当日は場外に出かけただけの今年ですら、翌月曜日はどことなく身体がふわふわしていた。この疲労感もダービーに付随する一種の快感として甘受できる―――。もはやそんな境地に辿り着いた感もなくはない。

 

 

***** 2022/6/2 *****

 

 

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2022年6月 1日 (水)

新梅田食道街探訪

念願かなって「新梅田食道街」デビューを果たした。

阪神競馬場に向かう道中、絢爛豪華な阪急梅田駅の建物の済に、ちょこっと空いた謎の通路。これまでは気付くこともなかったが、そこはまるでハリーポッターに登場する「9と3/4番線」のごとき異世界への入り口。ひとたび足を踏み入れれば、わずか数秒で昭和へのタイムスリップし、ディープな大阪を味わうことができる。

まずは「松葉」へ。若いころは梅田の地下街から地上に上がる階段下の店舗によく行った。阪神競馬遠征時の楽しみ。ありがたいことにアルミ缶のソースも復活している。立ち飲みだが客は思ったより少ない。若鶏の串カツが有名だが、私としてはマグロがいちばん美味い。これはソースではなく、七味ポン酢でいただく。中はレアよりは火が通った程度のほんのり柔らかな食感。これはビールが進む。串カツ5本と生ビール2杯で次へ。

続いて「大阪屋」へ。もちろん1階の立ち飲み。お店のイチオシだという「どてミックス」は、白味噌ベース。長年継ぎ足し続けているという煮汁にトロリとした食感の牛すじの旨味が凝縮されていてレモンチューハイに抜群の相性。ただし混み合ってきたので、チューハイ1杯で早々にお会計。

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続いては本日のハイライトの「金盃」。大井の名物重賞ではない。日本酒の名店。もちろん立ち飲み。カウンターにでっかい「白鶴」の樽が置いてあって、注文のたびに店主がそこから汲んだ酒を注いでくれる。樽の木の香りがなんともかぐわしい。ここのオススメは「エッグ」。小さな土鍋にふつふつ煮たった生玉子が2つ。かき混ぜて少し置くと、余熱で箸でつまめる固さになる。半熟状態をちょいとつまんで食べるのだが、これに店のもう一つの看板メニューの焼き味噌を合わせるとなお美味い。驚くことに客の半数以上が女性だ。あまりうるさくしゃべると、店主が樽をガンガン叩いて注意するのが面白い。3杯か4杯飲んで次へ。もうこのあたりから記憶が怪しい。

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4軒目は立ち飲みの聖地とも言われる「北京」。コロナ禍以前は、店内が混雑してくるとカウンターに並ぶ客が斜め半身の姿勢となり、場所を詰めて飲み続ける光景がしばしば見られたらしい。その姿が男性コーラス「ダークダックス」に似ているから、この立ち飲みスタイルを「ダーク」と呼んだ。客が自発的に場所を詰めあう「ダーク」は、大阪の立ち飲み酒場作法。しかしコロナ禍の今では十分な距離を取って立つことが求められており、「ダーク」を見ることもない。

東京にも立ち飲みはある。だが、大阪の立ち飲みは「店全体が相席」という雰囲気に近い。むろん客層も価格も微妙に違う。すべてが安くて美味い。新梅田食道街では店と客との大阪人気質が激しくぶつかり合う、まさにワンダーランドだった。

 

 

***** 2022/6/1 *****

 

 

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