肴は炙ったイカでいい
明日から6月。3歳条件馬は古馬相手に戦うことになり、2歳競馬も始まる。一方でアユ釣りが解禁となり、ハモの歯触りも俄に恋しくなってきた。ダービーが終れば競馬は暦の節目だが、魚の方も季節の変わり目を迎えている。
「夏に美味い魚はない」と言い切る人もいるが、私はそこまで夏の魚に冷たく当たる必要はないと思っている。たしかに脂の乗った魚は少ないが、ハモやコチのように上品かつ繊細な味わいの魚を楽しめる季節だ。
ところが、夏はビールが美味くなる季節でもある。ビールに合うメニューといえば、焼き肉、餃子、から揚げ、そしてソーセージあたりが鉄板であろう。いずれも濃い味付けや独特の香りが特徴で、「繊細」とは対極のイメージがある。
そう考えると、先ほどの「夏に美味い魚はない」という意見には、同調できる部分も見えてきやしないか。すなわち、夏の魚がマズいのではなくて、夏のビールに合う夏の魚が少ないのであろう。
たしかに鮎の微妙な苦味はビールと一緒になるとホップの苦味と一緒くたになってしまうし、カツオの刺し身を食べた後にビールを飲むと、カツオの風味がいやに鉄っぽく感じてしまう。まあ、これはあくまで個人的な味の感じ方だけど、困ったことではある。
ところで夏の競馬といえば函館。その函館は競馬だけではなくイカ漁の季節でもある。と言うか、世間一般からすればそっちの方がメジャーですね。鮎だけでなく函館の真イカ漁も明日から解禁だ。
函館で食べる真イカの一夜干しの旨さと言ったらない。サッと炙り、唐辛子をまぶしたマヨネーズをちょいとつければ、ビールとの相性も抜群。焼かれた表面の香ばしさとホップの香りが調和するだけでなく、旬のイカが持つ独特の甘みがビールの苦みに絶妙にマッチするのであろう。
宿の窓を開け放ち、彼方の海原に瞬く漁り火を眺めつつ、イカを囓り、しかるのちに冷えたビールをゴクッと飲む。夏の函館が旅打ちファンから絶大な支持を受けているのは、こうした光景が競馬のすぐ隣にあればこそだ。これほどの贅沢を他に挙げろと言われても、なかなか見つかるものではない。
ああ…、こんな話を書いてたら、今すぐ函館に飛んで行きたくなってきた。この数年、彼の地からはイカの記録的不漁が伝えられるが、それでも私は函館でイカを食べたいのである。
***** 2022/5/31 *****
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