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2022年5月31日 (火)

肴は炙ったイカでいい

明日から6月。3歳条件馬は古馬相手に戦うことになり、2歳競馬も始まる。一方でアユ釣りが解禁となり、ハモの歯触りも俄に恋しくなってきた。ダービーが終れば競馬は暦の節目だが、魚の方も季節の変わり目を迎えている。

「夏に美味い魚はない」と言い切る人もいるが、私はそこまで夏の魚に冷たく当たる必要はないと思っている。たしかに脂の乗った魚は少ないが、ハモやコチのように上品かつ繊細な味わいの魚を楽しめる季節だ。

ところが、夏はビールが美味くなる季節でもある。ビールに合うメニューといえば、焼き肉、餃子、から揚げ、そしてソーセージあたりが鉄板であろう。いずれも濃い味付けや独特の香りが特徴で、「繊細」とは対極のイメージがある。

そう考えると、先ほどの「夏に美味い魚はない」という意見には、同調できる部分も見えてきやしないか。すなわち、夏の魚がマズいのではなくて、夏のビールに合う夏の魚が少ないのであろう。

たしかに鮎の微妙な苦味はビールと一緒になるとホップの苦味と一緒くたになってしまうし、カツオの刺し身を食べた後にビールを飲むと、カツオの風味がいやに鉄っぽく感じてしまう。まあ、これはあくまで個人的な味の感じ方だけど、困ったことではある。

ところで夏の競馬といえば函館。その函館は競馬だけではなくイカ漁の季節でもある。と言うか、世間一般からすればそっちの方がメジャーですね。鮎だけでなく函館の真イカ漁も明日から解禁だ。

函館で食べる真イカの一夜干しの旨さと言ったらない。サッと炙り、唐辛子をまぶしたマヨネーズをちょいとつければ、ビールとの相性も抜群。焼かれた表面の香ばしさとホップの香りが調和するだけでなく、旬のイカが持つ独特の甘みがビールの苦みに絶妙にマッチするのであろう。

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宿の窓を開け放ち、彼方の海原に瞬く漁り火を眺めつつ、イカを囓り、しかるのちに冷えたビールをゴクッと飲む。夏の函館が旅打ちファンから絶大な支持を受けているのは、こうした光景が競馬のすぐ隣にあればこそだ。これほどの贅沢を他に挙げろと言われても、なかなか見つかるものではない。

ああ…、こんな話を書いてたら、今すぐ函館に飛んで行きたくなってきた。この数年、彼の地からはイカの記録的不漁が伝えられるが、それでも私は函館でイカを食べたいのである。

 

 

***** 2022/5/31 *****

 

 

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2022年5月30日 (月)

苦味

昨夜はわざわざ大阪を訪問してくれた2人の客を近所の和食店にご招待した。

挨拶もそこそこにダービーの話になるのは仕方あるまい。ひとりは古い馴染みだから、今年よりも昔のダービー話に花が咲くのも当然の成り行き。お互いがかつてのダービーで本命にした馬の名前を挙げては大笑い。はずれていればこそ、これ以上はない酒のツマミになる。

出遅れた上に、直線で左右から挟まれたアズマハンター。ラグビーボールはスローペースに泣き、直線いったんは先頭に立ったメジロアルダンは、あろうことかサクラチヨノオーに差し返された。キングヘイローは重圧に潰され、コスモバルクは予想外の暑さに悶え、アンライバルドは豪雨に沈んだ。懐かしさと、そして若干のほろ苦さを伴って思い出がよみがえるのも、この季節の慣わしだ。今年のダービーも苦かった。

この時季の苦い慣わしのもうひとつは鮎。メニューに塩焼きがあったので注文してみた。初物である。一般的には解禁は明後日だが、河川によっては既に解禁されているところもあるらしい。ただ、早いのはありがたいが肝心の味の方は大丈夫なのだろうか。

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そんな私の心配はまったくの杞憂に終わった。皮目はパリッと香ばしいのに、しっとり感を失わぬワタはフルーツを思わせる爽やかな香りと軽快な苦みをたたえている。これほど胸のすく味わいを、私は他に知らない。

ところが若い方の客がワタを食べようとしない。どうして?と聞いたら「苦いから食べられない」と言うのである。

巷間、苦味を苦手にする人が増えているらしい。店の主人も「若い人のほとんどはワタの部分に口を付けません」と苦笑いする。ワタが苦くない養殖鮎の開発も進んでいるというから、空いた口がふさがらない。

幼い時分からファミリーレストランやファストフードといった中庸な味付けにばかり親しみ、苦い味を学ぶ機会を失ったことで、苦みというものを理解できぬまま大人になってしまったのであろう。様々な経験や学習を経なければ苦い味を「おいしい」と感じることはできない。苦味は「大人の味」でもある。

しかもこれは味覚の問題だけにとどまらない。人は様々な苦い失敗を重ねて大人になっていく。豊かさの中で、そうした機会も失われつつある。

苦い味だけでなく、苦い思いも避け続けて成長した大人には、競馬の真の面白さなど、きっと理解できないのではあるまいか。

1992年のスプリングS。私の本命馬ライスシャワーは4着だった。とはいえ12番人気を思えば悪くない。そこで次の皐月賞でもライスシャワーから買ったが11番人気で8着。それでもしつこくNHK杯でライスシャワーを追いかけるも、9番人気で8着に終わった。それが、「もう買うのをやめた」とバッサリ切ったダービーで2着の激走である。なんと16番人気。競馬は皮肉だ。このほろ苦さを味わえるようになれば、競馬ファンとしてようやく一人前なのではあるまいか。

ちなみにあさって6月1日は「鮎の日」でもあるらしい。魚へんに占うと書く鮎は、縁起の良い魚でもある。ならば鮎の棒寿司も追加注文。これで安田記念の結果が占えるようにならないものだろうか。

 

 

***** 2022/5/30 *****

 

 

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2022年5月29日 (日)

ダービーデーの過ごし方

京阪の出町柳行急行が守口市駅に到着したところで車内アナウンスが非常事態を伝えた。藤森駅で人身事故が発生。京阪は全線で運転を見合わせるという。

https://news.yahoo.co.jp/articles/86bfda437b647e3dcf7cf4568af81f1b5270849c

私の目的地は淀駅。つまり京都競馬場。昨日15キロ歩いた私だか、さすがにここから歩いていく元気はない。人身事故の運転見合わせは約1時間半といったところだろうが、その前に折り返し運転が始まるはず。藤森駅は淀駅の遥かに先だから、このまま待っていよう。そこまで急ぐ旅ではない。

昨年のダービーではウインズ梅田で馬券を仕入れて、レースは自宅のテレビで観た。むろん結果はハズレ。今年はどうしよう。開催中の中京に行くことも考えたが、あいにく夜から仕事が入っている。それなら京都競馬場に行ってみるのはどうか。改修工事中でもパークウインズとして営業はしている。その前に石清水八幡宮にも立ち寄ろう。言わずと知れた勝負事の神様。ダービー当日の行動としては悪くなかろう。それで京阪に飛び乗ったら、守口市まで来たところで身動きが取れなくなってしまったのである。

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そのまま1時間待ったが運転再開はおろか折り返し運転が始まる気配もない。さらに待つこと10分。車内アナウンスが、運転再開まではあと40分程度かかる見込みだと伝えた。それを聞いてついに私も断念。仮に運転が再開されても、この調子ではダイヤの混乱は必至であろう。淀到着がいつになるか分かったものではない。そも競馬に「遅れ」はタブーである。私の本命はダノンベルーガ。粗品さんの呪いはさして気にならないが、むしろこの一件で当たる気はしなくなった。とはいえ馬券を買わずに「ケン」するわけにもいかない。なにせダービーである。

改札を出て大阪メトロ守口駅を目指す。守口と言えば私にとって漫才師「中川家」ゆかりの土地。東京にいたときはラジオ番組で守口の話をさんざん聞いてきた。その番組アシスタントを務めていた女性アナウンサーが、わずかな夏休みを「守口観光」に充てたのは語り草である。中川家のおふたりも「休みに行くようなところではない」と大笑いしていた。

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そんなエピソードを思い出しながら私も守口の街を歩く。目に留まったのは今日もうどん店。麺匠「やしま」は地元の方で賑わっていた。絵に描いたような「大阪のおばちゃん」たちの会話を耳に、鶏天ぶっかけをすすっていると、「あぁ、大阪でうどん食ってんだなぁ」と実感する。件のアナウンサーがわざわざ訪れた気持ちが少し分かったような気がした。

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地下鉄谷町線に乗って東梅田で下車。そこから歩いて向かった先はこちら。

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結局昨年と同じダービーデーの過ごし方になったが、これはこれで仕方ない。馬券が外れるのもいつものこと。来年こそは京都でダービーを観よう。なにせ来年のダービー当日は京都競馬場で競馬が行われる。ずっとダービーをナマ観戦してきた私にとって、ダービー裏番組のナマ観戦はダービーにも勝るとも劣らない新鮮味がある。石清水八幡宮に行くのも来年まで持ち越し。来年のダービーに向けて、また新しい一年が始まる。

 

 

***** 2022/5/29 *****

 

 

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2022年5月28日 (土)

葵を探して

ちょいと早起きして京都を散歩。南禅寺をスタートして琵琶湖疎水に沿って北へ向かう。土曜ではあるが観光客の姿を観ることはない。京都は花の端境期。桜はもちろん藤もツツジも既に見頃を過ぎており、紫陽花にはまだ早い。ところどころにサツキの花を見かける程度。サツキを見て明日のダービーに思いを馳せるのは正当な競馬ファンであると信じたい。ジオクリフに2400mは果たしてこなせるのか。ちなみに私は今日15kmを歩くつもり。果たしてこなせるのか。

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大豊神社は西暦887年の創建。境内の大黒社の狛ねずみが人気を集める古刹だが、今は人っ子ひとりいない。

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さらに北上して法然院にも立ち寄る。早咲きの紫陽花が咲いていると聞いたが、それらしい姿はない。まあ仕方ないですよね。草花ばかりが京都ではない。代わりに山門の茅葺を愛でる。山門をくぐって目に入ってくるのは白砂壇。砂で水の流れを表わしており、浄域に入る前にその水で心身を清める意味がある。その流れの上には葉っぱの絵が描かれていた。

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銀閣寺を横目に見ながら疎水沿いをさらに歩く。御蔭通りを左に折れて、叡山電車の踏切を越え、高野川の橋を渡り、ついに辿り着いた先は下鴨神社。ここは参拝客の姿が多い。修学旅行生の姿もある。結婚式も行われていた。さすがは世界遺産ですな。

実は今日はとある草を見つけたいと思いながら歩いていた。探していたのは葵。京都を代表する「葵祭」の葵であり、今日行われる重賞「葵ステークス」の葵でもある。葵祭のメイン会場である下鴨神社なら境内のあちこちで見ることができるに違いない。

……と思ったら、どこにもないんですよこれが。

「祭の頃、いとをかし」

清少納言が枕草子にこう記した「祭」とは、もちろん葵祭のこと。また源氏物語には「葵の上」という人物が登場するように、古典文学にもたびたび登場する葵は京都のシンボル的な存在だ。だが、近年は宅地開発や鹿の食害などで自生地が減少し、祭の装飾品として必要な葵の調達すらままならない状況だという。そうとは知らず、葵ステークスの日に葵に触れれば馬券が当たるんじゃないかと思った私は浅はかだった。

若干気落ちしつつ神社を後に散歩を再開。すると北大路通り沿いでついに葵を発見したのである。

それがこちら。

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「あおい」というお店。しかもありがたいことにうどん屋さんである。昼にはまだ早いが、こうなれば入らぬわけにいくまい。

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店名からして京うどんのお店かと思いきや、けっこう本気の讃岐。器に盛られた麺のラインが美しい。一気に啜って店を出ようとすると、店内に葵の鉢植えを見つけてしまった。ハート形の葉っぱがなんともかわいらしい。今となってはこうして観葉植物として愛でるものなのだろう。ともあれ念願の葵を見ることはできた。さあ、あとは鴨川に沿って京都ウインズを目指して歩くだけだ。

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***** 2022/5/28 *****

 

 

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2022年5月27日 (金)

灼熱の日本ダービー

いよいよ明後日は日本ダービー。競馬ファンなら当日の天気が気になるはず。現時点での予報は晴。今朝までまとまった雨が降ったとはいえ、良馬場が期待できそうだ。しかし驚いたのは予想気温の方。明後日は東京都心で32度、府中市は33度となっている。前橋に至っては驚愕の36度。こうなると府中も33度では収まらないかもしれない。馬たちはライバル17頭だけでなく、暑さとの戦いも強いられることになりそうだ。

2004年のダービーもひどく暑い一日だった。ダービーの行われた5月30日の都心の最高気温は31.7度。府中はもっとあったに違いない。さらに70%を超える湿度が追い打ちをかける。この異常な陽気の影響をモロに受けたのが、ホッカイドウ競馬から参戦していたコスモバルクだった。

出張馬房に扇風機と氷柱を設置して暑さ対策は万全と思えたが、爽やかな北海道の気候に慣れ切ったコスモバルクにとって、東京のジメッとした蒸し暑さは堪えたに違いない。同行のスタッフも熱中症の一歩手前だったという。結果、超ハイペースを深追いしたコスモバルクは最終コーナーではフラフラの状態。右に左に蛇行してはハーツクライやハイアーゲームといった有力馬の進路に影響を与えるという、後味の悪い敗北を喫した。

一方、そんな2004年の制したのはキングカメハメハ。中2週の疲れなど感じさせぬ完勝でNHKマイルCとの変則2冠を達成している。

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先月の桜花賞以降、GⅠレースでキングカメハメハの孫世代が6連勝を続けていることをご存知だろうか。スターズオンアース、ジオグリフ、タイトルホルダー、ダノンスコーピオン、ソダシ、そして再びスターズオンアース。さすがに今週は……と思いきや、2004年を彷彿させるような猛暑が、キングカメハメハの血の更なる覚醒を呼び起こす可能性はある。7連勝も夢ではあるまい。

ダービー出走18頭の中から、キングカメハメハの孫を探してみる。マテンロウオリオン、ジャスティンロック、デシエルト、ロードレゼル、そしてジオグリフ。念のためこの5頭の馬券は抑えておこう。ただ、困ったことに私の本命馬がこの中にいない。季節外れの暑さに、私も悩まされることになりそうだ。

 

 

***** 2022/5/27 *****

 

 

 

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2022年5月26日 (木)

発走遅れ

先日のオークスで、サウンドビバーチェ放馬の影響で発送時刻が15分遅れたことにより、関西地区の地上波中継がレース途中で打ち切られるという事態になった。テレビ局の関係者は青ざめただろうが、そも発送時刻の遅れは珍しいことでない。たまたまそれがメインレースでよりによってオークスだっただけの話。むしろ今回の「15分」がグレード制導入後では最長の遅れだったことに驚いた。1991年桜花賞の「イソノルーブル事件」はもっと長かった気がする。30余年を経て私自身の時間感覚も変わった。つまりトシを取ったということか。

幸いにも私は競馬場で観ていたから最後まで見届けることができた。輪乗りが始まってしばらく、先に異変に気付いたのは同行の娘である。

「あれウマだよね?」

彼女が指差す方向に目をやると、内ラチ沿いを4コーナーに向かって走る黒い点が見える。間違いない。ウマだ。ゼッケンは5番。ただし、狂騒状態に陥って逃げ出した感じはなく、比較的ゆったりしたキャンターであることがハプニング感を薄めている。場内アナウンスもない。現実感を喪失したかのような、実に静かな放馬が展開されている。

捕まったのは3コーナー入口付近。パニックになった様子もなく比較的簡単に口を取らせた。これなら疲労も少なかろう。ただちに獣医を乗せた車が現場に急行。ただし騎手は乗せてない。

「あそこからゲートまでどれくらいかかるかな?」

娘が訊いてきた。サウンドビバーチェがいるのは800のハロン棒の手前。ゲートが置かれているのは残り300m付近である。500mなら「徒歩5分」と不動産屋は答えるだろう。しかしそんな時間を待っていてはテレビ中継の番組終了時刻に間に合わない。

すると欅の向こうあたりから厩務員とサウンドビバーチェが小走りを時始めた。獣医たちもそれに続く。最初は歩様を確かめるためかと思ったが止まる気配がない。どうやら出走可能と判断した模様だ。

「あんなことをしたら余計に疲れちゃうんじゃないか?」と私。

「いや、あの程度ならウマは大丈夫だけど、ヒトの方が持たないかも」と娘。最近は娘の方が私より馬に詳しいのである。

結局人馬とも小走りのまま4コーナーを回ってゲート地点に戻ってきた。たしかに馬はケロッとしているが、人はあからさまにへばっている。しかしそこからが長かった。騎手の指摘で獣医がサウンドビバーチェの右頬を何度もチェック。傍らに立った石橋騎手は跨ろうとしない。そんな状態がしばらく続いたのち、「競走除外馬」のアナウンスが流れた。時計の針は15時53分を指している。もうテレビ中継には収まるまい。

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発走遅れには様々な理由がある。前出のイソノルーブルは落鉄。枠入り不良も少なくない。クルミナルが10分近くゲート入りを渋ったのもオークスの舞台だ。2020年8月29日の新潟12Rでは厩舎地区から放馬した馬が馬場内に侵入して6分遅れとなった。しかし致命的なのはやはり出走馬の放馬であろう。2011年スプリンターズSではビービーガルダンの放馬で13分遅れ。2006年ダービーグランプリでもタイセイスーパーの放馬により20分近くも遅れている。そこは言葉の通じぬ相手。上手くいくことの方が奇跡的にも思える。

発走遅れの原因は馬だけに留まらない。ひと昔前は窓口での馬券発売を主催者が締め切らず、発走を遅らせることはザラだった。オールドファンなら「締切1分前」を知らせる音楽が5分以上も延々と流れ続けていたことを覚えている方も多かろう。2006年のフェブラリーSではウイングアローに騎乗した岡部幸雄騎手が馬場入り後に負担重量調整用の鉛板落下に気付き、検量室に戻って5分遅れ。今年の根岸Sでは通行証の不正利用者がいた事由により、やはり5分遅れとなっている。

私自身は行き過ぎた発走時刻の遵守には反対だ。表彰式やテレビを優先するのはなおさら。「馬優先」の大原則を忘れ、杓子定規なレース運営に傾注するから、枠入り時の「追い鞭」のような恥ずかしい姿を世界に晒すことになる。

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アイルランドでは羊の大群が場内に侵入して発走時刻を遅らせることがある。片田舎の小さな競馬場の話ではない。ナショナルトラックのカラ競馬場でそんなシーンに遭遇した。聞けば珍しいことではないらしい。場内アナウンスは「羊たちがどくまで発走を待ちます」と告げるだけ。この寛容さをぜひ見習いたい。

 

 

***** 2022/5/26 *****

 

 

 

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2022年5月25日 (水)

目黒競馬場の面影

目黒記念が創設されたのは1932年だからちょうど90年前のこと。東京優駿大競走と同じ年だが、月日まで比較すれば6日間だけとはいえ目黒記念の方が早い。

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今でこそ大阪天満宮界隈を根城にしているが、実は小金井生まれの目黒育ちである。だから子供の頃から、近所に「元競馬場」というおかしな名前のバス停があることは気になっていた。むろん今なら言われなくてもわかる。第1回目の日本ダービー(東京優駿)が行われた由緒ある土地であり、ダービー当日の最終レース「目黒記念」にその名を残している。つまり今週日曜東京の最終レース。天皇賞(春)でカラ馬ながら「2着」に入線したシルヴァーソニックに注目する向きも少なくなかろう。

目黒競馬場の跡地は既に宅地化されおり、その痕跡はほとんど残されていない。競馬場の余韻を現代に伝えるのは、不自然にカーブした路地と「元競馬場前」のバス停だけだ。

Bus

まだ農村地帯だったこの地に、競馬場が姿を現したのは1907年のこと。コースは一周1600mの芝コースと、内馬場をクロスする障害コースがあるだけで、府中に比べるとかなり狭い。ちなみに府中とは逆回りの右回りコースだった。

Meguro

ダービーのスタートは向こう正面の右奥、3コーナー手前にあった。スタートして150mほどで3コーナーに飛び込むコース形態からすれば内枠の有利は動かぬであろう。第1回優勝のワカタカは最内1番枠からの逃げ切り勝ちであったという。

そのワカタカの父でもあるトウルヌソルの銅像を、現在の目黒通り元競馬場バス停の近くに見ることができる。6頭の日本ダービー優勝馬輩出は、ディープインパクトの7頭に次ぐ大記録だ。

Bronze

トウルヌソルの銅像から目黒通りを挟んだ反対側、大きな肉まんで有名な「目黒五十番」の向こうは、かつての厩舎があった地区。手狭なため、ここから2キロも離れた碑文谷に外厩を作ってどうにか凌いでいたが、関東大震災直後から周辺の宅地化が進むにつれ、悪臭や騒音の苦情が出るうようになった。また、競馬開催日には、港区魚藍坂から権之助坂を経て競馬場までびっしりと車列が連なり、鉄道もマヒしてしまうなど、競馬そのものが社会問題化し始める。競馬場の移転問題は急務とされていたようだ。このあたりから話は昨日からの続きとなる。

府中への移転後、その跡地は戦時中の食料確保のためジャガイモ畑に転用されたこともあったという。華やかな勝負服がファンを熱狂させた競馬風景から一転、真っ白なジャガイモの花が一面に咲き誇る光景はさぞや壮観であったことだろう。

 

 

***** 2022/5/25 *****

 

 

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2022年5月24日 (火)

安田伊左衛門生誕150周年

今年の安田記念は「安田伊左衛門生誕150周年記念」として実施されるらしい。競馬法の制定や日本ダービーの創設などに尽力し、「日本競馬の父」と称される安田伊左衛門氏の生誕150周年に当たることから記念競走として実施されることになった。そも安田記念が東京競馬場で行われていることにだって、もちろん理由はある。この地に東洋一の競馬場を生み出したのも安田氏の功績に他ならない。

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第1回日本ダービーが行われた目黒競馬場は、その敷地わずか1万坪。しかも、その大部分は借地であり、返却の期限が迫っていた。加えて地元からは「競馬場が町の発展を妨げている」として、競馬場排除論が沸き起こる有り様。ダービー創設の当時、競馬場の移転は急務の課題であった。だが、それが一躍「24万坪の大競馬場構想」へと飛躍したのは、安田氏の「サラブレッドは大きな馬場で自由闊達に走らせたい」との理念の現れにほかならない。

移転先選定に先立ち、安田は新競馬場の要件として次の6点を掲げた。

 ・土地の広大なこと
 ・交通の便利なこと
 ・良質の草が採草できること
 ・水質の良好なること
 ・物資の供給を受けられること
 ・警察署並びに役所の所在地なること

これに手を挙げた候補地は実に百箇所以上。そこから数十箇所を選定し、実地調査を行った。特に暴風雨や出水の時を選んで出掛けたのも、氏の理想に適う競馬場を造りたい一心からであろう。候補地を他人に悟られないために、家人にも行き先を明かさず、尾行にも常に気を配っていたというから、苦労のあとが偲ばれる。

その結果、東京府下北多摩群府中町・大國魂神社下の24万坪を候補地として選定した。多摩川に近く、その水質は競走馬の飲料水に最適であり、また多摩川の土手には青草が豊富に生えているなど好条件に恵まれていた。

ところが、競馬場が完成してついに競馬開催にこぎ着けると、馬場が広大過ぎて双眼鏡がないとレースが見えないと非難が起きる。むろん、安田としてもファンの気持ちが分からないでもなかったが、それ以上に競走本位の理念を貫いた。その思いが通じたのであろう。次第に沸き上がる賛美の声に、些細な非難はかき消されることとなる。

その東京競馬場がもっとも熱く盛り上がる日が、まもなく今年もやって来る。檜舞台を見ることができるファンは幸せを噛み締めよう。その舞台の建設に心血を注いだ安田伊左衛門は、今もパドック脇から出走馬たちをそっと見守っている。

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***** 2022/5/24 *****

 

 

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2022年5月23日 (月)

名古屋・東京うどん紀行

先週土曜のこと。平安Sの中京に向かう前に一軒のうどん店に立ち寄った。

名古屋駅から地下鉄で1駅。太閤口から歩いても12~3分の中村区役所駅前に暖簾を掲げる、その名も「かとう」。加藤和宏元騎手がシリウスシンボリでダービーを勝ったのは37年前だったか。朝11時開店で、私が到着したのは11時12分だが、すでに店内は満席。店外には5人が列をなしていた。

驚くべきはその5人全員が女性だったことだ。2人組、2人組、そしておひとりさま。いずれも女性。ちなみに私の後ろに並んだ1人も女性である。店内に通されても客のほとんどは女性であった。ひょっとしたらインスタ映えするうどんなのかもしれない。変にカラフルだったりしたらどうしよう……。

ドキドキしながら運ばれてきた生醤油うどんは、インスタ映えにはほど遠いシンプルな見た目の一杯であった。

Kato

にゅるにゅるながらモチモチの麺はまごうことなき手打ちで、噛めばビヨーンと伸びる粘りとコシも申し分ない。「一福」に似ていなくもないが、「一福」より太いだろうか。この麺は美味い。生醤油にしたのは正解であろう。30分待って3分で完食。店の外に出ると10人以上が大行列を為していた。やはり女性の割合が高い。

今日は諸事情あって都内の内幸町へ。内幸町駅からほど近い「はし田たい吉」の暖簾をくぐる。橋田満元調教師がアドマイヤベガで日本ダービーを勝ったのは23年前のこと。「博多うどん」を謳うが、こちらの麺はいわゆる博多のフワヤワではない。写真は冷やかけだが、ツルリとした痛快なのど越しはむしろ稲庭のそれを思わせる。しかし黄金色に透き通ったダシは博多の美味さそのまま。最後の一滴までごくごくと飲み干せる。

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内幸町はうどん屋探しに困らない。店を出て1分も歩かぬうちに、讃岐うどん「「甚三(じんざ)」の看板が見えてきた。大門の人気店がここにも暖簾を掲げている。サッと入って、店員さんにサッと食券を渡し、指定さた席にサッと座ると、目の前にサッとうどんが運ばれてきた。これをサッとすすって店を出る。この間2分もかかってはいまい。これが讃岐のだいご味。うどん屋めぐりも、徐々にコロナ前に戻りつつある。

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***** 2022/5/23 *****

 

 

 

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2022年5月22日 (日)

地上の星

オークスデーの東京競馬場は薔薇が見頃を迎えている。

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一昨年は無観客、昨年は4千人、そして今年は3万552人が集まった。コロナ以前のオークスに比べれば例年の半分にも満たない。しかし、いざ場内に足を踏み入れると、「10万人くらい入ってんじゃないか?」という錯覚に陥る。最近まで臨時休業していた飲食店も営業を再開。お昼時には長蛇の列もできた。遠くに目をやれば内馬場も久しぶりに開放。芝生に咲くビニールシートの花も復活している。

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私自身3年ぶりの感染もとい観戦となるオークスを勝ったのはスターズオンアース。アーモンドアイ以来、史上16頭目の2冠牝馬となった。異なる騎手での2冠制覇はジェンティルドンナなど先例があるが、その2人が揃ってテン乗りとなると過去に例がない。しかし、今日の手綱を取ったC・ルメール騎手はスターズオンアースの祖母スタセリタで仏オークスを、さらにそのスタセリタの産駒であるソウルスターリングでオークスを制しているから、テン乗りとはいえこの一族のことは熟知している。その自負が「家族でオークスに勝つことができました」というコメントに表れていた。

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一方で「家族」が呪縛の意味で使われるケースもある。1馬身1/4差の2着に迫ったスタニングローズは10番人気という評価を考えれば大健闘だが、一族の悲願はまたもならなかった。祖母ローズバドがオークス2着。そして叔父のローズキングダムはダービーと菊花賞で2着。大一番の度にあと一歩が届かない「薔薇一族」の呪縛が解けることはまたもなかった。

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そうそう、「薔薇」と言えば冒頭に書いたように今日は珍しくローズガーデンに足を運んだのである。いや、それだけではない。帰途に西門をくぐるときに、ふと天井を見上げたら「薔薇香る、麗しの舞台」というオークスのキャッチコピーの横断幕が掲げられていた。つまりJRA自らも「薔薇」を推していたわけ。これに気づいていればスタニングローズは買えたに違いない。いつも私はあとになって大事なことに気付く。

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それにしても、ルメール騎手が重賞を勝つシーンを見るのは久しぶりだ。なんと昨年のチャレンジカップ以来ほぼ半年ぶり。しかし昨年重賞17勝の腕は健在のはず。ならばここから一気に勝ち星を量産することもなくはあるまい、ダービーでもその手綱さばきに注目だ。

 

 

***** 2022/5/22 *****

 

 

 

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2022年5月21日 (土)

甦るボールドルーラー

平安SはJRAの芝・ダートを通じて1900mで行われる唯一の重賞レース。ただし、京都競馬場改修中は、開催のやりくりでシリウスSも阪神2000mから中京1900mに移動しているが、とりあえずそれはさておく。ちなみに米国で今日(日本時間では明日朝)行われるプリークネスSも1900m。根幹レースでありながら9.5ハロンという距離に中途半端な印象を抱いてしまうのは、おそらく私だけではあるまい。

プリークネスSのレコードタイムは1973年にセクレタリアトが記録した1分53秒0。この時計がつい最近までちょっと物議を醸していたことをご存じだろうか。実は、競馬場が当初発表した時計は1分55秒0だった。それに対してメディアのみならず場内の時計係からも「遅すぎる」と物言いがつく事態となり、競馬統括団体も交えた大論争になった。

ようやく終止符が打たれたのは2012年。なんとレースから40年近くも経って、ようやく走破時計が確定するというドタバタ劇の末、レコードタイムとして確定している。その間、セクレタリアトを送り出した歴史的名種牡馬ボールドルーラーの父系はシアトルスルーを経て、エーピーインディを分起点として米国そして日本でも主流血統として甦った。

かつて、ボールドルーラー系の血は、あふれるパワーとスピードを伝えても、一本調子の競馬しかできない欠点があった。行くにせよ、控えるにせよ、レースぶりにメリハリがない。しかし、長い時間を経てノーザンダンサー、ミスタープロスペクター、へイルトゥリーズン系の血を味方に自在性を増している。結果、シニスターミニスター、マジェスティックウォリアー、そしてパイロといった、ボールドルーラーの血が日本のダートを席巻するに至った。

Heian

今日の平安Sを勝ったのはシニスターミニスター産駒のテーオーケインズ。自身初となる59キロを背負いながら、持ったまま後続に2馬身半だから、ここでは明らかに力が違った。さらに2着ケイアイパープル、3着メイショウハリオはともにパイロの産駒。ボールドルーラーの血の覚醒が止まらない。

例年なら右回りの京都で行われる平安Sが左回りの中京で行われたことには、私が思う以上に大きな意味があったのであろう。比較的平坦でコーナーのきついの左回りの1900mは。プリークネスSにも近い。米国血統が覚醒するのも理解できる。

 

 

***** 2022/5/21 *****

 

  

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2022年5月20日 (金)

杜の都にレース映像を

本日の河北新報が「仙台に競馬観戦施設 JRA、中心商店街に開設検討」という独材を伝えている。

https://kahoku.news/articles/20220519khn000044.html

ポイントは馬券発売を伴わない施設であるということ。大型画面や競馬場の臨場感を再現する音響施設を備え、来場者は競馬中継の映像を見られるだけ。 いわゆる「ウインズ」ではない。ネット販売が馬券の販売シェアの9割を占める状況の中、これまでとは一線を画する施設として注目を集めそうだ。

もともと1980年代から場外馬券売り場誘致の話題が浮上しては消えを繰り返してきたお土地柄。ウインズは全国に44か所設置されているが、人口100万人以上の都市では仙台だけにはなぜか存在しない。JRAと経済界が幾度となく誘致に動いたが、そのたびに地元の反対がそれを拒んできた。そこは「学都」を謳う文教都市。ギャンブル施設に対するアレルギーはことのほか強い。

一方で1960年まで現在の太白区東郡山付近には市営の「仙台競馬場」があった。仙台の住民すべてが競馬にアレルギーを持つとは考えにくい。その証拠に福島開催中は仙台と福島競馬場との間を高速バスが運行。満員の客を乗せて走っている。

Fukushima_20220520223801

河北新報の記事によれば施設の予定地は青葉区のテナントビル内。収容人数は最大100人程度を想定し、大型画面や競馬場の臨場感を再現する音響施設を備え、来場者が競馬中継の映像を見られるという。

馬券を売らない以上、ウインズ開設時に必要となる特別な行政手続きは必要ない。地元経済界は街の活性化を、そしてJRAにすれば競馬施設のない仙台へのPR効果を期待できる。正式に決まったことではないとはいえ、仙台のみならず競馬場もウインズもない街に住む競馬ファンには興味深い話題であろう。議論の行方に注目したい。

 

 

***** 2022/5/20 *****

 

 

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2022年5月19日 (木)

ブログの流儀

ブログサイトに記事を載せるにあたり、いちおうの原則というか、方針というか、気を付けなければならないなと思うところはある。

①人の悪口を書かない
②自慢をしたり知識をひけらかしたりしない
③馬券の予想を書かない

これが私のブログ三原則。完全に守られているかどうかはさておき、これを意識していることは間違いない。例えば、飲食店の紹介に「不味い」と書いたことはないはず。むろん、私だってハズレのお店に入って、とてつもなく不味いものを食わされた経験は数知れないが、それをわざわざここで発表しようとは思わない。

しかし、この三原則をクリアして、毎日何かしらの文章を書こうとすれば、どうしてもそのテーマはかなり限定され、結果「どうでも良い話」に収斂する。

私自身、どうでも良い話というのは嫌いではないから、それはそれで構わないと思う。だけど、ごくたまに「あたなのブログには何のメッセージも、知識の集積も、創造性も感じられない」みたいな批判を頂戴してしまう。まあ、それはそれで正しい指摘なわけだけど、「競馬食堂」なんて屋号の店に入って「知識の集積」を注文されても、店主としては困りますよねぇ。

「悪口を書かない」と「知識をひけらかさない」の2つからは、「他人の間違いを指摘しない」も自然と導き出される。そうなると、こういうネット上の情報ソースとしては、どんどんつまらないものになるのかもしれないが、それも仕方ない。

かつては、他人の書いたものを「校閲をしたとは思えない」とか「ひどい誤訳だ」なんてことを平気で書き連ねてたけど、競馬本の校閲がとても大変な作業であることは身をもって体験しているし、誤訳のない翻訳というのも現実的にはありえない。仮に他人の間違いを見つけても、ひっそりと自戒するだけ。それが創造性の欠如だと言うのなら、その批判も甘受するしかない。だって私自身間違いだらけなわけですから。

間違いはなくても、読んでいて疲れるようなひどい文章というのもあって、これはもっとタチが悪い。何を注文しても不味い店というのと同じ。それを思えば、誤訳のひとつやふたつ、どうってことない。……なんて、競馬場ではいちいち文句を言ったりもしてますけど(笑)

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ちなみに③について説明の必要はありませんよね。進んで自ら恥を晒す必要はないということです(笑)

 

 

***** 2022/5/19 *****

 

 

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2022年5月18日 (水)

思い込みは怖い

とある原稿のゲラが送られてきたので、今日は朝からゲラ校正に精を出した。

「ゲラ」とは原稿が記事になって印刷される前に、誤りがないかを確認するために使ういわば試し刷り。その特殊な呼び名の語源は、古代の戦争に使われた船「ガレー」にある。

もともと活字を並べて収めておく箱を「ゲラ」と呼んでいた。箱の中にびっしりと並ぶ活字を、狭い船の中でひしめく兵士になぞらえたというわけ。手書き原稿が減り、専門の職人さんが活字を拾うこともなくなった現代でも、確認作業の大切さは変わらない。「ゲラ」という言葉も、そのまま生き続けている。

ともあれゲラを読む。するとそこには編集者の感じた疑問や指摘が書き添えてある。かつての人気ドラマ「校閲ガール」をご覧になった方ならイメージしやすいかもしれない。

編集者の口調は総じて遠慮がちではあるが、その割に核心部分を一撃でグサリと突き刺してくる。

「○○さん(私の名前)の脳裏に残るレースぶりが書いてある通りなのでしたら特段修正の必要はないかと存じます。ですが少なくとも私の見たところでは……云々」

私とて人間であるから間違いはある。しかしそれより深刻なのは思い込み。他人に指摘されるまでは「正しい」と思っていたことが、実は間違っていた。そんなエピソードは星の数ほどある。だがしかし、簡単にそれを認めてしまえば、私自身が誤った認識に基づいた誤った人生を送ってきたことになってしまうので(大袈裟)、編集者の指摘を簡単に受け入れるわけでもない。あらゆる手段と惜しみない時間を投入して、どちらの言い分が正しいのかを検証するわけだが、これまで私に軍配が上がったことは一度としてない。

恥ずかしながら、思い込みの例をひとつ挙げる。かつて共同所有した一頭の黒鹿毛の牝馬を、私は「芦毛」だとずっと思い込んでいた。父のスウェプトオーヴァーボードが芦毛。母のパルセイトも芦毛。芦毛同士の子でも芦毛に出るとは限らない。そんなことはわかっている。ただ、購入前からもう芦毛だと思い込んでいたようだ。カタログで毛色の確認もしなかった。いや、確認したのかもしれないが、それでも思い込みが勝った。

1歳時に初めて見た彼女は黒っぽかった。黒鹿毛なのだから当然である。だが私は「いかにも芦毛らしいなぁ」と呟いて、牧場スタッフを混乱させた。

Kouma

2歳秋にレースを勝った彼女と一緒に記念写真に収まった時は、調教師に「なかなか白くなりませんよね」と口走ってしまった。きっと興奮で頭がおかしくなったと思われたに違いない。

Funabashi

その年の暮れ、東京2歳優駿牝馬の登録馬表を目にした私は「アッ!」と声をあげた。彼女の毛色が「黒鹿毛」と誤記されているではないか。天下の大井競馬がなんたる不始末。それで登録課に怒鳴り込んで、ようやく自分の誤りに気付いた。まさに汗顔の至り。だが、2年間もの間「白」だと信じて疑わなかったものが、急に「黒」だと言われても簡単に受け入れられるものではありませんよ。だって、「早く白くならないかな~」って、ずっと楽しみにしていたんですからね。とにかく同じ間違いでも、思い込みによる間違いは怖い。

 

 

***** 2022/5/18 *****

 

 

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2022年5月17日 (火)

オークスに乾杯

先週金曜日、サントリー山崎蒸溜所の見学ツアーが2年ぶりに再開された。前々から行ってみたいと思っていたがコロナで中止の憂き目に。私が大阪にいるあいだに再開は難しいだろうか。「響30年」の試飲をしたかった……。と諦めかけていただけにこれは朗報。しかし見学ツアー予約サイトにはまったく繋がらない。みな考えていることは同じか。試飲だけなら予約はいらないそうだが、それでは飲みに行くのと変わらない。とりあえず様子を見るか。

さて、今週は東京競馬場でオークスが行われる。

Oaks1

「日本ダービー」の呼び名の通り、JRAのダービーには「日本」が付くのに対し、オークスを「日本オークス」と呼ぶことはない。だから、日本国内で行われるクラシックレースのうち、オークスだけは本家イギリスと同名になっている。

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ただし、これがいわゆる通称であることは大半の方がご存知だろう。「オークス」の正式名称は「優駿牝馬」。「日本ダービー」の正式名称が「東京優駿」であることも、競馬ファンのほとんどが知っている。

Oaks3

では、英語のOAKが、実際には「樫」ではなく「ミズナラ」を指す言葉であることをご存知の方は、どれくらいいらっしゃるだろうか。

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元を辿れば明治時代の誤訳に原因はある。英語のOAKを「樫」と訳した英文学者は、残念なことに植物学者ではなかった。ちなみに樫とミズナラは遠縁には違いないが、近親と呼べるほどの間柄ではない。桜と桃くらいの間柄だそうだ。

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ともあれ、「OAKS」というレース名の起源ともなったダービー卿の別邸に生い茂っていたその木は、樫ではなくミズナラだったのである。

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しかし少なくとも競馬の世界では「オーク=樫」として定着して、その根を地中深くまで伸ばしてしまっている。昨年の表彰式でも「樫の女王」というフレーズが幾度となく使われていた。いまさらオークス馬を「ミズナラの女王」と呼ぶのは難しい。語感的にも「樫」の方がピタッとハマる。

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ところで「響」は「ミズナラ樽熟成モルト」をキーモルトとしている。もともと日本国内のウイスキー樽には外国のOAK材が使われいた。それが戦時中に入手が困難になったことから、国内のOAK、すなわちミズナラが使われるようになったという。いわば代用品。しかしそれが、日本ウイスキー独特の香味を引き出すもととなった。そんな話を聞けば「ミズナラの女王」の響きも違って聞こえてくる。日曜は「響」でオークス馬に乾杯しよう。

 

 

***** 2022/5/17 *****

 

 

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2022年5月16日 (月)

神髄を求めて

昨日の続き。

うどん屋さん「大河」で道を教えてもらい、藤森神社への参拝を済ませてから、蹴上まで電車で移動。そこから日向大神宮に向かうのだが、これがほとんど山登りという風情だったので、一日経った今は筋肉痛が半端ない。

Hana

社伝によれば、顕宗天皇の時代に筑紫日向の高千穂の峯の神蹟より神霊を移して創建されたとのこと。内宮、外宮が奉斉されているのも、天照大御神を祭神とするのも伊勢神宮と同じ。実際「京の伊勢」とも呼ばれているそうだが、南禅寺や永観堂、インクラインといったメジャーな観光スポットが近隣にあるせいか、参拝客の姿はほとんどない。道端にひっそりと咲くシャガの花が寂寥感を煽る。

Shaga

山を降りてさらに歩く。平安神宮に立ち寄り、さらに鴨川を目指して疎水脇の道を鴨川目指して歩いていると、「うどん」の幟を発見した。

Haya1

「製麺所」と書かれているから、生麺を小売りしているのだろうか。そう思い中を覗いてみたら椅子とテーブルがあるではないか。メニューもあるからここで食べられるに違いない。ただ、営業時間は13時までと書いてある。いまは13時11分。さすがに無理は言えない。それで生麺だけ買って行こうとお店の人に声を掛けたら「店内でも大丈夫だよ」と言ってもらえた。なんというありがたさ。恐縮しながら茹で上がりを待つことに。

Haya2

聞けば朝4時から営業しているらしい。平日は通勤の人が、日曜でも近隣のホテルの宿泊者やゴルフに出かける人が食べていくとのこと。「早起亭」の名はダテではない。私が注文した「おかあちゃんのうどん」は、かけうどんを玉子でとじてカマボコと九条ネギを載せたシンプルな一杯。1番人気だという。

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聖護院の湧き水を使っているというやさしいダシにモッチリ粘りのある麺。大阪とも博多とも違うし、もちろん讃岐とは全く違う。これぞ京風。毎日でも食べられそうな飽きのこない一杯は、やはり朝食に合いそうだ。午前中は讃岐の神髄に触れたが、これはこれで京風の神髄という気がしないでもない。

Haya4

食べ終わる頃に男女2名の客が表に立った。閉店時刻は過ぎているが、伸ばしてしまったのはこの私である。申し訳ないけど……と思ったら、店主が外に出て「どうぞ、食べてってください」と招き入れた。恐縮する客。その気持ちはわかる。京都のお店は一部に高圧的なイメージもあったが、そんな偏見は捨てる必要がありそうだ。昨日付の「大河」の主人もしかり。ただし、うどん店だけの話かもしれない。その神髄に触れるためにはさらなる調査が必要。来週以降もたくさん歩くことにしよう。

 

 

***** 2022/5/16 *****

 

 

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2022年5月15日 (日)

大河への道

朝から京都の城南宮を訪れた。

「城南宮」とは平安城の南に鎮まるお宮の意で、平安遷都の西暦794年の創建と伝えられる。平安時代後期には白河上皇や鳥羽上皇によって、城南宮を取り囲むように城南離宮が造営されて院政の拠点となると、城南宮は離宮の鎮守として一層崇められた。幕末ファンには鳥羽伏見の戦端が開かれた地として有名。昨年の大河ドラマ「晴天を衝け」にも登場している。

競馬ファンには馴染みが薄いかもしれないが、「流鏑馬発祥の地」と聞けば少しは興味が湧くだろうか。1096年に白河上皇が始めたのが嚆矢とされる。1221年、時の後鳥羽上皇は北条義時討伐のため、流鏑馬の武者揃えの名目で城南宮に武士を集めた。これが承久の乱の始まり。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の終盤のヤマ場にもこのシーンが登場するかもしれない。

Goshuin

城南宮の神苑は「源氏物語花の庭」と呼ばれているらしい。源氏物語の主人公・光源氏は、四季の庭を備えた大邸宅「六条院」を造り、季節の移り変わりを愛で様々な遊びを行った。白河上皇はこの「六条院」に触発されて、この地の造営取り組んだ。これにちなみ城南宮では源氏物語ゆかりの花を随所に植栽している。ちなみに来年の大河ドラマ「光る君へ」は源氏物語を生んだ紫式部の人生がテーマだ。

Kakitubata

今はカキツバタが盛り。しっとり濡れたような群青の花びらは、昔は染色の材料にもなり「書き付け花」と呼ばれたことがその名の由来だという。天に向かって突き刺すような鋭利な葉は、かつて城南宮に集った武士の刀を連想せずにはいられない。先日のカキツバタ記念を勝ったイグナイターなどはさしずめ地方の野武士であろう。

今日は歩くと決めている。白河天皇陵や鳥羽天皇陵などに立ち寄りつつ藤森神社を目指す。だが、1時間ほど歩いた住宅街で道に迷ったことを悟った。周囲を見渡すと一軒のうどん店が暖簾を掲げているではないか。その名も「大河」。その名の由来は分からないが、道を尋ねるついでに一杯引っ掛けていこう。

Taiga

道を尋ねる目的で入ったこの店が、近年稀に見る大当たりになるとは思わなかった。注文したのは初来店の方におススメだという「大河盛り」。冷たいぶっかけに、揚げたての海老・鶏・竹輪の天ぷらが付いてくる。この天ぷらが滅法美味いのだが、それよりもやはり麺が違った。

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「なんじゃこりゃ!?」

実際に声に出してしまったかもしれない。それぐらい驚いた。びよーんと伸びる柔軟性と噛めばクンと押し返してくるコシのバランスが絶妙。この美味さを表現するのに適当な言葉が見つからない。慌てて店内を見まわしたら「池上製麺所」の麺箱が。あとで聞いたら、主人はうどん好きなら知らぬ人はいない伝説の「るみばあちゃん」の最後のお弟子さんだそうだ。まさか京都の住宅街で讃岐の神髄に出会えるとは思わなかった。道を尋ねている場合ではない。

食べながら悔やんだ。私にしては珍しく「並盛」にしていたのである。それを悟られたのか、主人から「足りましたか?」と訊かれてしまった。まさか足りぬと答えるわけにはいかない。それで「また来ます」と応じた。そして道を尋ねた私のために店の外に出て、丁寧に道案内までしてくれたのである。美味い上に親切。これまで数百のうどん店を訪れた私だが、ここ以上のお店を私は知らない。「大河」を名乗るだけのことはある。今日の散歩は間違いなくここが目的地だった。

 

 

***** 2022/5/15 *****

 

 

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2022年5月14日 (土)

ピンかパー

京王杯スプリングカップはメイケイエールが1番人気に応えて優勝。重賞5勝目をマークした。雨の影響が心配されたが、蓋を開けてみれば馬場は「良」。勝ち時計1分20秒2なら例年と変わらない。明日のヴィクトリアマイルも速い時計の決着になりそうだ。

馬上で立ち上がらんばかり手綱を引っ張る騎手と頭を上げて嫌がる馬。両者の攻防は見応えがあるほどだったし、早目に先頭に立たざるを得ない展開にも「いつつかまるか?」とヒヤヒヤしたが、それでも勝ってしまうのだからメイケイエールの能力の高さは疑いようがない。しかし勝利騎手インタビューに応じた池添騎手の歯切れは悪かった。先々を見据えての1400m挑戦だったはず。勝つには勝ったが、悩みの種はむしろ増したと思われる。優先出走権を獲得した安田記念というわけにはいくまい。陣営の判断が気になる。

明日のヴィクトリアマイルで人気を集めるソダシもそうだが、シラユキヒメの一族は気性に難を抱える子が多い。そういう意味ではメイケイエールも毛色を除いて一族の血をちゃんと引いている。ファンの人気が高いのもこの一族の特徴。パドックにはメイケイエール目当てのファンが陣取り、厩舎には全国のファンから手紙やお守りが届くという。

Stlap

ところで私のスマホにはメイケイエールのストラップが付いている。去年、東京競馬場内のガチャガチャで出てきたやつ。エフフォーリア狙いの娘から「はずれ」として渡された。とはいえ、今となっては「当たり」ではあるまいか。ただ、たった3回目のチャレンジで見事エフフォーリアを引き当てた娘の運の強さには逆立ちしても叶わない。

このストラップを観て「メイケイエールがお好きなんですね」と言われる機会が増えてきた気がする。メイケイエール自体の認知度が上がっている証拠であろう。GⅠ未勝利でここまで人気になる馬は久しぶり。ツインターボ、ナイスネイチャ、ホワイトストーン。かつてはGⅠを勝っていなくても、GⅠ馬と遜色ない人気を誇る実力馬がたくさんいた。ホクトヘリオスなんかも好きだったなぁ。

ちなみに私自身はメイケイエールの馬券で儲けたという記憶はない。今日の京王杯の勝利を含めて、これで通算成績は(6,0,0,5)。こういうピンかパーというタイプは嫌いではないが、馬券での付き合いが正直苦手。でも、そこが人気を集める理由でもあろう。

 

 

***** 2022/5/14 *****

 

 

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2022年5月13日 (金)

桜花賞馬の復活

ヴィクトリアマイルは今年が17回目。データ派にとっては心許ない回数だが、波乱傾向にあることは疑いようがない。なにせ1番人気で勝った馬は5頭のみ。それもウオッカ、ブエナビスタ、ヴィルシーナ、アーモンドアイ、そして昨年のグランアレグリア。歴史にその名を残すような名牝ばかりだ。

本命党の悩みは、ずっと低迷してきた馬がこのレースで突如として激走するケースが多いことであろう。もともと牝馬は消長が激しい。「陰りを見せた女馬には手を出すな」の金言もある。「もう終わった」という周囲の評価をよそに、「こんなはずではない」と追いかけ続けるのは、牝馬に限って言えば危険な賭けのはずだった。一度不調の波にのまれた牝馬を再び好調の波に乗せるのは、そう簡単なことではない。

だが、このヴィクトリアマイルに限れば、不振に苦しむ牝馬たちが突然何かを思い出したかのように激走し、そのたびに穴馬券を演出してきた。昨年のストレイトガールも、一昨年のヴィルシーナも、ヴィクトリアマイルを勝つまではいずれも6連敗。1年以上勝ち星から遠ざかっていたのである。中でも極端なのが第1回の覇者ダンスインザムード。デビューから4連勝で桜花賞を制した女王も、オークスで4着と敗れてから実に14連敗という泥沼に喘いでいた。

Dance

いま思えば、彼女は初モノに縁のある馬だったような気がしてならない。ヴィクトリアマイルの初代チャンピオン。北村宏司騎手はそれがGⅠ初制覇。さらにこの夏には米国に遠征してキャッシュコールマイルを勝ち、日本調教馬として米国で重賞を勝ったサンデーサイレンス産駒の第1号にもなった。遡れば、3歳時の桜花賞制覇は藤沢和雄・元調教師にとって初めてとなるクラシックのタイトルでもある。

その藤沢氏は、ヴィクトリアマイルを勝った北村騎手に、「ムチが2回も入ってた。岡部騎手なら叩かなかったぞ」と言って周囲を笑わせた。これにはさすがの北村騎手も苦笑いするしかない。愛弟子の初めてのGⅠ勝利が嬉しくないはずがないのに、そんなシチュエーションでも注文を付けるのが藤沢流。あるいは名手を引き合いに出したことで、褒めたつもりになっているのかもしれない。ともあれ見事な桜花賞馬の復活劇だった。

さて、今年のメンバーを見渡して、不振から抜け出せぬ1頭の桜花賞馬に目が留まった。古馬牝馬によるマイルGⅠは一年でこの一度きり。復活を目指すソダシにとって、これ以上の舞台はあるまい。再び歴史が繰り返されることが果たしてあるのだろうか。桜花賞馬の復活に期待しよう。

 

 

***** 2022/5/13 *****

 

 

 

 

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2022年5月12日 (木)

のじぎく賞の反省

今日は短めの投稿です。

のじぎく賞は今年で60回目を数える。菊水賞と兵庫ダービーの間に3歳牝馬だけで行われる歴史ある重賞レースに、南関東2頭、金沢1頭を含む12頭で行われた。

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勝ったのは4番人気の地元馬ニネンビーグミ。道中2番手から4角で先頭に立つと後続の追撃を凌ぎ切って、兵庫クイーンセレクションに続く重賞2勝目を挙げた。兵庫の3歳牝馬の中では能力上位であることを示した格好。次走兵庫ダービーであらためて牡馬一線級に挑む。

2着は中団から伸びた1番人気のニフティスマイル、3着には後方から追い込んだ11番人気のラッキーライズが入った。実はこれ、兵庫クイーンセレクションとまったく同じ着順である。そのときは3連複5,340円、3連単19,030円だったのが、今日は3連複18,450円、3連単60,910円に跳ね上がった。もちろん買っていない。これは馬券を買う側にとって大いなる反省材料であろう。その反省会が長引いたことが短縮投稿の理由。明日はしっかり書きます。

 

 

***** 2022/5/12 *****

 

 

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2022年5月11日 (水)

京王杯連覇の難しさ

今週土曜の京王杯スプリングカップは今年で67回目を数える歴史ある一戦。しかし、今年の登録馬は12頭に留まった。ヴィクトリアマイルと重複登録の牝馬もいるから、最終的に何頭立てになるか分からないが、少なくとも平成以降の最少頭数に並ぶか、それ以下となることは間違いない。1989年以後もっとも少なかったのが1993年の12頭だった。

私が知る京王杯といえば多頭数が当たり前。しかも毎年豪華メンバーが顔を揃えた。グレード制が導入された1984年から昨年までの優勝馬のべ38頭のうち、6割を超える23頭がGⅠ馬(のちのGⅠ馬を含む)であることを思えば、レベルの高さは疑いようもない。

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第29回 ハッピープログレス
第30回 ニホンピロウイナー
第32回 ニッポーテイオー
第36回 ダイイチルビー
第38回 ヤマニンゼファー
第39回 スキーパラダイス
第40回 ドゥマーニ
第41回 ハートレイク
第42回 タイキブリザード
第43回 タイキシャトル
第44回 グラスワンダー
第45回 スティンガー
第46回 スティンガー
第48回 テレグノシス
第50回 アサクサデンエン
第51回 オレハマッテルゼ
第56回 ストロングリターン
第57回 サダムパテック
第61回 サトノアラジン
第62回 レッドファルクス
第64回 タワーオブロンドン
第65回 ダノンスマッシュ
第66回 ラウダシオン

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2000年にはグラスワンダーが除外の瀬戸際に立たされたことがある。この年に限ってフルゲート頭数が削られたわけではない。仮にそうだとしても前年の同レース覇者で、年末に有馬記念連覇を果たした当時の現役最強馬を除外することがおかしい。ともあれフルゲート18頭に対し、外国馬のディクタットと地方馬のタマルファイターが出走を表明。残る16頭分の枠もいわゆる除外による優先出走権保有馬で埋まってしまったのである。

除外による優先出走のルールが現在とは違っていたことが引き起こした珍事。幸い優先出走権保有馬の中から回避が出たことで、グラスワンダーはめでたく出走にこぎつけることができたが、1番人気に推されながら結果9着に敗れ連覇は逃した。有馬記念を連覇できても、京王杯の連覇はかくも難しいのである。

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今年の登録馬12頭の中で唯一のGⅠ馬はラウダシオン。昨年のこのレース優勝馬だから、グラスワンダーと同じく連覇をかけての出走ということになる。だがしかし、京王杯の長い歴史の中で、連覇を達成しているのは2000-01年のスティンガーただ一頭。01年といえば馬齢表記が国際基準に合わせて満年齢に変更となった年だから、スティンガーは京王杯スプリングカップを「5歳」で二度勝っていることになる。

 

 

***** 2022/5/11 *****

 

 

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2022年5月10日 (火)

名古屋・岐阜うどん紀行

先週末は中京開幕に合わせて、名古屋・岐阜界隈をぶらぶら。コロナ禍で自粛していたうどん屋さんのハシゴにも久しぶりにチャレンジしてみた。

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まずは名古屋の隣駅で下車。ウインズ名古屋の最寄り駅・尾頭橋駅から7~8分歩くと、「手打ちうどん」の文字が飛び込んでくる。こちらの「かね松」は独特の注文スタイルなので注意が必要。扉を開けて入店すると、製麺された状態の麺が並んだショーケースの前に立たされる。まずは麺のみを買って帰るのか、あるいは店内で食べていくのかを伝えよう。基本メニューは、うどん、そば、きしめん、中華麺の4種類。それを「小盛(1玉)」にするか「大盛(2玉)」にするかを決めて注文する。1玉ずつのミックスもアリだ。

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店内で麺を湯掻いている間に天ぷらをチェック。欲しいヤツを白いトレーに乗せて取るのはセルフうどんと同じ。ただ、会計が後払いなので、何を取ったのかはきちんと把握しておこう。帰り際に「天ぷらは何を取られました?」と聞かれて、「えーと、なんだっけ?」みたいなことになると、この和やかなお店のシステムが壊れかねない。ちなみにイワシの天ぷらは冷めていながら出色の美味さだった。

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夜は岐阜に移動。JR岐阜駅ナカの「くらうど」でさんざん呑んだシメの一杯に美濃細打ちうどんを食べてみた。郷土料理の土手煮や黒味噌おでんといった濃い茶色のアテを食べまくったあとに、純白の細平打ち麺と透き通ったダシがなんとも心地よい。愛知・岐阜には味噌煮込みうどんしか無いものだと勝手に思い込んでいた身にとっては驚きの一杯でもある。

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翌日、中京競馬場に向かう途中の一宮駅で途中下車。尾張一宮で知られる真清田神社近くの住宅地にひっそりと暖簾を掲げる「太田屋本店」は、味噌煮込みうどんの店として古くから地元に愛される老舗だそうだ。その歴史ははっきりしないが百年以上とも。この地で愛される味噌煮込みうどんの元祖とする声もある。

最近でこそ夏限定のざるうどんを始めたというが、長いこと味噌煮込みうどんの一点勝負でやってきたらしい。だから常連は「1杯」とか「2杯でひとつは餅入りでお願い」という具合に数量だけを声にして注文する。

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麺は乾麺を使用。しかも一度湯掻くのではなく、乾麺の状態から10分以上味噌で煮込むらしい。それが麺を噛んだ瞬間の「プツ」という独特の歯応えに繋がる。とはいえ弾力がないわけではない。この絶妙な食感は癖になる。ツユも色の割にしょっぱいわけでもなく、最後まで美味しく飲み干すことができた。「元祖」として賞賛を受けるのも理解できる。

最後は日曜の競馬終わりの名古屋駅。在来線ホーム3・4番線の「住吉」で締めた。

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「住吉」と言えば新幹線ホームが有名だが、あそこはいつ行っても満員。その点、在来線の店舗は空いてるし、何より天ぷらが揚げたてで提供される。イカ天きしめんをオーダー。あいよとばかりにオバちゃんがイカを油に投入した。すると3番線に大府行きの普通電車が入線。だがホームの一番端にある店舗に来ようとする客はいない。天ぷらを待ちながら来週のJRA特別登録馬をチェックする。実にのんびりした時間。しかるのちに「お待ちどおさま」とイカ天きしめんが目の前に出された。

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さっそく天ぷらに齧りついた私の口内をマグマのごとき熱さが襲う。当たり前だ。ふーふーと冷ましながらゆっくりいただく。私のあとに入ってくる客はいない。とかくせわしない風景になりがちな駅の立ち食いだが、こういう店だってある。今回は知らないことをたくさん学んだ。

 

 

***** 2022/5/10 *****

 

 

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2022年5月 9日 (月)

大きなハナ差

先週土曜は競馬場に到着したのがお昼過ぎ。席に着くと、ちょうど5レースが発走するところである。芝2000mの3歳未勝利戦。1番人気サトノリーベが混戦から抜け出すと、1馬身のリードを保って残り50mを過ぎた。これは完勝。―――そう思った瞬間、外から一気の脚で伸びてくる馬がいる。白い帽子に青い勝負服。誰だ?と確認する間もなく、ぐんぐん差を詰めてきた。最後は両馬が鼻面を並べてゴール。これは際どい。

Washizu

場内実況も興奮を隠さない。「並んでゴールイン! さあ、どっちだ? これは微妙だ。しかしこれは大きなハナ差です!」

競馬におけるハナ差はたかだか数センチだが、それが大きく明暗を分けることは珍しくない。ときには両馬の一生を左右することも。だから「大きなハナ差」というのは理解できる。それにしても「大きい」を強調し過ぎではないか。まだ5月。この先も未勝利はまだたくさんある。これが8月末の未勝利戦だったらメチャクチャ大きなハナ差だろうが、今ならそこまで大きくはあるまい。

そのときハッと気づいた。ひょっとしたら馬ではなく人の方か? 

慌てて新聞を広げると騎手欄には「鷲頭」とあった。

―――知らん。

ということはこの春にデビューしたばかりの新人だ。ともあれ写真判定の末に確定した1着馬はヤマニンゼスト。鷲頭虎太騎手はこれが嬉しい初勝利となった。福永祐一騎手の人気馬を差し切ったのだから自信を持って良い。

3月にはドバイへ渡りシャフリヤールの調教にも騎乗していたという。たとえ調教とはいえダービー馬の手綱を取らせてもらえるとは相当なもの。今年の新人騎手10人では6人目の勝利だという。鷲頭騎手自身はインタビューで「(初勝利までに)時間がかかってしまった」とコメントしていた。同期が勝ち星を重ねていく姿を横目で見ていれば、自分だって早くひとつ勝ちたいと思うもの。焦る気持ちもわかる。

だが、早く勝てば良いというものでもない。同期の一番星となりながら、その後大成せずに終わった騎手のなんと多いことか。逆に田辺裕信騎手のように8月の新潟でようやく初勝利を挙げながら、トップジョッキーに昇り詰める例だってある。競走馬同様、騎手にも早熟タイプや晩成タイプがあるに違いない。今年の新人騎手たちは果たしてどのような成長曲線を描くのだろうか。焦らずじっくり見守りたい。

 

 

***** 2022/5/9 *****

 

 

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2022年5月 8日 (日)

高速馬場を味方に

中京競馬場は今日も好天。昨日は上着が邪魔だったが、今日は乾いた風が吹き抜けて過ごしやすい。屋外での競馬観戦が気持ち良い季節になった。

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メインはオープン特別の鞍馬S。リステッドではない。ひとつ前の橘ステークスがリステッドだからメインの方が格下ということになるが、昨年の2着馬がナランフレグだと思えば軽くも扱えない。そもそも馬券を買う立場からすればブラックタイプなど関係ないのである。

Record

9レースの三方ヶ原Sの勝ち時計は2分09秒0。昨日の京都新聞杯で叩き出された日本レコードがいきなり更新された。続く橘Sは芝1400mのレコードにコンマ1秒と迫る1分19秒3。今日も芝コースの時計は速い。きっと鞍馬Sも1分7秒台前半の決着になる。後ろからの競馬では届くまい。普段にも増してスタートが鍵を握りそうだ。

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だから外枠のシゲルピンクルビーが思いのほかの好発を決めて、スッと3番手に付て流れに乗っているのを見たとき、なぜか勝負あったと思った。実際、1分07秒1で2着ダディーズビビッドに1馬身1/4差なら完勝と言って良い。「スタートだけに集中していた」と振り返る和田騎手は、ひとつ前の橘Sでも大外からウインマーベルを先行させて完勝している。さすがベテラン……と言いつつ、私は彼を信じ切れずに馬券を買い逃した。この辺がいけない。

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ともあれシゲルピンクルビーにとっては1年2か月の勝利でこれが通算3勝目。よくよく考えたらGⅡ勝ちの実績はここでは一枚上だった。今後はサマースプリントシリーズに参戦するとのこと。群雄割拠の戦国スプリント戦線に、また一頭面白い存在が加わった。

 

 

***** 2022/5/8 *****

 

 

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2022年5月 7日 (土)

変わる競馬場の光景

JRAは関西とローカルで開催替わり。今日から中京と新潟が始まる。その中京入場門でひと悶着。入場制限を知らずにやって来たお客さんとスタッフが揉めていた。それもひと組やふた組どころではない。昨今では開催初日によく見る光景。世間の自粛マインドの後退速度とJRAの施策の緩和速度にギャップがあるのかもしれない。一方、新潟では入場券の当日発売も行われるそうだ。中京も立ち見のお客さんでいっぱい。競馬場の光景も少しずつ変わりつつある。

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開催初日に戸惑うのは観客だけではない。7レース芝1400m戦で1分19秒6の勝ち時計が記録された。レコードにコンマ4秒差という猛時計を1勝クラスの馬が叩き出すのだから馬場は絶好。前は簡単には止まらない。それがメインの京都新聞杯に挑む騎手たちの心理に影響を与えた可能性はあろう。

逃げたメイショウラナキアの1000mのラップは58秒2。それを背後から追いかけたブラックブロッサムはさすがに厳しい。最後方から捲ったヴェローナシチーが先頭で残り1ハロン標識を通過したのは1分57秒4。2000mのレコードにコンマ2秒遅れるのみだが、あと200mある。満を持して先頭に立ったのはアスクワイルドモア。ヴェローナシチーも差し返す根性を見せるが、さすがに脚が残ってない。半馬身の差を保ったままゴール。2分09秒5の日本レコードが記録された。

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アスクワイルドモアの父は2013年のこのレースを勝ったキズナ。父と同じ道を辿って勇躍ダービーへと向かうことになる。時計勝負になればチャンスはなくはない。史上初の父子三代日本ダービー制覇の歴史的快挙の可能性も出てきた。

そんなダービーをこの目で観てみたいと思う。そのダービーには指定席と一般入場を合わせて7万人の観客が入場可能となるらしい。ラチ下に陣取るカメラマンも先週あたりから急に人数が増えた。ダービーの頃には競馬場の光景はさらに一変しているかもしれない。

 

 

***** 2022/5/7 *****

 

 

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2022年5月 6日 (金)

新天地

2020年のかしわ記念の優勝馬ワイドファラオ(牡6)の競走馬登録抹消が報じられた。今後は大井競馬に移籍するという。先月には19年の毎日杯を勝ったランスオブプラーナの船橋移籍と、昨年の函館記念を勝ったトーセンスーリヤの大井移籍が発表になった。競走寿命が延びるにつれ、地方競馬に新天地を求めるJRAオープン馬は増える傾向にある。

さて、昨日付で「むしろ園田での重賞初挑戦ながら当地最強馬に迫ったシェダルの強さが際立った」と書いたが、この馬がもともと強い馬だということを知らなかった。新聞の馬柱には直近5走の成績しか載ってない。もちろん、ノーザンファーム産のシルクの馬だと思えばJRAデビューだということくらいはわかる。そのJRAでの成績が私の想像を上回るものだった。

新馬を大差勝ち。続く1勝クラスも危なげなく連勝。その後2戦は足踏みするも、2勝クラス、3勝クラスをあっさりと勝って、デビューからわずか6戦でオープン入りを果たしている。その手綱もO.マーフィー、L.ヒューイットソン,C.ルメール、そして横山武史と続けば、期待の高さは疑いようもない。クロフネの肌にゴールドアリュールと血統も筋が通っている。

なのに、オープン入り後わずか4戦でJRAに見切りをつけて地方移籍の道を選んだことには、若干の驚きを禁じ得ない。まだ4歳。ダート馬としては本格化はこれからであろう。しかも移籍先に園田を選んだことにまた驚く。この血統でこの成績なら南関東でも良さそうなもの。それを聞いたときの会員さんの心境はいかほどだったか。

しかし、結果的に園田を選んだことは間違ってはいなかった。移籍半年間で6戦を消化して(4,1,1,0)。敗れた2戦はいずれも重賞だが、重賞に手が届くのも時間の問題であろう。

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JRAの重賞ウイナーがこぞって南関東に移籍する中にあっては、園田という選択肢は悪くないのかもしれない。賞金が見合わなかったのは過去の話。昨日の兵庫大賞典の賞金総額は3800万円(1着2000万円)だったが、3年前は1600万円(1着1000万円)だった。好調な馬券売上に支えられて賞金も増加傾向。シェダルが稼いだ賞金は移籍後の半年間で2000万を超える。園田にセカンドキャリアを求めるJRAオープン馬はさらに増える可能性がある。最強馬ジンギもうかうかしていられない。

 

 

***** 2022/5/6 *****

 

 

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2022年5月 5日 (木)

ジンギあり戦い

年度代表馬と重賞最多勝記録保持馬の今年初対戦。そこへ園田ではオープンクラスで4戦4勝という新鋭が加わって三つ巴の様相となった兵庫大賞典は、JRAで言えば先日の大阪杯にも匹敵する好カード。間違いなく今年上半期の園田最注目レースであろう。新型コロナ対策で入場券は事前予約のみに絞られていたらしい。それでもスタンドは大一番をひと目観ようという大勢のお客さんで賑わっている。

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逃げたのは圧倒的1番人気に推されたジンギ。それをピタリとマークするように半馬身差の2番手につけたは2番人気シェダル。その態勢のまま1週目の3~4コーナー、ゴール前、1~2コーナー、2週目の向こう正面、そして勝負どころ2週目の3~4コーナーに差し掛かった。激しく手綱を動かすジンギに、外からシェダルが並びかける。手応えはシェダルの方が良い。そしてついにシェダルが前に出た。

その瞬間である。

「ジンギ!」

「がんばれ!」

「マナブ! 差し返せ!」

新型コロナ対策は入場制限だけではない。大声も禁止されていたはず。それでもスタンドからはジンギを応援する声があちこちから飛んだ。その声援に応えるかのようにジンギが再び前に出る。というより、シェダルがコーナーで膨れてしまった隙を突いた格好。粘り込みを図るジンギに、立て直したシェダルが猛然と迫ってくる。ここからがジンギの真骨頂。クビ差凌いでこのレース連覇を果たした。

Hyogo

「正直負けたと思った」

騎手も調教師も同じ言葉を選んだことがレースの激しさを物語っている。今回はジンギの底力を褒めるしかあるまい。むしろ園田での重賞初挑戦ながら当地最強馬に迫ったシェダルの強さが際立った。早ければ来月の六甲盃での再戦もあり得るが、ジンギにとっては昨年負けたレースでもあり出否は微妙なところか。

ただ、出走が実現すればファンは喜ぶに違いない。園田生え抜きの現役最強馬に対するファンの愛着は私の想像を遥かに超えている。今日はそれを肌で感じることができた。兵庫大賞典の連覇は2005年、06年のロードバクシン以来16年ぶり2頭目。2勝馬ということではチャンストウライとオオエライジンもここに加わる。いずれも兵庫ではレジェンド級の名馬たち。ジンギの走りを目撃できることに感謝しよう。

 

 

***** 2022/5/5 *****

 

 

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2022年5月 4日 (水)

幻の対決

今週土曜の東京メインはプリンシパルS。1996年に新設されたダービートライアルだが、これまでのところプリンシパルSからダービーを勝った馬はまだ出ていない。

だが、惜しいケースは一度だけある。プリンシパルS創設初年度のこと。この年の優勝馬はダンスインザダークだった。

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いま思えばダンスインザダークほどの器の持ち主が、わざわざプリンシパルSに出走してきたこと自体が奇跡的に思えてならない。弥生賞を快勝。一躍皐月賞の主役に躍り出るも、レース6日前に発熱して出走回避を余儀なくされた。しかも、その皐月賞を制したのが弥生賞で3着に負かしたイシノサンデーだというのだから、悔しさも倍増である。

こうなればダービーだけは絶対に譲れない。しかし弥生賞から直行では間隔が空き過ぎるし、本番前に東京コースを経験しておくことも必要だ。そこで陣営は万全を期してプリンシパルSを使うことを決断する。こうしてプリンシパルSは、いきなりダービー最有力候補が出走する注目レースとしてその歴史をスタートさせた。

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ところで、このプリンシパルには、もう一頭の有力馬が出走を予定していたことをご存じだろうか。この時点で2戦2勝。ダービーの秘密兵器と噂されていたフサイチコンコルドである。

もともと1週前の青葉賞に出走するプランがあったのだが、GWの渋滞に巻き込まれるのを嫌って回避していた。デビュー前に北海道から栗東に輸送したときに、輸送熱を出した経験を考慮してのこと。この時点では、ダンスインザダークとフサイチコンコルドがダービー前に顔を合わせる可能性が極めて高かったことになる。

しかし、話はそう簡単には進まない。首尾よく渋滞を避けてプリンシパルSの前日に府中に到着したフサイチコンコルドだったが、それでもやはり発熱。そのまま栗東に引き返すことになる。両馬とも発熱に翻弄されるあたりが、なんとも示唆的で興味深い。いずれせよ、プリンシパルSでのダンスインザダークとフサイチコンコルドの直接対決は幻に終わった。

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もしあのプリンシパルSで2頭の直接対決が実現していれば、1996年のダービーはまた違った結末になっていたかもしれない。だが結果だけが競馬である。2頭の運命は変えようもなかった。

 

 

***** 2022/5/4 *****

 

 

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2022年5月 3日 (火)

24日目の馬場

4月28日付「大外18番枠の試練」に最内アイアンバローズが狙いと書き、おととい付けでは天皇賞馬の牝系であるディープボンドとロバートソンキーに敬意を払わないわけにはいかないと書いた(実際に馬券も買った)わけだが、実際に私の予想として買った天皇賞の馬券はこちらでした。

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この3か月間、毎週のように競馬場に通い詰め、芝の定点観測を続けてきたのはダテではない。冬から春にかけて成長する野芝と、開催が進むにつれて生じる傷みのせめぎ合い。12週連続開催の最終日はその集大成に違いない。導き出したファイナルアンサーは「逃げたもん勝ち」であった。

明け方からの雨が昼まで残り、馬場は稍重。8Rの蓬莱峡特別は芝の1800m戦は2番人気ルースが逃げ切った。2着も2番手追走アトリビュートの粘り込み。逃げ馬に33秒7で上がられては後続は為す術がない。圧倒的人気のフアナは後方から差を詰めることさえできず着外に沈んだ。

続く9R山陽特別も行った行ったの決着。2勝クラスで芝1400mを1分21秒2なら良馬場の時計とさして変わりない。この時点で、私はタイトルホルダーの勝ちを確信した。

8枠16番は有利とはいえないが、1週目が外回りとなる3200mであれば、菊花賞よりも楽に先手を奪うことができる。有馬記念のパンサラッサのようなハナっ早い相手がいるわけでもない。そもそも春天における菊花賞馬の強さは歴史が証明している。ましてや今日の馬場。負ける要素がない。

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惜しむらくはシルヴァーソニックの落馬だ。騎手を乗せてさえいれば馬連86.1倍が的中するところだった。まあそれは冗談としても、騎手の指示を受けることもなく、外枠からいつの間にかインの2番手にもぐりこんだシルヴァーソニックの競馬センスには感服の念を禁じ得ない。結果的には8枠の3頭が上位入線を独占した格好。阪神3200mの8枠は「試練」というほど不利ではないのかもしれない。できればそれを来年の馬券作戦に生かしたいが、残念ながら来年は京都での開催に戻ってしまう。次に阪神で春天が行われるのがいつのことになるかはわからないが、その日まで忘れぬようにしよう。

 

 

 

***** 2022/5/3 *****

 

 

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2022年5月 2日 (月)

忍野八海

馬術絡みで山梨に来たついでに忍野八海に立ち寄ってみた。

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初めて訪れるのだけど、のどかなところですね。山中湖と河口湖という二大巨頭に挟まれた高原の観光スポットでありながら、観光地としては昭和で時計が止まったまま。駐車料金は300円だし、かつてどこの観光地にもあった「富士カラー」のベンチも現役稼働中。

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「池本茶屋」というお店に入る。お店の方に「うちはお蕎麦がお薦めなんですよ」と言われながら注文したつけうどんは、お水の美味しさに比例するように美味い。きっとお蕎麦も美味しいんだろうと思います。

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***** 2022/5/2 *****

 

 

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2022年5月 1日 (日)

165回の重み

第165回天皇賞(春)―――。

天皇賞の本馬場入場時に場内アナウンサーが発したひと言に思わず考え込んだ。

天皇賞は1905年に明治天皇から「菊花御紋付銀製花盛器」を下賜され創設された「エンペラーズカップ」が前身。1937年の日本競馬会創立に伴い「帝室御賞典競走」として春は阪神、秋には東京で年2回行われるようになった。第1回は1937年の秋に東京の2600mで、第2回は1938年春に阪神2700mで行われている。戦争の影響で中止期間はあるものの、「平和賞」「天皇賞」と名前を変えつつ今日までその歴史は続いてきた。それが今日、165回目を迎えたという。

そこで考えた。私はこの165回の天皇賞を、果たして何回観たのだろうか?

初めて観た天皇賞は1984年の府中。勝ったのはミスターシービーだった。以降、秋は30回くらいは観ているだろうか。春は今日で3回目。となればちょうど5分の1ということになる。自分の感覚より遥かに少ない。天皇賞の長い歴史の前では私は完全なるヒヨッコだ。

ただ、東西で分かれて行われている以上、現地観戦が難しいのは当然。ならばテレビ観戦でカウントしよう。ならばプリティキャストの記憶はある。あれは1980年だから82回。大本命メジロファントムを応援していた私は、その絶望的な展開に思わず言葉を失った。おそらくその後は毎年欠かさずレースは観ているわけだから、ちょうど半分を観たことになる。そう考えても天皇賞の歴史は深い。

そんなことを考えていたら、ついこんな馬券を買ってしまった。

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ディープボンドの5代母は第46回天皇賞の優勝馬クリヒデ。いまはなき府中3200mの秋天で並み居る牡馬をなぎ倒した。

さらにロバートソンキーの8代母ヒサトモに至っては、牝馬ながら1937年の日本ダービーを勝った女傑として知られるが、翌38年秋の第3回帝室御賞典をも勝っているレジェンドである。しかもトウカイテイオーの近親。そんな思いも相まって条件馬ながら7着と健闘したロバートソンキーの走りには胸が熱くなった。強くなるのはこれから。来年は主役の一頭かもしれない。

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7馬身差の圧勝を果たし、長い天皇賞の歴史にその名を刻んだタイトルホルダーは、この秋さらなる歴史的偉業に挑むことになる。バリードイルのラビットをも置き去りにするであろうあの逃げを、ロンシャンの2400mで観てみたい。自分の形に持ち込んだ時の強さは証明済み。逃げるタイトルホルダー。追い込むシャフリヤール。今年の凱旋門賞では、日本のクラシックホース同士の一騎打ちを夢見よう。

 

 

 

***** 2022/5/1 *****

 

 

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