続・春の湯豆腐
今日は個人的なお祝いと打ち上げ。新型コロナ再々々々々々拡大の兆候もあって、近所のそば屋さんでひとりささやかに盃を上げた。
一昨日付けで湯豆腐について書いたばかりだが、ここにもメニューに湯豆腐があったので注文してみることに。
土鍋に一口大に切られた豆腐というスタイルは私がよく知るオーソドックスな湯豆腐と同じ。しかし、鍋に張られているのは昆布を敷いたお湯ではなくやはり出汁。おぼろ昆布が入っているのも一緒。ただ、おとといとは違って醤油の味がする。むろんタレやモジミおろしはない。まだ二度目ではあるが、このスタイルにも慣れてきた。
昭和初期に各界の著名人が食について語ったものをまとめた「味覚極楽」(中公文庫)に、こんなくだりがある。
「わしらの世界で一番うまいのは豆腐で、古来『豆腐百珍』といって百通りの料理がある。昆布を敷いて湯豆腐を生醤油でたべるのもうまいが、醤油の中へねぎを切り込んだりするのはいけないことじゃ」
語り手は増上寺大僧正・道重信教氏で、聞き手は東京日日新聞(現・毎日新聞)記者時代の子母沢寛だ。
『豆腐百珍』は江戸時代にベストセラーとなったレシピ本。1782年に出版されたのが大評判となり、『豆腐百珍続編』『鯛百珍』『玉子百珍』などと追従書が続々発刊され、江戸の世に一大グルメブームを起こした。その先陣を切った「豆腐」こそ当時の身近で美味いものの代表格だったのであろう。
ただ残念なことに、温めた豆腐を一丁まるごとポンと器に入れて、温かい出汁をかけた料理は『豆腐百珍』には登場しない。江戸のベストセラーだったことを思えば仕方ないか。
ちなみに今日の「お祝い」というのは、仕事が思いのほか捗って日曜が休みになったこと。それだけ。「ささやか」というのは嘘ではない。だが、おかげで大阪杯に行ける。これは大阪市民にとって大きな慶事だ。湯豆腐で乾杯しよう。
***** 2022/3/31 *****
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